請求書電子化に伴う案内文の書き方は?注意点も紹介
近年は請求書の電子化が進められ、国をまたいで請求データをやりとりするための環境整備が進められています。この請求書の電子化は、経理業務の効率化や経理担当者の負担軽減、コスト削減、決済プロセスの迅速化など、発行側と受領側双方にメリットがあるものです。
しかし、取引先の了承を得ずに電子化を進めると取引先が対応できず、取引が滞ってしまうことも考えられるでしょう。
本記事では、案内文を作成する際のポイント、案内文の文例や注意点などについて解説します。
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請求書電子化の案内文を作成する際の3つのポイント
ここでは、取引先へ送付する請求書電子化の案内文を作成する際に押さえるべきポイントについて解説します。
請求書電子化を行うメリットを伝える
請求書電子化請求書発行側と受領側双方のメリットを伝えることが大切です。
電子化によるメリットを過不足なく取引先に伝え納得してもらえれば、電子化移行がスムーズになる可能性が高くなります。また、メリットを示すことで取引先の担当者が社内を説得するための材料にもなるでしょう。口頭では十分に伝えられないことも文書化すれば、お互いの認識がずれる心配はありません。
そして請求書電子化導入にあたっては、後々になり取引先との間で齟齬がないようにすることが重要です。経理関係のトラブルが生じると、相手の信頼を一気に失ってしまいかねません。何を伝えるのか、十分に吟味しながら案内文を作成しましょう。
具体的な請求書電子化のメリットについては、「請求書の電子化とは?メリット・デメリット・やり方などを解説!」に詳しい記載がありますので、そちらも合わせてご覧ください。
請求書電子化を行うことを明確にする
電子帳簿保存法は施行開始当初、3万円未満の取引、かつ電子署名がある書類のみが電子保存の条件だったこともあり、請求書の電子化を進める企業は少数でした。
しかし、その後の改正では規制要件が緩和されていることに加え、インボイス制度の施行もあり請求書の電子化が一気に普及するものと予想されています。請求書電子化についての案内文では、このような背景を鑑みた決定事項であるとの伝え方が好ましいでしょう。
提案の体裁で案内文を作成すると、不安を持たれたり手間を嫌って断られたりする可能性が高くなります。電子化移行の期限なども含めて伝えることで、相手も準備が進めやすくなるでしょう。
また案内文を作成する段階で、社内の電子化移行の対応スケジュールなどを具体的に決めておくことをおすすめします。スムーズにいかない場合も想定し、余裕を持った日程を組んでおくと安心です。
電子請求書に移行する理由を具体的に伝える
案内文には、電子請求書に移行する理由を具体的に記載しましょう。取引先の納得がいく伝え方が肝心です。
理由には、法改正・インボイス制度の導入により請求書の電子化が求められている点、電子化は社会全体の動きである点を記載するといいでしょう。他にも、既にビジネスの世界では電子化への対応が急務である点も含めると良いかもしれません。
書類の電子化には多くのステップがありますが、一旦環境を整えれば業務効率は大きく向上します。早めの電子化対応により、企業の収益性が向上し取引の機会創出に役立つことも記載したいポイントです。
明確な理由提示のために、電子帳簿保存法やインボイス制度の理解に務めることから始めるのもいいでしょう。制度の要旨が理解できれば、請求書の電子化が必要な理由を掴むことができます。
請求書の電子化が必要な背景や理由は、以下の記事詳しく解説しています。
請求書電子化に伴う案内文の文例
ここでは、案内文の文例を、発行者と受領者に分けて紹介します。
発行者が請求書電子化を告知する場合の文例
では、実際に告知する際にはどのような文面が適切なのでしょうか。今回は一般的なビジネスメールを例に文例をまとめてみました。
時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
この度弊社ではお客様への請求内容案内迅速化のために、これまで郵送にてお送りしていた請求書をインターネット上で確認できるサービスへ切り替えさせていただくこととなりました。
これまで送付していた請求書と同様に弊社の社印が押印された請求書をインターネット上からダウンロードしていただけます。
お手数をお掛けして大変恐縮ですが、お客様へより早く確実に請求内容をご案内できる仕組みとしてご理解とご協力をいただけますようお願い申し上げます。
従来の郵送での送付と比較した場合、以下のようなメリットがございます。
1.請求書が従来よりも2~3日ほど早く届きます。
2.過去1年分の請求書をいつでも確認・ダウンロードすることができます。
ご不明な点やご質問がある場合は弊社担当者までご連絡をお願いいたします。
敬具
受領者が請求書電子化を開始する場合の文例
