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サブスクの仕訳で使う勘定科目と注意点、支払い期間ごとの処理方法

サブスクリプション(サブスク)の費用は経費計上できますが、仕訳や会計処理の仕方が買い切りの場合と異なります。本記事ではサブスクの仕訳で使う主な勘定科目を具体例を挙げながら紹介。「月額料金を毎月支払う」「1年分を一括で前払いする」「2年分のような1年分を超える利用料を一括で前払いする」など、支払期間ごとの会計処理と仕訳の方法も解説します。

サブスクの仕訳で使う主な勘定科目

サブスクリプションの費用はどのような勘定科目を用いて仕訳をすればいいのかは、サービスの内容や利用する目的により変わってきます。サブスクの仕訳で使う主な勘定科目を、具体例を挙げながら紹介します。

通信費

通信費は電話やインターネットなど、通信関連の経費に使う勘定科目です。ビジネスチャットやWeb会議システムなど、クラウドサービスの料金を通信費で仕訳することもできます。

【通信費に仕訳できる費用の例】
・インターネット回線使用料
・クラウド会計ソフトの利用料
・Web会議システムの利用料 など

消耗品費

消耗品費は事務用品やコピー用紙のような、消耗品の購入で使う勘定科目です。1年以内に使い切るもの、10万円未満のものが主な対象です。サブスク形式のサービスや電子コンテンツなどにも使えます。

【消耗品費に仕訳できる費用の例】
・業務上必要なアプリの月額利用料
・従業員教育のための電子コンテンツ
・オフィスで使用するウォーターサーバーの利用料(水代) など

支払手数料

支払手数料は決済代行サービスやクレジットカード会社などの手数料に使う勘定科目です。サブスクの費用を支払う際の手数料も、支払手数料で仕訳できます。

【支払手数料に仕訳できる費用の例】
・クレジットカード決済手数料
・コンビニ決済手数料
・銀行振込手数料 など

貸借料

貸借料は機器や什器などの設備をレンタルで使う場合に使える勘定科目です。

【貸借料に仕訳できる費用の例】
・複合機などのOA機器のレンタル料
・社用車のレンタル料
・什器や設備のレンタル料 など

リース料

リース料は設備や車両などのリース契約に使える勘定科目です。

【リース料に仕訳できる費用の例】
・パソコンやサーバーなどのIT機器のリース料
・オフィス家具のリース料
・社用車のリース料 など

地代家賃

地代家賃は土地や建物などの不動産の賃借で使える勘定科目です。事務所や店舗はもちろん、バーチャルオフィスやコワーキングスペースなどもこれで仕訳します。

【地代家賃に仕訳できる費用の例】
・コワーキングスペースの月額利用料
・レンタルオフィスの賃料
・バーチャルオフィスの住所利用料 など

福利厚生費

福利厚生費は従業員に対する福利厚生にかかる費用に使える勘定科目です。従業員の心身の健康を保つためのアプリ・サービス、特定のサービスや施設を優待価格で利用できる福利厚生サービスなどがこれにあたります。

【福利厚生費に仕訳できる費用の例】
・オンラインフィットネスサービスの利用料
・社員が自由に飲めるコーヒーメーカーのレンタル料
・メンタルヘルスケアアプリの利用料 など
※すべて社員向けの、福利厚生として導入したもの

交際費

交際費は取引先への接待や贈答、打ち合わせで使った場所代(カフェやレンタルスペース)などの費用に使える勘定科目です。

【交際費に仕訳できる費用の例】
・取引先との会食で利用する飲食店のサブスクリプションサービス利用料
・取引先に贈るギフトのサブスクリプションサービス利用料
・取引先とのゴルフで利用するゴルフ場のサブスクリプションサービス利用料 など

雑費

雑費は他の勘定科目に当てはまらない費用、少額の費用に使える勘定科目です。

【雑費に仕訳できる費用の例】
・名刺管理アプリの利用料
・オンラインストレージサービスの利用料(通信費に該当しない場合)
・毎月異なるテーマの書籍が届くビジネス書のサブスクリプションサービス利用料 など

支払い期間に応じた会計処理の方法・例

サブスクの費用は毎月同じ金額を支払う月額制が一般的ですが、半年分や1年分をまとめて前払いする一括払いに対応しているサービスもあります。一括払いは毎月の都度払いと比べてお得であることも多いです。

