資金調達とは?方法やメリット・デメリットなども紹介
会社を運営していくのに必要な資金を、全て自前で賄える場合は問題ありませんが、多くの企業は手元の資金が足りないことがあるでしょう。特に新たに起業する時は、資本金や当座の運営資金、登記のための創立費、事務所のテナント代、備品などを揃えるための開業費など出費がかさみます。これらの必要な運転資金を調達する手段が資金調達です。
資金調達の手段はさまざまで、自社の規模感や業種等に応じて最適な手法が異なります。日頃から資金調達の情報を仕入れていれば、いざという時でも冷静に対処できるでしょう。
本記事では、資金調達の意味や基本的な知識、資金調達の方法、資金調達をスムーズに進めるためのポイントなどについて解説します。
資金調達とは
新規事業の立ち上げに際して、資金を自分の資本金のみで用意することが困難な場合があります。そこで必要なのは、資金の調達です。負債を増やすやり方や資本そのものを増やすやり方、今現在持っている資産を現金化するやり方などが挙げられます。資金調達では、短期資金と長期資金のいずれかで計画を立てていく流れです。
短期資金として扱われるのは、決まった時期に発生する「季節資金」や、決算期に必要な「決算資金」、従業員に支払う「賞与支給」などが該当します。また、収入と支出のタイミングがずれてしまうこと多々あるため、その間に仕える資金として扱う「つなぎ資金」も短期資金のひとつです。
一方で長期資金は、不動産や製造設備に使う「設備資金」、売上や仕入れといった会社経営で定期的に使うこととなる「経常運転資金」などが該当します。返済期間が長く設定されている点がメリットといえますが、その分金利が上がってしまう点に注意が必要です。
ここでは、資金調達の目的と前提についてご紹介します。
資金調達の目的
代表的な資金調達の目的としては以下の4つが挙げられます。
・起業資金
起業の際に必要となる一時的な資金のことです。起業するには事務所の準備資金や電気・インターネット通信などの設備費用、事務手続きや登記などための諸費用がかかります。
・運転資金
従業員の給与や商品の仕入れ費用など、事業を継続させていくために必要な資金のことです。自己資金が不足していると支払いが滞るケースもあるため、前広な資金調達が欠かせません。
・設備投資
企業が事業を維持・発展させていく上で必要な設備を用意するために投資する資金のことです。設備投資の対象は機械や備品など目に見える有形固定資産と、ソフトウェアや商標権など目に見えない無形固定資産の2つがあります。
・事業拡大
店舗数の増加や人員の確保など、既存事業を拡大させるに必要な資金のことです。費用を投じてから売上の入金までにタイムラグがあるため、その間を補うための資金調達が必要です。
資金調達の前提
資金調達を考える多くの経営者は、どのくらいの資金を調達できるかを第一に考えがちですが、あくまでも事業の形を考えて必要に応じた資金を調達するのが前提です。
資金調達の前提条件としては2つあります。一つ目は業種と規模です。事業によって必要な資金も異なり、近年は社会的な産業構造の変化もあって、独立開業だけであればそれほど多くの資金は必要ではありません。ただし規模の拡大を考えるのであれば、人材確保や設備投資などの一定の資金が必要になります。最終的にどこまで事業を拡大させたいかを考えてから、資金調達に進むといいでしょう。
二つ目は生活費の混在です。見落とされがちですが、事業活動費以外にも家賃や光熱費などの費用が毎月発生します。経営者の中には事業活動費の一部を生活費に充てているケースも少なくありません。金融機関からの融資を受ける際に事業活動費と生活費の線引きが曖昧だと、断られてしまう場合もあります。資金調達を行う前に、生活費の見直しも必要です。
資金調達の方法
資金調達の方法はさまざまです。多くの場合はどれか一つの方法に偏るのではなく、いくつかの方法を同時に実践して資金調達が行われます。ここでは、資金調達の主な方法をご紹介します。
負債を増やす
