口座振替(口座引き落とし) の仕組みとは?メリット・デメリットや残高不足の影響も解説!

口座振替

通販の定期コースや頒布会、サービスの会員料金など、定期的な支払いが生じるケースは多いものです。
こうした支払いを毎月自動で完了する仕組みがあれば、事業者にもお客様にもメリットが大きくなります。その手段の1つが口座振替(口座引き落とし)です。

日本では昔から水道料金、ガス料金、電気料金などの公共料金を銀行口座から引き落とす決済手段として広く用いられています。
これは海外ではあまり見られない決済手段で、海外の国々ではサービス利用者が毎月送られて来る請求書に小切手を同封して事業者に送り返すという支払い方法が一般的です。
このように手間のない口座振替は、日本独自の優れたシステムとして発展してきました。

今回は口座振替の仕組み、口座振替のメリット・デメリットのほか、口座振替における残高不足の影響などにも触れて解説します。

口座振替(口座引き落とし)とは


口座振替(口座引き落とし)とは、毎月の公共料金や各種サービスの利用料金を利用者が指定した銀行口座から、自動的に引き落とすことで支払い完了する決済サービスを指します。

自動振替または自動引落としとも呼ばれ、一般的には振替で支払いを行う利用者には手数料が掛かりません。支払う側にとっては振込用紙を持って金融機関やコンビニエンスストアに出向く手間をなくし、支払いを受ける側にとっては毎月確実に代金が回収できる決済手段であることから、日本では一般的な決済手段として根付いています。近年は、毎月支払いが発生するサービスを中心に幅広く普及しています。

最近は、口座振替の手続きをインターネット(Web)上で進められる仕組みも普及しています。従来の方法では、書類を書いたり郵送したり、登録完了まで時間がかかるなど、手続きの手間が多いという問題がありました。また、記入ミスなどがあった場合は最初からやり直すケースもあるため、利用開始までにタイムラグが発生するのも口座振替のデメリットです。しかしWeb(ネット)口座振替であれば、これらの作業をオンライン上で進められるため、スムーズに利用開始できます。

口座振替(口座引き落とし)の仕組み

口座振替(口座引き落とし)の仕組みは、銀行や信用金庫などの金融機関が「引き落とし」という形で、サービスを利用した消費者の口座から加盟店(サービス提供事業者)の口座へと資金を移動するものです。

この際、口座振替の仕組み上、加盟店は、「金融機関と口座振替の直接契約を結ぶやり方」と、「決済代行会社との契約を通じて各金融機関で口座振替が行えるようにするやり方」の2つの導入方法から、いずれかを選ぶことになります。

消費者ごとに保有する口座がどこの金融機関かは異なるため、すべての銀行や信用金庫などと各自契約を締結する必要がある「直接契約」よりも、1社と契約すれば提携先の各金融機関を利用できる「決済代行会社」のほうが、より簡単に口座振替を導入できるといえます。

なお、法人・個人を問わず、事業者が口座振替(口座引き落とし)を導入する方法については、以下で詳しく解説しています。

口座振替の導入手続きの流れとは?手続き時の注意点なども解説

事業者が口座振替(口座引き落とし)を導入するメリット

では、次に事業者が口座振替(口座引き落とし)を導入するメリットをご説明しましょう。
事業者が口座振替サービスを導入する主なメリットが、以下の5点です。

代金未払いリスクを抑えられる

サービスを利用した消費者から代金の払い込みがなければ、企業の資金面は悪化し、ひいては倒産に至る可能性さえあります。
しかし、口座振替(口座引き落とし)を導入していれば、こうした代金未払いのリスクを最小限に抑えられます。口座振替による代金回収率は90%以上とされているため、安定した資金繰りを実現できるでしょう。
口座振替が設定された口座から自動で請求金額が引き落とされるため、消費者側が忘れていたことによる振込漏れや延滞といったミスを低減できます。

継続利用率の向上が見込める

サービスを利用する消費者にとって、月々の支払いを意識するタイミングは解約のきっかけになりやすいものです。口座振替(口座引き落とし)で代金回収を自動化することで、サービス利用継続率の向上にもつながります。

