サブスクの勘定科目はどれ?仕訳や会計処理の例、注意点
サブスクリプション(サブスク)の料金にはどのような勘定科目を使えばいいのか、具体例を挙げながら紹介します。勘定科目を決めるうえでの注意点、「利用料を毎月支払う」「1年分を一括で支払う」などの支払期間に応じた会計処理の方法も解説。サブスクの料金には適切な勘定科目を用い、支払期間を踏まえて会計処理を進めていきましょう。
目次
サブスク(サブスクリプション)とは?
サブスクリプションとは、商品やサービスを一定期間利用する権利に対して、毎月または毎年など定期的に料金を支払う方式のことです。従来のように商品を購入して所有するのではなく、利用期間に応じて料金を支払う点が特徴です。
最近では、音楽や動画の配信サービスをはじめ、さまざまな分野でサブスクリプションサービスが登場しています。企業にとっても、顧客との関係を継続的に維持できるメリットがあり、ビジネスモデルとして注目されています。
事業に関係するサブスクの例
サブスクリプションは個人だけでなく企業にとっても、必要なサービスを必要な期間だけ利用できる便利な手段として活用されています。事業に関係するサブスクとは、業務効率化やコスト削減に役立つ、あるいは顧客に提供するサービスの質を向上させるために利用するものを指します。
具体的には次のようなサブスクが事業に関係し、経費として計上できるものです。
・クラウドストレージサービス
・グループウェア
・会計ソフト
・顧客管理システム(CRM)
・Web会議システム
・オフィス向けコーヒーサービス
・オンライン学習サービス(社員のスキルアップ、人材育成のためのもの)
・音楽配信サービス(店舗でのBGMに使うなど)
サブスクの仕訳に使われる主な勘定科目
サブスクリプションの費用を経費として計上する際、どの勘定科目に分類するかは、サービスの内容や利用目的によって異なります。ここでは、代表的な勘定科目と、どのような場合にそれらが使われるのかを解説します。
通信費
通信費とは、電話やインターネットなどの通信に関わる費用を計上する勘定科目です。最近では、クラウド型のソフトウェアやWeb会議システムなど、インターネットを介して利用するサービスの料金も通信費に含まれます。
【通信費に仕訳できる費用の例】
・インターネット回線使用料
・クラウド会計ソフトの利用料
・Web会議システムの利用料 など
消耗品費
消耗品費とは、事務用品やコピー用紙など、一度使用したらなくなる消耗品の購入費用を計上する勘定科目です。一般的に、1年以内に使い切ることが想定されるもの、もしくは10万円未満の物品が対象となります。サブスクリプションにおいては、サービスや電子コンテンツなどの利用料がこれにあたります。
【消耗品費に仕訳できる費用の】
・業務上必要なアプリの月額利用料
・従業員教育のための電子コンテンツ
・オフィスで使用するウォーターサーバーの利用料(水代) など
支払手数料
支払手数料とは、サービスの利用や商品の購入の際に、決済代行会社やクレジットカード会社などに支払う手数料を計上する勘定科目です。サブスクリプションにおいては、毎月の利用料に含まれる場合や、別途請求される場合があります。
【支払手数料に仕訳できる費用の例】
・クレジットカード決済手数料
・コンビニ決済手数料
・銀行振込手数料 など
貸借料
貸借料とは、土地や建物、物品などを借りる際に支払う料金を計上する勘定科目です。サブスクリプションにおいてはレンタル契約で利用している機器や物品の利用料がこれにあたります。
【貸借料に仕訳できる費用の例】
・複合機などのOA機器のレンタル料
・社用車のレンタル料
・什器や設備のレンタル料 など
リース料
リース料とは、機械や設備などを一定期間借りて使用し、その対価として支払う料金を計上する勘定科目です。リース契約では物品の所有権はリース会社にありますが、利用者は契約期間中、その物品を使用できます。パソコンや複合機など高額な機器をリースする場合に該当します。
【リース料に仕訳できる費用の例】
・パソコンやサーバーなどのIT機器のリース料
・オフィス家具のリース料
