証憑書類とは?法令別の保存期間や電子化のメリット・デメリットなども紹介
証憑という言葉をご存じでしょうか。日常ではあまり使わない言葉のため、その意味について詳しく知らない人も多いでしょう。証憑は、ビジネスシーンでは頻繁に使われる言葉です。企業会計において証憑は欠かせない書類であるため、しっかりと内容を理解する必要があります。
この記事では、証憑の意味と正しい使い方・証憑書類の詳細についてご説明します。経理担当者だけではなく、すべての人が必ず押さえておきたい言葉なので、参考にしてみてください。
証憑とは
証憑とは、「取引が成立したことを立証するための書類」です。意味をわかりやすくするため、書類という言葉を加えて「証憑書類」と表現する場合もあります。会計や取引の記録について正確かつ真実性を担保して記した書類を、証憑と呼びます。企業間の取引に関する書類では「証拠の書類」とは表現せず、あえて「証憑」と呼ぶ方が望ましいです。
たとえば「ある商品を決められた個数で納品したことの証憑として、納品書を発行する」といった使われ方をします。こうすることで、取引する商品の種類と数にお互いが同意し、それを納品したと証明することが可能となるのです。証憑は納品という行為の証明だけでなく、商品名や数にも同意した事実を証明するエビデンスになります。
証憑を発行する目的
証憑書類の発行目的は、取引が口約束ではないことを証明することです。取引をした人がお互いに同意し、その結果として取引が決定したということを証拠として残します。証憑書類は取引において重要な資料になるため、二重チェックをして徹底的に管理している会社も多いです。
証憑書類は原則として7年間の保管が必要になりますが、個人の場合は5年間の保存が一般的です。ただし、帳簿の保存については税法で決まっているため、現金出納帳は7年間保存しましょう。
証憑書類をしっかりと整理することは、取引の適正管理につながります。会社の信頼や業務の効率化にも関係する重要な意味を持つことであるため、慎重な対応が求められます。
帳票との違い
帳票は帳簿と伝票の文字を組み合わせて作られた会計用語で、企業経営に関係する取引や会計の記録書類全般の総称です。帳票の主たる対象は社内文書で、現金の入金や出金の内容を記す入金伝票・出金伝票、会社の現金を管理する現金出納表、取引先ごとの売掛金の残高を管理する売掛金台帳などが該当します。帳票は取引後に作成されるのが通常のケースですが、これに対して証憑は取引があった都度に作成されます。
証憑書類を作成することで実際に取引を行ったことを証明でき、取引の過程や結果を記録することが主たる役割です。帳票と証憑がかぶる書類もありますが、経営状況や経営活動を記録するのが主である帳票に対して日々の取引の事実を記録するのが主である証憑とは役割が若干異なります。
証憑書類の種類
証憑書類にはさまざまな種類があり、「売上関係」「仕入関係」「従業員関係」「その他」とグルーピングすることが可能です。ここでは、証憑書類の種類をご説明します。
売上関係
「契約書」「請求書」「領収書」などの書類は、金銭的な取引がどのように行われたのかを示す書類で、証憑書類に当たります。
証憑書類を残すことで、取引や経費に妥当性があるかどうかを判断することが可能になります。売上関係の書類は企業の経営や業績に直結するため、しっかりと確認をしながら作成し、管理も徹底してください。
仕入関係
取引をする際には、仕入れに関する証明を残すことが大切です。万が一、証明できる書類がないと、ミスが起きたときにトラブルが発生してしまうためです。
たとえば、原材料を100個発注したのに100箱届いてしまった場合、入荷数に大幅な違いが出てしまいます。この場合、数だけでなく支払い額も大幅に増えてしまうことになるでしょう。
発注数を口頭でしか伝えていなかった場合、どちらにミスがあったかわからずトラブルになってしまいます。そこで、証憑として「発注書」「納品書」を作成しておくことで、証拠としてトラブルの解決に役立ってくれます。
発注書や納品書などの証憑書類は、発注や納品などの仕入れに関する一連の流れを裏付ける大切な書類です。在庫数が多い大企業は、原材料や商品を数えて管理することは不可能なため、発注書や納品書を参考に在庫管理をしています。
従業員関係
従業員との取引を証明する書類も、証憑になります。たとえば「履歴書」「雇用契約書」「退職届」「給与支払明細書」などが証憑として挙げられます。
労働者と使用者という関係でも、ある種の取引だと考えられるでしょう。そのため、企業は従業員を雇うときの条件や給与などを証明するために、証憑書類を作成するのです。
従業員関係の証憑は個人情報が含まれるものが多いため、厳重な管理と適切な処分方法が求められます。
その他
上記以外の書類や契約書も、取引に関するものは証憑になります。
たとえば、「利用明細」「口座の通帳」「賃貸借契約書」「返済予定表」などが一例として挙げられます。こういった書類は種類別に分類したうえで、しっかり管理しておくといいでしょう。証憑の管理方法が適切でないと、使いたいときに見つからなくなってしまうためです。
契約の変更や税務調査など、急に証憑書類が必要になることも多いです。基本的には種類別かつ日付順にファイリングし、部外者が入れない場所で管理しましょう。
証憑書類の保存期間と保存方法
証憑書類の保存が重要だということはお伝えしてきましたが、実際にどれほどの期間保存しておけばいいのでしょうか。ここからは、該当する法令ごとに証憑書類を保管する期間について解説します。
保存期間
(1)税法での保存期間
帳簿などの税法に関わる証憑書類は、一律で7年間の保管義務があります。ただし、欠損金が生じた事業年度の帳簿など、一部企業会計に関する書類は10年間の保管が必要です。7年間の保存と10年間の保存を区別するのは手間がかかるため、一律で10年間保存しておくと間違いが起きにくいでしょう。
(2)会社法での保存期間
