【保存版】電子帳簿保存法の改正によって個人事業主に求められる対応を徹底解説
事業者の文書保存に大きな変化をもたらす「改正電子帳簿保存法」は、現在2年間の宥恕期間(移行期間)の只中です。
2023年12月31日をもって宥恕期間は終了し、電子取引のデジタルデータによる保存が本格的に義務化されますが、いまだ電子取引における書類の電子保存に対応できていない事業者もいるというのが現状です。特に個人事業主の方は、何から手を付ければ良いのか分からないという方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、電子帳簿保存法が個人事業主の方々へ与える影響と、改正電帳法における保存要件や注意点、電帳法対応について詳しく解説します。おすすめのサービスなども紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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電子帳簿保存法と個人事業主の関連
電子帳簿保存法(以下、改正電帳法)では、事業者に対して個人・法人を問わず、インターネットなどを通じてやり取りを行った取引の証憑書類について、電子データの保存を義務付けています。つまり、電子データ取引での注文書・納品書のやり取りを行っている場合、個人事業主であっても義務化の対象となるのです。
改正電子帳簿保存法の5つのポイントと個人事業主への影響
それでは、改正前と比べ、改正電帳法では具体的にどのような点が変わったのでしょうか。以下、5つのポイントに分けて解説します。
1.事前承認制度の廃止
改正前の電帳法では、電子的に証憑書類の保存を行う場合、所管の税務署に対し3ヶ月前までには届け出る必要がありましたが、改正後にはこの事前承認制度そのものが廃止されました。
事前承認には、システムや社内環境の準備期間も含めると数ヶ月~1年を要するケースもあり、電子データ保存への移行において大きな壁となっていました。この障壁が改正により取り払われた形です。
2.適正事務処理要件の廃止
相互チェック・定期検査・再発防止策の社内規程整備といった適正事務処理要件が、2022年の改正により廃止されています。
こちらは元々、スキャナ保存で発生する書類の内容・日付の改ざんといった不正を防止するために設けられていました。しかし、チェックの際には必ず紙ベースの原本を用いなければならないうえに、チェックが終了するまで原本の保管が求められるなどの難点があり、スキャナ保存の導入への障壁となっていました。
適正事務処理要件が廃止されることで、スキャン後に即廃棄することが可能になるだけでなく、事務処理を1名で対応することも可能となるため、大幅な負担軽減が見込まれます。
3.条件を満たす場合にタイムスタンプ要件の緩和
タイムスタンプとは、ある時点でその証憑書類が存在していたこと、および改ざんがなされていないことを証明できる仕組みです。改正前は、受領した領収書などに有効なタイムスタンプを付与するには、従業員が自署のうえ、受領から3営業日以内にスキャナで読み取る必要がありました。
なお、改正後は自署が不要となったほか、この期間が最長2ヶ月まで延長可能となっています。さらに、タイムスタンプ以外に正確性を確保する保存手段として、新たに訂正削除の防止に関する事務規定にもとづく運用や、システムへの保存も認められるようになりました。
4.検索要件項目の緩和
今回の改正で、可視性を確保するための検索要件項目も緩和されています。
改正前は取引年月日だけでなく、勘定科目や取引金額など、帳簿・書類の種別に応じた検索要件の記録項目が定められていました。検索機能についても、記録項目の複数選択ができたり、日付・時間の範囲指定ができたりしなければならないなどの要件が存在していました。
改正後は、一部の例外を除き、記録項目が「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3点に簡略化されています。また、電磁的記録を税務職員がダウンロードして閲覧できる状態になっていれば、複数選択・範囲指定の機能は不要とされています。
5.(重要)電子取引データ保存の義務化
