未収金の回収はどうやるの?回収の流れや注意点、発生予防について解説
未収金とは、「商品や製品以外のものを売却した際、その代金を後から受け取る」ことです。未収金は取引の効率化を図るうえで不可欠なものである一方、その回収に悩まされることが少なくありません。未収金を放置すれば最終的に代金を回収できなくなり、自社に甚大な被害をもたらします。
回収不能のリスクを防止するためには、未収金についてよく知っておく必要があります。この記事では未収金の回収について網羅的に解説していきます。発生の原因や回収の流れ、注意点、予防方法について知ることで、未収金への理解を深めていきましょう。
未収金が発生する原因とは?
まず、未収金が発生する原因には何があるのでしょうか。債務者側、債権側の両サイドから解説していきます。
債務者側の原因
債務者側としては以下の3つが原因として挙げられます。それぞれ具体的な例とともにご紹介します。
1.会計時に持ち合わせがない
・取引当日に資金がなかったため、支払いができなかった
・高額な金額を長期にわたり支払い続けていたが、途中で支払いの目途が立たなくなった
2.商品・サービスに不満がある
・債務者側が商品・サービス内容に不備があったと考えている
・希望していた内容とは異なっていた
3.元から払う気がない
・資金の有無に関わらず、未収金の時効狙いであり最初から支払う意思がない
なお、未収金の時効については、後述する未収金回収の注意点の項目で詳しく解説します。
債権者側の原因
債権者側の原因は以下の2つです。
1.債権側の請求方法に不備があった
・請求書の送達を忘れていた
・請求書の送付の遅延
・請求方法が横柄だった
・債務者への説明不足
2.債権者側が連絡に応じられていない
・債務者は電話・メールなどで連絡を取ろうとしていたが、債権者側が応じられていなかった
未収金の発生原因が債権者側だけにあるなら、未収金の回収は容易でしょう。債務者側に支払いの意思があるのが前提となるので、債権者側が自ら動くだけで問題を解決できます。
一方、原因が債務者側にある場合、債権側は未収金を回収するために債務者に催促をしなければなりません。次項では督促から回収までの流れについて解説します。
未収金回収の流れ
未収金の回収は、いきなり法的措置を講じるのではなく、まず催促から始めます。ここからは、法的手段を取る前段階である催促の手順をメインに解説していきます。
電話連絡で催促する
電話による催促は簡単に実行でき、もっともコストがかからない請求方法です。いきなり強硬な手段に出てしまうと、関係性にも問題が生じかねないため、最初は電話連絡での催促から始めましょう。
債務者と電話で連絡が取れたら「未収金をすぐに回収したい」という旨を丁寧に伝えます。この時、期日を設定して支払いを促します。債務者と連絡がつかない場合は、同様の内容を伝言として残しておきます。
また、電話連絡で催促する際は、その内容について音声記録やメモを取るのもポイントです。記録を取ることで後日、「言った、言わない」の水掛け論になるリスクを減らせます。
書面で支払いを催促する
電話連絡で結果が得られない、もしくは電話連絡ができない場合は、支払いを催促する書面を送りましょう。催促を目に見える形にして送ることで、債務者にプレッシャーをかけることができます。
一方で、催促を書面にする際は、文章が高圧的にならないように注意してください。あくまで、債務者に代金の支払いを思い出させる内容を旨とし、柔らかい文面を心がけましょう。また、債務者が支払期日ギリギリに送金した場合、すぐに送金の確認は取れません。そのため、送付は期日の1週間後を基準とし、書面の末尾には「お振込をいただいておりましたら、失礼のほどご容赦ください」などの行き違いを想定した文章を書いておくのがおすすめです。
督促状を送付する
内容証明書郵便などで督促状を送付します。内容証明郵便とは、送付する文書をコピー保存することで送付事実とその内容を郵便局が保証するサービスです。
たとえば、書面で支払いを催促しただけでは、債務者に「そんな書面は届いていない」と主張されてしまった場合、客観的に催促があったことを証明することが難しくなります。一方で、内容証明郵便は、郵便局が送付の事実を保証するので、債務者は督促状が届いていないと反論することはできなくなります。そのため、内容証明郵便による督促状の送付は、ただ書面で催促する以上のプレッシャーを債務者にかけることが可能です。
内容証明郵便のデメリットは、コストがかかることです。内容証明郵便には、1通1,300円~の費用がかかるので、電話連絡や書面による支払催促で済むならそれに越したことはないでしょう。
直接訪問して催促する
債務者が債権者の尋ねられる範囲内に住んでいる場合、直接訪問するのも効果的です。ただし、訪問の際は紳士的な対応を心がけましょう。特にアポなしの突撃訪問や、頻繁な訪問は避けてください。住居侵入罪や不退去罪になり、債権者側が訴えられることにもなりかねません。
直接訪問は効果的である一方で、移動費や訪問者の人的コストがかかるやり方です。そのため、催促としては一番取りたくない手段でもあります。訪問でも効果がないようなら、法的措置を検討すべきでしょう。
未収金回収の注意点
未収金の回収にはいくつか注意しなくてはならないことがあります。最初に挙げられるのが、未収金には時効があるということです。その他にも債務者の音信不通、催促状の受取拒否、自己破産など、未収金が回収を難しくなるケースがいくつかあります。ここからは、未収金回収の注意点について解説します。
時効がある
