顧客管理はシステム化がおすすめ!システム化するメリットや選び方も紹介
近年、顧客管理システム(CRM)を導入する企業が増えています。
IDC Japan株式会社の発表によると、2020年の国内CRMアプリケーション市場規模は1,871億7,300万円で、前年比成長率が6.7%でした。2025年には市場規模が2,448億8,200万円になると予測されています。
今後もCRMを導入する企業は増加していくでしょう。しかし、顧客管理システムの導入に不安を抱えている企業や、導入しても上手く運用できなかった企業も少なくありません。
この記事では、顧客管理システムを導入するメリットと注意点、選ぶ際のポイントについて解説します。
顧客管理の重要性
顧客管理とは、顧客のニーズを詳細に把握して良好な関係を築き、維持することで顧客が企業にもたらす利益(LTV)を最大化するマネジメント手法です。顧客の購買行動のパターンが複雑化したことや、便利なデータベースツールが増えたことにより、顧客管理は重要視されています。
トライベック・ブランド戦略研究所が2021年に発表した調査によると、BtoB顧客が製品やサービスを購入する際に最も参考にする情報源は「企業のWebサイト」で、66.7%でした。従来行われていた営業活動である「営業担当者の説明」を参考にする顧客は47.0%に、「テレビ・ラジオ」を参考にする顧客は30.1%に留まっています。
インターネットが普及する前は、営業担当者に訪問してもらって説明を受けたり、CMを見たりする以外に製品やサービスの情報を得る機会はほとんどありませんでした。しかし、インターネットが普及してからは情報源の選択肢が増えたため、自ら情報を探して比較検討することが容易になりました。それに伴い、顧客が製品やサービスを購入するハードルも高くなっています。特にBtoB領域は製品やサービスの単価が高額であるため、訪問営業や広告のみでは売上を伸ばせないのが現状です。
また、IT技術の発達によりデータベースツールの開発が進み、より多くの情報を蓄積・管理できるようになったため、ツールを取り入れる企業が増加しています。
顧客管理はシステム化するのがおすすめ
顧客管理は年々複雑になっているため、従来のExcel管理ではカバーしきれなくなっています。時代に対応し、売上を伸ばす手段として顧客管理システムの導入は有効です。顧客管理をシステム化して得られるメリットは4つあります。
作業の効率化
Excel管理では、データを集計してレポートを作成するまでに時間や手間がかかるという課題がありました。ファイルが複数点在しているために必要な情報に辿り着くまでに時間がかかり、営業活動の改善に必要なレポートを都度作成しているために手間がかかるということが頻繁に起こっていては、他の重要な業務にまで手が回りません。
顧客管理システムを利用すれば、レポート作成にかかる時間や手間を大幅に削減できます。膨大な情報も一元管理できるため、必要な情報にすぐにアクセス可能です。また、システムによってはレポートを自動で作成できるため、本来行うべき業務に注力しやすい環境が整います。
情報共有がスムーズ
顧客管理システムを導入していない場合、顧客情報を蓄積する場所が統一されていない可能性があります。仮に顧客管理を目的に共有システムを導入していたとしても、氏名や連絡先、所属企業名などの基本情報しか管理できていないことも珍しくありません。顧客の購買プロセスや営業担当者の活動履歴などの詳細な情報が、個人パソコンで保管されていては情報共有ができません。
顧客管理システムを導入すると、顧客情報を一元化できます。部署を問わず情報を閲覧できるため、メールで連絡をとる手間も省けて、情報共有がスムーズに行えるようになるでしょう。また、誰でも編集できるため、常に新しい情報を得られます。
戦略立案に便利
商談を成約に結びつけるために、無策に訪問件数を増やしたりアプローチを行ったりすべきではありません。顧客のニーズに合わない一方的な営業活動は顧客に悪印象を与えてしまうでしょう。効率的かつ効果的に営業活動を行うには、顧客のニーズを把握して適切にアプローチすることが重要です。