負債を増やす資金調達方法のことを「デッド・ファイナンス」といいます。デッド・ファイナンスとは、期限を設けて融資を受ける方法です。扱いはあくまで「融資」のため、元本と利息を毎月もしくは毎年返済する必要があります。メリットは融資先の選択肢が多い点です。税務制度によっては、節税に繋がる可能性もあります。レバレッジ効果を得ることが期待できるのもメリットの一つです。レバレッジ効果とは、多くの借入をすることでより大きい利益を出す可能性を指すため、融資を高額にしてもらい元手にすれば、利益率が上がる可能性もあるのです。
一方デメリットは、返済義務があることです。経営状況が悪くとも、決められた期日内に返済しなければならないため、極度の経営悪化や資金調達がどうしても困難な時には返済が負担になります。また、融資を受けるための保証人や不動産担保が必要であること、将来のキャッシュフローが減るのもデメリットです。
他に負債を増やす資金調達方法として、公的融資や銀行融資、ビジネスローン、手形割引、社債、売掛債権担保路融資などが挙げられます。
資本を増やす
資本を増やすことを「エクイティ・ファイナンス」と呼びます。意味は「株式の発行」です。メリットは、株式の価値が落ちても補償義務がなく返済する必要がないことです。集まった資金は自由に運用できる他、借入金のように保証人や担保の用意が不要で、財務基盤が安定し、自己資金強化につながるのです。しかし、株式は株主の持ち株数によって経営権が変わる点が特徴となっています。合併や買収といった経営に関するリスクがあるため、株式発行時は株式設計をしっかりと行いましょう。また、出資金の返済義務はなくても配当金を支払う義務があります。
エクイティ・ファイナンスの方法は、具体的に「新株発行」「ベンチャーキャピタル」「エンジェル」「新株予約権」「クラウドファンディング」などです。
今ある資産を現金化する
資産の現金化を「アセットファイナンス」といいます。なんらかの負債を増やす方法や、手持ちの資本を増やす方法とは異なり、現存している資産を売って現金化する点が特徴です。現金化する際の手数料の関係で資産が多少減ることはありますが、手持ち資産が大きく変わることはありません。メリットは、素早い資金調達が可能なことに加え、かかるコストも低い傾向にあることです。企業の信用度が低い状況にあっても、アセットファイナンスなら利用できるでしょう。ただし、現金化する資産がないと利用できません。現金化したいものに将来的な信用力がないと取引は困難になります。また、現金化すると本来の価値より低い価格になるのもデメリットといえるでしょう。
アセットファイナンスは具体的に、ファクタリングやセールス&リースバック、不動産リースバック、債権回収などが該当します。アセットファイナンスは、「債権の流動化」と「資産の流動化」の2種類に分けられることが特徴です。回収時期が先の債権を売却して早期現金化することを、債権の流動化といいます。資産の流動化は、使わない設備を売却したりリースに出したりする方法のことです。
資金調達をスムーズに進めるためのポイント
資金調達の方法は豊富にあるものの、審査や必要書類の準備など全てが簡単に進むわけではありません。ここでは、資金調達をスムーズに進めるためのポイントを解説します。
使用用途や金額を明確にする
まず、調達した資金を「何のために」「いくら」使うのかを明確にしておく必要があります。資金調達時の金融機関の審査基準において、最も重要なのが資金用途です。融資する側にとっても自社の資金は貴重なものであり、誰にでも簡単に融資するわけではありません。資金の用途は金融機関や投資家が特に強く関心を持つものであり、将来の事業プランなどがしっかり決まっていない相手には融資に踏み切れないのです。
安心して融資してもらうためにも、自社の資金調達コンセプトを明確にし、融資する側に対して説得力ある説明を行えるようにすることが必要です。具体的には、必要な目標額や期限などを数値化してリアルな視点で説明資料を準備すると良いでしょう。具体的かつ現実的な計画が示せれば、融資する側としても判断しやすくなります。
事業内容や経営戦略で信用を確保する