未収金など債権の回収には法律上、時効が設けられています。未収金が発生して一定期間を過ぎると時効が消滅し、債務者は支払い義務から解放されます。時効期間は債務内容や時期によって異なるので注意しましょう。債権法が改正される2020年4月1日以前の債務の時効は以下のとおりです。
時効期間 | 債務内容 |
---|---|
1年 |
運送費 宿泊費 動産賃料 |
2年 | 月謝・教材費 |
3年 |
診療費 工事代金 自動車修理費 |
5年 |
銀行からの証書貸付 貸付金の利息、遅延損害金 |
2020年4月1日以降は、「債権者が権利を行使できることを知ったとき(主観的起算点)から5年間権利行使しないとき」「債権者が権利を行使できるとき(客観的起算点)から10年間権利行使しないとき」と時効を迎える時期が改正されています。
時効によって未収金が消滅してしまう一方で、時効が迫っている場合でも法的措置をとることで、時効を中断することができます。たとえば、内容証明郵便で「お金を返してほしい」という内容を送付することで郵便が届いた後6ヶ月間、時効の中断が可能です。
また、債務者が1円でも支払いを行えば、時効は最初からやり直しにできます。この行為は「債務の承認」にあたり、時効期間が満了していても有効です。そのため、未収金の確実な回収では「時効期間をリセットするためにわずかでもお金を返してもらう」ことが大切になってきます。
音信不通の可能性がある
音信不通の対策としては、電話連絡や内容証明郵便による催促がありますが、債務者が時効を狙って夜逃げしてしまうケースもあります。そんな場合は「公示送達」で裁判を起こすのが有効です。
公示送達とは住所・居場所がわからない相手に、法的に訴訟上の書類を送り届けたとする手続きです。これにより、債権者は債務者が不在でも裁判を起こすことが可能になります。公示送達では、裁判所に呼出状が掲示され、この手続きにより時効が中断されます。
督促状を受け取り拒否される場合がある
督促状を送っても受け取り拒否をする債務者もいます。実際、相手から郵便の受け取りを拒否されると、書面が効力を発揮できないので手続きを進めることができません。
対策としては、付郵便送達で督促状を送るのが有効です。付郵便送達で発送した場合、催促状を受け取ったものとして手続きを進めることが可能です。
相手が自己破産をする場合がある
債務者が倒産したり、自己破産したりすると、法的に財産がないとみなされて債務を支払わなくよいことが認められます。この場合、未収金の回収は困難になるでしょう。
回収不能になった場合、未収金を放棄するのも1つの選択肢です。未収金は、将来的に受け取ることができる資産として計上されます。そのため、回収見込みがないのに放置しておくと、それだけ多くの税金を支払うことになってしまいます。未収金の回収が不可能と判断したら、税理士などの専門家と相談し、未収金を破棄する手続きを進めて被害を最小限に留めましょう。
未収金を発生させないためにできること
未収金による損失は、数字以上の悪影響を及ぼします。本来入るはずだった収益が得られないことは、金額の大きさによっては経営計画の変更につながります。実際、未収金の回収が滞った結果、資金繰りが狂い倒産してしまった企業も少なくありません。リスクを回避するためにも、未収金の管理は徹底して行う必要があります。
未収金による損失の発生を防ぐためには、迅速な催促、回収の管理、与信枠の設定が必須です。ここからは、未収金による損失を防ぐためにできる3つの対応策について解説します。
支払いが遅れていたらすぐに催促する
未収金の回収は初動が肝心です。支払いが遅れていたらすぐに催促を開始しましょう。初動が遅れると、債務者の「支払いを滞納していることへの焦り」が消えてしまいます。債務者の一般的な心理として、はじめこそ「早く支払わなくては」と焦りがあります。しかし、時間の経過とともに多くの場合は焦燥感が薄れてしまい、そうなると自発的な返済を期待するのは困難です。
また、支払いの意思を確認することも大切です。単に支払いを忘れていることもあれば、悪意を持って支払いを滞納していることもあります。債権者に悪意があると確認された場合は、時効に注意しつつ、迷わず法的措置の手続きを進めましょう。
回収漏れがないよう日頃から管理を徹底する
回収漏れがないよう日頃から管理を徹底するには、「代金の回収までが商売」であるという意識を全社で持つことが大切です。未回収の発生が企業のイメージ悪化、連鎖倒産につながることを社員に理解してもらい、徹底した管理体制を敷くようにしましょう。
回収漏れを防止するためには、取引先の情報を日頃から把握しておく与信管理が重要です。未収金の期限と金額をすぐ把握できるよう情報を整理し、支払いが遅れたときはすぐに問い合わせができるようにしておきましょう。
与信枠を設定する
与信とは、相手に信用を供与することで代金の後払いを許可することです。未収金は、この与信取引の産物といえます。そして、与信枠とは与信取引の上限です。与信枠は返済能力がどの程度あるかという信用の度合いによって決められ、企業の信用格付けともいえます。未収金による損失を発生させないためには、この与信枠の設定を与信取引前に済ませておくことが大切です。
また、設定後も取引先の経営状態の変化に応じて、与信枠を再設定することも忘れないようにしましょう。
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時効がある未収金の回収には迅速さが求められます。迅速に回収を行うためには、未回収を発生させない仕組みを構築する必要があります。
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