海外出張にかかる経費の範囲や費用はどのくらい?精算する際の注意点とは
出張は大きく分けて、国内出張と海外出張の2種類あります。出張の目的は企業や業種によって国内のみ、国内と海外の両方などさまざまでしょう。国内外とも出張にはそれなりに経費が発生しますが、国内と海外では出張にかかる経費精算にどのような違いがあるのでしょうか。
海外出張に行った場合も、仕訳の項目は国内の出張と同様です。旅費や宿泊費、出張手当は「旅費交通費」、お土産代は「接待交際費」などとして仕訳を行います。
仕訳は同じですが、注意したいのが消費税の取り扱いです。国内では課税の対象であっても、海外であがった経費については課税されません。さらに気を付けたいのが、国内で使用されたものなのか海外で使用されたものかという点です。海外出張費の名目だとはいえ、海外に行くために乗り継いだ国内線の飛行機は、国内での旅費となるため消費税課税取引となります。
また、海外での経費は観光などの私的な経費が入り込んでしまうことがあるため、税務調査で指摘されないように注意が必要です。「どのような名目で何のために海外出張に行ったのか」「どのくらいの期間行ったのか」ということは控えておきましょう。
この記事では、海外出張で発生する経費精算の方法や注意点についても解説します。
出張手当とは
出張は遠方で仕事をする業務ですが、仕事の際には外食などの出費も発生します。そのため、出張に対して会社側は金銭的な補助を行うのが基本です。つまり、出張手当とは遠方で仕事をする従業員に金銭のサポートを行うことを指します。
出張手当と似た言葉に出張経費というものもありますが、この2つの違いには何があるのでしょうか。また、海外出張で渡航前と渡航後にかかる費用について、手当を支給するメリットと合わせて解説します。
出張経費との違い
出張手当と出張経費について金銭の支給という点は同じですが、支給の目的や条件、金額などが異なります。
まず出張手当ですが、前述したように遠方で仕事をする従業員に対して支給される金銭補助のことを指します。これは、出張中にかかる食事代などを含めた雑費を援助するものです。注意点としては出張手当は非課税のため、多く支払いすぎると税務調査でチェックが入ってしまいます。出張手当は必ず支給の妥当性を担保しておきましょう。
一方の出張経費は、出張するためにかかる新幹線代などの交通費やホテルの宿泊費などを指します。これには、レンタカーを利用した場合の料金やガソリン代も出張経費に含まれます。出張手当は出張に対する補助、出張経費は実際にかかる費用と見て良いでしょう。
海外出張で発生する出張手当はどのくらい?
出張手当は企業によって支給額が異なります。管理職や上級職は支給額が高く、役職がない場合は低くなるのが一般的です。ただし、出張先の国や地域によっては交通費や宿泊費、さらには海外保険の額までも変わってきます。海外出張の手当に関しては、その地域の物価を考慮した出張旅費規定を設けている会社がほとんどです。
渡航前と出張中に発生する費用については以下の通りです。
【海外出張の渡航先へ向かうまでに発生する費用】
・パスポート申請費用
・ビザ申請費用
・往復航空券
・出張のための物品購入代
・お土産代
・ワクチンなどの予防接種
・PCR検査代
【海外出張業務中に発生する費用】
・ホテルへの宿泊費
・現地を移動するためのタクシー代など
・通訳・ガイド
・飲食代
・海外保険
・Wi-Fiなどの通信費
・出張日当の相場
1日の出張で支給される手当については、基本の相場が約4000円〜7000円です。この金額は渡航先の国や地域によって変わりますが、比較的物価の高いヨーロッパ圏などでは支給額が高くなります。
・ホテルへの宿泊費
渡航先の国や地域の物価によって宿泊料は異なるため、支給額も変化します。
・タクシー代などの交通費
海外出張で発生する交通費は基本的に会社が負担します。現地の治安によっては公共交通機関の利用が難しい場合もあるからです。また、電車やバスなどが時刻通りに運行していないケースもあるため、タクシーでの移動を許可している企業は多くあります。
・飲食代や接待交際費
海外出張の際は外食する機会が多くあると思いますが、物価が高い国や地域では食費も高くなるため注意が必要です。接待交際費については領収書がないと精算が難しい場合もあり、規定されている金額も企業によって異なります。
出張手当を支給するメリット
出張は経済的にも肉体的にも負担がかかる業務です。そのため、会社側は出張に出る従業員の負担をできるだけ減らさなければなりません。出張手当は、そういった従業員の負担軽減にもつながります。
また、出張手当は全額使い切る必要はありません。出張中の思いがけない出費に対する負担軽減のために支給される金銭であるため、使い切らずポケットマネーにしてしまえば、従業員の手取り額が増加します。さらに、出張手当は出張に関する事務処理を円滑に行えるようになるメリットもあります。出張の多い会社であれば、作成した出張旅費規定に交通費や宿泊費の一律支給を盛り込むことで、費用の精算手続きといった事務処理を簡略化できるでしょう。
海外出張の経費になる範囲
海外出張の経費は実際に発生する交通費などの旅費以外に、同伴者がいる場合や海外に子会社を持っているケースなど、状況によって経費になる範囲が変わってきます。海外出張の費用として認められる範囲について、状況に応じて変わることに注意しましょう。
ここではそれぞれのケースに分けて、どれが経費として認められるのかを解説します。
どこまでが海外出張の経費として認められる?
