クラウドサービスの導入で仕事は変わる?メリットとデメリット
総務省の「情報通信白書」(平成27年版)によれば、一部または全体的にクラウドサービスを利用していると回答した企業の割合は38.7%でした。導入理由としては「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」「初期導入コストが安価だったから」などの声が挙がっています。一方で、「必要がない」「セキュリティに不安がある」「メリットが分からない、判断できない」などの理由から利用していない企業もまだまだ多数を占めます。
企業がクラウドサービスを導入するメリットやデメリットとはどのようなものがあるのでしょうか。導入する場合のポイントなどとともにご紹介していきます。
「クラウド」とは何を指す?
最近ではすっかりおなじみの言葉となった「クラウド」。クラウドサービスと呼ばれるものも普及して、特に意識することなく利用する人も増えました。でも、実際のところクラウドとは何なのかをきちんと説明できないという方も多いのではないでしょうか? まずはクラウドの意味について基本的なことを理解しておきましょう。
クラウドは「クラウドコンピューティング」を略したもので、インターネット上にあるサーバーが提供するサービスを、自分のパソコンや携帯端末などから利用できる形態のことを指します。以前はパソコンで作業するには、そのパソコンにインストールされたアプリケーションでデータを使用して、パソコン上に保存するのが当たり前でした。これに対して、インターネット上にあるアプリケーションを使用しインターネット上にデータを保存したり共有したりできるのがクラウドです。そしてクラウド形態で提供されるサービスのことは「クラウドコンピューティングサービス」または「クラウドサービス」と呼ばれています。
ここで言う「クラウド」とは英語で「雲」を意味する「Cloud」から来ています。クラウドコンピューティングという言葉が初めて使われたのは今から11年前の2006年。米Google社の当時のCEOであったエリック・シュミットの発言内で用いられたのが最初だとされています。かねてからネットワークを図で表現する際に雲形が用いられることが多く、そのイメージから用いられたのではないかと考えられます。
ちなみに、インターネットを介した新しい形態としてこちらも近年注目を浴びる「クラウドソーシング」「クラウドファンディング」のクラウドは「群衆」を意味する「Crowd」から来ています。混同しやすいので注意しましょう。
クラウドサービスの種類
クラウドコンピューティングの形態で提供されるサービスのことを「クラウドサービス」と呼ぶとお伝えしました。従来、利用者がパソコンやアプリケーション、データなどを自分で保有、管理する必要がありましたが、クラウドサービスの登場により、利用者はパソコンや携帯端末などのクライアントと、インターネットへの接続環境、Webブラウザなどの利用環境を整えるだけでさまざまなサービスを利用できるようになったのです。
クラウドサービスによって提供されるサービス形態にはさまざまなものがあり、大きく以下の3種類に分類することができます。
(1)SaaS(サーズまたはサース)
SaaSは「Software as a Service」を略したもので、インターネット上でソフトウェア(アプリケーション)を提供するサービスのことを言います。利用者は、ソフトウェアのパッケージを購入およびインストールしなくても、サーバーにアクセスすることで利用することができます。
(2)PaaS(パーズまたはパース)
PaaSは「Platform as a Service」を略したもので、インターネット上で提供されるアプリケーションの開発・運用環境を提供するサービスのことを言います。通常、アプリケーションの開発には、仮想化されたアプリケーションサーバやデータベースなど開発環境の構築が必要ですが、PaaSを利用することで短期間かつ低コストでの開発が可能となります。
(3)HaaS(ハース)、IaaS(イアースまたはアイアス)
HaaSは「Hardware as a Service」、IaaSは「Infrastructure as a Service」の略で、ハードウェアや回線などのインフラ機能を提供するサービスのことを言います。従来はシステムを構築するためには自社でサーバーやソフトウェアを購入し、運用やメンテナンスを行う必要がありました。IaaSを利用することで、サーバーなどを保有せず必要なときにインターネット経由でサーバーやストレージなどを利用することができます。
クラウドサービスを導入するメリット
クラウドサービスには、Webメールやオンラインストレージなど個人で利用できるものも多いですが、近年では企業が情報資産の管理などを目的に導入するケースも急速に増えてきています。企業がクラウドサービスを導入することで得られるメリットとしては、主に以下のようなものが挙げられます。
(1)サーバーやソフトウェアを購入しなくて良い
サーバーやソフトウェアパッケージを購入する必要がないため、システム導入時の初期費用を抑えることができます。また、サーバーやソフトウェアを固定資産として所有しないため、減価償却を考慮する必要もありません。
(2)手軽に新システムの導入や入れ替えが行える
従来、新たなシステムを導入したり、現在のシステムからの入れ替えを行ったりする際には、多額な初期費用および労力がかかりました。必要性を感じてもなかなか導入に踏みきれなかった企業も少なくないでしょう。クラウドサービスは初期費用やシステム構築などの労力を抑えられるため、必要なときに迅速に導入することが可能です。サービス利用料金は日額や月額で設定されていることが多いため、短期的なプロジェクトなどにも導入しやすいでしょう。
(3)メンテナンス、管理コストが低減される
自社でサーバーやシステムを保有する場合、機能追加やセキュリティ強化対策のためのアップデートなど、メンテナンスや保守管理にも工数を割く必要があります。クラウドサービスの場合、アプリケーションのアップデートからサーバーの保守作業までサービス提供者側が行うのが一般的です。自社で更新作業などを行われなくても常に最新バージョンのアプリケーションを使用できるため、作業コストの削減につながります。セキュリティ面でも安全性が高くなると考えられます。
