免税事業者のままだと不利になる可能性も?インボイス制度の影響や対応について解説

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2019年に適用された軽減税率に対応し、適切な納税を促すことを目的とする新制度が「インボイス制度」です。同制度は2023年10月1日に本格的に導入されます。

インボイス制度の導入は、免税事業者に対して大きな影響を与えると考えられています。特に免税事業者として事業を続けた場合は、取引先との関係が変化する恐れもあり、不利益を被る可能性もあるでしょう。

この記事では、インボイス制度が免税事業者に対して与える影響や、免税事業者であることのメリット・デメリット、そして免税事業者が今後取るべき対応について解説します。ぜひご一読ください。

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免税事業者とは?

インボイス制度をめぐっては免税事業者に該当しているのか否かが、重要な対応の分かれ道です。消費税法が免税事業者を定義する要件をはじめ、免税事業者の概要を説明します。

免税事業者は消費税の納税が免除される

免税事業者とは、消費税を納める義務が消費税法上免除されている事業者のことです。

消費税法になぜ免税事業者の特例があるのでしょうか。一番の理由としては、形式的に平等を貫いてすべての事業者に課税すると、小規模な事業者にはコストに見合わない事務負担が生じてしまうことです。

そして、徴税を行う行政側のコストも大きくなります。そうしたことに配慮して、現在は免税事業者の特例が設けられています。

免税事業者の要件

免税事業者とは、要件の面からみると「消費税課税期間の基準期間における課税売上高が、1,000万円以下という要件を満たす事業者」です。基準期間とは個人事業者では前々年、法人では前々事業年度をいいます。

具体的には、商取引額の少ない小規模事業者や個人事業主が対象になり、中小零細企業・自営業者・フリーランスと呼ばれる事業者・事業主の層の相当部分が要件を満たし免税事業者となっています。

課税事業者との違い

それに対して課税事業者とは、特例を受けずに消費税を納める義務を負う事業者です。要件からみれば、消費税課税基準期間の課税売上高が1,000万円を超える事業者ということになります。消費税を納めるために納税の事務負担を負っていることも、課税事業者が免税事業者とは異なる点です。

免税事業者でも消費税を請求できる

免税事業者は税務当局に直接消費税を納めていませんが、免税事業者でも取引先や消費者に消費税を請求することができます。自分は納税していないのに、取引先や消費者に消費税を請求することに違和感をおぼえる方も多いでしょう。

しかし、免税事業者において消費税が請求可能とされているのには理由があります。課税事業者は受領した消費税を納税する際に、仕入れのときに支払った消費税を控除することができます。これが仕入税額控除です。

ところが免税事業者は仕入税額控除ができず、仕入れのときにそのまま消費税を負担しています。直接の納税とは違うかたちで免税事業者も消費税を負担していることが、消費税を取引先や消費者に請求できる理由です。

インボイス制度で免税事業者が受ける影響

インボイス制度は適切な課税を促すために作られた制度です。それゆえ、課税事業者でなければインボイス発行事業者に登録することはできません。インボイスとは、現在施行されている区分記載請求書に、登録番号や消費税額などの情報を追加した書類やデータを指します。これは売る側が買う側に対して、商品の正確な価値を伝えるための手段でもあります。そのため、インボイスを発行できないこと自体が、免税事業者にとってマイナスな一面といえるでしょう。

買い手側が課税事業者か免税事業者かを確認する

取引先(買い手)が課税事業者か、それとも免税事業者や簡易課税事業者であるかを確認しましょう。インボイス制度の影響があるのは、取引先が課税業者である場合に限ります。
免税事業者にとって、取引先が免税事業者である場合は、取引先が仕入税額控除をしないのでインボイスを発行できなくても取り引きに影響はありません。また、簡易課税事業者は仕入税額からでなく売上税額から控除額を算出するので、仕入税額を示すインボイスを必要としません。

免税事業者のままだと不利になること

免税事業者にとって、インボイスを発行できないこと自体が不利益になる恐れがある点を解説しました。ここでは、免税事業者のままでいる具体的なデメリットについて解説します。

取引先から契約を打ち切られる可能性がある

現行制度の場合、免税事業者との取引においては、消費税の納税が免除されています。しかしインボイス制度の導入後は、この恩恵がなくなります。かつ、免税事業者はインボイスの発行が不可能です。それゆえインボイスが発行されない取引では、取引をする事業者が仕入れ税額控除を受けられなくなります。

仕事を発注する取引先の立場で考えた場合、免税事業者と同じ業務が可能である課税事業者がいたならば、免税事業者との取引を終えるリスクもあるでしょう。インボイスを発行できる課税事業者との取引では、仕入れ額控除を受けることが可能ですが、免税事業者との取引では、控除は受けられません。また、業務内容に特別な技術がいらないなど、代替が効きやすい業界の場合には、コスト面に鑑みて取引を打ち切られる可能性があります。それゆえ、新規の取引先の開拓も難しくなることが考えられます。

