関係会社とは?関係会社間取引(グループ間取引)における経理上の注意点なども解説
会社の規模を拡大していくなかで、取引先の会社とは別に、自社と資本的な繋がりを持つ会社や、技術面や人事面で交流のある会社との関係が生まれることがあります。そのような会社を会計実務用語では「関係会社」と呼びます。
関係会社は、お互いの影響の範囲や支配の立場・強さなどの関係要件に応じて、親会社、子会社、関連会社などに分類することができます。このような関係会社は、互いにどのような関わりを持っているのでしょうか。
本記事では関係会社の定義と種類、関係会社間取引の経理業務、経理上の注意点などについて解説するとともに、関係会社間の請求業務の生産性を向上させる請求管理ロボについてご紹介します。
関係会社とは
関係会社の概念を理解するため、関連会社との違いや関係会社のメリット、間違えやすいポイントについて解説します。
関連会社との違い
関係会社と関連会社はよく似た呼称のため、混同して使われるケースもありますが、本来はどのような意味なのでしょうか。
はじめに、関係会社について説明しましょう。関係会社とは、自社の事業活動をしていくなかで、密接に関係する会社の総称です。親会社、子会社、関連会社など、会計上規定された関係にある会社を関係会社と呼んでいます。
一方、関連会社とは、出資面や人事関係、資金の拠出、技術に関する交流、取引先との関係などを通じて、財務、営業、事業などの方針決定に対し、自社が重要な影響を与えることができる会社です。関連会社の定義は、自社がその会社の議決権を20%以上~50%未満保有していることや、議決権以外にも一定の要件を満たしていることが該当します。
つまり、関係会社の定義はより包括的な概念で捉えた言葉で、関連会社は関係会社の一部という意味合いになります。
親会社と子会社の関係
「親会社と子会社」という言葉をよく耳にしますが、親会社と子会社にも定義があります。ある会社が、他社の議決権の実質50%超を所有すると、ほかの会社の意思決定機関を支配している状態になります。そのような場合、支配している方が親会社、支配されている方が子会社です。親会社は子会社に対し強い影響力を持ちます。
上記の関連会社においても、議決権の保有数に加えて実質的に支配されている実態が認められる場合は、子会社とみなされることもあります。
合併との違い
合併とは、2つ以上の会社を統合して1つの会社にすることです。被合併法人は財産、権利義務など、すべてを合併法人に承継させ、消滅することになります。合併には、既存の会社が承継する吸収合併と、新設会社が承継する新設合併の2種類がありますが、どちらを利用した場合も合併後に残る会社は1つです。
合併は、異なる事業をまとめることでシェア獲得やシナジー効果を得ることを目的にしていますが、子会社の設立は事業を「分散」させて効率化を目指す性格が強いため、この点において両者は大きく違うといえるでしょう。
関係会社のメリット
法人税の納税において、100%子会社との間では赤字と黒字が相殺することが可能です。これを連結納税といい、グループ全体の税金コストを減少させることができます。関係会社間で、人材や情報といった有形無形問わず資源を有効活用できる点もメリットです。
また、子会社の設立は、消費税免除効果が期待できます。設立した子会社が資本金1000万円以下であれば、設立後2年間は消費税が免除されます。
さらに、企業の規模によって以下のメリットがあります。
・中小企業の場合
年間800万円までの交際費を損金として計上できます。そのため、子会社を設立した場合には、親会社と子会社と併せて合計1600万円まで交際費として損金に算入することができます。
・資本金が1億円以下の場合
800万円以下の所得に対して軽減税率が適用されます。子会社の設立で利益が分散されれば、親、子会社ともに法人事業税の軽減税率を適用することができます。
関係会社のデメリット
つぎに、関係会社を持つことでどのようなデメリットがあるのか見ていきましょう。
・手続きの負担やランニングコストの増加
設立時のさまざまな手続きに加え、重複する部署や業務がある場合、余計な費用がかかる可能性もあります。
・完全親子関係の場合を除いて、親会社と子会社の損益通算は行えない
黒字と赤字相殺による税金負担の軽減ができるのは、100%親会社と子会社の関係である場合のみです。100%子会社でない場合は、たとえグループ全体が赤字であっても、黒字経営の関係会社分の法人税は支払わなくてはなりません。
・税金負担が増す場合もある
法人市民税における均等割という税目は、黒字赤字に関係なく、法人の数に対して課せられます。子会社が増えれば均等割の負担は増えることが考えられます。子会社設立に関して節税効果が得られていれば、均等割の負担はあまり気にする必要はありませんが、子会社設立によってかかる税金についても考慮しましょう。
関係会社間で取引する際の経理上の注意点
上述の通り、関係会社間取引では、第三者との取引とは異なり、原則にそぐわない経理・税務処理が行われがちです。たとえば、一方の会社が資金繰りも厳しいからと、他方の会社から有利な取引条件を設定することは容易にできてしまうでしょう。しかし、関係会社とはいっても別会社のため、このような取引を行っている場合は税務調査で指摘される可能性もあります。
関係会社取引は、大きく分けて100%支配関係がある場合に適用される「グループ法人税制」とそれ以外の場合に適用される税制に分けることができます。それぞれのケースにおける注意点を見ていきましょう。
グループ法人税制の場合
グループ法人税制が適用される100%グループ内の法人とは、完全支配関係のある法人であり、同一の者が法人の発行済株式などの全部を保有する関係であることが条件です。または、同一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の実態的な関係をいいます。
グループ法人税制は、完全支配の関係にある法人同士を一体として捉えて課税を行うという考え方から、資本金の大小に関係なく、グループ内すべての法人に対して強制的に適用されます。代表的なものとして下記のような取り扱いがあります。