上記で説明した1~4までは、電子データ保存の促進を図るための既存の縛りの廃止、または緩和といった内容でした。これらの緩和策には、電子データ保存そのものへの間口を広げ、義務化された部分の電子データ保存を円滑に進める狙いがあります。
改正後は一部の電子データ保存が義務化され、後述するようにそれぞれに厳格な保存要件が定められました。対応が任意であったこれまでのスキャナ保存等と異なり、違反時のペナルティも設けられている関係上、個人事業主もその例外ではありません。
準備不足で不正行為と見なされないよう、どの証憑書類が義務化の対象となっているのか、保存方法も含めてしっかり確認しておきましょう。
【個人事業主も対象】電子帳簿保存法の保存要件
ここでは、すべての事業者が対象となる改正電帳法の保存要件について、その対象となる取引関係書類や保存方法、保存上のポイントを解説します。
電子帳簿保存法の対象(帳簿・書類・電子データ)
改正電帳法で保存の対象となるのは、大別すると「国税関係帳簿」「国税関係書類」「電子データ取引」の3つです。このうち、国税関係書類はさらに「決算関係書類」と「取引関係書類」の2種類に分けられ、それぞれ保存方法も異なってきます。
● 国税関係帳簿
会社の資産に関わる内部書類を指します。具体的には総勘定元帳・仕訳帳・売掛帳・買掛帳・現金出納帳・固定資産台帳などが該当します。
● 決算関係書類
貸借対照表・損益計算書といった、主に決算書に含まれる内容に関わる書類です。試算表・棚卸表もこの書類にあたります。
● 取引関係書類
取引先から受領した請求書・納品書・見積書などに加え、自社が発行したそれら書類の控えも該当します。
● 電子取引
上述した取引関係書類をEDI(取引先と直接、受発注のやり取りをする方式)や電子メールなどを介してやり取りしていた場合、証憑保存が義務化された「電子取引」となります。
保存方法は3種類
保存方法については、「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子データ保存」といった3種類の方法があります。
なお、それぞれ条項によって、取り組みが任意の「容認規定」と、必ず取り組まなくてはならない「義務規定」のいずれかに指定されています。個別に解説していきましょう。
● 電子帳簿等保存
電子帳簿保存は、自社が作成した帳簿を保存要件のもと「磁気的記録」として電子データのまま保存する方法です。電子帳簿保存の対象となるのは「国税関係帳簿」と「決算関係書類」、そして「自社でデータを作成した取引関係書類」です。本方法は容認規定に指定されており、取り組みは任意となります。
ただし、個人事業主の場合の一部の国税関係帳簿については、任意であっても電子帳簿保存に対応しておいた方がベターなケースもあります。この理由については後ほど説明しましょう。
● スキャナ保存
スキャナ保存は、紙ベースで作成・発行または受領した書類をスキャナで読み取り、電磁的記録を保存する方法です。「取引関係書類」のうち、紙ベースのものがこの保存方法を使用できます。要件の緩和こそされましたが、本方法も電子帳簿保存と同じく、取り組み任意の容認規定となっています。
● 電子データ保存
最も重要となるのが電子データ保存で、ほか2つと異なり「義務規定」となっています。なお、該当する電子データ取引がある場合は、必ず取り組まなくてはなりません。
インターネットを介した「電子取引」の証憑書類を対象とし、タイムスタンプの付与または不正改ざん防止の取り組みといった対策が必須となるため、各事業者において保存要件を満たせる対応が求められます。
保存上の3つのポイント
義務化された電子データ保存については、特に要点を押さえた保存が必要です。以下、3つのポイントを押さえているかどうか確認しましょう。
● 自社の電子取引の状況を確認しておく
まずは、自社の取引における電子データ保存が必要となる範囲を確認しましょう。電子データ保存すべき証憑書類を、どの程度自社で作成または取引先から受領しているのか、それによってどう対応すべきかが変わってくるからです。
物量が少ない場合は、自社サーバーへの保存や事務規定の策定などでも事足りるかもしれませんが、日常業務を圧迫するほど多い場合には、システムの導入を検討した方が良いでしょう。
