知って損なし!減価償却について大解析!

経理

会社を経営する上で把握しておきたい会計知識の1つが減価償却です。減価償却とは時の経過、使用により劣化が生じる固定資産を手に入れた際に、取得費用を耐用年数に応じ経費として計上していくことです。減価償却については聞いたことはあるけどあまりわからない、そのような人が多いのではないでしょうか。そこでこの記事では固定資産の減価償却についてわかりやすく説明していきます。

固定資産とは?

そもそも固定資産とは、どのような資産を意味するのでしょうか。まず固定資産は一年以上の長期にわたり使用、利用する目的で保有する資産です。具体例としては社用車やパソコンなどが挙げられます。そして固定資産の中でも減価償却の対象となるのは取引価格が10万円を超える資産(土地、建物、車、機械、ソフトウェア)となります。取得価格が10万円未満で長期の使用が目的の資産は、固定資産ではなく消耗品などの科目で経費として扱うことが可能です。

10万円以上30万円未満で手に入れた資産でも全額経費で扱える「少額減価償却資産の特例」という制度もあります。これは10万円以上30万円未満のものでも、手に入れた年に合計300万円まで経費として扱える制度です。このような法人上では損金として計上可能な30万円未満の「少額減価償却資産」も固定資産に分類されます。

減価償却とは?

減価償却とは時間の経過や使用により価値が減少する固定資産を手に入れた際に、取得額をその耐用年数に応じて費用計上していく会計処理のことです。例えば社用車として手に入れた車の価格が120万円、耐用年数が6年なら、120万円を6年間で少しずつ経費として扱う訳です。固定資産の耐用年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」が基準となっており、普通自動車なら6年、軽自動車なら4年となっています。減価償却が認められるのは時間の経過や使用により価値が減少する固定資産に対してなので、土地、骨董品、絵画は含まれません。これらは時間の経過や使用により価値が下がらないからです。

減価償却の目的

そもそも減価償却という考え方は何のためにあるのでしょうか。それは費用収益対応の原則という考え方を実現するためです。費用収益対応の原則とは、物品の購入にかかった取得額の全てをその年度で費用とするのではなく、一定期間費用計上することにより企業業績を正しく捉えるという考え方です。企業が収益を上げるためには様々な費用がかかる訳ですが、収益に対応(貢献)した費用を計上しようというのが費用収益対応の原則の基本的なルールです。パソコンや車などの固定資産は長期間にわたって使用することにより、企業の収益に貢献します。そのため購入した年度に全額を費用として計上してしまうと、収益と費用が対応せず企業業績を正しく捉えられません。

減価償却がもたらすメリット

減価償却の意味や目的について説明してきましたが、減価償却に何かメリットがあるのでしょうか。ここでは減価償却がもたらすメリットについて説明していきます。

<節税効果がある>
減価償却のメリットとしては、まず節税効果が挙げられます。法人における法人税、個人における所得税どちらも「利益部分」に対して税金が課税されるのが基本です。利益は売上から費用(原価、経費など)を差し引いたものなので、費用を多く計上して利益を減らすことで節税効果が期待できます。しかし購入額が高価なもの(車、機械、建物)を、手に入れた年度に一括計上してしまうと経営状況を圧迫してしまう要因になります。更に翌年は利益だけが拡大してしまい、余分な法人税を払うなど経営バランスが悪くなり様々な問題が発生する可能性があるのです。減価償却で数年に分散して費用化することにより、償却するまでの期間は利益にかかる法人税を抑えられる訳です。

<資金が手元に残る>
減価償却のもう一つのメリットとして資金が手元に残ることが挙げられます。減価償却資産を手に入れた翌年以降は経費計上により経理上の利益は減りますが、実際に支出があったわけではありません。費用として損益決算書に記載する額は企業内に留保され、課税される心配がないのです。支払回数は一回でも、経年で償却することにより資金を回収したことになります。例えば100万円の機械を20万円ずつ、5年間で減価償却するとします。機械の購入費用100万円は実際に支出されますが、減価償却費20万円の経費計上には現金支出を伴いません。20万円分の支出が伴わない経費計上なので、その分企業に資金が溜まるという訳です。
注意したいのは、あくまで会計上の結果であることです。減価償却費と同額の資金が企業内に存在すると確約するものではありません。

<適切な損益が把握可能>
更に減価償却には適切な損益が把握可能というメリットもあります。車や機械などの減価償却資産はおおむね長期にわたり活用され収益獲得に貢献するのが基本です。固定資産を減価償却せずに購入年度に全額費用として扱うと、購入年度は収益が大きく減り、翌年からは収益が増える状況になります。これでは「固定資産への投資で収益にどのような変化があらわれたのか」が正確には把握しづらいのです。固定資産を減価償却すると、減価償却資産が生み出す収益と費用とのバランスが正しく計上されるため、資産の価値を正しく評価できるのです。

