企業会計原則って?内容からその性質まで徹底解説!
会計業務は、企業経営になくてはならない業務です。企業会計には、遵守しなければならない基本ルールや原理原則があります。会計処理にあたって企業会計原則に従うことで、公正な会計業務を進められるのです。これから解説する企業会計原則の内容や性質を理解して、企業経営に密接に関わる企業会計について見直してみましょう。
企業会計原則とは
日本の企業では、財務諸表の作成実務にあたって様々な原則を慣習的に作ってきました。限られた企業や業界でのみ用いられてきた原則もありますが、中でも一般的に公正・妥当と認識される基準が企業会計原則です。規定されたのは昭和24年で、各基準は要約されています。企業会計原則は、公認会計士にとっても財務諸表を監査する際に従うべき基準です。これは、公認会計士法や旧証券取引法に基づいています。いわば、企業の経営者・会計員・企業を担当する公認会計士すべてにとって財務情報がわかりやすくなる共通ルールです。
企業会計原則は、株主・融資者・取引先などにも関係しています。というのも、企業から出される決算報告は、利害関係者にとって非常に重要な報告書だからです。株主は決算報告から企業の株を売買するかどうか判断し、融資者は融資してよい企業なのかを見極めます。取引先にとっても、決算報告は今後の取引において重要なファクターとなるでしょう。こうした企業の関係者が1社だけと関わっているだけなら、1企業独自の会計処理ルールを理解していれば問題ないかもしれません。しかし複数の企業と関わっている関係者には、企業ごとに会計処理ルールが異なると大変です。その点、企業会計原則は普遍的な会計ルールとして定められているため、複数の企業に跨って関係している人にとっても役立つ基準です。
新たな会計基準も次々と生まれてきている中、企業会計原則への認識も変貌しつつあります。しかし企業会計の基準という立場は守られており、公認会計士が会計監査の際に財務諸表が適正かどうかを判断する基準となることからも、企業会計原則を無視して会計処理を滞りなく済ませることは難しいでしょう。
企業会計原則の構成
企業会計原則の構成は、3部からなっています。
1つめの一般原則は、包括的原則とも呼ばれています。企業会計全般における理念・理想・指針を包括的に述べているからです。一般原則には、貸借対照表と損益計算書を作成するときに共通する考え方の基本が示されています。このため、貸借対照表原則と損益計算書原則の上位に位置付けられている点に注目です。一般原則は、さらに7つの原則から構成されています。真実性の原則、正規の簿記の原則、資本取引・損益取引区分の原則、明瞭性の原則、継続性の原則、保守主義の原則、単一性の原則と、どれも正しく認識しておきたい原則です。
2つめの損益計算書原則が示しているのは、損益計算書における費用と収益の会計処理方法・表示方法に関係する基準です。企業の経営状況を明確にするには、一定期間の収益と費用を記載した経常利益を表示しなければなりません。さらに、特別損益に関する項目を加減し、当期純利益を表示する必要もあります。費用と収益は全て支出と収入に基づいて計上されますが、その処理は発生期間に正確に割り当てることも重要です。裏付けなく実現しなかった収益は、原則として当期損益計算に計上できません。このように、発生した時点で全ての費用を計上する発生主義を原則としているのが、損益計算書原則です。ただし、損益計算書原則に含まれる総額主義の原則では、費用と収益を総額で表示できます。
3つめの貸借対照表原則は、貸借対照表において資産・負債・資本の会計処理方法・表示方法を示す基準です。貸借対照表は、企業の財政状態を明らかにする役割があります。そのために、ある時点での資産・負債・純資産を全て記載して企業の利害関係者に正確に伝えなければなりません。貸借対照表原則にも総額主義の原則があり、資産・負債・純資産を総額で記載するように定めています。資産項目と負債あるいは純資産項目を相殺して、貸借対照表から除去することはできません。これが守られることによって、外部の利害関係者が企業の財政規模を正しく把握できるのです。
企業会計原則には注解も設定されており、特定の項目において補足説明や具体的な内容が示されています。補足とはいえ、企業会計原則の重要な一部と考えておくことが大切です。
七つの一般原則
前項でも触れましたが、企業会計原則の3部のうちの1つである一般原則には、7つの原則が設定されています。いずれも重要な原則ですので詳しく解説していきます。
真実性の原則
真実性の原則では、7つの原則中最も重要な原則とされています。企業会計の第一目的は、財政状態や経営成績の報告が真実かどうかだからです。決算書は、客観的に見て真実の報告がされていなければなりません。虚偽の報告をしてはいけないことも、真実性の原則で定められています。会計処理は企業ごとに適した方法でおこなわれており、経営者や経理担当の主観が込められがちです。しかし、企業経営は外部の利害関係者にも関係しています。経営報告次第で様々な取引の判断が下されることもあり、虚偽の報告がされれば様々な利害関係者に影響がおよびかねません。こうしたことも踏まえて、真実の会計報告をする重要性が示されているのです。
正規の簿記の原則
真実性の原則を守るには、帳簿を正しく作成する必要があります。そのために定められているのが、正規の簿記の原則です。企業会計をおこなうにあたっては、全ての取引において正規の簿記の原則に従うことが大切とされています。ここで求められているのは、網羅性・立証性・秩序性の3つの要件です。網羅性は、全ての取引が漏れなく網羅的に記録されていることを示しています。立証性で示されているのは、全ての取引が信頼できる客観的な証拠資料に基づいて記録されていること、またそれを検証できることです。秩序性では、全ての取引について継続的・体系的に記録されていることが示されています。簿記の原則に従えば、決算書は複式簿記によって作成されるのが実現可能な一般的手段です。