集金業務の効率化を図れる

口座振替(口座引き落とし)によって消費者からの支払いがスムーズになると、事業者側の集金業務の効率化にもつながります。
基本的に、集金業務は「事業者が消費者に請求して終わり」ではありません。過剰入金の払い戻し作業や入金不足による追加入金の依頼など、さまざまな請求業務が発生します。一つの未払いを解決するのに、たくさんの時間や工数が必要となることも珍しくありません。

これに対して、口座振替は毎月決まった金額を自動で引き落とすため、導入することで未払いの処理にかかっていた工数を大幅に削減することができます。

顧客層の拡大につながる

クレジットカードを持つ方が増えていますが、その一方でクレジットカードを持たない方も一定数います。
そういった方が、使用できる決済手段がないために皆様の商品やサービスの購入を断念されることになれば、新規顧客の獲得は難しくなってしまいます。

口座振替(口座引き落とし)は半世紀以上前から導入され、多くの人にとって馴染みのある決済方法であるため、クレジットカード決済が弊害となって獲得できなかった新たな顧客層の獲得も望めるでしょう。

代金回収コストを削減できる

期日までに代金が回収できない場合、確認の連絡として請求書を再送したり、それでも動きがない場合は催促状を送ったりするのが一般的です。
しかし、この業務には、請求書や催促状の印刷・封入・郵送など、さまざまなコストが発生します。

しかし、口座振替(口座引き落とし)は毎月決まった金額を自動で引き落とすため、導入することでこれらのコストが発生する率を最低限に抑えることができます。
未回収0件とまではいかないかもしれませんが、催促に至る案件が減ることは必要以上の出費をしなくて済むことになるため、企業にとっては立派なメリットといえるでしょう。

事業者が口座振替(口座引き落とし)を導入するデメリット

事業者側が口座振替(口座引き落とし)を導入する主なデメリットは、以下の3点です。

手続きや運用が煩雑

口座振替(口座引き落とし)は、指定口座からの自動引き落としを開始するまでの手続きに手間が掛かります。まず、利用者の指定口座を自動引き落とし先として登録するには、金融機関に口座振替依頼書を提出しなければなりません。

この書類には消費者側が引き落としを希望する口座の銀行名や口座番号などの口座情報を記入し、届け印を捺印する必要があります。口座情報の誤りや記入漏れ、印鑑相違などの不備があると金融機関は手続きを進めることができません。
この場合は、再度利用者から正しい口座情報が記入された口座振替依頼書を提出してもらうための事務手続きが発生します。

ECサイトのように利用者と直接対面しない事業形態の場合、消費者側と郵送で書面のやりとりを行うため、運用上の煩雑さを産む原因になります。

入金までタイムラグがある

上述した口座振替依頼書を金融機関に直接もしくは決済代行会社を介して提出するいずれの場合でも、提出から実際に口座振替(口座引き落とし)が開始できるようになるまで、1~2ヶ月かかります。

その間は事業者への入金がないため、口座振替開始可能日よりも前に消費者から代金を徴収する必要がある場合は、他の決済手段を用意せねばなりません。

また、口座振替開始後も、消費者の口座から引き落としを実施した日から実際に事業者の口座に入金されるまでには、数日間のタイムラグが発生します。

タイムラグの日数は金融機関や決済代行会社によって異なりますが、10日前後はかかるのが一般的です。商材の仕入れや関係会社への支払いなどの日程を鑑みて、キャッシュフローの観点において問題がないかを確認する必要があります。

残高不足による未回収リスクがある

口座振替(口座引き落とし)は、他の決済手段よりも高い代金回収率がありますが、残高不足による未回収リスクをゼロにはできません。残高不足で未回収になるのは、主に次の2つのケースです。

1つ目は、消費者側がサービスを利用中であることを忘れてしまったり、口座振替によって代金を支払っていることを忘れていたりするケースです。
このケースは、口座振替が消費者に利便性をもたらす半面、ともすると代金支払いに対する意識を遠ざけてしまいがちなことから引き起こされる未回収事例といえるでしょう。