海外出張の経費には宿泊費や交際費、渡航時の飛行機や現地のタクシー利用といった交通費、日当や出張に使う物品の購入代などがあります。税務上、海外出張における過度な支出は認められず、通常の支出範囲内の金額のみ経費として認められる点に注意しましょう。あらかじめ会社の出張規定を定めて、過度な支出が発生しないようにしておくと安心です。
同伴者がいた場合
同伴者の旅費に関しては、基本的に経費には計上できません。しかし、やむを得ない事情があった場合には経費として認められる場合があります。経費として認められるのは下記に記載している3つのいずれかに該当する場合です。同伴者が必要な海外出張の際は気を付けましょう。
・身体的な理由で同伴者が必要だと認められた場合
・従業員に適任者がいなかった場合で、通訳など高度な専門知識が必要であった場合
・国際会議で配偶者と同席しなければならなかった場合
海外に子会社を置いている場合
海外の子会社が負担すべき費用を日本の親会社が負担した場合には、「寄付金」とみなされ税務上不利になってしまうことがあります。例えば子会社に技術などを提供すべく出社する際、必要となった旅費などです。
反対に認められるケースとしては、子会社へ監査が入った際にかかった旅費などが挙げられます。経費として処理する際は、どのような理由で子会社に足を運んだのかを明確にしたうえで処理を行わなくてはなりません。
海外出張にかかる経費の精算は手間がかかる
海外出張はさまざまな経費が発生するため、それを精算する事務処理はある程度の手間や時間がかかります。また海外出張は国内出張とは違い、渡航先によっては物価や治安の面を考える必要があり、それらも経費の金額に影響を与えます。具体的にどのような手間がかかるのか見てみましょう。
経費の精算に時間がかかる
海外出張中に発生した経費の精算は、国内出張とほぼ同じ手順で行います。ただし、出張精算書を記入する際は渡航中の行動を思い出さなければなりません。また、経理の担当者は海外出張中に出た領収書を1枚ずつ確認し、該当する日の為替レートに合わせて精算を行う必要があります。これらの作業を考えると、経費精算にはかなりの手間や時間がかかってしまうでしょう。
出張管理の工程が複雑
出張管理の煩雑さなども時間がかかる原因といえます。海外出張に行く際はまず、出張の申請書や計画書を上長に提出しなければなりません。出張が決まったら渡航し、帰国後に精算書を提出します。計画書と精算書を上長が確認し、出張中の支出に問題がなかったかどうかをチェックするというのが海外出張の流れです。このように、出張管理の工程が複雑である点も精算まで時間がかかる要因であるといえます。
海外出張の経費を精算する方法
海外出張の経費精算には、さまざまな手続きや確認が必要です。どうしても時間や手間がかかってしまう経費の精算ですが、簡単にする方法も存在します。外貨で仮払金を渡す、クレジットカードを利用する、外貨対応の経費精算システムを導入する、の3つです。それぞれの方法を詳しく解説します。
外貨で仮払金を渡して出張後に精算する
出張する従業員に前もって仮払金として外貨を渡しておき、帰国後にかかった経費を精算するという方法です。この方法であれば為替レートの計算が必要なく、円を外貨に交換する手間もかかりません。
ただし、海外出張に合わせて外貨を用意しておかなくてはならず、渡航先の国ごとに外貨を管理する必要があります。渡航先が多くある場合は、外貨の管理や保管方法について考えておくべきでしょう。出張で訪れる機会が多い場所であれば、あらかじめ外貨を渡す方法は非常に有効です。
クレジットカードで精算する
既に多くの企業で、海外出張にかかる費用をクレジットカードで精算しています。クレジットカードを利用すれば、お金を使った日や何に使ったかを管理できるため、領収書の確認作業を省略できて便利です。また、クレジットカードは為替レートの処理を行う必要もありません。さらに、法人用のクレジットカードであるコーポレートカードを利用することで、経理作業の簡略化にもつながります。
クレジットカードは現金とは違い、紛失や盗難の際に補償を受けられます。しかし、渡航先の国によっては現金払いが主流で、クレジットカードによる支払いに対応していない場所もあるため注意が必要です。
外貨に対応する経費精算システムを利用する
海外出張が頻繁にあるのであれば、経費精算システムの導入を検討しても良いでしょう。
経費精算システムには為替レートの自動取得、計算、クレジットカードのデータ取り込みといった機能が搭載されているものがあります。経費精算システムがあれば、手間のかかる為替レートの確認も必要ありません。
