個人事業主やフリーランスの請求書の書き方とは?作成時の注意点なども解説
個人事業主やフリーランスの方にとって、取引先に提供した商品・サービスの代金を確実に支払ってもらうためにも、請求書作成はスムーズに行いたい業務です。とはいえ、最近フリーランスになられた場合など、個人で初めて請求書を作成する際にどう書けばいいのか、不安のある方もいらっしゃるでしょう。
そこでこの記事では、個人事業主やフリーランスにおける請求書の書き方や必須記載項目、個人で請求書を作成する場合の注意点なども含めてお伝えします。
また、請求書全般に関する書き方については「請求書の書き方とは?記載項目や注意点を分かりやすく解説!」で詳しく解説しています。
個人事業主やフリーランスの請求書の書き方
ここでは、個人事業主やフリーランスの請求書の書き方について解説します。多くの個人事業主やフリーランスの方の場合、請求書の書き方は、従来までの「区分記載請求書等保存方式」に基づく区分記載請求書というものになります。
区分記載請求書等保存方式は、主に免税事業者が発行する請求書の書き方です。そのため、個人事業主やフリーランスの方でも、インボイス制度に対応して適格請求書発行事業者として登録を受けている場合は、請求書の書き方は「適格請求書等保存方式」に基づく適格請求書(インボイス)となります。
個人事業主やフリーランスの請求書の必須記載項目
個人事業主やフリーランスの方が発行する区分記載請求書の必須項目は、以下の5つです。それぞれ掘り下げてみていきましょう。
区分記載請求書の必須記載項目 |
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①請求書発行者の氏名又は名称 ②取引年月日 ③取引内容 ④税率ごとに区分して合計した税込対価の額 ⑤請求書受領者の氏名又は名称 |
区分記載請求書の記載例
出典:「2 帳簿及び区分記載請求書等の記載に係る留意点」(国税庁)を加工して作成
請求書発行者の氏名又は名称
請求書発行者の会社名・個人名・事業で使用している屋号などの名称を記載します。他には住所・電話番号・メールアドレスを記載するとトラブルが発生した場合に連絡が取りやすくなります。
取引年月日
いつ行われた取引なのかを明確にする目的で取引年月日を記載します。
取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
取引した製品やサービスに基づき、品名(品目)・単価・数量を記載します。軽減税率(8%)の対象の品目がある場合には、「※」などの記号を使用してその旨を明確にし、請求書の下部などにも「※ 軽減税率対象品目」と記載してください。
税率ごとに区分して合計した税込対価の額
取引金額の合計を記載します。軽減税率(8%)の対象品目がある場合には、標準税率(10%)と軽減税率に分けて合計した請求額も併記する必要があります。区分記載請求書の場合は税込金額で書いてください。
請求書受領者の氏名又は名称
請求書を受領する会社名・個人名・事業で使用している屋号などの名称を宛名として記載します。規模の大きな会社宛に発行する場合には、取引先の部署名や担当者名まで含めると、取引先としても受領しやすくなるので親切です。敬称も忘れず記載しましょう。また、例外として、不特定多数の者に対して販売等を行う小売業、飲食店業、タクシー業等に係る取引については、この項目の記載を省略できます。
個人事業主やフリーランスが請求書を作成する際の注意点
個人事業主やフリーランスの方が請求書を作成する場合、注意が必要になるポイントがあります。以下でみていきましょう。
適格請求書(インボイス)との誤認
2023年10月のインボイス制度導入後、個人事業主やフリーランスの方が請求書を作成するうえで一番注意すべき点は、取引先から適格請求書(インボイス)だと誤認されないようにすることです。
適格請求書発行事業者以外の者が、適格請求書発行事業者が作成した適格請求書又は適格簡易請求書(簡易インボイス)であると誤認される恐れのある表示をした書類を交付することは禁止されています。これに違反した場合、罰則(1年以下の懲役又は 50 万円以下の罰金)の適用対象となります。
適格請求書に誤認される恐れのある表示の具体例としては、適格請求書に記載される登録番号(T+数字13桁)と類似した英数字や、自身のものではない登録番号を、自らの「登録番号」として記載した書類などを指します。
