未収金とは?仕訳から決算時のポイントまでをご紹介
取引によって生じた資産・負債・資本の増減や、収益・費用の発生を記録する際に用いる勘定科目は種類が多く、名称がわかりにくいのが難点です。そこでこの記事では、よく使う勘定科目のひとつ「未収金」について概要から決算時のポイントまで詳しく解説します。勘定科目はひとつ理解すると、他の科目も覚えやすくなるため、まずは未収金を取っ掛かりとして少しずつ知識を増やしていきましょう。
未収金とは
未収金(未収入金)とは、自社商材以外のものを売却し、代金を後から貰う際に用いる勘定科目です。例えば、社用車や備品、固定資産を売却して、後にその利益を得る際に用います。ここでは、未収金と紛らわしい用語との違いについて詳しく解説します。
未収金は資産に分類される
未収金は、事業の財政状態を表す貸借対照表の5つの項目「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」のうち、「資産」に分類されます。「資産」はさらに「流動資産」「固定資産」「繰延資産」に区分します。「流動資産」は1年以内に現金化・費用化できる資産を、「固定資産」は1年以上継続的に保有される営業取引以外で生じた資産のことです。そして「繰延資産」とは、企業または個人事業主が支出する費用のうち、その支出効果が1年以上に及ぶ資産のことを指します。
未収金の区分は、入金期限によって異なるのがポイントです。まとめると以下のようになります。
・「流動資産」・・・1年以内に現金化・費用化できる資産(未収金→「未収金」)
・「固定資産」・・・事業以外で生じた資産で、1年以上継続的に保有されるもの(未収金→「長期未収金」)
例えば、会社のビル1棟を売却したとしましょう。1年以内にその代金を支払ってもらえたら「未収金」として「流動資産」に区分し、支払いが1年以降であれば「長期未収金」として「固定資産」に区分します。なお、個人事業主が所得税を申告する青色申告決済書では、未収金を「資産」以上に区分する必要はありません。
このように、未収金は自社の商材から得た利益ではなく、社用車や応接セット、土地などの売却による通常の事業以外で得た利益であることを覚えておきましょう。
未収収益との違い
未収収益とは、一定の契約によって継続的に取引を行い、支払期日が来れば回収できる金額を計上するための勘定項目のことです。例えば、不動産管理会社がビルを2年契約で貸し出し、毎月25日に賃料を回収するとしましょう。1月24日はまだ支払期日が来ていないため、賃料を支払ってもらっていません。しかし、借主はすでにビルを使用しているため、賃料を支払う義務があり、一般的に考えて確実に代金を回収できます。
このように、契約によって継続的にサービスを提供していて、時間が経過すれば代金を回収できるものの現時点では回収できていない金額、これが未収収益です。
一方、未収金は名称が似ていますが、未収金は単発の利益に対し、未収収益は継続して得られる利益として区別します。また、未収金は本来の営業活動以外で得た利益ですが、未収収益は商品やサービスの提供など、本来の営業活動によって得られた利益ということも異なる特徴です。
売掛金との違い
「掛け売り」「売掛」は商品やサービスを提供した際に、信用に基づいてその場ではなく支払期日までに代金を支払ってもらう取引のことです。まとめて現金を回収できることから業務の効率化を図れるものの、回収できないリスクもあります。したがって、取引をする前に取引先と信頼関係を構築し、双方が納得のいく契約を結んでおかなければなりません。
売掛金は、「掛け売り」「売掛」の取引によって商品やサービスは提供したものの、代金を回収していない時点で貸借対照表へ計上するときに用いるものです。納品まで済んでいるため将来的には売上になるものの、代金を受け取っていない時点では「売上高」として計上することはできません。そこで、「代金は未回収だが受け取り次第売上になる」ことを示す勘定科目として売掛金を使用します。
未収金との違いは、未収金は商品やサービスの提供などの本来の営業活動以外で得た利益であるのに対し、売掛金は本来の営業活動によって得た利益、という点です。
未収金に関連する項目
未収金に関連する項目に「未払金」や「買掛金」があります。未払金とは、広告宣伝や水道光熱費などの販売管理費、固定資産などの単発的な購入費用の未払い分のことです。