都度払いするか一括払いするか、一括払いの場合はそれが1年分の料金を超えるかどうかで会計処理の方法が異なります。

料金を毎月支払う場合

毎月料金を支払う場合、月々の利用料をサービス利用月にそのまま経費計上します。現金や預金で支払う場合は借方に通信費や消耗品費などの勘定科目で、貸方に現金や預金で仕訳をします。

クレジットカードの場合、サービスの利用月の貸方に「未払金」を入れ、カード利用代金の引き落とし月に借方を未払金、貸方を預金で処理します。

1年分以内の料金を一括で支払う場合

1年分以内の一括払いの場合、前払いした費用が年度内の分か、翌年度にも及ぶのかで処理の仕方が異なります。

前払いした費用が年度内の分に収まる場合、短期前払費用の特例を適用でき、購入月に前払いした全額を計上できます。

翌年度にも及ぶ分を前払いした場合は、前払いした分を均等に各月に按分します。たとえば12か月分の費用1万2,000円を前払いした場合、月々に1,000円ずつ経費計上します。

1年分を超える料金を一括で支払う場合

1年分を超える一括払いの場合、年単位で按分して経費計上します。たとえば2年分の利用料2万円をまとめて支払った場合、1年目の利用料1万円は通信費や消耗品費などで、2年目の利用料1万円は「前払費用」で処理します。

【1年目】

借方 貸方
消耗品費:10,000円 預金:20,000円
前払費用:10,000円

【2年目】

借方 貸方
消耗品費:10,000円 前払費用:10,000円

サブスクの仕訳で気を付けるポイント

サブスクリプションサービスの利用は一般的になり、企業活動においても欠かせないものとなっています。しかし、その会計処理、特に仕訳については明確なルールが定められていないのが現状です。

ここでは、サブスクリプションサービスの仕訳を行う際に注意すべきポイントを解説します。これらのポイントを押さえることで、正確でわかりやすい会計処理を行えます。

仕訳方法に明確なルールはない

サブスクリプションサービスの仕訳方法に明確なルールはありません。そのため、各企業はサービスの内容や利用目的などを考慮して適切な勘定科目を判断し、仕訳を行う必要があります。ただし、自由度が高いからといって、安易に勘定科目を決定することは避けなければなりません。

誰が見てもわかる勘定科目を使う

誰が見てもわかる勘定科目を使うことは、会計処理において非常に重要です。勘定科目は、企業の財務状況や経営成績を理解するための重要な情報源だからです。わかりやすい勘定科目を使用することで、社内外のステークホルダーが会計情報を容易に理解できるようになり、企業の透明性向上にもつながります。

原則として勘定科目は途中で変えない

原則として、一度決定した勘定科目は途中で変更しないことが望ましいです。勘定科目の変更は、会計処理の整合性を損なう可能性があるからです。

ただし、契約内容の変更やサービスの利用目的が変わった場合などは、勘定科目の変更が必要となることもあります。その際は、変更理由を明確に記録し、関係者間で共有することが重要です。

たとえば、当初は「通信費」として処理していたサブスクリプションサービスが、バージョンアップによって「広告宣伝費」としての利用がメインとなった場合、勘定科目の変更が必要となるでしょう。

サブスクの仕訳ではわかりやすさと支払い期間を意識しよう

サブスクリプションサービスの仕訳は、明確なルールがないからこそ、担当者の判断が重要になります。誰が見てもわかりやすい勘定科目を選び、一度決めたら原則として変更しないようにしましょう。

ただし、サービス内容の変更など、やむを得ない場合は変更も可能です。その際は、変更理由を記録し、関係者間で共有しましょう。

また、サブスクリプションサービスの支払い期間によって、会計処理の方法が異なります。毎月支払う場合、1年分以内の料金を一括で支払う場合、1年分を超える料金を一括で支払う場合、それぞれで適切な処理を行う必要があります。

本記事で紹介した内容を参考に、自社にとって最適な仕訳方法を見つけ、正確かつ効率的な会計処理を目指しましょう。

監修
【監修】藤田 豪人 株式会社ROBOT PAYMENT 執行役員

2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。
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