会社法に関わる書類は、株主などに閲覧させる「備置き書類」は5年、そうでないものに関しては10年の保管が義務付けられています。
【5年間の保存が必要なおもな書類】
計算書類、事業報告、監査報告、会計監査報告
【10年間の保存が必要なおもな書類】
会計帳簿及び事業に関する重要な資料、計算書類
保存方法
証憑書類は紙で受け取ることが多いことから原本のままファイリングして保管することが多く、旧来的な方法ではありますが手軽に実施できる点はメリットと言えるでしょう。その反面どこにどの証憑書類があるかが分かるように系統的にファイリングしなければならない手間がかかります。証憑書類が増えてくればより整理してファイリングせねばならず、保管場所の確保も大変になってきます。
ファイリングは証憑書類の量が比較的少ない個人事業主や小規模な企業に向いている保存方法と言えるでしょう。一方で、近年は電子メールやクラウドシステムを利用して電子的に証憑書類をやり取りする機会が増えてきたことで電子保存する方法も広く普及しつつあります。証憑書類を電子保存するためには後述する電子帳簿保存法やe-文書法で定められている保存要件を満たす必要はあるものの、保管場所も取らず検索が容易で劣化や紛失の恐れもありません。業務効率の向上やコスト削減を図りたいなら電子保存を検討する価値は大いにあります。
保存期間を守らなかった場合の罰則
もしも紹介してきた請求書や帳簿などを保存しなかった場合、どのような罰則が科されるのでしょうか。保存期間を守らなかった場合の罰則としては、以下のようなものが挙げられます。
・青色申告を取り消される
・欠損金が繰越できない
・仕入れの消費税額が控除されない
・税務署に有利な推計課税が課される
・100万円以下の過料
よほど悪質なケースでなければ、指導が入るだけで罰則がないケースもあります。とくに、過料についてはほとんど科されることはないので、知識として知っておくだけで問題ありません。万が一上記のような罰則が科されると、企業にとって大きな損失になってしまいます。しっかりと保存期間は遵守するようにしましょう。
証憑書類の保存を効率化させるなら電子化がおすすめ
社内で証憑書類の保管をするためには、管理にかかる人的・時間的コストや保管するためのスペースを必要としてしまいます。そのため、証憑書類を管理することが大きな業務負担になってしまっている企業も多いのではないでしょうか。
もしも現在、社内の証憑書類の管理に課題を感じている場合は、証憑書類を電子化して保管しておくことをおすすめします。電子化とは、必要書類をPDFや画像データとして保管しておく方法のことです。ここでは、証憑書類を電子化するメリットとデメリットについて紹介します。
電子化することによるメリット
証憑書類をペーパーレス化すると、以下のようなメリットが得られます。
・紙や管理コスト削減
・省スペース
・リモートワークへの対応
・書類の検索性が上がる
・書類の紛失や劣化を防げる
証憑書類をデータ化すると、紙を印刷したりファイリングしたりする手間が不要となるため、コストの削減が叶います。データ保管となるため、保管庫や書類棚などの設置が不要となり、省スペースも実現できるでしょう。
また、データとして保管していれば、リモートワークで社内にいない従業員でも書類の確認ができるようになります。検索性が高く紛失や劣化のリスクがないため、使い勝手が向上して安心感も増すでしょう。
電子化することによるデメリット
証憑書類の電子化にはメリットが豊富ですが、反対にデメリットもあるため注意しましょう。考えられるデメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
・導入コストがかかる
・情報漏洩の危険性がある
・視認性が下がる可能性がある
電子化を導入する際は、最初に専用システムの構築やスキャナなどの用意が必要です。また、外部からの不正アクセスや社員の管理情報体制によっては、情報漏洩が起きてしまう恐れがあります。必ず、パスワードの設定やセキュリティソフトの使用を徹底し、情報を保護する環境を構築しましょう。大きなサイズの紙をデータ化するときは、サイズが縮小されることによる視認性の低下にも注意が必要です。
電子帳簿保存法改正に伴う証憑書類の保存方法
電子帳簿保存法では証憑書類の保存方法について規定しています。以下に規定の内容について解説します。
スキャナ保存
紙で受領した証憑書類をスキャナで読み取って電子データとして保存する場合、一定の画質を担保することや所定期間内にタイムスタンプを付与することなどが保存要件です。ただし訂正や削除を行ったことが確認できる、もしくは訂正や削除ができないシステムでスキャン保存した場合ではタイムスタンプは不要です。
スキャンが済んだ原本(紙の書類)は従来では内部統制・不正防止の観点から定期的な検査のために保管が必要でしたが、改正後はスキャン後すぐに廃棄しても構わないことになりました。また検索要件についても改正後は緩和されており、改正前は種類に応じた主要な記録項目で検索できることが要件でしたが、改正後は取引年月日、取引項目、取引先の3項目に限定されました。
電子取引
電子取引は電子帳簿保存法上ではスキャナ保存と共に保存区分の1つとなっており、PDFファイルやスクリーンショットなどの電子データは通信手段とは関係なく電子取引に分類されます。電子取引で授受された電子データの保存要件はシステムの操作マニュアルを整備すること、データが確認できるようにディスプレイやプリンタを備え付けること、検索機能を確保することなどです。
検索機能について改正前は日付と金額に関わる記録項目について範囲を指定して検索できることと、複数の任意の記録項目を組み合わせて検索できることが条件でした。改正後は適正化が図られて税務職員からダウンロードが求められた場合に応じることができればこれらの条件を満たすことは不要となりました。
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