一方、買掛金は、仕入れや外注費など、継続的に発生する費用の未払い分を表します。未払金は貸借対照表の5つの項目「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」のうち、「負債」に分類されます。
未収金の「資産」の分類と同様に「負債」にも区分が存在します。具体的には、1年以内に支払う未払金は「未払金」として「流動負債」に、1年以上であれば「長期未払金」として「固定負債」に区分する、という仕組みです。なお、未収金と同様に、個人事業主が青色申告する際は「負債」までの分類のみで問題ありません。
未収金の仕訳方法
ここでは、未収金の仕訳方法について解説します。
間違えやすい未収金と売掛金の仕訳方法
未収金は建物や機械、備品などの固定資産、有価証券の売却など、企業の営業活動以外で得た利益を「資産」へ振分け、入金される予定の時期に応じて「流動資産」「固定資産」に区分します。
一方、売掛金は企業の営業活動である商品やサービスの提供を行い、まだ代金を支払ってもらっていない段階で「流動資産」に分類するのが基本的な仕訳方法です。
未収金、売掛金はいずれも将来的に金銭を受け取る権利を示す資産の部に計上します。資産や負債を記載する貸借対照表は、税務署など会社の外部に財務状態の情報提供をする重要な決算書です。銀行であれば融資の判断、上場企業であれば株主の判断材料となるため、正しく作成をする必要があります。
決算書のひとつである貸借対照表は当期末時点で財務状態を管理し、翌期以降に数字が繰り越されていく仕組みです。したがって、誤った財務状態の繰り越しやずさんな管理を防ぐためにも、勘定科目は正確に区分しなければなりません。
未収金の仕訳例
不要となった社用車を300万円で売却し、後日代金を回収できることになっています。このケースの未収金の仕訳例は以下のとおりです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
未収金 | 3,000,000 | 車両運搬具 | 3,000,000 |
売掛金の仕訳例
取引先に500万円の商品を販売し、代金は双方で取り決めている支払期日に受け取ることにしました。このケースの売掛金の仕訳は以下のとおりです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
売掛金 | 5,000,000 | 売上 | 5,000,000 |
未収金を回収する方法
未収金、売掛金いずれも回収方法は変わりません。また、いずれもできるだけ早くかつ確実に回収したい点も共通しています。
なお、売掛金の回収には「2年」という時効が設けられているため、2年以内に回収しなければなりません。ここでは、支払期日を超過しているにもかかわらず代金を受け取っていない未収金や売却金の回収方法について解説します。
内容証明郵便を送付する
取引先に内容証明郵便を送付するのが最も一般的な回収方法です。内容証明郵便とは、いつ、どのような内容の文書を誰から誰宛に送ったのかを日本郵便が証明する制度を指します。ただし、内容証明郵便には法的効力はないため、この方法のみで確実に債権回収できるとは限りません。
しかしながら、法的手段をとる前の準備段階として取引先に心理的プレッシャーを与えることができます。その結果として、支払う意思があるにもかかわらず、何らかの理由で期日を超過してしまった取引先や、法的手段をとられたくないと考えている取引先であれば、この段階で代金の支払いに応じてくれるでしょう。
直接交渉を行う
取引先への直接交渉はすぐに全額の回収は期待できないものの、取引先との関係悪化を回避でき、低コストで行える有効な方法といえます。例えば、分割で支払ってもらう、支払期日を再度設ける、などの提案ができるでしょう。
取引先から仕入れや外注などをしていて買掛金があった場合、相殺することも可能です。すなわち、仕入れをしたことによって本来取引先に支払うはずだった金額を、今回回収できていない金額分支払わず、差し引きして帳消しにする、ということを意味します。
相手が交渉に応じてくれない場合は、やむを得ず法的手段をとるしかありません。
法的手段をとる
法的手段をとるのは、未収金を回収するための最終手段です。弁護士を雇って裁判所に出向く場合もあるため、時間や労力、お金が必要となることを覚悟しなければなりません。未収金を回収するための法的手段は以下のものが挙げられます。
・公正証書
