売上計上とは?計上時期の決め方や計上で注意すべきポイントを徹底解説!
経理業務において売上は単純に帳簿に勘定すれば良いものではなく、計上時期や基準を定めて適切に運用するなど、注意すべきポイントがいくつか存在しています。そして、帳簿や決算書に表されるものは企業の活動状況の詳細そのものであるため、経理業務ではルールに基づき正確に計上処理を行うことが求められます。
この記事では、売上計上とは何かといった経理の基本から、決算書の修正申告の方法まで詳しくご紹介していきます。
売上計上とは
売上計上の「売上」は、企業や組織が製品・サービスの販売によって得た価値・収益のことで、「計上」は全体の計算に含めて、あるもの・ことの数値を計算することを意味しています。
会計における売上計上とは、売上収益などのさまざまな取引に関する金額を帳簿で勘定することを指して使われます。
売上計上には基準がある
収益をいつ・どのタイミングで計上するかの基準を定める必要があり、この基準を「売上計上基準」と言います。業種や取り扱う製品・サービスによって提供を完了するタイミングは異なりますが、売上計上基準を設けることでタイミングを一定にすることができます。
計上するタイミングに基準を設けずにその時々で帳簿に勘定してしまうと、会計期間中の損益計算に誤りや漏れが生じてしまいます。そこで、誰が見ても「確かに提供が完了した時」の根拠と証拠のルールを設け、それに従うことで明確な売上計上が可能にしているのです。売上の根拠と証拠となる計上基準には主に以下のようなものがあります。
・出荷基準
出荷基準は、商品や製品などを出荷したタイミングで計上する基準です。出荷基準で計上するタイミングには、商品を倉庫から出庫した時、トラックや船に商品を積載した時、顧客の指定した場所に商品を搬入した時などがあります。
出荷基準で行う売上計上は、自社の出荷作業が完了すると同時に計上するため、売上の認識と計上の処理が非常にスムーズに行えることが特徴です。主に物販業などで広く採用されています。
・検収基準
検収基準は、出荷した製品について、顧客が発注通りのものであるか検査して受け取る「検収」を完了した時に計上する基準です。顧客側で検収が済むと検収印や通知によって計上する日が確定する設計なので、主に発注した製品の仕様に差異が生じて交換や仕様変更が発生する頻度の高い製造業などで採用されています。
検収基準は、顧客側で検収が完了しなければ売上の計上ができないため、後から計上額の修正・変更の必要となるケースが少なく、出荷基準よりも確実な収益のみを計上できる基準です。
・使用収益開始基準
使用収益開始基準とは、顧客が製品などを実際に使用することが可能になった時点で計上する基準で、他の売上基準とは異なる特性を持ち、主に不動産(土地・建物)の販売において採用されます。
不動産業界においては「引き渡しがあった日」とされ、建物の場合で言えば「鍵の引き渡し」があった日をもって計上日とすることが一般的とされています。
売上計上時期の決め方
決算もしくは申告の際には、特定の会計期間に得た収益から費用を差し引き、利益を計算しなければなりません。そのため、計算の基礎となる収益・費用はどの時期で計上するべきかを明確化する必要があります。
会計の基礎的な考え方である収益と費用をどの時点で計上するかを示したものが「発生主義」「現金主義」「実現主義」です。以下にどの時期をもって売上があったとするかの考え方について詳しくご紹介します。
・発生主義
金銭のやり取りが生じたかどうかは関係なく、売上・費用それぞれの支出が確定した時点で計上する考え方が発生主義です。金銭のやり取りが実行された・されていないに関わらず、取引が確定した時点の日時で帳簿に勘定を行います。
数ヶ月に一度精算するリース料金・水道光熱費などを毎月の会計に均等に分配して計上することができるため、主に費用を計上する際に採用される考え方です。一方で収益の計上に関して発生主義を用いてしまうと、注文の取り消しや代金が未回収の状態で収益が計上されてしまうため、収益の確実性を保つ面でデメリットがあります。
・現金主義
現金主義は、現金の支出と収入が行われた時点で金額を計上する考え方です。収益については契約成立の時期に関わらず、現金の入金を確認した時点で売上を計上します。費用についても、経費の支払いを実際に行った時を計上のタイミングとします。この会計処理を採用するメリットは、会計のほとんどが現金で取引されているケースでは簡単に集計が行えることです。
しかし、現金主義では1年前に販売した商品の代金が今日入金されても、先月販売した商品の代金が今日入金されても、どちらも今日の売上となってしまうため、この会計処理では企業の経営状態を正確に表しているとは言えません。そのため、この会計処理は一般的な企業の計上方法としては適切ではないケースがほとんどです。
・実現主義
実現主義は代金や同等物によって収益があり、収益が確定した時点で金額を計上する考え方です。この会計処理で収益の認識を行う際は、取引に対する代金などの貨幣的価値を取得した段階で計上を行います。
確かな根拠のある収益のみが計上可能となるので、これは発生主義のネガティブな面を補うことになり、企業会計の原則では会計処理において収益の計上は、実現主義で行うものとされています。
売上計上で起こりやすいミス
経理業務では常に慎重さと正確さを求められます。しかし、どんなに経理処理をミスなく行えるような体制を整えたとしても、人為的なミスは必ず発生してしまうものです。そこで、企業はミスが発生する原因とリスクを把握し、適切な対策を施すことが重要です。ここからは、会計処理業務で特に起こりやすい「二重計上」と「計上漏れ」についてご紹介します。
二重計上は、売上や経費を重複して計上してしまうことです。売上の二重計上は税金の過払いにつながり、経費の二重計上は脱税となる重大な違反行為となります。こうしたリスクを回避するためには、二重計上に陥ってしまうよくあるケースを知ることが重要です。