2つ目は、給与口座が口座振替に指定されているケースです。引き落とし日が給料日よりも前に設定されている場合、残高不足になる確率はどうしても高まります。
こうしたケースに備えて、消費者側の口座に不足分が補填された時点で改めて自動で引き落とす旨の契約を結んでおくことは大切です。ただし、引き落としの回数が増えると、金融機関への手数料も増えるため、注意が必要です。

消費者が口座振替を利用できるメリット

ここまで、事業者側の視点を中心に解説してきましたが、口座振替(口座引き落とし)は顧客にとってもメリットの大きい支払い方法です。
顧客が口座振替を利用できる主なメリットとしては、以下の3点です。

支払いの手間がなくなる

口座振替(口座引き落とし)を利用することで、消費者側は毎月銀行やATMまで支払いに行く手間がかからなくなります。
毎月振込を利用していると、時に振込期日を間違えたり入金金額を間違えたりする可能性もあるでしょう。しかし、口座振替を導入していれば、そのような心配は不要になります。

決済がスムーズに行われるようになれば、消費者側も商品購入までのハードルが下がり、今まで以上に買い物が楽しめるようになるでしょう。

クレジットカードを使う必要がない

ECサイトなどを利用する場合には、クレジットカードによる決済は非常に便利です。しかし、クレジットカードの契約には年齢や年収といった条件もあります。こういった条件から契約ができなかったり、個人情報の流出などを恐れてクレジットカードを持たない判断をされる方もいます。

そのような消費者も、口座振替(口座引き落とし)を利用することで、個人情報の流出を心配せずにサービスや商品を購入することが可能となります。

振込手数料がかからない

口座振込で代金を支払う場合、どうしても手数料がかかるという難点があります。その点、口座振替(口座引き落とし)なら消費者側には手数料がかかりません。

振込手数料は、1回200~300円ほどの出費かもしれませんが、支払金額や取引頻度が多い場合は、消費者側の負担にもなり得ます。口座振替によって手数料がかからないとなれば、消費者側としても、サービス利用や商品購入のハードルが下げるでしょう。

消費者からみた口座振替を利用するデメリット

消費者からみた口座振替(口座引き落とし)を利用するデメリットは、以下の通りです。

振込手数料がかからない

事業者側のデメリットでも挙げましたが、消費者側からみても、事前に手続きが必要な点は、口座振替(口座引き落とし)を利用するうえでデメリットといえます。
銀行印と書類の印鑑が異なっていたり、口座名義が間違っていたりすると修正作業が発生するため、開始の際に手間がかかる面があります。

しかし、一度利用を開始できればこれ以降は自動で支払われるので、長く継続して支払う場合は口座振替を利用した方が便利といえます。

デメリットを解消する2つの口座振替受付サービス


上記のようなデメリットを解消する方法として、決済代行サービス会社では便利なサービスを提供している場合があります。以下にそれぞれについて解説します。

専用端末機を活用した口座振替受付サービス

1つは、決済代行サービス会社が用意する専用の端末機で銀行のキャッシュカードを読み取り、口座振替依頼書の代わりに暗証番号を入力して口座振替を受け付けるサービスです。サービス提供事業者は、店頭に専用端末機を設置して運用します。主に学習塾やスポーツクラブ、生命保険の契約、継続提供・利用するサービスなどで活用されています。

専用端末機の種類や価格は決済代行サービス会社によって異なりますが、レンタルよりも買い取るタイプの方が一般的で、価格相場は2万円から10万円程度です。

銀行の届出印をいつも持ち歩いている人は少ないものの、銀行のキャッシュカードは財布に入れて持ち歩いている人が多いでしょう。店頭で口座振替(口座引き落とし)の手続きが完了できれば、購買意欲を損なうことなくスムーズに手続きできます。

Webサイトを活用した口座振替受付サービス

もう1つは、Webサイトを活用した口座振替受付サービスです。これは前述の専用端末機を用いた口座振替受付サービスよりも仕組みがやや複雑になります。この方式では、それぞれの金融機関のWebサイト上で本人確認を行って口座振替サービスの手続きを行います。そのため、サービス提供事業者は、自社のWebサイトが決済代行サービス会社のWebサイトと連携できるように開発する必要があります。

