固定資産とは?その定義・種類・金額基準などを徹底解説
会社の経営をするにあたって固定資産について理解することは重要です。しかし、経理に携わっていないと固定資産の会計処理について学ぶ機会は少なく、固定資産について完璧に理解していない人も多いでしょう。ここでは、固定資産とは何か、金額によって変動する固定資産の経費処理方法について解説していきます。
固定資産とは
ここでは、固定資産を理解するために定義と流動資産との違いを解説します。
固定資産の定義
固定資産とは基本的に1年以上保有・使用する資産のことを指します。法人税法では有価証券・棚卸資産・繰延財産以外の資産の中でも、土地・減価償却資産・電話加入権に加え、これらに準ずるものが固定資産に分類されると定義されています。
また、固定資産は1年以上使用することが条件とされており、経費処理を行うにあたっては一括で年度末に全額を経費として処理するのではなく、耐用年数に応じて減価償却という方法で経費処理されるのが一般的です。
流動資産との違い
資産を固定資産と流動資産に分類するのは、会社が資金的に安定しているかどうかを貸借対照表で判断しやすいようにするためです。現金化しやすい資産かどうかという点が判別の基準になります。
流動資産は言葉の通り流動性の高い資産を指し、売掛金、商品、受取手形などがその代表です。一般的には1年以内に換金可能な資産を指し、この区分の仕方は1年基準(ワンイヤールール)と呼ばれています。ただし、商品によっては販売開始から売上代金回収まで1年以上かかるものもあるので、1年以内に換金できなくても流動資産に含みます。
また、もう1つの区分の仕方に正常営業循環基準があり、通常の商取引活動で生じる債権や債務などは、回収期間の長短を問わず流動資産に区分します。
固定資産の種類
固定資産は性質や特徴によって、有形固定資産と無形固定資産の2種類に分けることができます。それではこの段落では、この2つの固定資産がそれぞれどんなものなのか解説していきます。
無形固定資産
無形固定資産とはその名の通り、実体を持たない固定資産のことを言います。ちなみに特許権や営業権も無形固定資産に分類されます。それに加えて、平成12年度の税制改正により、ソフトウェアもパッケージとして実体は存在するものの、ソフトウェア自体はパソコンにインストールして使用する実体のないものとして判断され、無形固定資産に分類されるようになりました。ちなみに市場販売目的のソフトウェアの耐用年数は3年とされています。
基本的に実体がない権利などといったものは無形固定資産に分類されますが、無形固定資産と有形固定資産に分ける前の段階で減価償却資産か非減価償却資産か判断し、減価償却資産に当てはまったものだけを有形・無形固定資産に分けています。そこで非減価償却資産に当てはまるものは、有形・無形固定資産でもない「その他」の固定資産として扱う必要があります。その理由としては、減価償却は経年劣化を伴うという考え方のもとに成り立っていることが挙げられます。
例えばソフトウェアは常に新しいものが登場しているので、古いものの価値は下がっていくでしょう。それに対して、電話加入権や借地権は時間が経っても価値が下がることがありません。したがって、減価償却の対象から外されており、これらは有形・無形固定資産以外の固定資産として扱われます。
有形固定資産
有形固定資産はその名の通り実体があり、目に見える固定資産のことを言います。具体的には建物・備品・機械装置などは有形固定資産に分類できます。有形固定資産の中にも勘違いされやすいものがあり、その例として挙げられるのが土地です。土地は時間の経過によって価値が下がったり劣化したりすることは基本的にないでしょう。そのため、土地は有形固定資産ではなく、非減価償却資産として扱われます。
ただし、これらの中で1年以内に換金されるものは先述の1年基準(ワンイヤールール)に基づいて流動資産に分類され、有形固定資産の対象からは外れます。
投資・その他の資産
上記の有形固定資産にも無形固定資産にも該当しない資産は、投資・その他の資産に分類されます。具体的には、短期的な売買を目的としない投資目的の株式・社債・国債などの投資有価証券、25%以上出資しているか議決権を持っている関連会社・子会社の株式・出資金、オフィスなどを借りる時に払う敷金・礼金などです。
他にも返済期日が1年以上先に設定されている長期貸付金、信用担保のために仕入れ先に支払う差入保証金、長期前払費用などが投資・その他の資産に相当します。
固定資産の減価償却とは
固定資産は20万円以上のものなので、通常の資産と同じように計上してしまった場合、買った年だけ大赤字になり、その後は黒字になってしまう傾向があります。しかし、この状態では正しい企業の経営状況が把握できなくなってしまうでしょう。そこで、固定資産では減価償却という考え方を用いて費用処理を行います。ここでは、減価償却について解説します。
概要
