損益とは?損益計算書(P/L)や損益管理について徹底解説!
会社経営をしていると売上高、人件費、利益率、経費など様々な数字が出てきますが、これらの数字は経営していくうえで要となるものです。これらの数字を経営指標として分析すれば自社の経営状態を客観的に見ることができ、会社経営の質が向上します。客観的なデータに基づかない経営は、非効率的でその後の発展は見込めないでしょう。
例えば、今年は去年と比べて忙しかったので今年の業績は伸びた気がする、などと感覚的に経営状態を把握していては、これからどこに投資すべきかといった判断ができません。重要な経営指標の1つに「損益」というものがあります。この記事では損益の概念、損益計算書とは、損益管理とは、損益計算書の作成方法などについて解説します。
損益とは
損益とは、損失と利益を合わせた言葉で、売上によって得た収益から要した経費などを差し引いた差額を指します。差額がプラスであれば利益を得ていることを意味し、マイナスであれば赤字に転落していることを表すため、どちらのバランスに転じているか会社の業績を判断するうえで非常に重要な管理項目です。
会社の業績は増収増益、増収減益、減収増益、減収減益の4種類の局面で表すことができます。会社にとっては増収増益が最も理想的な状態で、減収減益は最悪な状態といえます。会社がどの局面にあるかを判断するには、一定の期間内においてどれだけの損益(利益)を得たかの把握が必要です。把握するには、上述のように一般的には会計期間中の収益から経費を差し引いて計算する損益法によって損益が求められます。
損益計算書とは
会社が今どのような事業分野で、どの程度の儲けを出しているか、あるいは損失を出しているかを知るために損益計算書を用います。以下に損益計算書の内容について解説します。
構成する項目
損益計算書は貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書などと並ぶ重要な決算書です。損益計算書は収益、費用、利益の3つの項目で構成されています。英語では「Profit and Loss Statement」と書くので、それを略してP/Lと呼ぶこともあります。決算を集計する際に収益から経費を引いてどれだけの利益を得たのかを知るために作成され、経営判断材料となる書類です。どれほどの売上を上げて、どのような経費を使い、どれだけ儲けたかを読み取ることが可能で、言ってみれば会社の1年間の成績書です。
収益と利益は似通った意味を持つと思われる方もいるかもしれませんが、収益は費用を差し引く前の売上を指し、利益は費用を差し引いて残った儲け(純利益)を指します。費用は、収益を得るために費やした投資や支払いを指すのが通常の定義です。
損益計算書は、当該期間の収益から費用を差し引き、段階的に利益を計算するという構造になっています。また、損益計算書を正しく読み込むことで、本業と本業以外の事業のどちらで利益を上げているか解読することも可能です。
損益計算書から読み取れる利益
損益計算書から読み取れる利益は、以下の5つに区分されます。
(1)売上総利益:自社の商品やサービスの販売価格と原価の差によって得た利益。売上高から販売原価を差し引いて計算する。粗利とも言う。
(2)営業利益:本業の商品やサービスの販売によって稼ぎ出した利益。売上総利益から販売するうえでかかる販売費および一般管理費を差し引いて計算する。
(3)経常利益:本業と本業以外の両方の収益と費用を合算したもの。上記(2)の営業利益に営業外利益を加算し、そこから営業外費用を差し引いて計算する。
(4)税引前当期利益:当該期内に支払うべき税金を納める前の利益額。上記(3)の経常利益に特別利益を加算し、そこから特別損失を差し引いて計算する。
(5)当期利益:当該決算期において最終的に確定した利益。上記(4)の税引前当期純利益から法人税、法人住民税、法人事業税を差し引いて計算する。純利益とも言う。
損益計算書から把握できる企業の収益性
損益計算書から把握できる企業の収益性は、以下の4つに区分されます。
(1)売上高総利益率(粗利率):売上高に対してそのうち売上総利益が何パーセント占めているかを示すもの。企業の経営状況が優良かどうかをチェックできる。
売上高総利益率 = 売上総利益 ÷ 売上高 × 100
(2)売上高営業利益率:売上高に対してそのうち営業利益が何パーセント占めているかを示すもの。本業での収益力も高低をチェックできる。
売上高営業利益比率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100
(3)売上高経常利益率:売上高に対してそのうち経常利益が何パーセント占めているかを示すもの。企業の収益性の良し悪しをチェックできる。
売上高経常利益比率 = 経常利益 ÷ 売上高 × 100
(4)損益分岐点売上高:固定費と同額の付加価値を生んで利益を上げるために必要な売上高。低いほど好ましい。
損益分岐点売上高 = 固定費÷付加価値率(付加価値÷売上高)
貸借対照表との違い
