運転資金の借入額はどう決める?計算方法や目安額、融資を受けられる金融機関

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運転資金の借入額や返済期間の考え方、融資を受けられる金融機関などをまとめて紹介します。運転資金の種類や調達が必要になるケースも解説するので、借入が本当に必要なのか、どの程度の金額を借り入れればいいのかを考えやすくなるでしょう。補助金・助成金やファクタリング、クラウドファンディングなど、借入以外の運転資金の調達方法も紹介します。

運転資金とは?

運転資金とは、事業を継続していくために必要な資金のことです。商品の仕入れや従業員の給与、家賃、光熱費など、日々の運営にかかる費用を賄うために欠かせない資金といえます。

この運転資金が不足すると、事業の継続が困難になる可能性もあるため、しっかりと管理することが重要です。運転資金が不足し事業を続けるのが難しくなった場合、借入や補助金・助成金、ファクタリングなどの方法で調達することもできます。

運転資金の借入額の決め方

運転資金の借入額は、事業の規模や業種、資金繰りの状況によって異なります。適切な借入額を把握するためには、必要な運転資金を計算し、目安となる金額を確認することが重要です。

ここでは、具体的な計算方法と目安について解説します。

必要な運転資金の計算方法

必要な運転資金を計算するには、主に「在高方式」と「回転期間方式」の2つの方法があります。

在高方式は、貸借対照表の項目を用いて計算します。計算式は以下の通りです。

運転資金 = 売掛金 + 棚卸資産 ー 買掛金

売掛金や棚卸資産は、これからお金になる予定の資産です。まだ現金化されていないお金から、支払っていないお金を差し引くことで、必要な運転資金を算出できます。

回転期間方式は、1日当たりの売上高と、売上債権回転期間、棚卸資産回転期間、買入債務回転期間を用いて計算します。計算式は以下の通りです。

運転資金 = 1日当たり売上高 × (売上債権回転期間 + 棚卸資産回転期間 ー 買入債務回転期間)

回転期間とは、売掛金や棚卸資産が現金化されるまでの期間、または買掛金を支払うまでの期間のことです。これらの回転期間を把握することで、より正確な運転資金を計算できます。

必要資金の目安

一般的に、運転資金は月商の3ヵ月分を目安として確保することが推奨されています。
これは、売掛金の回収遅延や予期せぬ支出が発生した場合でも、事業を継続できるだけの資金を確保しておくためです。

ただし、業種や事業規模、資金繰りの状況によって必要な運転資金は異なります。たとえば、季節変動が大きい業種や売掛金の回収期間が長い業種の場合は、より多くの運転資金が必要になるでしょう。

また、日本政策金融公庫をはじめとする公的金融機関では、融資限度額の目安が月商の3~6ヵ月分といわれています。これらの情報を参考に、自社の状況に合わせた適切な借入額を検討することが重要です。

運転資金の種類

運転資金は、その目的や性質によっていくつかの種類に分類されます。それぞれの運転資金の特徴を理解することで、資金調達や運用を効率的に行えます。ここでは、代表的な運転資金の種類について解説します。

経常運転資金

経常運転資金とは、日常的な事業活動に必要な運転資金のことです。商品の仕入れや従業員の給与、家賃、光熱費など、事業を継続していくうえで欠かせない費用を賄うために必要な資金です。

一般的に、運転資金といえばこの経常運転資金を指すことが多く、資金繰りの安定化のためには十分な経常運転資金を確保しておくことが欠かせません。

増加運転資金

増加運転資金とは、売上増加により必要になる運転資金のことです。売上が好調なときほど必要な在庫や人員も増えていきます。増加した分の売上が入金されるまでに時間がかかり、仕入れ費や人件費を確保できないこともあるでしょう。

増えた分の売上が入金されるまでのつなぎ資金が必要であり、借入以外ではファクタリングが有効な資金調達の方法といえます。

減少運転資金

減少運転資金とは、事業が不調で売上が減少していった場合に必要となる運転資金のことです。

売上が減少すると、仕入れや人件費などの支出を賄うための資金が不足し、資金繰りが悪化することがあります。このような状況では、減少運転資金を確保することで一時的な資金不足を補い、事業の継続を図れます。

