賞与支払届の概要と経理処理方法について
賞与支払届の概要と経理処理方法について
被保険者に賞与を支給した際に作成する「被保険者賞与支払届」は、必ず提出しておかなければならないものです。
賞与はどのように経理処理をすればいいのでしょうか。
今回は経理担当者なら知っておくべき、賞与と「被保険者賞与支払届」に関する情報をお伝えします。
被保険者賞与支払届とは?
賞与についても健康保険・厚生年金保険の毎月の保険料と同率の保険料を納付することになっており、事業主が被保険者へ賞与を支給した場合には、支給日より5日以内に「被保険者賞与支払届」により郵送、窓口持参、電子申請等で所定の年金事務所又は事務センターに支給額等を届出する必要があります。
対象となる賞与は「賃金」「給料」「俸給」「手当」「賞与」そのほかいかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるもののうち、年3回以下の支給のものをいいます。
なお、年4回以上支給されるものは標準報酬月額の対象とされ、また、労働の対償とみなされない結婚祝金等は、対象外とされています。
賞与にかかる社会保険料
賞与にかかる保険料は、実際に支払われた賞与額(税引き前の総支給額)から1,000円未満を切り捨てた額を「標準賞与額」とし、その「標準賞与額」に健康保険・厚生年金保険の保険料率をかけた額となります。
保険料は、事業主と被保険者が折半で負担します。
賞与の経理処理方法
最後に賞与引当金を計上せず、賞与支給時に賞与の会計処理をする中小企業を想定した場合の賞与の経理処理方法を解説します。
社会保険は一般で健康保険と厚生年金保険のみとします。
健康保険・厚生年金保険の保険料額表に基づき保険料を計算します。
賞与支給額が100,000円の場合、会社の厚生年金保険料率負担は折半で8.914%とすると、8,914円となります。
また、健康保険料率負担も折半で4.98%とすると、4,980円となります。
源泉所得税は、賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表に基づき算定し、前月の社会保険料控除後の給与額を118,000円とし、扶養親族0人とすると、税率が4.084%となります。
それに社会保険料控除後の金額86,106円(=100,000円-4,980円-8,914円)に4.084%を乗じると、3,516円になります。
これを仕訳で表すと下記通りになります。
(借方)賞与100,000円 | (貸方)普通預金82,590円 |
(貸方)預り金(健康保険料)4,980円 | |
(貸方)預り金(厚生年金保険料)8,914円 | |
(貸方)預り金(源泉所得税)3,516円 |
賞与支払届は日本年金機構のホームページから「届書作成プログラム」をダウンロードし、電子媒体で作成して提出することもできます。
提出するまでの期間が5日ととても短いので、うっかり忘れてしまわないように必ず提出しておきましょう。
この記事の著者紹介
福留 聡(ふくどめ さとし)
公認会計士・米国公認会計士・税理士・米国税理士
福留聡事務所代表
慶應義塾大学商学部卒。監査法人トーマツ、あずさ監査法人勤務後、独立。主に上場企業の決算支援、IFRS導入支援、国際税務などを得意としている。著書に『7つのステップでわかる 税効果会計実務入門』(2014年10月税務経理協会)、『公認会計士・税理士・米国公認会計士・米国税理士 資格取得・就職・転職・開業ガイドブック』(2014年11月税務経理協会)、『経理業務を標準化する ワークシート活用ガイド』(共著、2013年10月、中央経済社)。また、(社)日本士業協会よりIFRS、日米税務等DVD36巻を刊行している。