法人企業がクレジットカード決済を導入するには? 導入方法・メリット・注意点なども紹介

クレジットカード決済

1960年代に日本でクレジットカードが本格的に普及し始めてから60余年が経ち、今や普及率は84%にまで達しています。これは成人1人あたりで換算すると、平均3.2枚のクレジットカードを保有するという結果になります。近年では、ICチップ対応が義務化されるなどしてセキュリティ面の強化も進み、現金決済と変わらない安全性が担保されつつあります。

また、利用するごとにポイントが貯まったり身近な所で利用できるようになったりするなど、利便性が向上しているのも普及を後押ししてる要因です。
QRコード決済などの新しい決済方法も増えてきていますが、クレジットカードはこのような決済手段と共存しながらさらなる浸透が見込まれると言って差し支えないでしょう。本記事では、クレジットカード決済の導入について、法人企業の立場から見た導入方法・導入メリット・導入の注意点・導入に関するFAQなどについて解説します。

法人企業がクレジットカード決済を導入する方法

法人企業がクレジットカード決済を導入する方法は、各カード会社と直接契約するか、決済代行会社を活用するかの二択です。ここでは、それぞれの手段について解説します。

直接契約

直接契約とは、決済代行会社を通さずに各クレジットカード会社に、直接1社ずつクレジットカード加盟店になるための審査を申請して契約を結ぶ方法です。決済代行会社を通さないため決済手数料を抑えられますが、一般的に審査基準が厳しいため、比較的大手の法人企業でないと選びにくい方式ともいえるでしょう。
また、審査基準はクレジットカード会社によって違うため、審査に使う書類の種類や準備も異なり、全てのクレジットカード会社の審査を通過するには多くの手数と時間が必要です。複数のクレジットカード会社を無事契約できたとしても、各社それぞれ契約内容や運用方法が異なり、締め日や入金日が異なるという課題を乗り越えなければいけません。直接契約の場合は、これら一つひとつを考慮した決済システムを自力で構築せねばならず、かなりの工数と費用がかかるため、その点においても人員と資金力の揃い、長期的な視点で投資が行える大手の法人企業向きの方法だといえます。

決済代行の活用

決済代行会社を活用する方法は包括加盟店方式とも呼ばれ、複数のクレジットカード決済導入に必要な手続きを、1社の決済代行会社にまとめて委託する方法です。複数のクレジットカード会社との審査手続き、契約交渉、売上代金の決済管理、入金処理などが一本化され、各社に対応した決済管理システムが決済代行会社から事業者へ提供されます。この方式は、審査が厳しい直接契約の締結が難しい中小の法人企業や管理の効率化を優先したい大手の法人企業などに向いている手段といえます。

また、この方式を選択した事業者は、自前で決済システムを構築する必要もなくなります。1社の決済代行会社の審査を受けるのみになるため、複数の異なる書類を準備する必要もなくなり、審査を通過するための工数が最小限に抑えられます。

法人企業がクレジットカード決済を導入するメリット

クレジットカード決済を導入することにより、法人企業にはビジネスチャンスの拡大などのメリットがあります。以下で例を挙げて解説します。

顧客単価の向上

手元に十分な現金を持ち合わせていなくても買い物ができるという点は、クレジットカード決済の大きな特徴の1つです。クレジットカード決済を前提にした顧客は、高価な商品を購入したりついでに他の商品も購入したりする傾向が見られます。

日本クレジットカード協会が2018年に行った調査によると、クレジットカードで決済する人は現金で決済する人よりも平均顧客単価が1.7倍になったという結果が報告されているのです。こうした調査からも、クレジットカードを持っていれば買い物を少額に控えるといったことが起きにくく、販売機会の損失が起きにくいと言えるでしょう。クレジットカードは、確実に顧客単価の向上に貢献します。また、クレジットカードの利用で貯まったポイントを使いたい、クレジットカード利用の特典を使いたいといった購買の動機付けができれば、さらなる売上の向上が期待できるでしょう。