(1)100%グループ内の法人間の資産の譲渡取引
完全支配関係にある法人間の一定の資産の譲渡については、譲渡損益を繰り延べます。 対象となる資産は、固定資産、土地(土地の上に存する権利を含む)、有価証券、金銭債権および繰延資産です。売買目的有価証券および譲渡直前の帳簿価額1000万円未満の資産は除かれます。
(2)100%グループ内の内国法人からの受取配当金
完全子法人株式に係る受取配当金について益金不算入制度を適用する場合には、負債利子控除を適用せず、受取配当の額の100%が益金不算入になります。
(3)100%グループ内の法人間の寄附金
完全支配関係がある他の内国法人に対して支出した寄附金についてその全額を損金不算入とするとともに、当該他の内国法人が受けた受贈益についてその全額を益金不算入とします。
その他の場合
グループ法人税制適用外の関係会社取引には、以下のようなものがあります。それぞれの取り扱いについて見ていきましょう。
(1)関係会社間の資産の譲渡取引
親会社と子会社間で行われる資産の譲渡取引において、時価よりも著しく低い価格で譲渡した場合、売却側には時価と取引価格の差額を寄附金として、買取側には、時価と取引価格の差を受贈益として認定します。寄附金には損金算入限度額があるため、一部が損金不算入になります。
(2)関係会社間の資金貸借取引
親会社と子会社間で資金貸借が行われることはよくありますが、無利息での資金貸借の場合は注意が必要です。関係会社間の資産の譲渡取引と同様に、貸付側では第三者間の利率に基づき計算した従来の利息分を寄附金とみなし、借入側では利息分を受贈益とみなすケースがあります。寄附金には損金算入限度額があるため、一部が損金不算入になります。
ただし、債務超過の子会社を救済するために無利息で貸付けるといった場合など、経済的利益を供与する側から見て、再建支援などの対策をしなければ今後より大きな損失を被ることが明らかな場合は、寄附金認定はされません。
また、子会社などの倒産を回避するためにやむを得ず行うもので合理的な再建計画に基づく場合も、再建支援を行うことに相当な理由があると認められるため、寄附金認定はされません。
(3)関係会社間の業務委託取引
関係会社に対して業務委託する場合、何の対価として委託料が支払われるかが明確になっていれば問題ありませんが、委託業務とその範囲が明確でないものについては取り扱いに注意が必要です。
たとえば、実態が不明確な委託業務に対し、毎月定額を支払うケースや、その金額の根拠が不明瞭である場合には、利益操作の疑いが向けられることがあります。そのため、委託側、受託側ともに発注書・請求書をきちんと作成し、具体的な業務内容や、その業務が履行されたことを証明できる状態にすることが必要です。
これらの証明が妥当ではない場合は、損金の否認、益金算入など、税制上不利な扱いがなされるケースがあります。
(4) 関係会社間のリベート取引
リベート(割戻し)とは、集客・販売能力の高い小売業者への販売促進の施策として、販売単価を下げる代わりに商品代金の一部を割戻しする、という取引です。この割戻しについても、第三者間取引と同様の算定基準を適用する必要があります。明確な算定基準がなく、不自然に高額な金額をリベートしている場合は、損金への計上が否認されるケースがあります。
(5)関係会社間の債権放棄
親会社が業績不振の子会社などに対する債権を放棄するケースがありますが、会社が有する売掛金、貸付金などの債権を放棄した場合、その金額は寄附金とみなされます。
ただし、関係会社間の資金貸借取引同様に、債権放棄などによる再建支援をしなければ今後より大きな損失を被ることが明らかな場合は寄附金認定されません。また、子会社などの倒産を回避するために再建支援を行うことに相当な理由がある場合は、寄附金認定されません。
(6)関係会社間の共通経費負担
関係会社間では、同じ事務所を賃借する場合など、共通の経費が発生することがあるでしょう。しかし、実態は共通の経費でありながら、一部の会社のみが負担していたり、使用割合以上に負担していたりする場合は、ほかのケースと同様に、過大に負担している側は寄附金に、過少に負担している側は受贈益認定される可能性があります。
関係会社間取引の経理業務
関係会社間取引における経理は複雑化する場合が多く、経理業務を担当するためには、一定以上のスキルが必要です。ここでは、関係会社間取引における経理業務の内容や、求められるスキルについて解説します。
業務内容
関係会社の規模が小さく、個々の関係会社で独自に取り扱う取引の量が少ないうちは、親会社とまとめて経理処理することも可能です。
しかし、取引の規模が拡大している場合は親会社とまとめて処理するには複雑になるため、各関係会社に経理部門を設置して、経理担当者が取引内容の帳簿記録を担当する必要があります。そこで必要になるのが、関係会社間取引を専門に扱う経理担当者です。
関係会社間での取引といっても、処理方法は通常の取引と同様に、個々の関係会社で帳簿に記録していくことです。しかし、関係会社間取引は、あくまで会社内あるいはグループ内での取引なので、そのまま期末決算に反映してしまうと、決算数値の水増しとなってしまいます。
そこで、決算の際は取引を洗い出して整理し、関係会社間の取引を整理して相殺するという作業が必要になります。
求められるスキル
上述の通り、関係会社間取引の経理業務を行うに当たっては、ある程度高度な経理知識が必要になるため、日商簿記2級レベルの知識があると良いでしょう。
日商簿記2級を取得するためには、本店集中計算制度、支店分散計算制度、当期純利益の振替、自己宛て為替手形などを学ぶ必要があり、会社間取引について一通りの知識を得ることができます。
また、関係会社間取引については、最終的には親会社と子会社の財務諸表を合算して連結決算処理を行うので、ここまでの業務を担当するためには日商簿記1級レベルの経理知識が必要になります。
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