経費を二重計上しがちなケースとしてクレジットカードでの決済が挙げられます。クレジットカードで経費を計上する際に問題となるのが、決済した際に受け取った領収書とクレジットカード会社から発行された明細書の両方で経費を計上してしまうケースです。このように、二重計上は、同一の請求書や領収書が複数あることによって起こります。
また、正しい請求書以外に未確定のものや間違ったものが混ざっていると、それぞれが別のものとして処理されてしまう恐れがあるため注意が必要です。
計上漏れとは、本来経理処理すべき売上の処理が漏れてしまっていることを指し、計上漏れにつながりやすいケースの例として、決算直前の取引の売上計上が翌期にずれ込んで処理されているケースが挙げられます。売上は法人税や所得税の税額を算出する際に重要な項目なため、計上が漏れてしまうと正しい税額を算出できません。
また、売上以外に発生しやすい計上漏れに在庫の計上漏れがあります。これは、企業が所有する商品の在庫を資産として計上できていないことで起こるミスです。企業にとって棚卸資産の価値は大きく、決算時には納税額を決める大きな要素のひとつです。したがって、在庫の計上漏れが起きてしまうと納税額にずれが生じ、正確に税金を申告することができません。そのため、在庫の計上は正確に実施することが求められます。
その他にも仕掛品や貯蔵品の見逃しがあります。製造過程の製品である仕掛品や製品の材料となる貯蔵品や、自社倉庫以外の棚卸資産の見逃しにも注意しましょう。
税務面で注意すべきポイント
売上計上の時期は税務面に大きな影響を与えるため、注意すべきポイントがいくつかあります。ここからは、売上計上と税務面において注意すべきポイントを3点ご紹介します。
仕入計上時期
売上計上基準が厳格に定められている一方で、仕入れ基準はさほど厳格ではありません。しかしながら、売上計上基準と同様に出荷基準や納品基準などの仕入れ基準を採用することが一般的です。
税法上どのような基準を採用しても認められますが、一度決めた基準は決算期ごとの仕入れ額の比較ができるように継続して使用します。計上基準が一定でないと、通常は出荷基準を採用して、ある時は検収基準を採用するなどして、計上時期を企業の都合の良いように操作できてしまいます。税務調査でも確認される内容なので、自社に合った計上基準を導入するようにしましょう。
在庫商品の取り扱い
在庫商品(棚卸し資産)は、税務面で最も気を配るべきものの1つです。その理由として、棚卸資産は金額が大きくなる傾向にあるために法人税などの納税額の影響が大きいこと、社内での計上額の調整が容易なこと、調整額で利益調整に利用されることなどがあるためです。したがって、棚卸資産はルールに則って正しく算出する必要があり、計算日に残っている在庫の計算漏れがないようにします。
また、先述したような計上漏れが起こらないようにすることで、税務面において適切な在庫商品の取り扱いができるようになります。
期ずれ
売上や経費が計上されなければならない年度ではなく、異なる年度で計上されることを「期ずれ」と言います。売上の計上日は税務調査で厳しくチェックされ、特に期ずれが発覚してしまうと修正申告が必要となり、時には追徴課税の対象となってしまいます。
こうしたペナルティの対象とならないためにも、決算期の前には改めて売上計上基準の確認を行い、誤った基準によって期ずれが発生していないかしっかりと確認を行うようにしましょう。
売上計上ミスで決算修正が生じた場合
どれだけ細心の注意をはらって作成した決算書・損益計算書でも、確定している過年度の決算書にミスが見つかることがあります。ここからは、決算書・損益計算書に間違いや誤りがあった場合の対処方法についてご紹介します。
過年度の損益計算書に影響がある場合は申告をする
過年度の決算書・損益計算書についての間違いや誤りがある場合、過年度の本来の状況を表した決算書を作成、もしくは過年度から本来あるべき処理がされていたものとして、当年度の決算書を作成します。決算修正には過年度の損益計算書に影響を与えるケースと与えないケースがあります。
影響を与えないケースは、資産の勘定科目や長短分類に誤りがあるケースです。このケースにおいては科目名称を変更すれば良いため、当年度の決算書作成で正しい科目名称を用いることで対処が可能です。
影響を与えるケースは、売上高や未払い費用の計上漏れなどに該当した場合です。例えば、売上高を計上しなかった取引が、すでに検収済みであることが発覚した場合などは過年度の損益計算書に影響を与えてしまいます。
修正の対応方法として当年度損益計算書で修正を行う方法がありますが、税額に不足が生じるなどで税金を追加で納める必要がある時には「修正申告」が、税額が過大などで税金を納めすぎていた場合には「更生の請求」が必要です。なお、修正申告を行う場合には延滞税などのペナルティが科せられます。
修正申告をしないとどうなる?
決算修正によって利益が増加するケースでは自発的に申告を行わないと、税務調査で指摘されてしまいます。税務調査で申告漏れを指摘されると、過少申告加算税が課せられる場合があるため注意が必要です。
なお、修正の結果利益が減少し、これにかかる税金も減少するケースでは、更生の請求を行うかどうかは任意となっています。
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売上計上はそのタイミングが非常に重要視されること、誤った計上を行うと追徴課税などのペナルティが発生することなどがご理解いただけたでしょう。こうした税務上の課題・リスクを回避するためには、経理業務を正確化・効率的にするツールの導入が有効的です。
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