販売機会の増加

決済代行会社のSquare(スクエア)が行った調査によると、18%の人が店に入る前にクレジットカードを使えるかを調べており、使えなかった場合は他の店に行ったと報告されています。また、17%の人がクレジットカードを使えずに困った経験があり、3%の人がその店には二度と行かない結果となったため、クレジットカードを使えない店は21%の来店機会を逃していることになります。

店舗を経営している法人企業としては、顧客が本当にその商品を欲しいならATMからお金をおろしてから再来店してくれることを願いたいところですが、人は利便性の高い支払い方法を好むものです。この傾向はECサイトでは特に顕著で、ECサイトで使われる決済方法はクレジットカードが79%と1位です。現金決済にも根強い需要はあるものの、現代のトレンドとしてクレジットカード決済を導入することは販売機会の増加に直結するといえるでしょう。

現金管理の手間が減少

クレジットカード決済の導入によって現金を扱う率が下がれば、現金を管理する手間が減少してレジでのやり取りを効率化することが可能です。現金でやり取りする場合、顧客はお札や小銭を数えるのに手間取ることもあり、従業員もお釣りを間違えないように注意しながら数えなければなりません。

また、1日の営業を終えた後はレジ締めを行い、レジの中のお金と1日の売上が合っているかを確認する必要があります。クレジットカード決済が増えればこのような手間が軽減され、店舗のオペレーションを効率化することが可能です。現金を紛失したり盗難に遭ったりといったリスクを減らすこともでき、売上金を銀行で入金するために多額の現金を持ち歩かずに済みます。クレジットカード決済を導入して現金管理の手間やリスクに煩わされる時間が減れば、従業員はより大事な接客に集中できるでしょう。

法人企業がクレジットカード決済を導入する際の注意点

クレジットカード決済にはさまざまなメリットがありますが、同時に注意すべき点もあります。ここでは法人企業がクレジットカード決済を導入する際のデメリットや注意点をご説明します。

導入コストがかかる

クレジットカード決済を導入すると、決済に関する費用が別途発生する場合があります。内訳は、直接契約の場合には決済システムの開発費が大きく、決済代行を活用する場合でもシステム利用やデータ管理のための月額固定費用、決済するごとに金額に応じた割合でかかる決済手数料などは主なコストとなってくるでしょう。他にも、ECサイトでの決済時に送信された決済データを、決済代行会社が処理するためのトランザクション費用もかかります。

また、細かい点では、申込手数料や振込手数料、加盟店手数料なども見落とせません。費用の相場は業種や取り扱う商品などによって異なりますが、一般的には初期費用は1~5万円前後、月額固定費用は3,000~8,000円前後、決済手数料は3~5%前後です。決済代行会社を利用する場合は各社によって料金体系がまちまちであるため、相見積もりを取って比較することをおすすめします。

入金サイクルにタイムラグが生じる

現金で決済を行うと商品の販売と同時に現金が入ってきますが、クレジットカード決済の場合は後から入金されるため、売上があった日から入金日までタイムラグがあります。このタイムラグの期間が「入金サイクル」と呼ばれるものです。クレジットカード決済では、売上があってもすぐには現金化されないため、資金繰りの面からタイムラグを懸念する事業者も少なくありません。

入金サイクルはクレジットカード会社や決済代行会社によって異なり、当月末締め・翌月末入金、当月末締め・翌月15日入金などと、それぞれ独自に設定されています。資金繰りを円滑にしたいならば、できるだけ入金サイクルの短いサービスを選ぶと良いでしょう。ただし、短い入金サイクルを提供しているサービスの中には、売上の下限額を設定しているものもあるため、条件を確認して自社が許容できる入金サイクルと条件かを判断することが大切です。

法人企業が決済代行会社を選ぶ際のポイント

決済代行会社は各社特色があります。ここでは、法人企業が決済代行会社を選ぶ際に見ておきたいポイントについて解説します。

決済手段の種類

決済手段の種類の豊富さは、店舗を経営する上で重要なポイントです。自社の客層に合った決済手段を導入すると、カゴ落ちを防いで売上向上に繋がります。クレジットカード決済は導入すると多くのメリットを得られる決済手段で、国際的にメジャーなカードブランドだけでも5種類あるため、少なくともこの5種類はカバーしておきたいところです。クレジットカードの保有率が低い年齢層に対しては、コンビニ払いや代引きに対応しているところが好ましいでしょう。学生層に対してはキャリア決済が適している傾向があり、女性は洋服や化粧品などのように使ってみて品質を確認してから払いたいと思う点から、後払いが好まれる傾向が強いといえます。