海外出張の経費を精算する際の注意点
海外出張の経費を精算する際に注意すべきポイントがあります。明細書はしっかりと保管し、領収書の読み方も覚えるほか、為替レートの計算方法など、必要な知識を身に付けておきましょう。
ここでは、それぞれ5つの注意点を解説します。
海外出張規程を作っておく
海外出張の費用精算をスムーズにするために、海外出張規程を定めている企業も多くあります。そのため、海外出張規程を前もって作成しておけば、出張費用精算の負担が軽くなるでしょう。海外出張規程を作成する際は、交通費や宿泊費など旅費の種類をはっきりさせておくことが重要です。
領収書や外貨交換時の明細書は保管しておく
海外渡航にかかる費用は税法上厳しく見られる傾向にあります。海外出張の経費精算は国内出張とほぼ同じですが、買い物や飲食、外貨交換にかかった費用の領収書はしっかりと保管しておかなければなりません。海外は日本と違いチップの文化がありますが、チップは領収書がないため、日付や金額などを記録しておきましょう。
領収書の読み方を覚える
海外の領収書は外国語で記載されています。領収書の内容が分からなければ証跡も把握できないため、頻出する単語や記載内容のパターンは最低限覚えておきましょう。
また領収書に関しては、出張に行った社員本人が何にお金を利用したのか理解しているはずです。英語表記で把握が難しい場合は、領収書をもらった本人にその目的を詳しく聞いておくと良いでしょう。
為替レートの計算方法を覚える
海外出張の費用は為替レートに合わせて計算しなければなりません。為替レートは常に変動するため、その都度変動に対応できるようにしておく必要があります。海外出張が頻繁にある企業では、経理の担当者が為替レートの計算に時間を取られているケースもあるため、経費精算システムを導入しているところも少なくないようです。
外貨で支払った費用を経費にする場合は支払い日のレートを適用させる
費用精算の際、どの為替レートを適用させるかが重要です。外貨で支払った費用を経費にする場合、費用が発生した日の為替レートを適用させます。支払った日の為替レートを調べ、外貨を日本円に換算した金額を計算し、立て替えていた金額を精算する手続きが必要です。
海外出張の経費を精算する時の為替レートについて
為替レートには、主に3つの種類があります。
・TTB
金融機関が外貨を買い取る際のレートです。外貨を円に交換する際も利用します。
・TTS
金融機関が外貨を売る際のレートです。円を外貨に交換する際も利用します。
・TTM
TTBとTTSの平均値から算出するレートです。TTMは仲値とも呼ばれます。
海外出張経費を精算する際の為替レートを使った計算の流れは、まず海外出張から戻った社員が、経費の領収書や明細書を提出します。経理担当者は提出された領収書や明細書の確認を行います。この際、外貨で支払った費用を日本円に換算するため、支払い日の為替レートを検索する手続きが必要です。その後、経理担当者は会計ソフトを使って日本円に換算した経費を入力する流れとなります。
請求業務の効率化は「請求管理ロボ」にお任せ!
ここまで、海外出張で発生する経費について解説しました。出張にかかる経費はさまざまで、経費となる範囲も状況によって変わってきます。海外出張の経費精算で大変なことは為替レートの計算です。経理作業をスムーズに進めるために、海外出張が多い会社は計算を楽にするシステムの導入を検討すると良いでしょう。
「請求管理ロボ」は、毎月の請求業務を最大80%削減する請求管理・債権管理システムです。請求書の発行や送付、集金、消込、催促などの売掛金管理を全て自動化し、人的作業を減らしてミスを防ぐとともに、経理業務の効率化を実現します。
加えて、SFA(販売管理システム)との連携により、自動で行われた請求業務の内容を会計システムに反映させることも可能です。これにより、煩雑なやり取りの削減と企業会計の透明化をサポートし、従業員がコア業務に専念できるようになります。
なお、コンビニ決済、クレジットカード決済、口座振替、銀行振込など、複数の決済手段に対応しているため、企業間取引のみならず、BtoC取引にも活用いただけます。
インボイス制度・電子帳簿保存法にも対応しており、これまでに700社以上の企業に導入され、年間取引請求金額は約2,770億円に上ります。経費の管理や帳簿付け、請求業務にお悩みの企業のご担当者様は、お気軽に「請求管理ロボ」にご相談ください。