システム使用料を会計するタイミングはいつ?経理作業の効率化も併せて解説
オンプレミス型のデメリットを克服するものとして、近年はインターネットを介してシステムを使うクラウド型が主流になりつつあります。ユーザーはクラウドシステムを使った期間に応じて使用料を支払いますが、会計上はどのように処理をすべきものなのでしょうか。
そこで本記事ではシステム使用料の処理において必要な経理作業や税務手続きにおける注意点、経理作業の効率化などについて解説します。
システム使用料の処理で必要な経理作業とは
システム使用料を経理処理する際、一般的には減価償却が適用されます。以下にそれぞれについて解説します。
システム使用料の経理作業において確実な規定はない
企業では取引があったり、お金の動きがあったりした際にはその内容を分かりやすく分類するために勘定科目という見出しを付けて整理します。勘定科目は資産、負債、純資産、収益、費用の5つのグループから構成されますが、システム利用料を会計処理する際、どの勘定項目を使うかは企業に一任されており、明確な規定はありません。
そもそも、この代金はこの勘定項目に分類する、という明確なルールも法的な指示も存在しないのです。どの勘定項目に振り分けるかはそれぞれの企業の裁量で決めることが許されており、振り分けのルールが社内で一貫したものであれば問題ありません。
ただし、振り分けのルールを途中で変更して勘定項目を変えてしまうと、経営状態の把握が難しくなるため注意が必要です。また、税務調査の際に不正な経費を計上しているのではないかと疑われてしまう恐れもあります。
システム使用料は減価償却が適用となる
インストール型(オンプレミス型)の会計ソフトを購入したり、ERPのような基幹システムを導入したりすると、ソフトウェアの価格が10万円以上になる場合もあるでしょう。この場合、ソフトウェアは時間の経過と共に情報の価値や鮮度が落ちていく、すなわち価値が落ちていくと見なされて無形固定資産として計上されるため、減価償却の対象として取り扱われます。
無形固定資産に計上するためには、自社が利用することを目的としており、かつ収益を獲得したり費用の削減が認められたりすることが条件です。業務使用目的で導入した会計ソフトは、1年以上使用する予定であり、購入価額が10万円以上であれば減価償却資産の条件に当てはまります。
他方クラウド型の会計ソフトは、所有権は自社ではなくシステムベンダーが保有しているものであることから、資産には計上されません。
システム使用料の経理作業は2パターンある
システム使用料は、クラウド型とインストール型で仕訳の仕方が異なることは先に少し触れましたが、ここで2パターンの経理作業について改めて詳しく解説します。
クラウド型
クラウド型の会計ソフトを経費計上する際にポイントとなるのは、モノを購入したのではないことです。実態はシステムベンダーのインターネット環境を使うための代金という意味合いに近くなり、無形固定資産(ソフトウェア)を購入したという形式には当てはまりません。
多くの場合、システムベンダーから提供されているクラウド型の会計ソフトは、サービスやサポートの利用料として月額、または年額で代金を支払います。そのため、購入と利用の形態から判断して、クラウド型の会計ソフトは通信費として計上するのが一般的です。
インストール型
インストール型の会計ソフトを購入する方法としては、インストールCDが入ったパッケージを店頭で購入するか、ネット上からダウンロードして購入するかのいずれかです。どちらの場合でもクラウド型の会計ソフトとは異なって買い切り型の購入であり、一度購入すれば終わりとなることから、購入価格が10万円未満であれば消耗品費として経費計上します。
小規模事業者向けの会計ソフトであれば価格は大抵10万円未満であり、インストール型は消耗品費に計上するケースが多いでしょう。消耗品費に計上されるのは他にも文房具や事務家具なども含まれるため、仕訳をする際には会計ソフトウェア購入費などのように具体的に摘要欄に記入しておけば後々区別しやすくなります。
なお、ソフトウェア購入費には、導入する際に必要となる設定作業や修正作業にかかった費用も含まれます。
システム使用料の税務手続きにおける注意点
システム利用料の税務手続きを行う場合、会計監査を実施する場合と実施しない場合でそれぞれ注意すべき点があります。以下にそれぞれについて解説します。
税務手続きに会計監査を実施する場合
税務手続きに会計監査を受ける場合には、ソフトウェアは企業会計審議会が策定した研究開発費等に係る会計基準に沿って会計処理を行うことと定められています。この基準によると、ソフトウェアを固定資産として計上するためには、将来収益を獲得することと費用を削減できることの2つが確実であることを証明しなければなりません。
しかし、ソフトウェア導入による将来の収益性や費用削減効果を証明するのは難しく、実態やリスクは保守的に反映すべきとする保守主義の原則に従い、経費として計上されることが大半です。
インストール型のソフトウェア購入費用として計上された経費は、税務申告を行う際には資産として処理されます。クラウド型のソフトウェアは消耗品と見なされ、導入費をすべて経費として一括計上し、同額を複数年に渡って損金として算入します。
税務手続きに会計監査を実施しない場合
