時短勤務の給与計算方法とは?基本的な計算の仕方からよくある質問まで解説

経理

昨今、育児や介護などのために時短勤務という形で勤務する方が増えています。時短勤務に関しては「育児・介護休業法」に明記されており、企業は時短勤務を希望する従業員に対してしっかりとした対応をする必要があるのです。

今回は時短勤務の給与計算について解説をします。本記事では時短勤務の基本的な給与計算方法や間違いやすいポイントも解説しているため、時短勤務の給与計算への理解が深まるでしょう。時短勤務の従業員がすでにいる企業はもちろん、これから対応が必要な方にも役立つ内容です。ぜひ最後までご確認ください。

時短勤務の給与計算方法


従業員が育児・介護を理由に時短勤務を希望した場合、企業がこれを理由に時給や基本給を減額することは認められていません。ただし、育児・介護以外の理由で時短勤務を希望した場合は除きます。アルバイトやパートといった契約形態の場合はもともと時給計算なので、単純にもとの時給に働いた時間を乗じて給与計算すれば問題ないでしょう。

月給の場合は給与計算方法が変わってくるので注意が必要です。冒頭でもお伝えしたとおり、7原則基本給や諸手当の変更は認められていません。時短勤務中の計算式は「基本給×(時短勤務の所定労働時間÷通常の所定労働時間)」です。フルタイムで働いた際の基本給が20万円の方が、勤務時間を6時間に変更した場合の給与について考えてみましょう。

この場合、フルタイムの所定労働時間は160時間(8時間労働×20日)、時短勤務の所定労働時間は120時間(6時間労働×20日)になります。先ほどの計算式に当てはめると、20万円×6時間÷8時間=15万円となり、これが時短勤務中の給与です。

フルタイムの基本給が20万円の場合、労働時間を25%減らせば当然ながら基本給も25%減少するため15万円となります。ただし、これはあくまでも基本給に限った話です。実際の手取り額はより減少幅が大きくなるため、気をつけなければなりません。次章以降で詳しく解説しましょう。

時短勤務時の給与計算方法で大事な2つの視点


時短勤務の給与計算は、式に当てはめればそれほど難しくありません。計算式の根底には、2つの法律と原則があります。以下では「育児・介護休業法」と「ノーワーク・ノーペイの原則」の解説を行います。どちらも時短勤務の計算には欠かせない視点です。この機会におさえておきましょう。

育児・介護休業法

育児・介護休業法に定められた育児・介護休業制度とは、育児や介護をする必要のある労働者が仕事と両立しやすくするための制度です。特に第10条の「不利益取扱いの禁止」では、育児や介護に必要な休業申請や申し出を理由とする解雇やその他不利益な取扱いを禁止しています。厚生労働省の「育児・介護休業制度ガイドブック」によると、不利益取扱いの対象となる行為は以下の通りです。

・解雇すること
・減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと
・昇進、昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと
・期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
・労働者が希望する期間を超えて、その意に反して所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限又は所定労働時間の短縮措置等を適用すること
・正社員をパートタイム労働者等の非正規雇用社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと

上記はあくまで不利益取扱いの一例です。雇用主には「育児・介護休業法」に沿った規定整備を行う義務があります。

ノーワーク・ノーペイの原則

ノーワーク・ノーペイの原則とは、労働者が働いていない時間に限り、雇用主はその分の給与を支払う義務がないという給与計算の基本原則のことです。このことは、労働基準法第24条に明記されています。短縮した勤務時間と基本給の減額の割合が一致する場合は、特に問題ありません。

問題は、減少した労働力よりも明らかに賃金の減少幅が大きいケースです。たとえ時短勤務であっても、労働の対価に見合った賃金を支払う必要がある点に変わりはありません。時短勤務の計算では「不利益取扱いの禁止」に該当しないか十分に気を付けましょう。

時短勤務では基本給と手取りの減額幅が違うの?

