年末調整で控除できる要件と控除の種類

経理

年末調整で控除できる要件と控除の種類

会社等給与の支払を行う者は、役員または使用人に対して給与を支払う際に所得税および復興特別所得税の源泉徴収を行っています。

しかし、その年1年間に給与から源泉徴収をした所得税および復興特別所得税の合計額は、必ずしもその人が1年間に納めるべき税額となるわけではありません。
「1年間に源泉徴収をした所得税および復興特別所得税の合計額」と「1年間に納めるべき所得税および復興特別所得税額」を一致させる必要があるのです。

払いすぎた税金を還付してもらったり、足りない税金を追加で支払ったりして、過不足額を精算する手続を「年末調整」といいます。

ここでは、年末調整の対象者や算定方法、控除できる項目などについてお伝えします。

年末調整の対象となる人は?

12月に行う年末調整の対象となる人は、会社などに1年を通じて勤務している人や、年の中途で就職し年末まで勤務している人で青色専従者を含みます。
ただし、以下の条件を満たす必要があります。

(1) 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人
(2) 1年間に支払うべきことが確定した給与の総額が2,000万円を超えない人
(3) 災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税および復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けてない人

年末調整の算定方法

年末調整で控除できる要件と控除の種類

年末調整は、その人に1年間に支払うべきことが確定した給与の額を合計して、下記順序で行います。

①その年の1月1日から12月31日までの間に支払うべきことが確定した給与の合計額から給与所得控除後の給与の額を求めます。給与所得控除後の給与の額は、「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」をもとに算定します。

②給与所得控除後の給与の額から扶養控除等各種の所得控除を差し引きます。

③この所得控除を差し引いた金額(1,000円未満切捨て)に、所得税の税率を当てはめることで税額を算定します。

④年末調整で住宅借入金等特別控除を行う場合(2年目以降)には、この控除額を税額から差し引きます。

⑤この控除額を差し引いた税額に102.1%をかけた税額(100円未満切捨て)が、その人が1年間に納めるべき所得税および復興特別所得税になります。

⑥源泉徴収をした所得税および復興特別所得税の合計額が1年間に納めるべき所得税および復興特別所得税額より多い場合にはその差額の税額を還付しますが、逆に源泉徴収をした所得税および復興特別所得税の合計額が1年間に納めるべき所得税および復興特別所得税額より少ない場合には、その差額の税額を徴収します。

年末調整で控除できる控除項目

年末調整で控除できるのは以下の項目です。

配偶者控除
納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合
扶養控除
納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合
基礎控除
基礎控除は、他の所得控除のように一定の要件に該当する場合
障害者控除
納税者自身または控除対象配偶者や扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合
寡婦控除/寡夫控除
納税者が所得税法上の寡婦または寡夫に当てはまる場合
勤労学生控除
納税者が所得税法上の勤労学生に当てはまる場合
配偶者特別控除
配偶者に38万円を超える所得があり配偶者控除の適用が受けられないが、控除を受ける人のその年の合計所得金額が1千万円以下であることなど、定められた要件を満たしている場合
社会保険料控除
納税者が自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合、または給与から控除される場合
小規模企業共済等掛金控除
納税者が小規模企業共済法に規定する共済契約の掛金、確定拠出年金法に規定する個人型年金の加入者掛金および心身障害者扶養共済制度の掛金を支払った場合
生命保険料控除
納税者が一定の生命保険料、介護医療保険料および個人年金保険料を支払った場合
地震保険料控除
納税者が特定の損害保険契約等に係る地震等損害部分の保険料や掛金を支払った場合
住宅借入金等特別控除
居住者が住宅ローン等を利用して、マイホームを新築、取得または増改築等(取得等)をし、平成29年12月31日までに自己の居住の用に供した場合で一定の要件を満たす場合

年末調整で控除できない控除項目

以下の項目は、年末調整で控除できません。控除するには確定申告が必要になります。

医療費控除
自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。
寄附金控除
納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、「特定寄附金」を支出した場合には、所得控除を受けることができます。
住宅借入金等特別控除初年度
住宅借入金等特別控除の適用を受けるためには、初年度は確定申告書する必要があり、給与所得者は、確定申告をした年分の翌年以降の年分については年末調整でこの特別控除の適用を受けることができます。
雑損控除
災害または盗難もしくは横領によって、資産について損害を受けた場合等には、一定の金額の所得控除を受けることができます。

この記事の著者紹介

hukudome
福留 聡(ふくどめ さとし)
公認会計士・米国公認会計士・税理士・米国税理士
福留聡事務所代表

慶應義塾大学商学部卒。監査法人トーマツ、あずさ監査法人勤務後、独立。主に上場企業の決算支援、IFRS導入支援、国際税務などを得意としている。著書に『7つのステップでわかる 税効果会計実務入門』(2014年10月税務経理協会)、『公認会計士・税理士・米国公認会計士・米国税理士 資格取得・就職・転職・開業ガイドブック』(2014年11月税務経理協会)、『経理業務を標準化する ワークシート活用ガイド』(共著、2013年10月、中央経済社)。また、(社)日本士業協会よりIFRS、日米税務等DVD36巻を刊行している。

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【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。
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