後払いのための与信審査とは?与信審査のポイントや与信管理の注意点も解説
請求書払いなどの後払いの際には、支払いを行う顧客企業に十分な支払い能力が備わっているか審査を行う必要があり、この審査を「与信審査」と呼びます。与信審査は売掛金の未回収リスクを減らし、企業の資金繰りを安定させるためにも必要な作業です。一方で、基準が厳しいと販売機会の損失に繋がることもあるため、適切なバランスで審査を行うことが重要です。
今回は後払いの際の与信審査について、その概要と気を付けるべきポイントをご紹介します。正しい審査の体制を整え、資金繰りの安定に役立てましょう。
そもそも後払いとは
そもそも後払いとはどの様な決済手段なのでしょうか。まずは後払いの概要とそのメリット、デメリットからおさえていきましょう。
概要
後払いとは、商品やサービスの提供が完了した後に日を改めて、代金を支払いが行われる決済手段です。例えば、ECサイトで後払いを行う場合であれば、自宅に商品が届いてから決済を行うことになります。
後払いの手段はいくつかありますが、企業間の取引の場合は銀行振込が一般的です。商品やサービスの提供を確認したうえで支払いに移るため、顧客に有利な決済手段といえます。
後払いのメリット・デメリット
後払いを採用する企業側にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
まずメリットとしては、広い顧客の取り込みが挙げられます。後払いは商品、サービスの提供を確認してから決済を行うため、顧客にとっては安心な決済方法です。クレジットカードを持っていない顧客層の取り込みもしやすくなります。
特に、ECサイトでは商品をカートに入れた後に、購入までいたらずに顧客がサイトから離脱する「かご落ち」が発生します。後払い決済の導入は先払いの不安を解消し、かご落ちを減らす効果も期待できます。
一方で、デメリットは未回収リスクです。支払い期日までに顧客から代金が支払われない、いうことが起こり得ます。未払い額はそのまま企業の損失となるうえに、催促の手間もかかります。
企業間決済の後払いで欠かせない与信審査とは?
後払いを導入する際には、顧客の支払い能力をチェックする「与信審査」が欠かせません。具体的にどのような審査を行うのか、基礎から整理していきましょう。
与信審査の基礎知識
与信審査がしっかりと機能していれば、売掛金の未回収が減ります。与信審査では相手の過去の取引からその信用性を判断しますが、これらの信用性を判断するための情報は、信用情報と呼ばれます。
取引先が大手企業であれば、その企業の公開情報、代表者の経歴などが審査対象になることも珍しいことではありません。地道な調査が必要となるため、自社で調査することが難しい場合は、専門の信用調査会社に審査を依頼することもあります。
与信限度額の設定方法
与信審査の際には、まずは与信限度額を設定します。与信限度額は、取引先に対して設定する後払いの上限値となり、安全な範囲を見極めて設定されます。
業績にもよりますが、取引実績のない小さな企業であれば、与信限度額は小さく設定されやすいでしょう。反対に、すでに取引を行っている大手企業であれば、与信限度額は高く設定しやすくなります。上限額を決定数にあたっては、前述の信用情報、売掛期間や手形期間といった取引の期間や、対象企業の純資産などが判断材料になります。
与信審査のポイント
与信審査が甘くなっては、未回収リスクが高まってしまいますし、厳しくしすぎても機会損失に繋がります。では、与信審査の際にはどのような点に気を付けるべきでしょうか。ここでは審査の際のポイントをご紹介します。
キャッシュフローに着目
損益計算上では利益がでている企業でも、手元に現金が残っていない場合があります。具体的な資金力を確認するためには、取引先企業のキャッシュフロー計算書を確認しましょう。キャッシュフロー計算書には、営業活動、投資活動、財務活動の3つの種類のキャッシュフローがまとめられています。それぞれの数値を確認し、資金繰り健全な状態に保たれているか、審査を行います。
安全分析の実施
企業の安全性は貸借対照表(B/S)から分析できます。代表的な指標としては、「流動比率」と「当座比率」が挙げられます。
「流動比率」は短期的な支払い能力を表す指標で、対象企業が短期的に支払わないといけない「流動負債」の額と、短期的に支払いに充てることができる「流動資産」の額の比率です。通常、流動資産は流動負債の2倍以上あると、安全性が高いとされています。
「当座比率」は前述の「流動負債」と「当座資産」の比率を指し、「流動比率」に比べより精緻な短期的支払い能力を判断する指標です。「当座資産」は「流動資産」の中でも、より確実に支払いに充てることができる資産(預金や短期の売掛金など)を対象としています。通常、当座資産は1倍以上あると、安全性が高いとされています。
資産の換金力を注目