● 保存要件を満たせる環境を整える
電子データ保存については、「真実性」および「可視性」の確保が要件とされています。
真実性とは、データが作成された時点から改ざんされていないことを意味します。
可視性とは、税務職員など誰でもデータを検索可能な状態になっている、という意味です。
これらの要件を同時に満たす保存環境を整えておくには、改正電帳法に対応した証憑保存システムや、タイムスタンプを導入することが有効です。
● 自社対応の場合は事務処理規定の策定を
「そもそも電子取引そのものが少ない」「システム導入のコストなどに課題がある」という場合には、自社で独自に電子データ保存の環境を整備する必要があります。
まず前提として、データの長期保存に対応可能なサーバー容量の余裕が必要です。真実性・可視性の確保も社内で取り組まなくてはならないため、データ名を「日付」「取引金額」「勘定科目」「取引先」といった検索可能な命名規則で統一したうえで適切に整理し、索引簿を作成するなどの対策を社内で共有する必要があります。
なお、改正電帳法では、社内規定として「訂正削除の防止に関する事務規定」を策定し、それに則った運用でも真実性を担保できます。その場合でも、電子取引ファイルの保存ルール・事務規定の社内への周知徹底は必要となるでしょう。
電子帳簿保存法に個人事業主も注意が必要な理由
続いて、法人のみならず個人事業主においても、改正電帳法への対策が必要となる理由について解説していきます。
青色申告控除申請にも影響
青色申告は、損金の翌年繰越や専従者給与の経費計上など、個人事業主にとって税制面で大きなメリットをもたらす制度です。
しかし、メリットのひとつである65万円の青色申告特別控除を改正電帳法下で受けるためには、これまでの申告方法に加え、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
● 容認規定に含まれる国税関係帳簿のうち「仕訳帳」「総勘定元帳」について、電子帳簿保存を行っている
● 確定申告書など申告の必要書類の提出を、期限までにe-Taxで行っている
つまり、現在紙ベースで国税関係帳簿を保存している個人事業主は、申告期限に間に合わなかった場合、または期限内でもe-Taxを利用せず申告する場合は、控除額が減少してしまうのです。
余計な税負担を避けるためには、国税関係帳簿を作成の段階からデジタル化して電子帳簿保存に対応しておくか、e-Taxを使用して早めに申告を済ませる必要があるでしょう。
不正行為と見なされた場合のペナルティにも注意
対応が不十分だった場合のリスクは、実は税負担の増大だけに留まりません。
改正電帳法では、電子データ保存の義務に違反した場合、個人事業主に対しては青色申告の承認を取り消す罰則が定められています。そうなれば前述したようなメリットがすべて失われるだけでなく、取引上の信頼が損なわれる可能性もあり、経営に少なからぬ影響を与えるでしょう。
税務調査への対応や、提出資料などによる説明・確認も入るため、違反しても直ちに取り消されるというわけではありませんが、重いペナルティが存在するということは認識しておきましょう。
電子帳簿保存法を個人事業主が活用するコツ
義務化された電子データ保存対応の工数や、ペナルティ部分に注目しがちな改正電帳法ですが、電子データ保存への移行はシステム導入による業務効率化の好機でもあります。
証憑保存システムを利用することで、電子データ保存の不備を最低限に抑えることが可能となるだけでなく、紙ベースでの煩雑な事務を削減できたり、請求書保存が自動化できたりといったメリットも多くあります。
特に請求書については、電子帳簿保存の宥恕期間終了の期限やインボイス制度との兼ね合いもあります。また、インボイス制度下では、適格請求書とそうでない請求書を分けて管理する必要があるため、紙ベースでの管理は紛失・混在などさまざまな不都合を招く恐れもあるでしょう。
そのため、青色申告による税控除はもちろん、消費税免税や仕入税額控除といった恩恵を正しく受けるためには、個人事業主であってもシステム導入による電帳法対策の検討をおすすめします。
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