時短勤務では、基本給と手取りの減額幅に違いがあります。例えば、基本給が25%程度減った場合、手取りは3~4割ほど減少するのが一般的ですが、半分程度に減ってしまうケースも珍しくありません。時短勤務の手取りが減りやすい原因は下記の3点です。

・残業や深夜勤務の減少
・賞与の減少
・社会保険料が高い

育児休業後に時短勤務に移行した際は、社会保険料の減額制度が利用できます。時短勤務の希望者が該当する場合は減額措置の案内も忘れずに行いましょう。

時短勤務の給与計算でよくある質問


時短勤務の給与計算では、各種手当や賞与の扱いに迷う方も多いでしょう。年金額や社会保険料の扱いがよくわからないという声もよく耳にします。ここでは、時短勤務の給与計算でよくある質問を解説します。

手当は付くの?

残業代などの諸手当は基本的に減少しますが、実際の手当の有無は会社ごとに異なります。手当に関する支給の趣旨や支給要件、支給額などが確認できるのは会社の就業規則です。各企業が就業規則に規定している諸手当は主に3つあります。

・労働日数や労働時間を基準とする手当
通勤手当や宿直手当、食事手当などが該当し、実際の労働日数や労働時間に応じて支給されるもの

・職務を基準とする手当
主に役職手当や資格手当が該当し、勤務日数や時間を問わずあらかじめルールとして定めておく必要があるもの

・家庭関連の手当
住宅手当や扶養手当が該当し、勤務日数や時間に関係なく支給されるもの

上記のうち、時短勤務の場合に減る可能性があるのは「労働日数や労働時間を基準とする手当」だけです。時短勤務の給与計算で手当の支給を行う際は、就業規則を十分確認しましょう。

賞与は受けられるの?

手当と同様に、賞与についても法律には規定されていません。そのため、賞与の支給の有無や金額は会社ごとに自由に決められるのです。賞与の決め方には以下の2通りの方法があります。

・基本給を基準とする場合
たとえば「基本給の2ヶ月分を支給する」という規定がある場合、基本給が15万円の従業員には15万×2=30万円分の賞与を支給します。

・企業の業績や個人の業績を基準にする場合
この場合は、フルタイムと時短勤務の差を作らない、時短勤務の労働者に無理な目標設定をしないなどの配慮が必要です。

会社によっては、基本給と企業の業績・個人の業績の両方を複合的に判断して基準とする場合もあります。時短勤務の労働者に賞与を支給する場合は、就業規則で何を基準にしているか確認しましょう。

将来もらえる年金額は減る?

給与が減ると年金計算の基礎となる標準報酬月額も減るため、将来受け取れる年金額は減少するのが一般的です。「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申請書」を提出した場合に限り、年金額が減らずに済みます。対象者は3歳未満の子どもと同居し、かつ養育している方のみです。該当する場合は日本年金機構に必要書類の提出をし、申請手続きを行いましょう。

社会保険料は変わる?

時短勤務では、何も手続きをしなければ社会保険料が安くなることはありません。育児休業の場合に限り、「育児休業等終了時報酬月額変更届」を日本年金機構に提出することで減額可能です。時短勤務の社会保険料に関しては次章をご確認ください。

時短勤務の社会保険料

時短勤務で給与計算を行うと、当然ながら大半は給与金額が以前より下がることになります。その場合、社会保険料の等級は「随時改定」に該当すれば、減額された給与に合わせた等級に下がることになるのです。随時改定については後ほどご説明します。

一方、育児休業から復帰した場合、育児休業終了月以後3か月間に17日以上勤務した月が1か月以上あること、その上で等級に1等級以上の変動があれば4か月目から等級を変更することが可能です。将来受け取る年金額については、「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」を提出すれば従前の等級が維持されます。

この制度は、子どもが3歳になるまでの間に時短勤務で働き、それに伴って標準報酬月額が低下した場合、子どもが生まれる前の標準報酬月額に基づく年金を受け取ることが出来るようにできた特例です。介護による時短勤務の場合、育児によるものと異なり社会保険料の等級変更や厚生年金の特例などはないので注意しましょう。ただし、一般的な3か月平均による随時改定は除きます。

一口に時短勤務と言っても、希望する理由によって給与計算や社会保険料の改定方法に違いが出てきます。時短勤務の給与計算を行う際はケースごとに整理してから行いましょう。

最後に、随時改定について解説します。随時改定とは、以下の条件に該当した場合、速やかに社会保険料の等級を変更するための手続きです。

・昇給又は降給等により固定的賃金に変動があった。
・変動月からの3か月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。
・3か月とも支払基礎日数が17日以上である。

時短勤務制度の基礎


時短勤務の給与を計算するには、時短勤務制度のことも詳しく理解しておく必要があります。以下では時短勤務制度の概要や利用対象者、適用期間を解説します。基礎的な内容が中心なのでこの機会に確認しておきましょう。

時短勤務制度とは?