顧客管理システムを利用すれば、的確な情報分析に基づいた効果的な営業活動を行えます。Webページの閲覧履歴や開封したメールの内容など、顧客の行動履歴を分析して顧客のニーズを把握することが可能です。行動履歴は自動的にデータ化されるため、分析も容易に行えます。
顧客満足度の向上
顧客とのコミュニケーションをとる際には、対応履歴や関連情報を把握しておく必要があります。しかし、電話やメール、SNSなど複数のチャネル(媒体)を使い分けている場合、全ての情報を管理して把握することは難しいでしょう。管理しきれず、対応ミスが続くと、顧客に不信感を与えてしまいます。
顧客管理をシステム化すると、複数のチャネルを通したコミュニケーションも一元管理可能です。情報を把握しやすくなるため、適切なコミュニケーションを迅速に行えます。顧客の信頼度を向上させて、商談につなげる効果も得られるでしょう。
顧客管理システムの導入はメリットだけとは限らない
顧客管理システムを導入して得られるメリットは多くあります。しかし、注意すべき点も同時に理解しておかなければ、上手に活用するのは難しいでしょう。システム導入時に起こり得る注意点は主に3つです。
導入・運用コストがかかる
顧客管理システムの利用には、導入する際の初期費用だけでなく、運用中の月額費用もかかります。継続的にコストがかかるため、上手に活用できなければ十分なROI(費用対効果)を得られません。
しかし、上手に活用できればかかったコスト以上の大きなリターンを得られます。システムに運用に不安がある中で導入する場合は、シンプルな機能で低コストなシステムを導入すると良いでしょう。
効果がすぐに表れない
顧客管理システムを導入すると、業務を効率化して効果的に売上を伸ばすことができますが、売上といった定量的な成果はすぐに得られるわけではありません。
成果を得るためには、定期的に情報を入力してデータ分析を行い、正しく活用する必要があります。初めから成功を求めず、トライ&エラーを繰り返して改善点を洗い出す体制を整えておきましょう。
操作権限を明確にしておく必要がある
顧客管理システムを運用すると、部署を問わず顧客情報の閲覧と編集ができます。リアルタイムで情報を編集できるのはメリットですが、システムを操作できる人が多すぎると顧客情報の誤情報の入力といった人的ミスが頻発する可能性が高くなるでしょう。
対処法としては、システム導入前に顧客情報を編集できるメンバーや閲覧可能範囲をあらかじめ設定しておくと、ミスが発生しにくくなります。
顧客管理システムの選び方
この記事の冒頭で説明したように、顧客管理システム市場は拡大し続けています。多くの企業が様々なシステムをリリースしているため、選択肢が多くて何を選べばいいのか判断に迷う方もおられるでしょう。ここでは、顧客管理システムを選ぶ際のポイントを5つ解説します。
クラウドかオンプレミスか
顧客管理システムは大きく分けてクラウド型とオンプレミス型の2種類があります。自社にとって運用しやすい型はどちらなのか、特徴を踏まえて判断しましょう。
クラウド型のメリットは手軽に導入できる点です。サービス運営会社が提供するWebサイトにアクセスするだけで顧客管理ができます。自社でサーバーを購入・構築する必要がなく、メンテナンスもサービス会社に代行してもらえるため、管理工数をかけず低コストで運用可能です。しかし、オンプレミス型よりも機能の自由度は低く、セキュリティ面も劣ります。
オンプレミス型(非クラウド型)のメリットは、機能の自由度が高い点です。ITの知識があれば自社に適したサーバーやソフトウェアを一から構築し、導入後も自由にカスタマイズして使いやすい仕様にアップデートできます。また、既存のシステムとも連携しやすく、セキュリティ面でも安心です。しかし、クラウド型よりも高コストで知識も要するため、顧客管理システムを初めて利用する企業にはおすすめできません。
操作性は運用にマッチしているか
現場の社員にとって負担にならないシステムであることも重要です。
