ファクタリングとでんさいの違いとは? メリット・デメリットを徹底解説
日本国内に構える企業の大多数は中小企業が占めています。中小企業は、社会情勢の風当たりを受けて資金繰りが悪化している所が多数存在します。
資金繰りを改善するには、資金調達が必要です。資金調達にも、様々な手段がありますが支払期日前の債権を譲渡し現金化する方法として、電子記録債権(でんさい)とファクタリングがあります。
このコラムでは、でんさいとファクタリングの相違点と共通点、でんさいを利用するメリット・デメリットについてご紹介します。
でんさい(電子記録債権)の概要
でんさいは、2000年代に創設されたばかりの新しい資金調達方法です。経理担当者であれば、名前を耳にしたことはあるでしょう。しかし、そうでない場合はまだ認知が浸透しているわけではないので、どのようなサービスなのか実態が掴めていない方もおられます。ここでは、でんさいの概要と特徴、創設された目的についてご紹介します。
でんさいとは
電子記録債権を省略した名称のことで、従来の手形や売掛債権を電子化してオンライン上で取引できる新たなサービスです。従来の商取引では、手形を利用した取引が多く行われていましたが、盗難や紛失、郵送の手間など課題が浮き彫りになっていました。
しかし、でんさいでは金融機関にある専用システムにアクセスすれば譲渡や決済といった取引が可能です。そのため、債権管理のコスト削減や資金繰り改善に期待できます。
でんさい取引の流れとしては、まず電子債権記録機関の記録原簿に記録することででんさいが発生します。譲渡する場合は、記録原簿に譲渡記録をすれば可能です。決済に関しては、支払期日になると自動的に支払企業の銀行口座から納入企業へ振込が行われる仕組みです。決済が完了した旨を記録原簿に支払等記録として記録します。
従来の手形とは異なり、支払期日当日から資金の利用が可能です。
でんさいの特徴
特徴としては以下の3パターンがあります。
・手形的利用
従来の手形と同様な使い方ができます。具体的には、支払期日の設定や期日前譲渡、制度の整備などです。売掛債権が発生した場合、支払企業が電子記録債権にて支払いを行い、支払期日に代金が引き落とされ納入企業へと支払われます。売掛債権の発生から決済までの流れも従来の手形と同様です。また、期日前に割引や他者への譲渡なども共通しています。
・全銀行参加型
既存の銀行間決済システムを利用して全銀行が参加できるため、確実な資金回収が可能である仕組みです。国が指定する電子記録機関には、みずほ電子債権記録株式会社やSMBC電子債権記録株式会社などがあります。上記のメガバンクは、自行の利用者のみを対象に電子記録債権化を目的とするものです。一方、全銀行参加型(でんさいネット)の場合は全国銀行協会の加盟銀行全てが参加できるシステム構築を目的とするものになります。
・間接アクセス方式
金融機関を経由するのみでんさいネットにアクセスできない方式のことです。現行で利用する窓口金融機関からそのままサービスが利用できます。また、金融機関側もニーズに合わせて様々なサービス提供が可能です。
でんさいが創設された目的
創設された背景は、2003年7月の「e-japan戦略II」まで遡ります。従来の資金調達法では、売掛債権や振り出された手形の譲渡などがあります。しかし、上記の方法には対象である債権の存在や誰に帰属しているのかの確認などに手間がかかっていたほか、二重譲渡のリスクも問題とされていました。また、業務のIT化が進んでいくにつれて紙媒体の手形を保管するコストや紛失・盗難リスクが問題視されています。以上の背景から、取引の安全性・流動性を確保するため2008年12月に施行された電子記録債権法により創設されます。でんさいの創設によって、従来の手形や売掛債権が抱えるリスクを防止に期待できるでしょう。
でんさいとファクタリングの違いについて
ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権をサービス提供事業者に譲渡して現金化するサービスです。支払期日前の売掛債権を譲渡できれば、前倒しして現金が受け取れます。代金の回収も提供事業側が行うため、未回収リスクも防げます。では、先程紹介したでんさいとどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、でんさいとファクタリングの相違点についてご紹介します。
ネットワークの違い
でんさいは、全国銀行協会が100%出資して設立した「株式会社全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)」が記録機関として運営しています。1,300を超える金融機関が加盟しており、双方の銀行口座が加盟していれば新たな口座を作ることなくでんさいの利用が可能です。また、どの金融機関で手続しても書式が統一されており、利便性にも優れています。
ファクタリングは、提供事業者を介して売掛債権の売買を行います。個別の提供事業者との取引なので、取引先が増える都度契約締結しなければなりません。取引先を多く抱える企業にとっては手間がかかるでしょう。
手数料の違い
でんさいの場合、およそ1.5%~5%程度の手数料がかかります。発生記録1件に課せられる手数料の相場は561円です。一方、ファクタリングの場合は2社間ファクタリングと3社間ファクタリングによって手数料が異なります。2社間ファクタリングの場合は、取引先が介入しない分手数料が高めに設定されており、およそ5~20%程度がかかります。3社間ファクタリングは、1%~9%程です。ファクタリングよりも手数料は低く設定されていますが、保有する債権の一部をでんさい利用する場合は支払手段が複雑化し管理コストが増えてしまう恐れがあります。
契約締結の違い
でんさいの場合、初回契約時にでんさいネットに登録すれば次回以降、共通の口座があれば新たに口座を作る必要がありません。そのため、契約手続きの簡略化が期待できます。一方、ファクタリングは取引のたびに契約手続きをしなければなりません。また、取引先ごとに契約方法も異なるため多くの取引を行う場合には不向きでしょう。ただし、同じ提供事業者を継続利用することで手間を軽減することができます。