時短勤務制度とは、子育てや介護を理由にフルタイムで働くのが難しくなった方をサポートするための制度です。「育児・介護休業法」でも明確に規定されており、制度の要件を満たせば、原則フルタイムから6時間勤務に変更できます。たとえば、フルタイムで9時から18時まで勤務する会社では、16時まで勤務時間を短縮することが可能です。事業内容によって時短勤務制度の導入が難しいケースでは、育児・介護でそれぞれ代替策を講じましょう。

育児休業の代替案
・育児休業制度に準じる措置
・事業所内の保育施設の設置
・出社、退社時間の繰り上げおよび繰り下げ
・「フレックスタイム制」の導入

介護休業の代替案
・所定労働時間の短縮
・介護サービス費用の援助
・出社、退社時間の繰り上げおよび繰り下げ
・「フレックスタイム制」の導入

時短勤務の利用対象者

育児目的で時短勤務制度を利用する際は「3歳に満たない子を養育する労働者」である点を満たす必要があります。加えて、以下の4つの要件をすべて満たす必要があるため気をつけましょう。

・1日の所定労働時間が6時間以下でないこと
・日々雇用される者でないこと
・短時間勤務制度が適用される期間に現に育児休業をしていないこと
・労使協定により、適用除外とされていないこと(たとえばその事業主に継続して雇用された期間が1年に満たない労働者や、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者など)

なお、介護を目的として時短勤務を利用できるのは「要介護状態の対象家族を介護」する場合のみです。日々雇用ではなく、かつ労使協定を締結している場合に対象外となる労働者でなければ、すべての労働者が利用対象となります。

時短勤務の適用期間

育児で時短勤務を利用する際は、子どもが3歳を迎えるまでは制度を利用できます。裏を返せば、3歳の誕生日を迎えた瞬間に制度が利用できなくなるのです。一方、介護を目的とした時短勤務には適用期間の定めはありません。実際は「利用開始日から連続する3年以上の期間」であれば期間内に2回まで取得可能です。

育児・介護休業法の改正ポイント


時短勤務に関する規定がある「育児・介護休業法」は幾度かの改正を経ており、日々変化しています。2022年だけでも4月と10月の2回改正があり、今後も改正される可能性があるのです。ここでは、直近であった育児・介護休業法の改正ポイントを紹介します。

実際の改正点

2022年4月の育児・介護休業法改正時に変更されたのは下記の2点です。

・雇用環境整備、個別の周知、意向確認の措置の義務化
・有期雇用労働者の育児、介護休業取得要件の緩和

特に、育児や介護の休業取得をしやすくするには労働者全体への周知が大切で、研修の実施や相談窓口の設置が効果的です。個別に周知する必要があるときは、面談や書面交付、メールなどを活用しましょう。

2022年10月の改正では「産後パパ育休(出生時育児休業)」が制定され、育児休業の分割取得が可能となりました。ちなみに産後パパ育休は育児休業とは別に取得できるもので、子どもの出生後8週間以内に4週間まで取得可能です。

具体的な企業の対応

法改正が行われた際に企業の人事・労務担当者が対応しなければいけないことは2つあります。まずは「就業規則の改定」です。2022年4月の改正では「有期雇用労働者の育児・介護休業の取得要件緩和」、10月の改正では「産後パパ育休(出生時育児休業)」「育児休業の分割取得」の2点を追記する必要があります。

次に必要になるのは「雇用環境の整備」です。2022年4月の改正では、育児や介護の休暇を取りやすい環境づくりはもちろん、従業員同士が協力しあえる環境整備も欠かせません。10月の改正で追記された「産後パパ休」は新しい制度なので、従業員への周知や業務体制の見直しが必要になります。

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監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。
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