資本取引・損益取引区別の原則
資本取引・損益取引区別の原則で定められているのは、資本取引と損益取引を明確に区別することです。特に、資本剰余金と利益剰余金の混同には注意しなければなりません。そもそも、企業資本の増減に関係する資本取引と経営上の損益に関わる損益取引とは全く異なる取引です。そのため、混同する人が現れないように正確に記録する必要があります。資本取引・損益取引区別の原則を守ることによって、企業財務の健全性も守られます。資本が使い尽くされてしまったり、不健全な利益隠しの横行を防ぐ役割も担っているのです。
明瞭性の原則
企業の財務諸表を利害関係者に報告する際、利害関係者が企業情報を正しく判断できるようにすることも企業会計では重要です。そのためには、会計事実を明瞭に表示する必要があります。これを定めているのが、明瞭性の原則です。具体的な方法として一般的なのが、総額主義や費用・収益の対応表示です。総額主義では、一定の基準に従って科目をわかりやすく区分・配列し、各勘定科目を総額で表示します。相殺後の金額表示ではない点に要注意です。費用・収益の対応表示では、各区分に対応した表示が求められます。決算書には明示されていないものの、重要な会計方針や後発事象があった場合には注記する適正開示も重要です。
継続性の原則
企業会計では複数の会計処理方法が認められていますが、一度採用した会計処理の原則や手続き方法は毎期継続しなければならないというのが、継続性の原則です。各期で別の会計方法が採用されれば、収益・費用・資産の確認に混乱が生じかねません。1つの会計事実について異なる利益が算出される可能性もあり、利害関係者の誤った判断につながることもあります。利益操作の排除のためにも、会計処理方法は継続されるのが原則です。
保守主義の原則
保守主義の原則が定めているのは、企業財務上で不利な影響を与えかねないものは明確に記録しておく必要があるということです。不利な影響を与えかねないものがある場合、会計処理は日常以上に慎重におこなわれなければなりません。会計処理では、予測されるリスクに備えて慎重な判断が求められるのです。それが健全な企業会計につながり、最悪の事態を予測した会計記録の開示となります。例えば、売掛金の貸し倒れを予測して計上できるなども具体例の1つです。ただし、保守的な会計処理が過ぎると企業の財政・経営報告が正しくおこなわれない可能性もあるため、注意が必要です。
単一性の原則
単一性の原則で定めているのは、会計事実の真実を歪めた表示で報告してはならないということです。財務諸表は、複数の目的のために異なる形式で作成しなければならないときがあります。しかし、それらは全て、信頼できる会計記録に基づいて作成されるのが原則です。つまり、財務諸表が異なる形式で複数作成されるとしても、その基となる会計帳簿は1企業に1つしか存在させてはならないと説いています。株主総会、金融機関、税務署など、企業の決算書は様々な機関に提出されますが、提出先によって計算方法や表示方法を変えてはならないと求めているのです。これにより、二重帳簿や裏帳簿などの作成を防ぐこともできます。
企業会計における企業会計原則の立ち位置
企業会計では、企業会計原則が最高の模範であると認識されています。ただし、実際の企業会計では企業会計原則以外にも用いられているルールがあります。企業会計は、3つの構造からなっています。根底となる会計公準は、会計をおこなう基本的前提です。その上に位置するのが会計原則または会計基準で、具体的な行動規範が示されています。3つの最上部に位置するのが、具体的な会計処理を示す会計手続きです。企業会計原則は、3構造の土台である会計公準の範囲内でこうすべきという指針を示しています。
会計公準とは
会計公準は企業会計の基礎であり、企業会計原則は会計公準の範囲内で示されています。企業会計を成立させる大前提ですから、会計公準についても正しい認識が必要です。会計公準は、企業実態の公準・継続企業の公準・貨幣的評価の公準という3つに分けられているのが一般的です。
企業実態の公準は、会計単位の前提となります。企業が所有者から独立しているという考えで、所有と経営の分離原則の根拠です。つまり、企業に直接関係した取引のみを会計するということを示しています。継続企業の公準は、会計期間の前提です。会計報告の期間は区切られていますが、企業経営自体は継続していることを示し、近代的企業制度成立の根拠となっています。貨幣的評価の公準は、企業会計の測定尺度の前提です。企業の経済活動における資産変動は、円やドルなどの貨幣によって全評価がおこなわれることを示しています。”
企業会計原則を破ったら?
企業会計原則は法律ではなく、あくまでも普遍的な原則です。遵守することで健全な企業会計がおこなわれる役目を持っているものの、法的拘束力や罰則の効力を発揮するわけではありません。しかし、金融商品取引法が定めている公正妥当な企業会計を実現するためには、企業会計原則の遵守が妥当だと認識されているのも事実です。金融商品取引法に違反すれば、刑事罰や行政処分が科されます。罰金などの処分を受けることもあり得ます。金融商品取引法に違反した企業や企業人がニュースを騒がせることもあり、企業会計の関係者にとっては改めて自身が関わっている会計処理を見つめ直す機会となっているのではないでしょうか。
国民経済が健全に発展すること、投資者の保護になることが目的とされている法律ですから、厳しい処罰が科されるのも当然です。だからこそ、企業会計原則を念頭に置いて公正な企業会計処理を進めることが大切なのです。金融商品取引法違反の具体的な罰則としては、刑事罰で最高懲役10年があります。詐欺罪などに匹敵する刑罰で、実行した者だけでなく企業にも7億円以下の罰金が科されます。行政処分では業務改善命令の他、業務停止命令が下されることもあり、登録の取り消しなども珍しくありません。
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