減価償却の仕訳

仕訳とは、1つの取引を「借方」と「貸方」の2つに分けて帳簿に記録することです。例えば業務用のラックを現金2万円で手に入れた場合、借方に「消耗品2万円」、貸方に「現金2万円」と仕訳します。この例では業務用のラックを2万円で手に入れることで、ラックという資産が増え、現金が減りました。このように1つの取引を資産の増加と、資産の減少の2つに分けるのが仕訳の考え方です。基本的には資産などが増えれば借方に、逆に資産などが減れば貸方に仕訳します。減価償却費も帳簿上で仕訳を行うのですが、仕訳方法には直接法と間接法の2種類があります。

<直接法>
直接法とは「購入した固定資産の金額を直接減少させる」方法です。例えば50万円の応接セット(器具備品)を10万円ずつ減価償却する場合、借方に「減価償却費10万円」、貸方に「器具備品10万円」と仕訳します。この仕訳によって減価償却費10万円によって器具備品が10万円減ったことが分かるのです。50万円の応接セット(器具備品)から減価償却費10万円が減っているので、応接セット(器具備品)の残りの資産価値は40万円となります。貸借対照表に器具備品40万円と記載することで、残りの資産価値が把握できます。このように固定資産の価値がBS(貸借対照表)を見てすぐ分かるのが、直接法のメリットです。

<間接法>
間接法とは固定資産の勘定科目を使用せずに、「減価償却累計額」という勘定科目を使用する方法です。勘定科目とは、取引の内容を端的に表した名前のことです。例えばバソコン、デスクやチェアなどの業務用の家具・事務機器は器具備品と分類します。「減価償却累計額」という勘定科目は「いままで減価償却した金額の合計額」のことを意味するのです。貸借対照表には固定資産の購入費用と減価償却累計額の2つを表記します。そのため固定資産の取得額がいくらなのか、減価償却累計額(固定資産がこれまでに減価償却した合計金額)がいくらなのかが貸借対照表を見るとすぐにわかります。

減価償却費の計算方法

減価償却費は購入費用、耐用年数などの数値を用いて計算することが可能です。計算方法には「定額法」と「定率法」の2通りがあるので、紹介していきます。

<定額法>
定額法とは毎年、同額の減価償却費を計上する方法です。計算式は (取引価格÷耐用年数)×(事業に使用した月数÷当期の月数)となります。例えば取引価格100万円、耐用年数5年の固定資産を毎期12ヶ月使用した場合は(100万円÷5年)×(12÷12)=20万円となり、20万円ずつ減価償却します。最後の年の減価償却では1円だけ帳簿に残るように、調整するのがポイントです。減価償却費を最後まで計上すると、帳簿上の固定資産の価値は0円になりますが、実際にはまだ固定資産を保有しています。そのため最終年は1円だけ帳簿に残すのです。今回の例では1~4年目までは20万円ずつ減価償却し、最終年の5年目は19万9999円を計上して1円だけ残すわけです。

<定率法>
定率法とは減価償却費が一定の割合で減少していく計算方法であり、特徴として最初は減価償却費の金額が大きく、年度が進むにつれてだんだん金額が小さくなっていく点が挙げられます。計算式は、未償却残高×償却率×(事業に使用した月数÷当期の月数)です。例えば取引価格100万円、償却率が0.4なら1年目は定率法では100万×0.4で40万円、2年目は60万円×0.4で24万円という形です。定率法では減価償却費が一定の割合で減少していくので、金額は小さくなるものの、全額償却は永遠にできません。そのため減価償却費が一定の金額以下になったら、計算方法を定額法に変更して計算します。

<定額法と定率法どちらが良いの?>
定率法と定額法の2つの計算方法を紹介しましたが、減価償却費の計算方法としてはどちらが良いのでしょうか。まず原則として個人事業主は定額法、法人は定率法と方法が決まっています。ただし「減価償却資産の償却方法の届出書」を確定申告書の提出期限前までに税務署に届け出れば償却方法を変更可能です。この書類を提出しなかった場合は個人事業主は定額法、法人は定率法を選択したものとみなされます。ちなみに2016年3月31日以前に手に入れた建物附属設備及び構築物は定率法か定額法を選ぶことが可能です。

定額法と定率法、二つの明らかな違いとして「経費化されていく速さ」が挙げられます。初期の費用負担が少なめの定額法はスタートアップで早期に利益を出したい場合、減価償却資産の多くが建物や無形固定資産である場合、財務管理の利便性を重視する場合に向いています。定率法は初年度の減価償却費が定額法の250%から200%と上回るので、利益が出すぎて税金が多いという場合に向いているでしょう。

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監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。
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