請求書には源泉徴収を記載すべき?基礎知識から注意点までを徹底解説!
日々行われるさまざまな相手先との取引において、請求書の発行は欠かせない業務です。そんな請求業務の中でも、源泉徴収の扱いには気をつけておくべき事柄が少なくありません。そもそも源泉徴収額を記載すべきなのか、あるいはどのように記載したらよいのかなど、悩んだことがある方も多いのではないでしょうか。
今回は、請求書の発行に関わる源泉徴収の扱いについて徹底解説していきます。
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請求業務に関わる源泉徴収の基礎知識
請求書へ源泉徴収額を記載するかどうかは、業務形態・内容により変わってきます。ここでは源泉徴収について正しく理解しておきましょう。
源泉徴収とは
源泉徴収とは、事業者が給与や報酬などの支払いをする際に請求書の金額から事前に所得税などを差し引いて支払いを行う制度です。基本的に個人に対する請求書の支払いが対象となります。
日本では自主申告を旨とする「申告納税制度」が採られていますが、特定の所得については支払う側に一定の税額を前もって徴収しています。これは、税金を納めることになる所得者、そして徴収する国双方の負担を軽減するとともに「徴収漏れ」を防ぎ、迅速かつ精度の高い租税行政を実現したいとの趣旨によるものです。
給与や報酬などを支払う会社や事業者は、その支払い時に決まった割合で一部を所得税として「天引き」し、残額を所得者に支払う視組になっています。
サラリーマンの源泉徴収
一般的にサラリーマンは、給与から所得税分を天引きして徴収が行われます。そのため、サラリーマンは年収2,000万円を超える場合や副業で20万円を超える所得がある場合を除けば、基本的に税務署に行って確定申告する必要はありません。
ただし、源泉徴収額は所得金額が確定する前に算出された「見込み額」なので、負担すべき所得税額と異なるケースもあります。そこで源泉徴収制度では、税額の過不足を調整するための「年末調整」というしくみを設け、自己申告と同額の所得税を徴収できるようにしています。
フリーランス・個人事業主の源泉徴収
フリーランス・個人事業主の場合は、サラリーマンとは異なり、自分で確定申告を行う必要があります。したがって、報酬を得た場合に源泉徴収されるのか・されないのかについてきちんと把握しておかないと、税金を余分に納めてしまう可能性も出てきてしまうのです。
個人事業主の源泉徴収のしくみ自体は、サラリーマンとの違いはありません。あらかじめ総報酬額から所得税分を源泉徴収された額を報酬として受け取ります。ただし、報酬を支払う取引先自身もフリーランスであれば、取引先に源泉徴収義務がないので源泉徴収は行われません。
また、すべての個人事業主の報酬が源泉徴収の対象になるわけではありません。対象になるものとしては以下のものが挙げられます。
<源泉徴収の対象となる業務の例>
・原稿料、デザイン料、講演料、通訳・翻訳費用など
・弁護士、公認会計士、司法書士など士業への報酬や料金
・保険外交員、プロスポーツ選手、芸能人、モデルなどに支払う報酬や料金
・ホステス、コンパニオンへの報酬
業務により源泉徴収しないものもある
一方、フリーランスや個人事業主による業務であっても源泉徴収の対象にならないものもあります。
まず、一般的な管理業務の委託や事務代行業務は、源泉徴収の対象ではありません。そして、たとえば、Webデザインにおけるデザイナーの業務は「デザインの報酬」として源泉徴収の対象になりますが、プログラミング・コーディングについては対象外とされています。また、士業であっても税理士法人など、法人形態でなされる業務、行政書士の一般的業務についても対象外となっています。
請求書での源泉徴収の流れ
自分の業務が源泉徴収の対象になることが明らかになったら、実際に源泉徴収額を算出して、請求書に記載していくことになるでしょう。ここでは、手続きの流れを説明していきます。
源泉徴収額の計算方法
源泉徴収額は、以下の計算式で算出します。
・請求額が100万円以下の場合
請求金額 × 10.21% = 源泉徴収税額
※10.21% = 10%(所得税率)+ 0.21%(復興特別所得税率)
・請求額が100万円超の場合
(請求金額 − 100万円)× 20.42% + 102,100円 = 源泉徴収税額
※20.42% = 20%(所得税率)+ 0.42%(復興特別所得税率)
このように、100万円を超えた部分の金額については税率が上げられているので注意が必要です。
源泉徴収額を請求書に記載する
法人相手の取引であれば、取引先への対象報酬に対し源泉徴収義務は生じるため、取引先の利便性に配慮して源泉徴収額を請求書に記載することをおすすめします。また、源泉徴収の対象になる報酬と不要な報酬の両方を請求する場合に、両者を分けて計算して記載することも大切です。
