外注費とは?仕訳例や混同しやすい勘定科目、税務調査のポイントを徹底解説!

経理

会計処理において、請負契約で支払った費用を外注費とするかどうか悩むケースがあります。外注費は支払手数料や給与と混同しがちな勘定科目ですが、それぞれに該当する取引内容には違いがあります。また、税法上でも消費税や所得税の取り扱いで注意しなければならないポイントを理解しておく必要があります。

この記事では、外注費の基礎知識から混同しやすい勘定科目、税務上の注意点、税務調査のポイント、そして外注費記載の請求書作成をサポートするシステムまで詳しくご紹介します。

外注費とは

外注費とは、外部企業や個人事業主と請負契約を結ぶことで発生した費用のことです。たとえば、製菓メーカーが新しいお菓子を開発したとします。そして、そのお菓子のパッケージデザインを外注したとしましょう。この場合、そのパッケージデザインで生じた費用が外注費となります。

また、外注費は幅広い定義を持つ勘定科目でもあります。「自社の業種の一部を外部に委託した時に発生する費用」なので、解釈の仕方によってはさまざまな勘定科目を外注費で括ってしまうことができます。
たとえば、清掃を外部に依頼した場合、社員がいる企業では、清潔な職場環境の提供が福利厚生にあたるため、その費用は福利厚生費として計上されます。一方で、外部の業者に業務を委託していることには変わりないので、損得を考慮しなければ、その費用を外注費としてしまうことも可能です。

外注費と混同されやすい勘定科目

外注費は、幅広い意味を持つため混同されやすい勘定科目です。ここでは、判断に迷う勘定科目との違いを解説します。

支払手数料との違い

支払手数料とは、金融機関で取引した際に支払う手数料や、専門家への報酬などを計上するときに使用する勘定科目です。
後者の専門家には、弁護士や税理士、公認会計士などが該当します。仕事を外部に委託することから一見すると外注費に分類されるように見えますが、弁護士や税理士といった専門性が高い依頼に支払った報酬が該当する点が異なります。

販売促進費との違い

グッズ作成やサンプルの配布など、商品を直接的に宣伝する場合にかかる費用を販売促進費といいます。グッズ作成やサンプル配布は外部業者に委託することから外注費と混同されがちですが、売上アップのために生じた費用は外注費ではなく販売促進費として計上します。

ちなみに、販売促進費と似た勘定科目に「宣伝費」があります。販売促進費が直接的な宣伝にかかる費用である一方、宣伝費はテレビやチラシなど情報媒体を使った間接的な宣伝にかかる費用です。こちらも混同しないよう注意しましょう。

給与との違い

給与は「社内」の従業員に支払われる報酬です。一方「外部」の業者に業務委託した際に支払われる報酬が外注費です。たとえ同じ仕事に対して支払われる報酬であっても、会社の内外という立場の違いから外注費と給与には明確な違いが生じ、それが税務上での扱いの違いにも繋がります

また、外注費と給与では、税金と社会保険料の取り扱いが異なります。
外注費は課税仕入れとなるので、納付額を抑えることができます。一方、給与は消費税が不課税のため、外注費と比較すると節税効果はなくなります。
雇用契約を結ばない外注費は社会保険料が不要となり、人件費の削減につながります。通常、雇用関係にある従業員が5人以上いる場合には社会保険に加入する義務があり、その保険料の半分は雇用主が負担する必要があります。適用義務を満たしていながら、加入手続きを行わない場合は法律で罰せられます。

外注費と給与の判断基準

外注費と給与の判断基準は、「外注費=請負契約を基本とした契約の対価」「給与=雇用契約を基本とした契約の対価」のどちらに該当するかです。ただし、基準に沿った形式的な契約書が存在していれば外注費として扱えるわけではなく、判断が難しいケースも多々あります。

その場合には、業務の実態や契約内容などの事実関係を基にした第三者目線の判断と、税務の面からみた形式上の判断を、主に下記の6つの事項に当てはめながら行う必要があります。

1.作業者が従事できない時、他の人物を手配することが認められているか
代替して業務を遂行できるものが外注費です。つまり、一定基準さえ満たしていれば、契約者本人でなくともスタッフや孫請けに業務を割り振っても構わないことになります。

2.請求書の発行を外注先が行っているか
請求書などが発行されず、請負契約の対価が時間単位で計算されている場合においては、外注ではなく雇用関係の状態にあると判断されます。

3.時間的拘束性があるか
時間的拘束性があると給与の能性が高くなります。これは時間的な拘束性が強いと認められる場合、従属性の観点から給与の該当性を肯定することになるためです。