取引先の定める請求書の書き方を確認
個人事業主やフリーランスの方が請求書を作成する際、受け取り可能な請求書の書き方を独自に定めている法人から請求書の再発行を求められることがあります。具体例としては、名前の記載とともに押印がなければ請求書として受け付けられない、といったケースが挙げられます。
こうした取り決めは、法律上の決まりではありませんが、請求書の取り扱いに厳格なルールを設けている法人と取引する場合は、あらかじめ先方が求める請求書の書き方について確認しておくとよいでしょう。
請求書発行日に関する取引先との齟齬
個人事業主によっては請求書を作成する日時が締め日より前になる場合も多く、請求書の発行日に作成した日を記載したり、空白にしておいたりするケースが見受けられます。しかし、請求書の発行日は、正常な入金のためにも適切に記載することが重要な要素の一つです。自身の都合だけで判断せず、取引先にも確認を取ったうえで、両者で認識の齟齬が生じない請求書発行日を記載しましょう。
請求金額に関する表記
請求金額の表記については、不正に操作されることを防ぐ目的で、金額の前に「¥」や「金」、後に「円」や「-」を記入します。「¥」を用いる場合には金額の後に「-」を記入し、「円」を用いる場合は金額の前に「金」を記入して使い分けます。そして、金額を3桁ごとに「,」で区切ります。
源泉徴収税の有無の確認
個人事業主、源泉所得税が徴収されているケースです。源泉徴収の対象となる特定の職業では、仕事の発注側があらかじめ所得税を請求額から天引きしている場合があります。
もし税額を記載していなかったとしても、納税の義務がある取引先は徴収税を計算して請求金額から差し引かなければなりません。支払い側の源泉徴収は義務であり、徴収漏れがあると源泉徴収義務違反に問われます。
請求書への記載は義務ではないものの、トラブルを防止するためにも源泉徴収税額が記載されているかどうか確認しておきましょう。
消費税の請求
個人事業主やフリーランスの方は、基準期間の課税売上高及び特定期間の課税売上高等が1,000万円以下であれば、消費税の納付が免除されます。ただし、その場合でも仕入れの際に負担した消費税相当額を取引価格に上乗せして請求することは適正な転嫁として、何ら問題はありません。
また、個人事業主やフリーランスの方が請求書に消費税相当額を記載したとしても、それが適格請求書と誤認される恐れのあるものでなければ、基本的に罰則の適用対象となるものではありません。
請求書における消費税の記載方法については、「請求書では消費税をどう記載するべき?インボイス制度についても紹介」で詳しく解説しています。
個人事業主やフリーランスの請求書作成方法・ツール
個人事業主やフリーランスの方が請求書を作成する場合、その方法としては手書きやPCが一般的といえます。手書きとPCで作成・印刷したもの、どちらであっても証明書としての効力に差が出ることはありません。また、紙媒体ではなく、PDFファイルなどで作成してメールで送付しても同じ効力を持ちます。ただし、PDFファイルで提供する場合、取引先によっては正式に作成された文書の証明として「電子印鑑」の使用が求められることがあります。
請求書作成における有用なツールとしては、必須記載項目が印刷済みの市販のもの、表計算ソフトや文書作成ソフトのテンプレート、会計システムに備わっている請求書作成機能などが挙げられます。従来は印刷した請求書を郵送で送付する方法がよく用いられてきましたが、手間とコストがかかる点がデメリットでした。請求書は継続的に作成する場合が多く、またペーパーレス化が推進される昨今は、メール送付やクラウド上でのデータ共有に移行した方が業務負担が軽減できるでしょう。
適格請求書発行事業者を選択する人はインボイス制度への対応が必要
基準期間の課税売上高及び特定期間の課税売上高等が1,000万円以下である個人事業主やフリーランスの方の場合、インボイス制度への対応は基本的に必要ありません。
ただし、なかには取引先の希望等に合わせて、適格請求書の発行が必要になるケースもあるでしょう。その場合には、必須記載項目などに変更が生じますので注意しましょう。また、適格請求書発行事業者として登録を受けた場合、課税事業者となるため、消費税の納税免除は受けられなくなります。
インボイス制度や適格請求書の書き方については以下で解説しています。
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