消費税分の値引きを要求される可能性がある

上記で解説したように、インボイスが発行されない取引においては、仕入れ額控除を受けられません。そのため、控除が受けられなかった消費税分の値下げを、取引先から要求される可能性があります。「値引きに応じない場合は取引を続けることができない」などの条件を提示された場合には、応じざるを得ないでしょう。

免税事業者のままでいるメリット

デメリットも目立ちますが、免税事業者のままでいることのメリットも存在します。ここでは、免税事業者のままでいることのメリットについて解説します。

消費税の納税が免除される

免税事業者のままでいる場合、現状のまま消費税の納税が免除されます。もし課税事業者に転向した場合は、消費税の納税義務が発生します。なお、一度課税事業者へ転向すると、2年間は免税事業者へ戻れないため、上記に鑑みて慎重に判断することが大切です。

6年間は経過措置を受けられる

免税事業者との取引において、6年間は経過措置を受けることが可能です。経過措置とは法律やルールの変更に伴い、一定期間は新しい規定の適応を一部免除し、以降をスムーズに進めるための措置です。

制度の施行後の3年間は8割、その後3年間は5割の仕入れ税額控除を受けられます。それゆえ経過措置の期間内は、免税事業者のままでも、大きな不利益が発生しない可能性もあるでしょう。

代わりが効かない業務内容であれば今後も取引を継続できる可能性がある

買い手側は仕入れ額控除を受けられないため、免税事業者はさまざまな不利益を被るリスクがあると解説しました。しかし、特別な技術を保有しているなど、代替性の低い事業者の場合であれば、インボイス制度の導入後も同じ条件で取引を継続できる可能性があります。

複雑な作業を行う手間がない

課税事業者である場合、消費税を計算したのち、申告や納税を行うなど、さまざまな業務が増えます。しかし免税事業者である場合には、こういった複雑な業務を行う必要はなく、現在の業務内容をキープすることが可能です。

ただし、近年は「適格請求書等保存方式」の要件を満たした、適格請求書の発行・保存ができるツールも存在します。また、通常の請求業務として請求書送付・代金回収・入金管理・入金消込・催促といった処理を代行できるため、こういったツールの導入も1つの手段でしょう。

免税事業者が今後すべきことは?

次に、免税事業者が今後取るべき対応について解説します。インボイス制度の導入は、2023年10月と間近に迫っているため、早めの対応を心がけましょう。

自社の業務内容を見直す

上記で解説したとおり、自社の業務内容がほかの業者では代替不可である場合には、これまでと同じ業務内容を継続できる可能性があります。そのため、自社の業務についてあらためて見直し、ほかに似た業種の事業者がいない場合などには、免税事業者のままでいることも1つの手段でしょう。

自社の取引や業種がインボイスの交付義務が免除対象か確認する

国税庁が定める、インボイスの交付義務が免除される取引の対象は以下のとおりです。

1. 公共交通機関である船舶、バスまたは鉄道による旅客の運送
※なお3万円未満のものに限ります

2. 出荷者が卸売市場において行う生鮮食料品等の譲渡
※なお出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限ります

3. 生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の譲渡
※なお無条件委託方式、かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限ります

4. 自動販売機等により行われる課税資産の譲渡等
※なお3万円未満のものに限ります

5. 郵便切手を対価とする郵便サービス
※なお郵便ポストに差し出されたものに限ります。

自社の取引や業種がインボイスの免除対象であるかを、上記の要件をもとに確認しましょう。

免税事業者のままで値引きに応じる

免税事業者であることで、取引先が課税事業者と取引した場合に受けられるはずだった、仕入れ額控除の金額分の値引きを要求される可能性があります。
しかし、まずは課税事業者になることで納めなければならない税金と、要求された値引きの金額を比較してみることもおすすめです。免税事業者のままでいることがメリットとなる場合には、取引先に応じることも1つの手段でしょう。

課税事業者になることも検討する

免税事業者のままでいることで、値引きや取引停止によって売上が減少するなどの不利益が発生する場合には、課税事業者に転向することも検討しましょう。
課税事業者であれば、取引先が抱く懸念を払拭することができ、これまでに解説した不利益が発生する可能性は低いといえます。

免税事業者が「適格請求書発行事業者」になるには?

免税事業者のままでいた場合のデメリットが大きい場合には、課税事業者となり、インボイスを発行する許可を申請することも検討しなければなりません。課税事業者への変更手続きと「適格請求書発行事業者」になるための手順については、以下の記事で詳しく解説しています。

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監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。
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