損益計算書と貸借対照表は、キャッシュフロー計算書と合わせて財務三表と呼ばれるものです。貸借対照表は、英語で「Balance Sheet」と書くのでB/Sと略して呼ばれることもあります。損益計算書は企業が1年間でどれだけの儲けを得たかを表すものであるのに対し、貸借対照表は儲けた結果として資産と負債、そして純資産がいくらになったかを表すものです。つまり、損益計算書はビジネス活動の結果を見えるようにするものであり、貸借対照表はお金をどのようにやりくりしているかを見えるようにするものです。
貸借対照表を見ることで、企業が現在内部留保として持っている資産と負っている負債の状態が分かり、資産と負債の関係を対比して読み取れます。資産は調達した資金をどのように使ったかを示し、負債は資金をどのように調達したかを示します。
損益管理とは
損益計算書を基に行う活動に損益管理というものがあります。以下に損益管理の目的と損益管理の種類について解説します。
目的
損益管理とは、損益計算書を基に企業の現在置かれている利益と損失の状況を把握し、より良いものに改善していく活動のことです。一般的には利益の向上が損益管理の目的となります。赤字であれば黒字にするためにはあとどのくらい収益を上げなければいけないのか、黒字であれば赤字に転落するまでには売上がどのくらい下がったらそうなるのかを把握するのが出発点です。
企業としては当然黒字を維持するのが目指す目標です。そのためには売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益のそれぞれの利益を確認・分析・管理し、効率よく利益を上げることを模索していきます。損益計算書を分析すればどのように利益を上げているか、またどのような経費に出費しているかが分かるので、損益管理を通じて会社を経営上のリスク管理につなげることも可能です。また、損益管理の活動結果は経営判断を下したり、株主や債権者に対して企業努力活動に関する情報として提供したりする場面でも使われます。
損益管理の種類
損益管理の種類は以下の3つです。
(1)部門別(営業所別)損益管理:部門ごともしくは営業所ごとに損益計算書や損益管理表を作成して損益管理を行うこと。損益管理を通して注力すべき部門・営業所はどこなのかを見極め、効率的な改善を図る。
(2)商品・プロジェクト別損益管理:商品・プロジェクトごとに損益管理を行うこと。これを基により適切で効果のある販売戦略につなげていく。例えば最も売れ筋である商品のニーズはこの先まだあるのか、販売数が減少傾向にあるなら他のどの商品に注力すべきかなどの見極めを行うための判断を損益管理活動の中で下す。
(3)顧客別損益管理:自社にとって利益となる優良顧客とそうでない非優良顧客を区分し、利益となっていない非優良顧客への対策を考えていくこと。例えば非優良顧客に費やしている営業コストを削減したり、値引き交渉をしてくる相手に対して自社にとって有利に進められる材料を見つけて対応したりしていくなどの活動が該当する。
損益計算書の作成方法
損益計算書の作成方法としては、Excelを用いた方法と会計ソフトを用いた方法の2種類があります。以下にそれぞれについて解説します。
Excel
起業して間もない法人や個人事業主にとって、損益計算書の作成は負担の大きい作業です。手書きでの作成が難しく、会計ソフトを導入するまでもない規模の場合は、Excelで作成するのがおすすめです。Excelはビジネス向けのパソコンならば、基本的にインストールされているアプリケーションのため、新たにソフトウェアを購入する必要がありません。
また、インターネット上で検索すれば無料で公開されているテンプレートが数多くあり、中にはそのまま青色申告に使えるものもあるので、コストをかけずに作成可能です。取引が発生する都度、取引年月日、取引先、取引内容、数量、単価、売上、仕入れ、経費といった基本的な項目を入力していけば、損益計算書を作成できます。
Excelのテンプレートとして公開されているものの中には、損益計算書の他にも貸借対照表や原価計算書向けのものもあり、併せて使えば決算書類を作成するのに役立ちます。
会計ソフト
会計ソフトは、会計情報を自動的に取得して集計してくれるソフトウェアのことです。中には、損益計算書の作成の他にも、売上総利益率など経営分析の指標となる数値を自動的に計算するものもあります。パソコンが世の中全般に普及したことと、比較的手頃な価格で利用できる会計ソフトが登場してきたのに伴い、法人のみならず個人事業主でも会計ソフトを導入するケースが増えてきました。
現在出回っている会計ソフトは、大別してクラウド型とインストール型の2つに種別されます。クラウド型は様々なデバイスで使えること、取引明細を自動的に取得して仕訳が可能なこと、財務状況をリアルタイムで把握できること、経理に疎くても決算書が作成できることなどが特徴です。
インストール型はインターネットの接続環境に依存しないこと、セキュリティ面で安全なこと、動作がクラウド型より軽いこと、月額費用が不要なことなどが特徴です。
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