「解約返戻金あり」のがん保険には注意しよう!
解約返戻金とは?
「解約返戻金」とは保険契約者が自ら契約を解約したり、保険会社から契約を解除された場合などに、保険契約者に対して払い戻されるお金のことで、主に終身保険や養老保険で払い戻されるものとなっています。
解約返戻金ありの保険は、節税や役員等の退職金の原資確保目的で会社が加入しているケースがあります。
特にがん保険に加入している場合、税制改正の影響により契約時期によって会計処理が変わってきますので確認しておきましょう。今回はその中でもわかりやすい終身契約の場合についてご紹介します。
今回は解約返戻金ありのがん保険の会計処理方法についてご紹介します。
2012年4月27日を境に全額費用計上ができなくなった
通常会社が保険料を支払った際には支払保険料として全額費用計上します。
しかし税制改正により2012年4月27日以降にがん保険を契約した場合、解約返戻金ありの契約では、全額費用に計上することができなくなりました。
解約返戻金のない掛け捨て型や少額のがん保険に関しては、これまで通り全額費用として会計処理を行えます。
この改正で一括してがん保険が全額費用にできなくなったことで、会社の経費が減少したと同時に、会計処理も複雑になりました。
今後会社でがん保険の契約がある場合や、ほかのがん保険に契約を切り替える場合には、注意する必要があります。
まず前期と後期に分けて計算しよう
解約返戻金ありのがん保険を会計処理する場合、まずは前期と後期に分ける必要があります。
加入年齢から満期までの期間を前期と後期に分けますが、終身の場合には満期が無いので、税務上は105歳を満期として分けることとなっています。
たとえば加入年齢が45歳の場合だと「(105-45)÷2=30年」となります。
終身がん保険の場合
法人契約のがん保険だと、保険料払込期間が終身払いものがほとんどになるかと思いますので、今回は終身がん保険の場合の会計処理方法についてご紹介します。
終身がん保険の場合は前期と後期で会計処理が異なってきます。
(仕訳例)
契約年齢:45歳
保険期間:終身
保険料払込期間:終身
年払保険料6万円を支払った場合
・前期の会計処理
前期の30年間は、半分費用、半分資産に計上します。
借方 | 貸方 |
支払保険料 30,000円 前払保険料 30,000円 |
現金または預金 60,000円 |
・後期の会計処理
後期の会計処理については、保険料全額を費用に計上すると同時に、計上していた前払保険料を取り崩す処理が加わります。
借方 | 貸方 |
支払保険料 90,000円 前払保険料 30,000円 |
現金または預金 60,000円 |
保険期間の前半の5割期間では、単純に支払い保険料の二分の一相当額を資産として計上します。
そして後半の5割期間では、支払い保険料の全額を費用に計上させ、前半の期間に積み立てた資産の額を期間の経過に応じて取り崩すようにします。