幅広い客層をターゲットにするのであれば、なるべく多彩な決済手段を取り込む必要があるため、1つの決済代行会社ではカバーしきれない場合は複数の決済代行会社と契約する方法がおすすめです。

コストの差

クレジットカード決済に限らず、決済代行会社を利用する場合は初期費用や月額費用、手数料などの費用がかかります。料金体系は決済代行会社によって異なりますが、大きく分けると、初期費用と月額費用を無料にしているものと有料にしているものの2種類です。初期費用と月額費用が無料であれば短期的なコストを抑えられますが、手数料が割高に設定されていることもあるため、長期的なコストを見極めましょう。

取引件数の見込みが立っているのであればシミュレーションし、各社の手数料の差を比較できます。すでに事業を開始している場合は、過去の実績からより精度の高いシミュレーションが可能です。初期費用と月額費用のような固定費と手数料のような変動費も考え、総合的にコストパフォーマンスの良い決済代行会社を選びましょう。

セキュリティ対策

決済代行会社を利用するということは、顧客の個人情報や会社の秘匿情報を決済代行会社に渡すことを意味します。特に顧客の個人情報については、万が一にも外部に漏洩するようなことがあれば、会社の社会的信用を大きく損ない、売上を大幅に低下させる事態になりかねません。そのような事態を引き起こさないためにも、決済代行会社がしっかりとしたセキュリティ対策を講じているかは重視すべきポイントです。例えば、クレジットカードの国際セキュリティ基準であるPCI DSS、個人情報保護に関するプライバシーマーク、情報資産保護に関するISMS認証などを取得しているかを確認しておきましょう。

他にもSSL、3Dセキュア、セキュリティコード、不正検知サービスなどのセキュリティ対策技術を採用しているかも、決済代行会社と契約する前に確認しておきたい事項です。

法人企業がクレジットカード決済を導入する際、よくある疑問・質問(FAQ)3選

疑問① クレジットカード決済を導入するにはどこに問い合わせればいいの?

クレジットカードを取り巻く環境を見てみると、カード会社や決済代行会社など幾つかのステークホルダーが存在し、その中でも複数のブランドや企業がこぞって各々の優位性をアピールしています。ユーザーからすると、事前の知識がない中で自ら問い合わせる企業を選定するだけでも骨が折れることでしょう。

まず問い合わせるなら、よっぽどの知識と経験が無い限り決済代行企業にするのがベターです。
大きな理由としては、ユーザーがカード会社に直接問い合わせをする場合と、決済代行会社に導入の仲介を依頼する場合とで契約形態そのものが異なることになることがあります。

カード会社に問い合わせをする場合は、そのカード会社が対応しているブランドのみしか取扱ができません。そのため、国内で一般的なカードブランド(Visa/Master/JCB/American Express/Diners)を全て網羅しようと思うと、複数のカード会社と契約手続きと交渉を行う必要がございます。

さらに、各カード会社からの売上入金スケジュールが異なることもあり、カードブランド毎の運用フローを組み立てる必要があるため、複数のカードブランドを運用する場合などは毎月発生する工数も膨らむことになります。

一方で、決済代行会社に問い合わせる場合は、全てのカードブランドの契約を一括で代行してくれるため、複数社と契約を同時並行で進めるといったことがありません。また、決済代行会社がカードブランドごとの入金を一元管理ができるシステムを提供するため、クレジットカード決済導入に関しては決済代行会社に委託するケースがほとんどです。

また、決済代行企業を選ぶ場合はセキュリティ面でのチェックが欠かせません。
クレジットカード決済システムを導入する際には、PCI DSSというクレジットカード業界のセキュリティ基準に準拠した、決済代行会社と契約を結ぶ必要があります。この契約が完了すれば、自社サービスの集金をクレジットカードにて行うことが可能となるのです。

PCI DSSとは、国際カードブランド5社が共同で設立した、クレジットカード業界のセキュリティ基準です。PCI DSSに準拠している企業のみがカード情報を保有することを許されます。そのような決済代行会社に、自社クライアントのカード情報を預け、集金を行っていく、という流れになります。

疑問② クレジットカード決済の導入からスタートまでかかる期間を教えて?