キャッシュフローに加えて、保有資産の換金力も評価対象に加えるべき項目です。資金力が乏しい企業でも、現金に換えることのできる資産を多く有している場合があり、換金可能性で評価した資産をストックと呼びます。ストックのある企業であれば、支払い期日までに資金を用意できなくとも、そのストックを売却して支払いに充てることができます。
統一した評価基準の設置
いくつかの審査基準をご紹介しましたが、そのうえで大切なのは統一した評価基準を設置することです。与信審査の視点は多岐にわたりますが、審査のプロセスを複雑にしてしまっては、審査にかかる費用と時間がかさんでしまい、場合によっては取引のチャンスを逃してしまうかもしれません。
また、特定の人しか行えない属人的な業務にはしない方がよいでしょう。一定の評価基準を設定することで、誰でも客観的な評価を実施できるようになります。そして、基準を明確にすることは社内で統一した意識を持つことにもつながり、部門が異なっていても一体感のある活動が行えます。
与信管理業務で気を付けておきたいこと
与信管理は企業の資金繰りにも直結する重要な業務です。ぬかりなく遂行するためにはどのような体制が必要なのでしょうか。ここでは与信管理業務の際に気を付けるべきことをご紹介します。
売掛先企業の情報を定期的に確認する
取引開始時の業績が良くても、後から資金繰りが悪化する場合もあります。与信にかかわる企業情報は定期的に確認するようにすると良いでしょう。1年に1度は刷新するなど、情報取得の時期を定めておくことが大切です。
また、日々の取引の中で、全般的な業績や資金繰りに変わりがないかなど些細なことから読み取るようにしておきましょう。
売掛先企業を一部に集中させない
取引先を1社に集中させてしまうと、売掛金が回収できなかったに大きく業績が悪化してしまいます。取引先の倒産とともに自社も倒産する、「連鎖倒産」につながるリスクも高まります。特定の取引先に依存しないように、ある程度、売掛先を分散させておくことも大切です。より広く顧客の開拓ができないか、事業部とも連携しながら対策を打てると良いでしょう。
定性的な判断も欠かさずに行う
与信管理の際は、定量的な数字だけでなく、定性的な情報も取得するようにしましょう。定性的な情報には、経営陣のプロフィールや、その企業の業界動向、競合企業との競争環境などが含まれます。定量的な数字の信頼性を確認するためにも、定量と定性の両面から与信を精査できると良いでしょう。
与信審査・与信管理は請求代行業者に依頼しよう!
与信審査業務は時に複雑で企業にとり大きな業務負担になることから、専門の業者にアウトソースした方がより効率的に審査を進められることもあります。ここでは請求代行業者への依頼方法と、そのメリットについてみていきましょう。
請求代行業者とは
請求代行業者は、企業間取引の請求業務を代行する企業です。企業によって代行を請け負う業務範囲は異なりますが、代行する請求業務には与信審査も含まれます。そのほかの業務としては、請求書の発行、請求書の送付、売掛金の回収、回収状況の確認、消込、支払いなどが挙げられます。
請求代行業者に与信審査を依頼するメリット
与信審査を含めて請求業務を外注することで、企業の請求業務にかかる負担が全体的に軽減されます。特に与信審査の体制が整っていない企業であれば、一からその体制を整えていくことに多大な労力を必要とします。知見のある外部業者に任せれば、かえって安く体制を整えられるかもしれません。
また、本業の業績を伸ばしていくための活動にも集中しやすくなります。もちろん専門家にお任せするため、与信管理の徹底も進み、未回収リスクも軽減されます。
与信審査を依頼する請求代行業者の選び方
請求代行サービスの中には、本当に請求書の発行のみしかできないものもあります。その請求代行業者が与信審査にも対応しているかを必ず確認しましょう。
また、利用する請求代行サービスによって、与信審査のタイミングや与信額の上限は異なります。
与信審査のタイミングに関しては、自社の商品、サービスに適したタイミングになっているかを確認して選ぶとよいでしょう。「取引前の事前審査」は、1つの顧客と長く継続的な取引を行う場合に有効です。「受注する案件別の審査」は、単発的な取引が多い場合に適した審査です。
与信額の上限については、取引先の購買意欲が高いにもかかわらず与信額が低ければ期間損失となるため、自社の取引規模に見合った与信額が設定できるかを確認するとよいでしょう。
企業間決済の後払いは「1click後払い」にお任せ!
企業の資金繰りを安定させるためにも、与信審査は重要な活動です。正しい審査の体制を整えて経営の安定に役立てましょう。
一方で、与信審査は煩雑な業務でもあります。審査や担保が不要な「1click後払い」の導入をぜひご検討ください。
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