固定資産は長期にわたって使用するのが一般的です。高額でもあることから、買った時だけ固定資産の分の費用を計上してしまうと先ほど解説したように固定資産を購入した年だけ赤字になり、その後は黒字になるという状況に陥ってしまいます。そこでできた考え方が「減価償却」であり、固定資産を耐用年数に応じて案分して計上することでこの矛盾を解決しています。
減価償却を行うメリット
減価償却を行うメリットは大きく分けて2つ挙げられます。
1つ目は、法人税課税額を節約できることです。固定資産の減価償却を行って毎年減価償却費を計上すれば、耐用年数の期間中は利益を抑えて納税額を節約できます。
2つ目は、収益のバランスを適切に評価できることです。固定資産の購入費を減価償却によって毎年度計上していけば、購入年度だけが赤字になることはなく、売上と対応させて経営状態をしっかり把握することができます。
タイミング
減価償却は耐用年数表に従って行われます。この表は資産の種類ごとに分類して法で定められているものです。開始するタイミングは、実際に事業で使用を始めた日を起点にします。
付帯設備や会社備品などは、取得してからすぐに事業に供用され始めるため、取得日と減価償却開始日が同じになる場合が大半です。しかし、企業向けの賃貸テナントや複雑な機械設備などは、使用が可能になるまで据付工事や試運転調整が必要です。そのため、実際の供用開始日が減価償却を開始するタイミングになります。
このように、法令では業種や業態、資産構成、使用状況などからいつ事業に供用したかを総合的に判断するとしています。
減価償却の計算方法
減価償却の計算方法は定額法と定率法の2種類があります。以下にそれぞれについて解説します。
定額法
定額法とは、毎年一定の償却費を計上していく方法で、基本的に償却費の額は毎年同じです。年度の途中で減価償却の対象となる資産を取得した場合は、その取得年は月割で計算します。定額法の計算式は次の通りです。
減価償却費=取得価格×定額法の償却率
償却率は耐用年数ごとに法令で定められており、耐用年数2年の0.500から耐用年数が長くなるにつれて小さくなります。例えば、耐用年数15年なら0.067です。
なお、税制の改正によって2007年3月31日以前に取得したものは旧定額法、以降に取得したものは定額法が適用されます。例として、2020年1月に普通乗用車を新車で300万円で購入した場合、耐用年数は6年で償却率は0.167です。償却額は、1年目から5年目まで300万×0.167=50万1千円、6年目が49万4999円になります。
定率法
取得した資産は、基本的に年を経るごとに価値が下がっていきます。そして、定率法は経年劣化した資産に残っている価値に応じて、毎年決まった割合で償却費を計上する方法です。減価償却費は初年度に多めに計上しその後徐々に減少していきます。定率法の計算式は次の通りです。
減価償却費=(取得原価-減価償却累積額)×定率法の償却率
定率法の償却率も定額法と同様に法令で定められた耐用年数表を用い、耐用年数2年の1.000から耐用年数が長くなるにつれて小さくなっていきます。例えば、耐用年数15年なら0.133です。資産を取得した時期によって適用される償却率が異なり、2007年3月31日以前は旧定率法、2007年4月1日から2012年3月31日までに取得したものは250%定率法、以降は200%定率法が適用されます。
固定資産の管理方法
固定資産の管理方法としては、固定資産台帳を作成する方法と固定資産管理システムを導入する方法が挙げられます。以下にそれぞれについて解説します。
固定資産管理台帳の作成
固定資産管理台帳とは償却資産台帳とも呼ばれ、税務申告の際に用意すべき標準的な帳票の1つです。保有している建築物、土地、車両運搬具などの固定資産の時価評価額を正確に把握し、固定資産税額を適切に算出するためにします。固定資産台帳の書式や様式は特に定められたものはなく、よく用いられるのはエクセルのような表計算ソフトを活用した作成方法です。
台帳の表に記載すべき項目は以下のとおりです。
・管理番号
・資産名称
・取得年月日
・勘定科目
・取得価額
・償却方法(定額法か定率法か)
・耐用年数
・減価償却額
固定資産管理台帳を作成したら固定資産の現状把握のために棚卸しを行いましょう。並行して固定資産管理シールの貼り付けを行った後、固定資産管理規程(ルール)を策定します。
固定資産管理システムの導入
固定資産管理システムとは、固定資産台帳の管理や減価償却の計算、加えて税務申告などを統合的に管理するシステムのことです。特に、グローバルに事業を展開する企業がIFRS(International Financial Reporting Standards:国際財務報告基準)に対応するために導入を急いでいるシステムでもあります。
固定資産管理システムを導入すれば、台帳の作成がシステム上でできるようになり、企業全体で固定資産の管理ができます。その他のメリットとして、複雑な償却方法や耐用年数の計算に関しても最新の税法・会計基準に対応した自動処理ができることなどが挙げられます。
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