償還請求権の有無
償還請求権とは、手形の振出人が何らかの理由で不渡りになった場合、金融機関が受取人に対して買い戻しを請求できる権利のことです。でんさいの譲渡は償還請求権のある契約であるため、売掛先が万が一倒産した場合に譲渡した側が保証人となり返済義務を負うことになります。ただし、保証人の代わりに返済をした債権者は法的要件を満たすことで、債務者及び自分より前に電子記録保証人になったものに求償できる特別求償権を取得できます。
一方ファクタリングは、償還請求権無しで契約できるため売掛先が倒産しても提供事業者が肩代わりをしてくれるので、返済の義務が発生しません。そのため、貸し倒れリスクを防ぐことができます。
取引先へ通知する違い
でんさいの場合、譲渡した都度でんさいネットに登録されている取引に逐一通知されるため、資金調達をしていることがばれてしまいます。そのため、資金繰りが悪いとイメージされ、取引がスムーズに進まない恐れもあるでしょう。
ファクタリングの場合は、取引先が介入しない2社間ファクタリングであればばれることはありません。債権譲渡を知られずに進めたいのであればファクタリングの利用をおすすめします。
でんさいとファクタリングの共通点
上述したようにでんさいとファクタリングでは、数多くの相違点があります。しかし、基本的には保有する売掛債権を譲渡して資金調達することは変わりません。他にも、双方で共通する部分があります。ここでは、でんさいとファクタリングの共通点についてご紹介します。
期日前の資金化が可能
支払期日より前に現金化が可能です。でんさいは、従来の手形と同様に使えるので手形割引のような現金化ができます。ファクタリングに関しても、売掛債権を提供事業者に譲渡して現金化するため共通しています。銀行からの借り入れよりも早く調達できるため、早急に現金が必要な場合はおすすめの手段といえるでしょう。
決済については支払企業が行う
支払期日になると、支払企業が代金を決済する仕組みです。でんさいの場合、支払期日になると自動的に支払企業の銀行口座から債権金額が引き落とされます。フファクタリングに関しても、売掛債権の支払期日に支払企業が提供事業者に資金調達した額を支払います。上述のように双方支払企業が決済を行うため、自社が資金を用意する必要はありません。
でんさいのメリット
2008年に新たに創設されたでんさいですが、利用することでどのような恩恵が得られるのでしょうか。ここでは、でんさいのメリットについて詳しくご紹介します。
印紙代がかからない
手形取引の場合、手形を発行する手数料のほかに収入印紙を貼る必要があるため印紙税がかかります。収入印紙代は、契約金額ごとに税額が設定されており金額が大きいほど印紙代もかかってしまいます。しかし、でんさいであれば電子化されているので収入印紙を貼る必要がありません。多くの取引先を抱える企業にとっては大きなコストカットが期待できるでしょう。
事務負担の軽減
一般的な手形取引では、発行・郵送・振込など様々な業務が発生します。そのため、取引数が多いとそれなりの業務工数や手間がかかっていました。しかし、でんさいの場合は前もって譲渡記録をしておけば支払期日に自動で取引先に支払いが行われるため手間が一切かかりません。取引先が増えたとしても、でんさいネットに登録していれば契約を結びなおす必要もないです。代金の受け取り側は、パソコンやスマホから口座確認が可能なので、わざわざ取引先のもとへ出向かずに済みます。
債権の紛失・盗難を防げる
従来の手形は、物理的に盗難・紛失リスクがあったため金庫に保管しておく必要があります。しかし、でんさいは電子記録であるため現物自体が存在せず紛失や盗難の心配がありません。
でんさいのデメリット
上述したように様々な恩恵が得られるでんさいですが、デメリットがあることも忘れてはいけません。創設して間もないサービスだからこそ生じているデメリットもあります。もし、でんさいを利用するのであればデメリットについて理解しておくのも大切なことです。ここでは、でんさいのデメリットについてご紹介します。
取引先もでんさいを利用していることが前提であること
利用する際、自社のみならず取引先も電子債権記録機関に登録していることが必須です。そのため、取引先が登録していない場合は利用できません。でんさいを利用したいが取引先が登録していない場合は、説得して登録してもらうようにしましょう。また、新たなに取引先を増やす場合には事前に登録しているかの確認をしましょう。
認知度が低いこと
上述したようにでんさいの利用には、自社と取引先が電子債権記録機関へ登録を済ませなければなりません。しかし、でんさいの認知度が低く全体の事業者の中で12%程と登録が進んでいない現状です。特に、中小企業では高齢の経営者が多い傾向にあるため、ITリテラシー不足などにより取り扱いが難しいなどの問題もあります。
審査を通過する難易度が高いこと
審査に関しては銀行の融資と同様の審査基準になるため、単に譲渡する債権の信用力だけではなく自社の財務状況や経営状態も審査対象となります。自社の経営状態に自信がないものの、でんさいを利用したい場合は債権の信用力を重視した審査を行う「賃金業者」として申し込みましょう。
未回収責任を負う必要がある
先程も紹介しましたが、でんさいを譲渡した際に償還請求権の影響から譲渡側が保証人となります。つまり、支払企業が支払不履行になった場合、未回収責任を保証人が負わなければなりません。ただし、でんさいネットでは関係者の承諾がとれていれば保証なしの譲渡が可能なケースもあります。最近では、でんさいネットに登録された債権を銀行が買取る「でんさいファクタリング」と呼ばれるサービスが提供されています。
でんさいファクタリングでは、償還請求権がなく返済義務を負うことがありません。また、でんさいなのでファクタリングよりも安い手数料に抑えられることなど双方のメリットが兼ね備えられています。
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