未払金とは?お客様の未払金発生を防ぐ方法も
未払金という言葉は、簡単なようで混同しやすい経理用語の一つです。この記事では、「未払金」についてその意味を紹介するとともに、「未払費用」「未収金」など、似た名称の勘定科目を解説します。
企業会計の基準ではそれぞれに明確な区別がされており、どのような流れで得た資産・負債であるのかがわかりやすくまとめられています。また、クライアントの未払金にどう対応するべきかどうかも解説します。
未払金とは
「未払金」は分かりやすく言えば、単発で商品を購入した際にその代金を後から支払うものに適用される勘定科目のことです。商品を購入した時点で代金を支払うことが確定するため、各取引それぞれが単発の未払金計上時期となります。同じ取引先からの購入が単発で頻繁に行われ、月まとめで支払うといった場合では、締め日にまとめて計上することも可能です。
具体的には「事務用品」「消耗品」「備品」といった、営業活動に直結しない設備などを後払いで購入した場合に適用される勘定科目であると言えるでしょう。
未払金は「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」からなる勘定科目の5分類のうち、「負債」に属する科目です。負債の勘定科目は事業の財政状態を表す「貸借対照表」の右側、負債・資本の部にあたる「貸方(かしかた)」側で示され、一定時点での借金を含めた負債がどの程度あるのかを、一覧で把握することができます。
以下が賃借対照表の一例です。
資 産 の 部 | 負 債 ・ 資 本 の 部 | ||
---|---|---|---|
科 目 | 金 額 | 科 目 | 金 額 |
現 金 | 100 | 買 掛 金 | 100 |
預 金 | 400 | 未 払 金 | 100 |
売 掛 金 | 200 | 借 入 金 | 1700 |
商 品 | 200 | ||
付 属 設 備 | 1300 | 事 業 主 借 | 100 |
敷 金 | 600 | 元 入 金 | 800 |
事 業 主 貸 | 1,280 | 所 得 金 額 | 1,200 |
合 計 | 4000 | 合 計 | 4000 |
未払金と似ている勘定科目
勘定科目のなかには「未払金」と似た名称の「未払費用」「未収金」なども存在します。
ここでは、この2つの勘定科目について解説します。
未払費用
「未払費用」は継続的なサービス提供を受ける場合に、その代金が後払いのものに対して適用されます。つまり未払金とは違い「まだ提供が継続されているものに対する負債」を表す勘定科目です。
未払費用の具体例には「借入金の利息」「従業員への給与」「家賃」など、後払いでの支払いとなるものが挙げられます。これらは時間の経過に伴い発生してくる費用であるため、決算日など一定の計上時期でまとめてその期間分の金額を計算する必要があるのです。
このように「未払費用」はその内容で「未払金」と区別するための勘定科目となっています。
しかし、確定申告などでは決算書を作成する際「期末時点でまだ支払っていない経費については未払計上する」という話が出ることも少なくはありません。青色申告決算書ではこの2つの勘定科目を「未払金」としてまとめて計上する場合もあります。
未収金
「未収金」は代金を受け取る権利のことで、「売掛金」と同様の科目となります。このように区別をしている理由は、企業・店舗の営業活動(商品の売買)で生じた利益か、それ以外で生じたお金であるのかを区別するためです。
企業のなかでも身近な備品と言えるPCを例に考えてみましょう。中古PCを不用品売却して得た代金は、事業と直接関連性がなければ「企業としての売上げ(売掛金)」には該当しません。しかし仮にこの企業が中古PCショップである場合には、商品でもある「中古PCの販売」という店舗の営業活動となります。
このように「どのような流れで得たお金なのか」という内容で区別することで、「未収金」と「売掛金」を判断することができるのです。こうした未収金や売掛金は「後からお金を支払ってもらえる権利」と言い換えることもできます。貸借対照表上では左側に位置する「借方(かりかた)」の「資産」で示され、一覧での把握が可能です。
実際の仕訳方法は?