全ての資金調達に共通するものですが、融資しても問題がないと信用してもらえる会社であるかどうかという点が非常に重要です。特に増資で資金調達を行う場合には、株式に対外的な信用があることが必要となります。株式の信用度をアップさせるには、魅力的な事業内容や確たる経営戦略を明示すると良いでしょう。企業としての実績や社会的信用を未だ打ち立てていない中小企業の場合は、経営者自身の事業に対する姿勢や本質的な人間性が、企業の信用に影響するケースも少なからずあるのが現実です。この企業なら融資しても大丈夫だと思わせるような、経営者としても人間としても信頼してもらえる言動を心掛けることが求められます。
また、しっかり作り上げたビジネスプランも伝え方が悪ければ相手に悪印象を与えてしまい、信用を獲得するが覚束なくなるので気を付けなければいけません。そのためにはプレゼンテーションのスキルを磨いたり、自社の担当者と綿密にコミュニケーションを取って、自社の魅力が相手にうまく伝わるように心掛けたりすることも大切です。
自社の規模に応じた金融機関を選ぶ
金融機関は、大手のメガバンクや小口取引を主とする地方銀行、相互扶助で成り立っている信用金庫、原則として組合員の預金のみ受け付ける信用組合など、さまざまな種類があります。特に地域に根差すことを重視している信用金庫や信用組合は、地域が発展・繁栄することを主たる目的した存在であるため、中小企業の融資の相談に親身に応じてくれる可能性が高いでしょう。
ただ、存在する地域が限られており、かつ取引相手は地区内で事業を行う事業者に限られるため、どこでも誰でも利用できるわけではありません。自社が融資対象になるのかを確認するには、金融機関の公式ホームページで運営方針を確認したり、融資担当者と直接会って話したりしてください。その際には、自社の規模や融資額に見合った規模の金融機関を選ぶことが大切です。
スタートアップやベンチャー企業が資金調達を成功させる方法
スピード感を持って事業を推進していくことが必要な新興企業においては、遅滞なく資金調達することが機運を制する要因にもなります。ここでは、起業したての企業やベンチャー企業が資金調達を成功させる方法について解説します。
事業計画書の作成
事業計画とは、事業の目標を達成するためにどのような行動をすべきか戦略などの計画を立てることです。いくら良いアイデアやプランが浮かんでいても、頭の中で構想をあれこれと練っているだけでは客観的に見る視点や具体性が欠けてしまい、思い描いていた売上に至らず赤字経営が続いてしまいます。こうした失敗しないためにも、事業が社会に貢献できるポイントや、社会のニーズを満たす仕組みなどを書面上で整理し事業計画書として作成するのが重要です。事業計画書に決まった様式はないものの、事業内容やビジネスにおける計画を客観的に分かりやすく記載していくことが融資をスムーズに獲得するポイントとして必要です。
そのためには、これから始める事業実現の可能性や具体性、新規性、採算性などを明瞭かつ簡潔に記載していきます。事業活動で生まれる売上に至るまでの経緯に信憑性を持たせられるかが、資金調達を成功させるための事業計画書作成のカギとなるでしょう。
専門家への相談
申請書類等の作成や金融機関への訪問などに時間を割けない、申請書類の適切な書き方がよく分からない、金融機関との交渉が苦手といった経営者もいるでしょう。このような場合は、税理士や公認会計士などの専門家に相談するのがおすすめです。事業計画書作成のサポートを受けられたり、融資を受けるための面談に同行し融資担当者と対等にやり取りできたりする他、有利な条件で融資を取りつけたりできるなどのメリットがあります。
ただし専門家といってもそれぞれ得意分野が異なるため、適した専門家を選ぶのに失敗すると時間を浪費して資金繰りの悪化に繋がりかねません。失敗しない専門家選びのポイントとしては、経営革新等支援機関に認定されている税理士または会計士かどうか、過去に資金調達の実績が十分あるかなどを調べて慎重に判断しましょう。
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