顧客管理システムはハイスペックで多機能なほうが詳細なデータを得られますが、その分操作は複雑化する傾向にあります。操作が難しいために運用が継続できないのであれば、高性能なシステムを導入しても成果を得られません。どの部署の社員でも容易に操作できるようなシンプルなシステムを導入するほうが、多機能なシステムを導入するよりも有効なケースもあるでしょう。
必要な機能は揃っているか
自社が必要としている機能や求めている効果を明確にしておくと、導入後のミスマッチを防げます。顧客管理システムに搭載されている主な機能は以下の4つです。
・顧客情報を管理する機能
・多くの顧客を獲得する営業支援機能
・顧客サポートやFAQ(顧客から寄せられるよくある質問)などの顧客支援機能
・新製品・サービスを宣伝する戦略機能
自社の営業戦略やROIを考慮したうえで、どの機能が必要か検討すると良いでしょう。例えば、データ集計や分析の工数を減らす目的で導入したのに、機能が多いために導入・運用時に工数が増えてしまうのであれば別のシステムを検討することをおすすめします。得られる効果がコストに見合わない場合は、導入すべきタイミングになるまで見送るのも良いでしょう。
セキュリティ面の対策は充分か
クラウド型のシステムを導入するのであれば、顧客の大切な個人情報を預けるに値する運営会社なのかを見極めるのも重要です。
顧客管理システムには膨大な顧客情報が蓄積されています。一度でも情報が漏えいしてしまえば、社会的信用を失い、せっかく獲得した顧客から見放されてしまうでしょう。顧客との信頼関係を損ねないためにも、運営会社のセキュリティ対策は万全か、よく確認すべきです。
オンプレミス型を導入する場合は、ITの知識が豊富でシステム運用の経験がある社員をセキュリティ担当者に任命すると良いでしょう。
サポートは付いているか
クラウド型の顧客管理システムを導入するのであれば、サポートが手厚い運営会社を選ぶと良いでしょう。
無事システムを導入できたとしても、運用体制を整えるのに時間がかかってしまい、スムーズに運用できない可能性があります。特に、社内にITの知識がある社員やシステム運用の経験者がいない場合、疑問点を解消できず使いこなせないまま解約してしまう可能性も考えられます。
初めて顧客管理システムを導入する企業や運用に関して不安がある企業は、サポートサービスが充実している運営会社を選ぶと安心です。導入前からヒアリングを行ってプランを提案し、導入後も初期設定のサポートや操作方法の説明などのサポートを行ってくれます。
顧客管理システムに関連するシステム
顧客管理システムは他のシステムと連携させると、より効率的に成果を得られます。顧客管理システムと関連が深い2つのシステムを理解して、今後のシステム連携に備えましょう。
営業支援システム(SFA)
営業支援システムとは、営業活動を支援するためのツール、またはその手法です。営業担当者が商談を始めてから受注するまでの進捗状況を可視化し、営業活動を管理します。
営業部門の業務範囲は幅広く多忙を極めますが、定型業務が多いため自動化できる部分も少なくありません。例えば、案件管理や見積書の作成、行動管理、スケジュール管理などはシステムで自動化可能です。営業管理システムを導入すると、営業担当者がコア業務に注力できるため、売上向上にもつながるでしょう。
マーケティングオートメーション(MA)
マーケティングオートメーションとは、見込み顧客の獲得から商談化までのマーケティング活動を自動化・効率化するツールです。見込み顧客の属性やWebサイトの閲覧履歴、セミナーへの参加状況などから見込み度合いを判別し、適切なアプローチを行います。商談獲得数を増やしたいものの、そもそも見込み顧客が少ないという課題を解決するためには有効です。
見込み顧客の選別・育成にはマーケティングオートメーション、商談開始から受注までは営業支援システム、受注獲得以降の顧客との関係維持には顧客管理システムというように、マーケティングや営業の段階ごとにシステムを使い分けると業務を効率化できます。
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