減少運転資金は借入だけでなく、売掛金の早期回収や不要な在庫の処分、経費の削減などによって捻出できます。

季節運転資金

季節運転資金とは、季節変動によって一時的に必要となる運転資金のことです。

たとえば、夏に売上が集中するエアコン販売店や年末年始に需要が高まる贈答品販売店など、季節によって売上が大きく変動する業種があります。繁忙期に向けて在庫を確保したり、人材を確保したりするために、一時的に資金が必要になります。

季節運転資金を借り入れても、繁忙期が終われば売掛金の回収によって返済できるでしょう。しかし、甘い見積もりは禁物です。返済計画を適切に立てておきましょう。

赤字補填資金

赤字補填資金とは、事業が赤字になった際に、その赤字を補填するために必要な資金のことです。

赤字の原因は売上の減少や経費の増加などさまざまですが、赤字が続くと資金繰りが悪化し、事業の継続が困難になる可能性があります。

赤字補填資金は一時的な赤字を補填し、事業の立て直しを図るために必要な資金です。借入により赤字を補填すれば事業を継続できますが、根本的な問題解決がともわなければ、再び赤字に陥り事業継続が難しくなってしまいます。

運転資金の内訳

運転資金は、その費用の性質によって「固定費」と「変動費」の2つに分類されます。
それぞれの費用の特徴を理解することで、より効果的な資金管理を行えます。

固定費

固定費とは、売上の増減に関わらず、一定額発生する費用のことです。家賃や事務所賃料、従業員の給与、保険料、通信費、減価償却費などが挙げられます。

固定費は事業を継続していくうえで必ず発生する費用であるため、削減が難しい場合が多いものの、長期的な視点でコスト削減に取り組むことが重要です。たとえば、事務所の移転や賃料交渉、業務効率化による人員削減などを検討することで、固定費を削減できる可能性があります。

変動費

変動費とは、売上の増減に応じて変動する費用のことです。商品の仕入れ費用や原材料費、外注費、販売手数料、広告宣伝費などが挙げられます。売上が増加すれば、それにともなって変動費も増加し、売上が減少すれば変動費も減少します。

変動費は売上高と比例して増減するため、売上予測に基づいて適切に管理することが重要です。

たとえば、売上が好調な時期には、在庫を多めに確保したり、広告宣伝費を増額したりすることで、さらなる売上増加を目指せます。一方で、売上が低迷している時期には、仕入れ量を減らしたり、広告宣伝費を削減したりすることで、コストを抑えられます。

運転資金の借入・調達が必要になるケース

事業を運営していく中で、さまざまな理由から運転資金が不足し、借入や調達が必要になるケースがあります。資金不足の原因を把握し、適切な対処法を選ぶことが、事業の継続と成長にとって重要です。

ここでは、運転資金の借入・調達が必要になる代表的なケースについて解説します。

掛取引が多く資金が足りない

掛取引とは、商品やサービスの提供後、一定期間後に代金を受け取る取引形態です。顧客にとっては便利な支払い方法ですが、企業にとっては売掛金が増加し、資金繰りが悪化する可能性があります。

特に、掛取引の割合が高い企業や回収期間が長期化する傾向がある企業では、資金不足に陥りやすいといえます。このような場合は、ファクタリングや売掛債権担保融資などを活用して、資金繰りを改善する方法が有効です。

経費増加により資金が足りない

原材料費や燃料費の高騰、人件費の上昇など、さまざまな要因によって経費が増加し、運転資金が不足するケースがあります。特に、価格変動の激しい商品を扱っている企業や、人材確保に力を入れている企業では、経費増加による資金不足に陥りやすいといえます。

このような場合は、コスト削減や価格転嫁などの根本的な対策に加えて、運転資金の借入によって一時的な資金不足を補うことが有効です。

売上低迷により資金が足りない

景気悪化や競合の出現、消費者ニーズの変化など、さまざまな要因によって売上が低迷し、運転資金が不足するケースがあります。売上が減少すると入ってくるお金が減る一方で、固定費などの支出は変わらないため、資金繰りが急速に悪化することがあります。

このような場合は、売上回復のための施策を実行するとともに、運転資金の借入によって当面の資金不足を補うことが重要です。運転資金の借入は、一時的な資金繰りの悪化を乗り越え、事業の立て直しを図るための手段として有効です。