口座振替代行サービスの比較ポイント


口座振替代行サービスは、自社に合ったものでなければ導入・運用を効率化することができません。ここでは、口座振替代行サービスを検討する際に比較すべきポイントについて解説します。

手数料や費用は総額で比較する

決済代行サービスを利用する際には、各種の費用・手数料を支払うことが必要です。

契約時に支払う初期費用は無料とする決済代行サービスや、初期導入費用がかかる代わりに月額費用や決済手数料を安価に抑えていたり、月額費用の有無が毎月の利用状況に応じて変動したりするサービスも存在します。

決済代行サービスを選ぶ際は、初期費用とランニングコストをトータルで勘案して評価すると良いでしょう。

導入がスムーズか

消費者の口座から代金を振り替えるためには、振替操作の元となる請求データ(集金データ)を作成して金融機関もしくは決済代行サービスへ送信する必要があります。
この口座振替作業用のシステムについて、決済代行サービス側でどのようなものを用意しているかを確認しましょう。

請求データは「全銀フォーマット」と呼ばれるデータ方式に則って作成しますが、決済代行サービス側でこのデータ方式に対応したシステムを用意してもらわないと、データの作成・送信ができません。
データの送信についてはインターネットを介して送信できれば手間がかからず合理的です。これらのような要件を満たしたシステムを用意できている決済代行サービスであれば、口座振替の導入はスムーズに進むでしょう。

実績と信用はあるか

決済代行サービスを利用するということは、自店舗の売上管理の一部を任せるということです。そのため、安心して任せられるサービス・会社かどうかを確認しなければなりません。
利用開始後にシステムトラブルが発生したり、売上金が正しく振り込まれなかったりすることがないようにしましょう。

まずは決済代行サービスを提供する企業のホームページなどを調べて、導入実績があるかを調べることをおすすめします。
単なる導入社数や取引件数などの数字だけではなく、具体的な社名を公開している方がより信頼できます。
特に、大手企業や有名企業、自社と同じ業種の企業などに導入実績があれば、導入後のトラブル発生リスクは避けられるでしょう。

決済手段は自社に合っているか

口座振替以外にもさまざまな種類の決済手段があり、自社がターゲットとする客層によって最適とされるものは異なってきます。
キャッシュレス決済の代表格であるクレジットカード決済はもちろんのこと、若年層には電子マネー決済やキャリア決済、現金払いを好む層にはコンビニ決済を準備しておくことがおすすめです。海外の顧客も取り込みたいなら多通貨決済も考慮に入れると良いでしょう。

ただし、決済代行サービスによって対応できる決済手段は異なるため、ターゲットとする客層を見極めたうえで、検討している決済代行サービスに希望する決済手段があるかをチェックしましょう。
自社と同じような業種に納入実績がある決済代行会社であれば、決済手段のミスマッチも少なくなるでしょう。

セキュリティ機能の確認

近年、ネット上で稼働しているシステムがサイバー攻撃に遭う傾向が増えています。顧客の名義、電話番号、口座番号、クレジットカード番号などの重要な個人情報を守るためには、強固なセキュリティ対策を講じなければいけません。

決済代行サービスを利用するということは、セキュリティ体制に関しても決済代行サービスに委託することになるため、万全なセキュリティ体制を敷いているか精査しましょう。

例えば、「情報セキュリティ管理の仕組みであるISMS認証を取得しているか」「個人情報保護体制の適合性を証明するプライバシーマークを取得しているか」などです。
個人情報が外部に漏れると、事業継続が困難となる恐れもあるため、しっかりと確認しましょう。

口座振替は「サブスクペイ」にお任せ!

口座振替はサービスを提供する事業者とサービスを利用する消費者の双方にメリットをもたらす決済方法です。しかし、事業者が金融機関と直接契約を行うのは、管理工数が増大することからも現実的ではありません。

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監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。