税務手続きに会計監査を受けない場合には、法人税法施行令第13条で規定されている減価償却資産の範囲に従うこととなり、これによるとソフトウェアは税務上の資産に計上されます。インストール型のソフトウェアの導入費用に関しても、将来収益を獲得すること、または将来費用が削減できることが確実である場合を除いて取得原価となります。
取得原価とは、購入手数料などの付随費用も含めて資産の購入のために要した原価のことです。なお、ソフトウェアの使用可能期間が1年未満である場合は資産に計上する必要はありません。
実際には会計ソフトの使用可能期間が1年未満というケースは一般的には考えられず、インストール型のソフトウェアはすべからず資産に計上するものと考えていいでしょう。クラウド型の場合は、前述した会計監査を受ける場合と同じ扱いになります。
システム使用料を会計手続きするタイミング
システム使用料を会計手続きするタイミングはいくつかのパターンに別れます。以下にそれぞれについて解説します。
月額制の場合
システム使用料を、月額制のライセンス使用代金という形で一定期間にわたって毎月支払う契約を結んでいる場合は、その都度税法上で認められている損金として処理します。会社に課せられる法人税は、収益から損金を差し引いた額を基にして算出されるため、損金の額が多くなればそれだけ税金を圧縮できるのがメリットです。
月額制の計上例として、年額24万円のライセンス使用料を月割で支払う契約を結んだ場合、毎月2万円を支払手数料として損金に計上します。ここでいう支払手数料とは、システムを利用する際に発生する手数料の支払いを処理するための勘定科目で、取引されるサービスに付随してかかる経費を意味します。
一括払いで契約期間が1年以下の場合
システム使用料を一括して支払い、使用契約期間が支払い時から1年以下の場合は、法人税基本通達2-2-14が適用され、支払った代金の全額を当該事業年度にける損金の額に算入します。これを短期前払費用と呼び、例外的な会計処理です。会計処理の原則に従うなら、代金を一括して前払いした場合でも損金処理はサービスを受けた月に行わなければなりません。
しかしながら、短期前払費用の制度では、一定の要件を満たせば代金を支払った時点で損金処理できるとしています。例えば1年間のシステム使用料として24万円を前払いした場合は、24万円を短期前払費用として支払い時に損金計上することが可能です。
ただし、前払いした費用を収益の計上と対応させる場合は、1年以下の短期前払費用でも支払った時点で損金処理することは認められていません。
一括払いで契約期間が1年以上の場合
システム使用料を一括して支払い、使用契約期間が1年を超える場合は、1年を超える部分についてのみ前払い費用として資産計上します。前払い費用とは、法人が1年以上継続的に役務提供を受けるために契約して代金を一括で前払いした場合に、1年間の当該事業年度後に持ち越される役務の対価のことです。この場合では、前払いした費用を一旦資産計上しますが、前払い費用は翌期以降に損金処理されます。
例えば7月1日に1年分(7月~翌年6月分)12,000円のサービス使用料を支払った場合では、期末の12月31日に決算するなら前払い金は決算時に未経過分の6ヶ月分の6,000円を資産として計上し、翌期に新たに費用に再振替をします。なお、決算時には前払い費用の残高を確認できる資料を添付しなければなりません。
経理作業はツールやサービスを活用すれば効率化できる
システム使用料の会計処理以外にも経理作業は煩雑なものが多く、その処理に経理担当者が忙殺されていることも少なくありません。しかし、ツールやサービスを活用することによって効率化できる余地があります。以下にそれぞれについて解説します。
システムを導入する
経理の業務は端的に言えばお金の流れを記録・管理することで、対象となる業務内容は広範かつ多様なものです。請求書の入力、帳簿への転記、作成した帳票類のチェックといった定型的な作業が多くを占めるのも特徴ですが、システムを導入することで効率化・自動化が可能です。
単調なルーティンワークは手作業で行っていると、繰り返しているうちミスが生じやすくなるものですが、システムで処理すればどんなに単調な作業でもミスなくこなすことができます。システムに任せる業務を切り出す際は、手作業を減らせるか、時間が節約できるかという視点で検討するようにしましょう。
決済代行サービスを利用する
決済代行サービスとは、企業間取引の際に必要な決済作業を自社に成り代わって行ってくれるサービスのことです。代行してもらえる業務としては、与信審査、請求書発行・送付、代金回収、入金管理、入金消し込み、督促などです。
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また、決済代行サービス会社によっては代金が未回収であっても100%債権を保証しているところもあり、健全なキャッシュフローの構築も実現できます。
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なお、コンビニ決済、クレジットカード決済、口座振替、銀行振込など、複数の決済手段に対応しているため、企業間取引のみならず、BtoC取引にも活用いただけます。
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