事業拡大のための資金が足りない

新規事業の立ち上げや設備投資、店舗展開など、事業拡大のためには多額の資金が必要になります。自己資金だけでは不足する場合、運転資金の借入が検討されます。

事業拡大は企業の成長にとって重要なステップですが、資金計画をしっかりと立てずに借入を行うと返済が困難になり、経営が悪化する可能性もあります。事業計画や収支計画を慎重に検討し、無理のない範囲で借入を行うことが重要です。

借入を一本化したい

複数の金融機関から借入を行っていると、返済日がバラバラで管理が煩雑になりがちです。
また、金利が高い借入が残っていると、利息負担が大きくなり、資金繰りを圧迫する可能性もあります。

このような場合は借入を一本化することで、返済管理の手間を軽減し、金利負担を減らせます。一本化の方法は、低金利の借入で高金利の借入を借り換える借り換えローンや、複数の借入をまとめて新たな借入で返済するおまとめローンなどがあります。

運転資金の主な借入先

運転資金の借入先は、公的金融機関から民間金融機関までさまざまです。それぞれの金融機関によって、金利や融資条件、審査基準などが異なるため、自社の状況に合わせて最適な借入先を選ぶことが重要です。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫、政府系金融機関として、民間金融機関では融資を受けにくい中小企業や創業間もない事業者に対して、低金利で融資を行っています。運転資金の融資制度も充実しており、さまざまな事業者のニーズに対応しています。

特に新規開業や事業承継、経営改善など、特定の目的に応じた融資制度が用意されている点が特徴です。また、担当者が事業計画の策定や経営相談にも対応してくれるため、資金調達だけでなく、経営全般のサポートを受けられるというメリットもあります。

民間銀行

民間銀行は、都市銀行、地方銀行、第二地方銀行など、さまざまな種類があります。運転資金の融資においては、主に「プロパー融資」と「信用保証協会付き融資」の2つの方法があります。

プロパー融資は銀行が独自の審査基準に基づいて融資を行うものです。信用力の高い企業にとっては、低金利で融資を受けられる可能性があります。

信用保証協会付き融資は信用保証協会が保証人となることで、銀行が融資を行いやすくなる制度です。
信用保証協会付き融資はプロパー融資よりも金利は高くなりますが、比較的審査が通りやすいというメリットがあります。

信用金庫

信用金庫は地域密着型の金融機関として、地域の中小企業や個人事業主に対して、きめ細やかなサービスを提供しています。運転資金の融資においては、地域経済への貢献度や事業計画の実現性などを重視する傾向があります。

そのため、地域に根差した事業を展開している企業にとっては、心強い味方となるでしょう。また、信用金庫は、経営相談や事業承継支援など、資金調達以外の面でもサポート体制が充実している点が特徴です。

ノンバンク

ノンバンクは、銀行や信用金庫などの預金取扱金融機関以外の金融機関を指します。消費者金融や信販会社、リース会社などがノンバンクに該当します。

ノンバンクは審査スピードが速く、担保や保証人が不要な場合もあるため、急な資金需要に対応しやすいというメリットがあります。しかし、金利は銀行や信用金庫よりも高めに設定されていることが一般的です。

そのため、一時的な資金不足を補う場合や、担保や保証人を用意できない場合に利用を検討するとよいでしょう。

運転資金の融資審査・返済計画の注意点

運転資金の融資を受ける際には、審査に通るための準備や、無理のない返済計画を立てることが重要です。融資審査のポイントを押さえ、返済計画を適切に立てることで、スムーズな資金調達と安定した事業運営を実現できます。

ここでは、運転資金の融資審査と返済計画における注意点について解説します。

借入金の使途を明確にする

融資審査において、借入金の使途を明確にすることは非常に重要です。金融機関は融資によって資金が有効活用され、返済能力が向上すると判断した場合に融資を実行します。

そのため、借入金の使途が不明確であったり事業計画と整合性が取れていなかったりすると、審査に通りにくくなります。借入金をどのように活用し、どのような効果が期待できるのかを具体的に説明できるように準備しておくことが大切です。

借入額は必要十分な金額にする

借入額は、事業に必要な金額を正確に見積もり、必要十分な金額にすることが重要です。必要以上の金額を借入れると、返済負担が大きくなり、資金繰りを圧迫する可能性があります。金融機関からの信用も低下し、今後の資金調達が困難になることも考えられます。