「未払金」「未払費用」「未収金」は似た名称ですが、その内容が大きく違っていることはお分かりいただけたでしょう。
ここでは、実際に仕訳を行う際の記入の仕方・処理の考え方についてそれぞれ例を挙げて解説します。
未払金の場合
・デスクを35,000円の後払いで購入した場合
借 方 科 目 | 借 方 金 額 | 貸 方 科 目 | 貸 方 金 額 |
---|---|---|---|
消耗品費 | 35,000 | 未払金 | 35,000 |
商品・サービスを後払いで購入した際には「未払金」として費用を計上します。このケースでは10万円未満の備品であるため、「消耗品費」として計上が可能です。
10万円以上の設備などを購入した場合には、固定資産へ計上し減価償却による処理を行うことになります。
・ 文具類を月まとめ・後払いで購入していて、当月分は170,000円だった。ただし、それぞれは10万円未満の商品である。
借 方 科 目 | 借 方 金 額 | 貸 方 科 目 | 貸 方 金 額 |
---|---|---|---|
消耗品費 | 170,000 | 未払金 | 170,000 |
月まとめでの支払いを行う場合には、締め日でまとめて未払金を計上することができます。また、総計の金額が10万円以上であっても、個別の文具類の金額が10万円未満であれば「消耗品費」として費用計上して問題ありません。
未払費用の場合
・借入金1,500,000円の利息につき、利率2.8%で半年に一度利払いがある。また、決算日を迎えたところで利息の計算期間を4カ月経過している。
借 方 科 目 | 借 方 金 額 | 貸 方 科 目 | 貸 方 金 額 |
---|---|---|---|
利息 | 14,000 | 未払費用 | 14,000 |
利息のような「継続期間中に費用が増えていくもの」に関しては、期間計算を行い決算日時点などでの累計を計算し、「未払費用」として計上することになります。
この場合は、以下の算式で割り出しが可能です。
借入金1,500,000円×利率2.8%÷12カ月×経過4カ月=14,000円
・上記利息について、翌期利払い日に半年分20,000円を預金から支払った。
借 方 科 目 | 借 方 金 額 | 貸 方 科 目 | 貸 方 金 額 |
---|---|---|---|
支払利息 | 20,000 | 普通預金 | 20,000 |
未払費用 | 14,000 | 支払利息 | 14,000 |
未払費用の場合「支払い時にはその費用を支払った」とし、「未払費用はその費用からマイナスする」といった仕訳を行います。未払費用の仕訳では基本的に、この2つの考え方がセットになっています。
未収金の場合
・不要になったPCを50,000円で売却し、その代金は後日受け取ることにした。
借 方 | 貸 方 | ||
---|---|---|---|
未 収 金 | 50,000 | 雑 収 入 | 50,000 |
企業の営業活動外で不要となった設備などを売却し、その代金を後日受け取る場合には「未収金」という資産が増加したと考え、借方へ記入します。
・上記でPCを売却した際の代金を後日、現金で受け取った。
借 方 | 貸 方 | ||
---|---|---|---|
現 金 | 50,000 | 未 収 金 | 50,000 |
実際に代金を受け取った金額分未収金は減少するため、借方へ未収金を記入します。
未収金が発生した場合に注意すべきポイント
お客様にとっての「未払い」になっているお金は、自社にとっての「未収金」にあたります。未収金はあまり多額になってしまうと大きな損害にもなり得るため、放置してしまえば「黒字倒産」へと追い込まれてしまう可能性すらあるのです。そのため、未収金が発生した際にはまず、以下のような点に注意して処理を行いましょう。
・債権者側からの請求書の送達を忘れずに行う
・請求の方法をわかりやすく説明しておく
・債務者からの電話連絡などに債権者側が随時応じられる体制を整えておく
種類にもよりますが、未収金には最短1年・最長5年の時効が法によって規定されているため、長期にわたる場合には特に注意が必要です。
また未収金の回収に関しては「会計処理」「督促のタイミング」も重要な要素となります。
ここでは、この2点について詳しく解説します。
会計処理を正しく行う
・「発生主義」に基づく会計処理
未収金においては「発生主義」の考え方に基づいた会計処理が行われます。発生主義とは「現金の支出・支払いに限らず、支出・収入の必要性が発生した際に随時計上を行う」という会計処理を言います。取引で使用した納品書や請求書を決算時に審査することで、「発生主義での会計処理」を行うのです。
回収予定経過残高・与信確認
未収金は売掛金と同様、きちんと回収出来なければ自社の利益にはなりません。回収期日を過ぎている案件の有無を注意深く確認する必要があるのです。
支払いが滞っているものに関しては相手方の信用状況・支払い遅延の原因を確認した上で、必要に応じ「貸倒引当金」の計上なども視野に入れた処理を行いましょう。
入金期日前後に催促
「未入金の発生」という事態はBtoBでの取引でも意外と発生しがちなものです。 取引先がフリーランスや、起業したてで数人しか従業員がいないベンチャー企業である時には単純なミスによる未入金の発生が多くなります。
例えば「多忙な為の支払い漏れ」や「入金期日自体の存在を忘れてしまっていた」「まだ経理業務に不慣れな従業員しかおらず対応が遅れてしまった」といった理由です。
こうしたミスによる未入金の発生はその後の取引にも影響してしまいます。そのため入金期日の少なくとも1週間前にはリマインドを兼ねて、期日が過ぎても入金がなされていない場合にはその旨を知らせるメールでの催促を行いましょう。
こうした催促に関わるやり取りでは、言葉の使い方1つで相手先が受ける印象が変わってしまうこともままあります。テンプレートを作成し、その体裁に沿った内容を送信するようにすると安心です。また、発送した請求書が相手方へ届いていない可能性も考慮して、メールには請求書のPDFを添付して送信しておくのも良いでしょう。
請求業務の効率化は「請求管理ロボ」にお任せ!
ここまで、未払金の概要や似ている勘定科目との違いについて解説しました。未払金は単発で商品を購入した際にその代金を後から支払うものに適用される勘定科目のことですので、未払費用や未収金と混同しないように注意しましょう。
クライアントの「未払い」になっているお金、つまり未収金を自動で催促したり、仕訳ミスなどから発生するヒューマンエラーを防いだりするにも、請求業務を自動化できる「請求管理ロボ」の導入をご検討ください。
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