4.具体的な業務命令や指示を受けているか
外注費で請け負う業務に関しては、原則として業務命令を受け付けません。具体的な作業方法の指示が行われる状況は、雇用関係の状態にあるとみなされることがあります。

5.納品物を損失した場合に作業対価が請求できるか
この場合において、作業対価を請求することが不可能とされるのが外注費での契約です。契約で定められた期限に納品できなかった場合は、対価の支払いは行われません。

6.外注作業に関する材料などが提供されているか
外注の場合は基本的に自身で用意します。雇用関係にある場合は、業務に使用する材料や機器などは雇用側によって用意されます。

上記の項目を基本として判断が行われますが、契約によっては業務に必要な材料やソフトウェアが支給されたり、業務命令が行われたりする場合もあります。したがって、形式上の基準でのみ判断せずに、契約内容と業務実態も併せて判断する必要があるのです。

外注費が給与と認定された場合


外注として会計処理していたものが、税務署によって給与に該当すると認定された場合、消費税に関わる控除は否認され、さらに源泉所得税が徴収される場合があります。ここでは、課税や争点のポイントをみていきましょう。

消費税・源泉所得税の課税(ペナルティ)が発生

税務調査などによって外注費が給与として認定されると、消費税や源泉所得税の納付が課せられるのはもちろんのこと、本来は支払う必要がなかった加算税や延滞税などの支払い義務も生じてしまいます。
また、徴収漏れをしていた源泉所得税が給与支払いに認定された際には、本来徴収すべき相手から源泉所得税を支払ってもらう手続きなどが必要です。

源泉所得税のペナルティ
外注費で処理していたものが給与であると認められると、源泉所得税が「徴収もれ」扱いになり、追徴課税が発生します。主なペナルティは追加納税、不納付加算税、延滞税の3つです。
不納付加算税は、自主的に納付した場合、源泉所得税の金額5%の加算で済みますが、指摘後の納付は10%に引き上げられるので注意が必要です。また、延滞税は法定納期限の翌日から2ヶ月経過するまで2.6%ですが、2ヶ月を経過してからは8.9%になるので、こちらも注意する必要があります。

消費税のペナルティ
ペナルティとして追加納税、無申告加算税、延滞税の3つがあります。無申告加算税は、自主的に納付した場合は消費税金額に5%加算で済みますが、指摘後の納付した場合、50万円以内なら15%、50万を超える箇所は20%の金額がペナルティとして加算されます。延滞税に関しては、源泉所得税と同じく、2ヶ月以内なら2.6%、2ヶ月経過は8.9%の加算となります。

仕入消費税控除の対象外になる
外注費は仕入消費税控除の対象にできるため、仕入消費税が控除されるケースが多くあります。しかし、給与は不課税取引なので取仕入消費税の控除を受けられません。そのため、外注費が給与と指摘されると、今まで控除されてきた分を納税しなければなりません。

税務調査の争点のポイント

ここからは税務調査で争点となる3つのポイントを、事例を交えながらご紹介します。

・作業道具などを支給していた
受注した建設物の作業を下請けの個人事業主に発注した際、ハンマーやドリルなどの作業道具を発注側が用意していたケースです。双方が請負契約と認識していたので、外注費として支払金額を処理、消費税の仕入税額控除適用と所得税徴収を実施していない状態となっていました。

しかし、後日に作業道具を支給していたことが理由で、外注費ではなく給与に該当すると認定されたことで、消費税と源泉所得税が追徴課税されました。

・出勤記録を管理している
宅配業において完全出来高制で個人事業主と契約している場合では、勤務日数や配達ルートは個人事業主の裁量に任せられています。しかし、発注側が支払金額を出勤日数で計算する理由で出勤記録を管理していた場合は、どのように取り扱われるのでしょうか。

この出勤記録を調査した税務署は、裁量の度合いなどから給与とは認定しませんでしたが、発注側が請負契約の個人事業主の出勤を管理するのは相応しくないとしました。調査後には、支払金額の算出は個人事業主が請求書を発行する形式へと改められました。

・確定申告で事業所得とするか給与所得とするか
外注費を事業所得と給与所得のどちらで確定申告を行ったかが、税務調査での争点になる場合があります。

受注側が歩合制の請負契約で支払われた金額を給与として認識している場合、これを確定申告で税務署に「支払われた金額は給与」と伝えてしまうと、税務署側は給与所得として申告の手続きを進めます。つまり、受注した側が支払金額をどう認識したかも争点になってくるのです。

外注費にするメリットとデメリット


人材不足や業務効率化などの課題を抱える企業は、業務を外注化することでさまざまなメリットを得ることができます。一方、事業のすべてを外注化してしまうと、余計なコストが生じるなどのデメリットもあるので注意が必要です。