続いて、受領者側が電子化を開始する際の文例を見てみましょう。
時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
この度弊社ではペーパーレス化の推進や生産性向上のために納品書・請求書をインターネット上で一括管理するシステムへ移行させていただくこととなりました。
つきましては御社へのお支払いもインターネットを介したシステムで行わせていただきたいと考えております。本システムをご利用いただくことにより御社におかれましてもキャッシュフローの最大化、ファイリングの手間の削減、業務コストの削減などのメリットがもたらされます。
お手数をお掛けして大変恐縮ですが、昨今の環境意識の高まりにも応えるものとしてご理解とご協力をいただけますようお願い申し上げます。
〇〇年〇〇月〇〇日より本システムの運用開始を予定しております。お手数ですが別途お送りする手順書にしたがって本システムの登録をお願い致します。
ご不明な点やご質問がある場合は弊社担当者までご連絡をお願い致します。
敬具
このように発行者側・受領者側どちらであったとしても、変更による相手へのメリットを添えることが大切です。また、システムの運用開始日が決まっている場合には、なるべく早めに通知するよう気をつけましょう。
請求書電子化に伴う案内文作成時の4つの注意点
ここでは、請求書電子化に伴う案内文を作成する際に押さえておきたい注意点を解説します。
紙請求書からの移行期間を確保する
請求書の電子化を進めるためには、新しいシステムの構築や社内体制の整備などが必要になります。電子化へ急速に舵を切るのは難しいという取引先も多いでしょう。
取引先も巻き込んで請求書の電子化を進めるためには、ある時点から完全に電子化に移行するよりは、紙の請求書も併用する「移行期間」を確保したほうが現実的です。状況を見ながら段階的に電子請求書の比率を高めることで、取引先・自社双方の電子化がスムーズになるでしょう。
また、案内文を送る際には、電子化に切り替える日時に余裕を持たせて通知することが大切です。一定の期間を設けることで、取引先は受け入れ環境の整備に余裕を持つことができます。案内の際には、自社が対応可能な範囲についても明記すると受け入れられやすくなるでしょう。
取引先の対応状況を確認する
電子化された請求書の受け取りには、予算や日程などの都合があります。そのため、自社が希望する日程で電子化に切り替えるのは困難です。
どのような請求方法や日程であれば可能なのか、取引先の対応状況を確認しながら少しずつ電子化を進めていくといいでしょう。その際は、取引先の事業規模や経理担当者との関係も考え、状況に合わせた方向性を模索していく必要があります。
例えば、取引先が指定する請求書のフォーマットがある場合、それを電子化したものをPDFに変換しメールで送信することは受け入れられやすいでしょう。
電子帳簿保存法の改正や、インボイス制度の施行に伴う請求書の電子化への流れは喫緊の課題になっています。しかし、人は合理性だけでは動きづらいものです。電子化対応では、個々の取引先の対応状況に合わせた丁寧な取り組みが大事になります。
使用するシステムを明確にする
請求書の電子化には、システムの導入が必須です。そのため、取引先にとって導入しやすく扱いやすいシステムであることを伝えるのがポイントとなります。
例えば、取引先が使っている会計ソフトと連携可能なシステムであれば、請求情報を手動管理する手間がなくなり、情報を一元管理できるようになり利便性が高まります。
また、電子帳簿保存法に対応しているシステムであれば、法令に従った会計処理業務が簡単にできるでしょう。郵送に対応しているシステムもあるので、紙との併用期間を設ける場合も問題ありません。
クラウド型システムであれば、取引先の手間やコストを抑えつつ比較的簡単に請求書の電子化移行が可能になります。取引先にはシステム仕様を明確に伝え、理解と協力が得られるように努めることが大切です。
問い合わせ対応の準備を整えておく
請求書の電子化案内をした後は、取引先からの問い合わせが想定されます。紙媒体で請求書を取り扱っていた取引先にとって、電子化移行はハードルが高く感じられるものです。
問い合わせがあった際に丁寧な対応ができる準備を整えておくことも、電子化移行では大切になります。誠実さに欠ける対応をしていては、取引先からの信頼を失い請求書の電子化が滞ってしまうでしょう。
取引に影響が及ぶ可能性もあります。信頼関係を醸成する努力を怠らないと共に、取引先の不安や心配にも応えられる体制の構築が必要です。
問い合わせ内容としては、請求書のやり取りや保管方法、税務監査時の対応方法などが考えられます。請求書の電子化に特化した専用の問い合わせ窓口を設けて各質問内容を正確に把握し、都度対応できる環境をつくることが大切です。
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