一方で、必要な金額を下回る借入額では資金不足に陥り、事業運営に支障をきたす可能性があります。

事業計画に基づいて、必要な運転資金をしっかりと計算し、適切な借入額を検討することが大切です。

返済期間を最長期間にしない

返済期間は、無理のない範囲で設定することが重要です。

最長期間を選択すると毎月の返済額は少なくなりますが、総返済額は利息の分だけ増加します。返済期間が長ければ長いほど利息負担が大きくなるため、返済総額を抑えるためには、返済期間を短く設定することが望ましいです。

ただし、返済期間が短すぎると、毎月の返済額が大きくなり、資金繰りを圧迫する可能性もあります。事業の収益状況や将来の資金計画などを考慮し、無理なく返済できる期間を設定することが大切です。

必要書類の用意と予測される質問への対策をしっかりと

融資審査では、さまざまな書類の提出が求められます。決算書や事業計画書、資金繰り表など、必要書類を漏れなく準備し、正確な情報を記載することが重要です。

また、金融機関によっては面談やヒアリングが行われることもあります。融資担当者から事業内容や経営状況、資金計画などについて質問されることを想定し、事前に回答を準備しておくことが大切です。

特に、借入金の使途や返済計画については具体的な説明を求められる可能性が高いため、しっかり準備しておきましょう。

借入以外の運転資金を調達する方法

運転資金の調達方法は、借入以外にもさまざまな方法があります。それぞれの方法にメリットとデメリットがあるため、自社の状況に合わせて最適な方法を選択することが重要です。ここでは、借入以外の代表的な運転資金調達方法について解説します。

助成金・補助金

助成金や補助金は、国や地方自治体などが、特定の政策目的を達成するために企業に支給する資金です。新規事業の立ち上げや設備投資、雇用創出、環境対策など、さまざまな分野で活用できる制度です。返済不要であるため、資金調達における負担を軽減できます。

しかし、申請手続きが複雑で審査基準も厳しいため、獲得には時間と労力が必要となる場合があります。また、助成金や補助金は、交付決定後に事業を実施することが原則であるため、運転資金が不足している状況ですぐに活用できないというデメリットもあります。

クラウドファンディング

クラウドファンディングとは、インターネットを通じて不特定多数の人々から資金を調達する方法です。新規事業や商品の開発、イベント開催など、さまざまなプロジェクトで活用されています。

クラウドファンディングは資金調達だけでなく、プロジェクトの認知度向上や顧客獲得にもつながる可能性があります。

ただし、目標金額に到達しなければ資金調達できない場合(All or Nothing)、目標金額に到達できず資金不足の状態でもプロジェクトを実施しなければならない場合(All In)など、それなりのリスクもあります。

また、プロジェクトの内容によっては支援者へのリターン(返礼品)の準備や発送など、手間がかかる場合もあります。

ファクタリング

ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に売却し、早期に現金化する方法です。売掛金の回収を待つことなく資金調達できるため、資金繰りの改善に役立ちます。

ファクタリングは審査が比較的緩く、担保や保証人も不要な場合が多いため、迅速な資金調達が必要な場合に有効です。

しかし、融資に比べて割高な手数料が発生するため、コスト面を考慮する必要があります。融資のように分割での返済もできず、調達した資金は、売却した売掛債権を回収したらすぐに一括でファクタリング会社に支払わなければなりません。

また、ファクタリングを利用したことが取引先に知られると、信用不安を引き起こす可能性もあります。

ファクタリングの詳細やおすすめのサービスはこちらの記事で紹介しています。

【厳選11社】本当におすすめの大手ファクタリング会社の手数料や入金までの日数を比較!安心して利用できる会社とは?

運転資金の融資では適正な借入額と返済期間を意識しよう

運転資金は事業を円滑に進めるために欠かせない資金です。運転資金が不足すると、事業の継続が困難になる可能性もあります。

運転資金の借入を検討する際には、必要な運転資金を計算し、自社の状況に合った適切な借入額を把握することが重要です。借入額だけでなく、返済期間も慎重に検討し、無理のない返済計画を立てることが大切です。

借入以外の資金調達方法も検討しましょう。助成金や補助金、クラウドファンディング、ファクタリングなどを活用することも有効です。

運転資金の調達方法には、それぞれメリットとデメリットがあります。自社の状況やニーズに合わせて、最適な方法を選択しましょう。資金繰りの改善と安定した事業運営を実現するために、ぜひ本記事を参考にしてください。

監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。