そして、算出した源泉徴収額を請求書に記載するときは、個別の対象報酬の請求欄に連ねるのではなく、合計欄に記載します。記載方法に配慮することで、どれだけの額が合計金額から差し引かれているのかがひと目でわかる請求書になります。
請求書に源泉徴収を記載するメリット
請求書に源泉徴収額を記載すると、どんなメリットがあるのでしょうか。ここでは、3つご紹介します。
源泉徴収の金額計算が楽になる
源泉徴収額を記載することは、自身と取引先に源泉所得税の算出が楽になるというメリットをもたらします。
また、源泉徴収されていない場合は自身で所得税を納税する手間もかかるため、請求書へあらかじめ源泉徴収額を記載しておくことで納税する手続きを減らすことができます。
帳簿づけにより「回収もれ」を防ぐことができる
そもそも請求書には、報酬の「回収もれ」を防ぐことができるというメリットがあります。送付した請求書の控えを基に、帳簿を作成して入金済み案件と未払い案件とをきちんと分けて管理していけば、対価の支払い状況が一目瞭然になります。
そうすれば、報酬が支払われないとか金額が異なるなどのトラブルが生じたときにも、請求書という取引があった証拠を示すことで、自信を持って報酬の請求を行うことができるでしょう。
確定申告時に還付金を受け取れる場合がある
個人事業主の場合は、自分で確定申告を行う必要があります。確定申告の際に最終的に納めるべき税額は、「所得金額 × 税率 - 源泉徴収額 」の計算式で算出しますが、この値がマイナスであれば差額が還付されることになります。
所得税の法体系では、源泉徴収された金額は経費として計上することはできません。そのため、1年間の収入を得るために多くの経費がかかることがある個人事業主の場合には、源泉徴収で差っ引かれた金額が納税額を上回ることも珍しくありません。
そこで、こうした事例では経費を申告することで「還付金」として払いすぎた税金を取り戻せるしくみが用意されています。この後に触れる「支払調書」が必ず送られてくるものとは言えないことを考えると、源泉徴収額入りの請求書の帳簿を使って確定申告に備えておくメリットは大きいと言えるでしょう。
請求書に源泉徴収を記載するときの注意点
請求書に源泉徴収額を記載することで得られるメリットを活かすためには、事前に把握しておくべきいくつかの注意点があります。ここでは、3つご紹介します。
支払調書の取扱い
確定申告では、源泉徴収された金額、つまり取引先が納税を済ませた金額を申告する必要があります。そして、通常は確定申告前に取引先から支払調書が送られてくるので、この書類を基に源泉徴収税額を申告することができるようになっています。
支払調書は、個人事業主にとっての源泉徴収票ともいえる書類で、取引先が支払った報酬額と源泉徴収して税務署に納めた税額が記されています。そのため、支払調書さえあれば確定申告の際にとくに困ることはないわけですが、取引先に発行が義務づけられているわけではないので、必ず送られてくるという保証は残念ながらありません。
消費税の計算方法について取引先に確認しておく
源泉所得税の計算にあたっては、源泉徴収税率を消費税を含んだ総額に乗じるのか、消費税抜きの額にかけるのかなどいくつかのやり方があります。
消費税抜きで算出すれば源泉徴収税額を減らすことができるので、手取り金額が増えることになります。そのため、早期の資金回収を考えているのであれば報酬と消費税額とを区分した請求書を作成した方がよいことになります。
ただし、取引先によって消費税の扱いが異なることも考えられ、場合によっては取引先自身で計算するので源泉徴収税額自体を記載しないで欲しいといったケースもあり得ます。したがって、請求書に源泉徴収額を記載するときには、取引先に消費税の計算方法について確認しておくことがおすすめです。
源泉徴収について事前に取り決めておく
請求書に源泉徴収額を記載することで確定申告に向けた作業の負担を軽くすることができますし、消費税と分けて記載すれば源泉徴収税額を減らすことができます。ただ、実際に源泉徴収を行い納税するのは取引先ですから、こちらの都合だけで動くことは望ましくありません。
事前に取引先と源泉徴収の扱いについてきちんと取り決めておき、可能であれば取引契約書に盛り込んでおくなど、トラブルを予防しつつ円滑な請求書発行業務ができるしくみを作っておくとよいでしょう。
フリーランス・個人事業主同士の場合は?
最近はフリーランスで活躍をする人が増えています。したがって、フリーランス同士で協力をすることもあるでしょう。
フリーランスの方が報酬の支払い者になる場合は、支払い側は源泉徴収する義務はありません。つまり、その場合は請求書には源泉徴収額を記載する必要はないのです。報酬をもらった側の方は、所得税は納める必要があります。
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