公正証書とは、法務大臣に任命された公証人が作成する公文書のことです。公正証書は、債務者の実印つきの委任状や印鑑証明を用意して公証人役場で作成してもらう必要があります。ただし、相手が公正証書の作成に応じなければ任意の支払いがされず、回収はできません。
・支払督促
支払督促とは、申立人の申し立てのみに基づき、裁判所から相手方に金銭の支払いを命じる督促状を送付してもらえる制度です。書類審査のみで行われる手続きのため、裁判所に出向く必要がありません。督促状の送付にもかかわらず支払いや異議申し立てがない場合は「仮執行宣言付支払督促」によって強制執行を申し立てることが可能です。
・民事調停
民事調停とは、民事事件に関する裁判官および一般市民から選ばれた調停委員会が当事者を介して双方の主張を調整し、和解の成立を図る非公開の手続きのことです。比較的手続きが簡易、円満な解決が期待できる、手数料が低額、秘密が保持される、おおむね3ヶ月以内の早期解決、などの特徴があります。
・少額訴訟
少額訴訟とは、60万円以下の金銭を請求する場合に限り利用できる、原則として1回の期日で審理を終えて判決する特別な裁判手続きのことです。ただし、原告の言い分が認められる場合でも、分割払いや支払猶予の付与、遅延損害金免除の判決が下されることもあります。
・強制執行
強制執行とは勝訴判決や相手方と裁判上の和解が成立したにもかかわらず、相手方が金銭を支払わない場合に、請求権を裁判所が強制的に実行する手続きのことです。この手続きによって、相手方の資産を差し押さえることができます。
未収金を発生させない体制をつくる
さまざまな方法をご紹介しましたが、何よりも未収金を発生させない体制・仕組みをつくることが大切です。会社全体で代金を回収することへの意識を強く持ち、日頃から管理を徹底するように心がけましょう。未収金が発生してしまうと、企業イメージの悪化や経営難、倒産につながることもあります。日頃から取引先の与信管理をし、未収金が発生した場合には、金額と期限をすぐに把握できるように情報を整理しておきましょう。
また、「請求まるなげロボ」のような売掛金100%保証の請求代行サービスを活用するのも有効な手段です。未回収リスクを気にすることなく取引できるため、資金繰りの見通しが立ち、計画的な事業投資が可能になります。
未収金の決算時のポイント
ここでは、未収金の決算時のポイントを3点解説します。
発生主義で行う
会計処理には現金主義と発生主義が存在します。現金主義は実際に現金の支出・収入があった時点、発生主義は支出・収入の発生が確定した時点で記帳する、という処理方法です。一般的には、正確な財務状況を把握できることから「発生主義」が採用されています。
発生主義であれば、掛取引を行った際に現金のやりとりがなくても記帳できるうえに、資産の減価償却も計上でき、費用を均等に配分できるからです。
一方、現金主義は実際に現金が動かなければ記帳できないため、資産の売買などに伴う売却損益や売却先への債権残高を把握することができません。
正確な財務状況を把握するためにも、未収金を決算する際は発生主義に基づき、支出・収入の発生が確定した時点で記帳しましょう。
相手方の信用状態の確認
回収予定残高や相手の信用状態の確認、未収金の残高管理も非常に重要です。回収予定日を過ぎたにもかかわらず回収できていない未収金はないかを確認し、回収できていない場合は、回収予定がいつ頃になるかを明確にしなければなりません。
起こり得るのが、相手方の資金事情による遅延や支払期日の認識違いによる遅延です。未収金の回収を確実にするためにも、遅延の原因を突き止め、相手方の信用状態を確認しましょう。
また、状況によっては、貸し倒れに備えて「貸倒引当金」として計上することも検討しなければなりません。
経過勘定の処理
未収収益として未収金を管理している場合は、決算時に特殊な会計処理が必要となります。未収収益は、経過勘定のひとつに該当するからです。経過勘定とは、契約を結んだうえでサービスの提供を継続的に受ける、あるいは提供を行う場合において、金銭のやりとりがされなかったケースでも正しい損益計算をするために用いる勘定科目を指します。
なぜなら、未収収益は契約に基づいた継続的なサービスのやりとりをしているなかで、金銭が支払われなかった場合は「収益の見越し」として計上する必要があるからです。ここで用いる見越しは、当期の収益であるものの次期以降に金銭を受け取るため、収益として計上されない場合に、当期の収益にすることを意味します。
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