特に、新規事業の立ち上げなどを検討されている加盟店様からいただくことが多いご質問です。

事業の展開を考えているうちに、クレジットカード決済の導入を検討しなければならないことに気づき、慌てて決済代行会社にご連絡をいただくというケースは往々にしてあります。

一方で、クレジットカード決済の導入にはカード会社の加盟許可が必要になり、審査手続きのために一定の期間を要することになります。審査期間、提出物は、各カード会社・決済代行会社によって異なりますので、お急ぎの場合などは、素早くかつ加盟店のメリットを最大限考慮してくれる決済代行会社を比較検討することが重要です。

ご回答として、下に一般的な決済代行会社に依頼した場合の導入までの審査機関と必要書類を記載いたします。

審査期間平均:1~2か月 ※ROBOT PAYMENTは3~5営業日
提出物:商業登記簿謄本※1
    住民票※1
    印鑑証明書※1
    振込先口座の通帳コピー※1
    審査依頼書※2
※1 取得日から3ヶ月以内のものの提示を求められるケースが多くなっております
※2 ROBOT PAYMENTは審査依頼書(弊社提供フォーマット)のご提出のみで審査が可能です

当社ROBOT PAYMENTは創業以来18年間決済代行事業を営んできた実績から、審査期間の圧倒的な短さ、必要提出物の少なさも一つの特徴となっております。また、審査=ご契約ではございませんので、弊社にお問い合わせ頂いた事業者様にはまず、ご検討と同時並行で審査通過の可否をご確認頂いております。まずはお気軽にご相談くださいませ。

疑問③ カード情報非保持化対応って具体的に何をすればいいの?

最近では法改正に基づく「カード情報の非保持化」が話題になっていることもあり、ご相談頂くケースが増えています。そこで、そもそもカード情報非保持化とは何か。また、非保持化対応をスムーズに実装するために事前に確認しておくべき事項は何かについてお話いたします。

「カード情報非保持化」とはセキュリティ対策の一環であり、前述のPCIDSSに準拠していない事業者は顧客のカード情報を持つことができないという「割賦販売法」という法律に基づいた規制となります。クレジットカード決済を導入される店舗様は、契約する決済代行会社がPCIDSSをはじめとしたセキュリティ基準に準拠しているか必ず確認しなければなりません。

もし非保持化対策を怠ったままカード情報の漏洩などの事故が起こった場合はカード会社から多額の賠償金を課せられることになりますので注意しましょう。

では、具体的に確認しておくべきポイントを確認しておきましょう。

①導入予定のクレジットカード決済システムが、「カード情報非保持化」に対応した方式に該当しているか?
一般的には、下記方式が非保持化対応の方式となりますので、各決済代行会社がこれらの方式の備えているかどうかをご確認ください。

・HTML LINK方式(決済代行会社の決済フォームと自社サイトをリンクさせる方式)
・トークン方式(カード情報をトークンを用いて暗号化する方式)
・メール決済方式 (決済代行会社の決済フォームを利用し、直接ユーザーにメール送付して決済する方式)

②カード情報の取得方法が「カード情報非保持化」の運用に対応しているか?

システムは万全でも、運用に欠陥があったために情報の漏洩が発生するケースは多くあります。決済システムを運用するオペレーションは決済代行会社に相談して入念にご検討頂くことをお勧めします。

・カード情報入力作業や、CSVによるカード情報アップロード作業を、自社で保有するタブレット・PC・スマートフォン等の端末で行わないこと。
(基本的に、カードをお持ちのユーザー様ご自身の端末でカード情報入力を行う必要がございます。※3)
・正規のカード情報をPC/顧客DB/ファイルサーバなどで一切処理・通過・保存しないこと。
※3 決済代行会社等が提供する、CCT同等以上のセキュリティレベルの端末かつキャリア回線等(社内回線ではなく、外部の回線を使用)であれば可能な場合がございます。

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監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。