(4)複数の端末間での同期などが不要
一つのデータを複数の端末、作業者が取り扱う場合でも、データはサーバー上で一元管理できるため、端末間での同期作業などは不要です。また、参照データの不整合などの問題も生じにくくなり、作業効率の向上につながります。
クラウドサービスを導入するデメリット
コスト軽減や業務の効率化など、さまざまなメリットが期待できるクラウドサービスですが、自社でシステムを保有する場合と比べてデメリットやリスクとなる部分ももちろん存在します。クラウドサービスによるデメリットには主に以下のようなものが挙げられます。
(1)細かなカスタマイズが難しい
自社でシステムを保有する場合、業務内容やフローに合わせて柔軟にシステムの改修や運用変更を行うことが可能ですが、クラウドサービスは基本的にパッケージ化されたシステムが提供されるためカスタマイズの自由度はあまり高くありません。独自性の高いシステムを導入したい場合などには不向きだと言えるでしょう。ただし最近では、ある程度のカスタマイズを想定して提供されるクラウドサービスも増えています。
(2)サービスの持続性にリスクがある
サービス提供者とのネットワークに障害が発生すると、クラウドサービスは利用できなくなります。サービスによってはメンテナンス時などに利用できなくなるものもあり、自社で保有するシステムと比べて稼働率が低下する可能性があります。また、サービス提供事業者の倒産やサービス終了などによってサービスそのものが利用できなくなる可能性も考慮しなければいけません。
(3)情報セキュリティ面のリスクがある
ネットワークを介してクラッキングなどの攻撃を受ける可能性や、人為的な操作ミスや意図的な情報漏えいなど、情報セキュリティ面でのリスクは、自社でサーバーを保有する場合と同様、クラウドサービスを利用する場合にもあります。自社のリソースをクラウド事業者に委ねる以上、十分なセキュリティ対策を備えたクラウドサービスを選んで利用するのが大切だと言えるでしょう。
(4)仮想化によるオーバーヘッドの可能性がある
クラウドサービスではほかの利用者とリソースを共有するため、ほかの利用者の影響を受ける可能性があります。例えばIaaSでは1台の物理サーバーのリソースを分割して複数のOSを実行できるようにする仮想化技術が用いられますが、仮想化によるオーバーヘッドが生じ、スペックどおりのパフォーマンスが得られないケースなどもあります。
クラウドベンダーの選び方
クラウドサービスを導入するといっても、システムを全面的にクラウドに移行する場合もあれば、Webまわりなど部分的に導入する場合もあるでしょう。導入する目的や予算などにより選定基準は異なりますが、クラウドベンダーを選定する際にどういった部分に注目すべきかのポイントをいくつかご紹介します。
(1)導入コストおよびランニングコストは?
クラウドサービスの導入には、サーバーやソフトウェアなどを購入する必要がなく、運用にかかる人件費や電気代などランニングコストも含め、コスト面でのメリットが期待できます。一方、導入後は継続的に利用料金が発生することになります。クラウドサービスの料金体系は、定額制や従量制などベンダーやサービスによりさまざまです。各ベンダーごとに導入から運用までにかかる費用の試算を行い、比較対象してみることをおすすめします。
(2)拡張性の高さは?
自社でサーバーを保有する場合はディスク容量に物理的な制限があり、容量が不足したからといって気軽に拡張するというわけにはいきません。これに対して、クラウドサービスは必要に応じて容量を増減できるという利点があります。事業やサービスの拡大・縮小、ニーズや時節などに応じたリソースの拡張や縮小にどの程度対応できるのかについても比較検討すべきです。
(3)セキュリティ対策は?
クラウドサービスはインターネットを介して利用することになるため、第三者からの攻撃を受ける可能性は常にあります。ネットワークやサーバーのセキュリティ対策もクラウドベンダーを選定する際の重要な判断基準であると言えるでしょう。通信方法や冗長化されているか、ファイアウォールの設置有無などを確認するのはもちろん、過去のトラブルなどについても確認すると良いでしょう。また、自社のセキュリティポリシーとベンダーのセキュリティポリシーが合致しているかについてもあらかじめ確認しておくことが大切です。
(4)運用体制およびサポート体制は?
必要なときに問題なくクラウドを利用できるかどうかは、運用体制にかかっています。キャパシティ管理されているかや、アップデートなどの変更管理がしっかりとしているか、バックアップの仕組みはどうなっているのかなど、運用体制にも注目すべきでしょう。
また、ドキュメントやFAQが用意されているか、電話やオンラインでの問い合わせ窓口が設けられているかなどサポート体制も重要です。海外の事業者の場合、日本語でのサポート対応があるかなどにも注目したいところです。
請求業務の効率化は「請求管理ロボ」にお任せ!
「請求管理ロボ」は、毎月の請求業務を最大80%削減する請求管理・債権管理システムです。請求書の発行や送付、集金、消込、催促などの売掛金管理を全て自動化し、人的作業を減らしてミスを防ぐとともに、経理業務の効率化を実現します。
加えて、SFA(販売管理システム)との連携により、自動で行われた請求業務の内容を会計システムに反映させることも可能です。これにより、煩雑なやり取りの削減と企業会計の透明化をサポートし、従業員がコア業務に専念できるようになります。
なお、コンビニ決済、クレジットカード決済、口座振替、銀行振込など、複数の決済手段に対応しているため、企業間取引のみならず、BtoC取引にも活用いただけます。
インボイス制度・電子帳簿保存法にも対応しており、これまでに700社以上の企業に導入され、年間取引請求金額は約2,770億円に上ります。経費の管理や帳簿付け、請求業務にお悩みの企業のご担当者様は、お気軽に「請求管理ロボ」にご相談ください。