メリット

・社内にはなかった技術やノウハウの活用
専門性の高い技術が求められる業務において、社内でゼロから技術を開発したり、人材育成したりするのはコストと手間が発生するうえに、すぐに効率的に成果を得ることは難しいでしょう。そこで、専門性の高い技術を有する企業や個人事業主に業務を外注することで、社内にはない技術・ノウハウを活かして事業を推進することができます。

・人的リソース配分の最適化
中小企業では、経理業務に代表されるバックオフィス業務と営業などのコア業務を、代表者や従業員が兼任している場合は少なくありません。煩雑な処理になりがちな経理業務がコア業務に充てる時間を圧迫してしまうことは、人材不足の企業にとっては経営を左右する重要な問題です。こうした場合においても、経理業務などのバックオフィス業務を外注化することで、社内の人的リソースの最適化を図り、収益性の高いコア業務へ集中させることを実現できます。

デメリット

・マネジメントの難しさ
業務委託先の企業や個人事業主とうまく連携が取れないことによって、かえって業務効率や生産性が落ちてしまう可能性が考えられます。また、外注先から提出された成果物が自社コンプライアンス・ガイドラインに遵守されていなかったために、修正指示が膨大になり工数が余計にかかってしまう、業務領域を明確にしていなかったことで業務遂行を妨げてしまうといったトラブルが生じるケースもあります。

こうした課題をクリアにするためには、マネジメント担当者を専任するなど、外注先と連携を図る施策が必要ですが、仕組み化するための工数が増えることは考慮する必要があります。

・自社の事業や業種にマッチした外注先が見つからない
新規事業などでこれまで取引実績がない外注業者を見つける時、自社のニーズを満たす条件を備えている外注先がすぐに見つかるとは限りません。見つかったとしても予算オーバーだったり、リードタイムが噛み合わなかったりといった問題が生じることがあります。

外注費と源泉徴収

支払いを外注費として処理する場合、所得税の源泉徴収は必要ないのが一般的です。しかし、個人事業主への支払いでは、職種によって源泉徴収を実施する場合があります。その際、源泉徴収の手続きは、会社側に行う義務があるので注意しましょう。

源泉徴収義務者の要件

源泉徴収の義務がある場合、その人を「源泉徴収義務者」といい、法人のみならず個人事業主も源泉徴収義務者の対象となるケースがあります。

ただし、常時雇用関係にあるのが2名以下で、家事使用人にあたる人物に給与を支払っている場合や、給与の支払いではなく手数料・料金だけを支払っている場合には源泉徴収の義務はありません。

源泉徴収が必要な外注費

源泉徴収が必要となる個人事業主の職種は、以下のものが対象となります。

・原稿料
・講演料
・作曲の報酬
・映像作品などの吹き込みの報酬
・翻訳の報酬
・デザイン報酬
・挿絵の報酬
・デザイン報酬
・弁護士、税理士など特定の資格を持つ人物への報酬
・社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
・プロスポーツ選手やモデルへの報酬
・ホステス、コンパニオンへの報酬
・広告宣伝のための賞金

詳しくは「所得税法第204条第1項」に記載されているため、よく確認しましょう。

外注費の仕訳方法

外部の法人や個人に業務を委託して支払う報酬は、「外注費」や「外注工賃」などといった勘定科目で計上するのが一般的です。ここでは法人と個人事業主に報酬を支払った場合を例に、具体的な仕分け方法について確認していきます。

法人に支払った場合の仕訳

清掃業者(法人)に清掃業務を委託し、今月分の報酬である50,000円を振り込んだ場合の仕訳帳への記載例は以下の通りです。

借方勘定科目 借方 貸方勘定科目 貸方 概要
外注費 50,000 普通預金 50,000 月額報酬(法人)

相手が法人である場合、処理内容は基本的に追記することはありません。

個人事業主に支払った場合の仕訳

外部の個人事業主に「原稿執筆料」100,0000円を支払った場合、仕訳帳への記載例は以下の通りです。

借方勘定科目 借方 貸方勘定科目 貸方 概要
外注費 100,000 普通預金 89,790 原稿料
預り金 10,210 源泉徴収

外注費は原則として、源泉徴収は発生しません。源泉徴収が発生するのは「雇用契約」を結んだ正社員やアルバイトですが、所得税法第204条第1項に該当する報酬・料金については例外となります。「原稿執筆料」もその例外の1つです。そのため、外部の個人事業主に原稿料を支払った場合、記載例にあるように10.21%の源泉徴収が発生します。

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監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。
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