前受金の消費税率引き上げに伴う経過措置とは?
企業が取引を行う際、取引によって増減した資産や負債、または発生した費用や収益について分かりやすく記録する勘定項目は、お金の流れについてさまざまな点から分析するために欠かせないものです。その分類項目の構成要素の一つとして前受金という科目があります。また、前受金には消費税の経過措置というものがあります。
本記事では前受金の定義、前受金の消費税の経過措置、前受金を効率的に管理できるシステムをご紹介します。
前受金とは
ここでは前受金について、どのように計上するか、また課税されるタイミングについて解説します。
前受金はどのように計上するか
前受金は前金、手付、内金などとも呼ばれていますが、いずれの場合でも顧客への商品の納入がまだ終わっていないという点が共通しています。お金を先に受け取っているといっても、商品の納入が終わらなければ売上高として計上することができません。しかし、お金の流れとしてはすでに顧客から販売者へ入金されているので、何らかの科目で計上する必要があります。そこで前受金という科目に分類して計上するのです。
前受金は、研修を行う時に事前に代金を受け取る場合や、不動産賃貸業で借主に翌月分の家賃を前もって前の月に入金してもらう場合にも使用します。仕訳の際は、将来的に売上金として計上できるお金かどうかが判断する基準になります。なお、前受金を受け取ると現金資産としての売上になりますが、商品やサービスを納入しなければいけないという義務が生じるので流動負債として取り扱われます。
課税されるタイミング
前受金は代金を受け取った時には課税されず、商品やサービスの納入が行われたタイミングで消費税が課税されます。
商品やサービスの納入をしていない時点で注文代金を売上に計上処理してしまうと、課税のタイミングがずれてしまうため注意が必要です。売上計上が先行し、費用が計上される前に課税されるとキャッシュフローとして不健全な状態になりますので、前受金は適切に処理する必要があります。
前受金の消費税の経過措置とは
2019年10月1日に消費税率が8%から10%へ引き上げられましたが、消費税率が引き上げられた日をまたぐ取引は、内容によっては旧税率が適用される経過措置が取られます。ここではいくつかのケースを例に経過措置について解説します。
施行日前日までに物品を仕入れたケース
消費税率引き上げに伴って消費者にとって金銭的に負担となるだけではなく、会計処理上も企業にとって負担となることが懸念され、一斉に消費税率を引き上げても既存の仕組みでは対応できないケースが発生すると指摘されていました。そこで国税庁は、新消費税率を厳格に適用するのが明らかに困難とされる取引については、経過的な特例措置として旧税率を適用できると定めました。
例えば、出荷が新消費税率適用開始日より前で、検収が新消費税率適用開始日より後になるケースでは、出荷・納入日を基準にすると旧税率になり、検収日を基準にすると新税率になります。消費税法では、売主と買主で税率を一致させると定められており、このケースでは売主にも買主にも旧税率が適用されます。
施行日前日までに運賃などを徴収したケース
新消費税率施行日前日までに乗車券・定期券・回数券などの運賃、映画・芝居劇場・コンサートなどの前売り券、遊園地・テーマパークなどの入場券を販売して代金を徴収した場合は、施行日以後に利用されるものであっても経過措置の一環として旧税率で販売することができます。これはテーマパークの年間パスポートのように、施行日以後に複数回に渡って利用される場合も同様です。
また、飛行機のeチケットのように航空会社のシステム内に利用者情報が記録され、搭乗券が発行されないチケットレスサービスにおいても、実物の搭乗券の有無にかかわらず経過措置が適用されます。
施行日1ヶ月前に年間メンテナンス契約したケース
施行日前に施行日を挟んだ1年分の料金を受け取るサービスの利用契約の場合、物品の引き渡しではなく、サービスの提供によって資産が譲渡されるとみなされます。国税庁の見解ではサービスの提供が全て終了した時点、つまり1年間のメンテナンスサービスが全て終わった日をもって資産の譲渡が行われた時期と定められているのです。メンテナンスサービスの提供が終わる日は施行日の後になりますので、この場合は新税率の10%が適用されます。
なお、中途解約をした時に未提供部分の代金を返還する契約になっている場合は、契約時に1年分の料金を受け取った場合でも、メンテナンスサービスの提供はその時点まで完了したものとして解約時点での消費税率が課されます。
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勘定項目のひとつである前受金は、この記事で解説したように、商品やサービスの注文を受けた時に、納入前に代金の一部または全額として受け取るお金を対象としています。通常の売上金と異なり、まだ商品やサービスを納入していないので売上としては計上できません。これは発生主義と呼ばれる、お金の支出や収入に関係なく経済的事象が発生した時点で計上する会計原則に基づくためです。
このように前受金は他の勘定項目とは違った取り扱いがなされると共に、消費税率の引き上げに伴って経過措置が取られていることから取り扱いが複雑になっています。少しでも請求業務の業務負荷を軽減させたいと考えている企業のご担当者は、株式会社ROBOT PAYMENTが提供している「請求管理ロボ」の導入をご検討ください。
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