・社用車のリース料 など
地代家賃
地代家賃とは、土地や建物の賃借料を計上する勘定科目です。通常はオフィスや店舗などの賃料のほか、コワーキングスペースやレンタルオフィスなどの利用料が該当します。
【地代家賃に仕訳できる費用の例】
・コワーキングスペースの月額利用料
・レンタルオフィスの賃料
・バーチャルオフィスの住所利用料 など
福利厚生費
福利厚生費とは、従業員の福利厚生のために支出される費用を計上する勘定科目です。社員の健康維持やモチベーション向上、労働環境の改善などを目的とした費用が該当します。
【福利厚生費に仕訳できる費用の例:】
・オンラインフィットネスサービスの利用料
・社員が自由に飲めるコーヒーメーカーのレンタル料
・メンタルヘルスケアアプリの利用料 など
※すべて社員向けの、福利厚生として導入したもの
交際費
交際費とは、取引先との関係を良好に保つため、接待や贈答などにかかった費用を計上する勘定科目です。ただし、税務上、交際費には損金算入の制限があります。
【交際費に仕訳できる費用の例】
・取引先との会食で利用する飲食店のサブスクリプションサービス利用料
・取引先に贈るギフトのサブスクリプションサービス利用料
・取引先とのゴルフで利用するゴルフ場のサブスクリプションサービス利用料 など
雑費
雑費とは、他の勘定科目に当てはまらない少額の費用や、一時的に発生する費用を計上する勘定科目です。サブスクリプションにおいては、金額が少額であったり、他の勘定科目に該当しないサービスの利用料が該当します。
【雑費に仕訳できる費用の例】
・名刺管理アプリの利用料
・オンラインストレージサービスの利用料(通信費に該当しない場合)
・毎月異なるテーマの書籍が届くビジネス書のサブスクリプションサービス利用料 など
支払期間別の勘定科目・会計処理の例
サブスクリプションの支払いは月額料金を毎月支払う、一定期間分の利用料をまとめて支払うなどさまざまなパターンがあります。一括払いの場合、まとめて支払う期間が1年分以内か1年を超えるかで、会計処理の方法が異なります。
毎月料金を支払う場合
毎月料金を支払う場合、費用が発生した月に経費として計上します。たとえば、5月にサービスを利用した場合、5月の会計期間に費用を計上します。仕訳としては、借方に「通信費」「消耗品費」「支払手数料」などの勘定科目を、貸方に「預金」または「未払金」を計上します。
預金で支払った場合は借方に通信費のような勘定科目を、貸方に預金を仕訳します。クレジットカード払いの場合は貸方を未払金にした後、カードの利用代金が引き落とされた際に「借方:未払金」「貸方:預金」で処理します。
1年分以内の一括払いの場合
1年分以内の一括払いの場合、支払った月に費用を全額計上するのではなく、サービスの利用期間に応じて按分して計上します。たとえば、4月に10ヵ月分の利用料を一括で支払った場合、4月から翌年1月までの10ヵ月間に費用を均等に配分します。
ただし、そのサービスの利用を翌年度に持ち越さない場合、短期前払費用の特例が適用可能です。この場合、一括払いをした月に費用全額を経費計上できます。
1年分を超える一括払いの場合
1年分を超える一括払いの場合、サービスの利用期間に応じ、年単位で按分して費用を計上します。1年を超える部分について用いるのが「前払費用」という勘定科目です。
たとえば2年分の利用料2万円を一括で支払った場合、借方には最初の1年分の利用料1万円を「通信費」「支払手数料」などの勘定科目で、2年目の分の1万円を「前払費用」として処理します。貸方には2年分の利用料2万円を「預金」「現金」などの勘定科目で仕訳します。
2年目には、借方は通信費や支払手数料、貸方は前払費用で処理。この処理では、金額は2年目の分の利用料1万円です。
サブスクの勘定科目の注意点
サブスクリプションの勘定科目は、サービスの種類や内容が多岐にわたるため、明確なルールや決まりはありません。しかし、経理処理をスムーズに進めるために、いくつか注意すべき点があります。ここでは、サブスクリプションの勘定科目を設定する際の注意点について解説します。
勘定科目に明確なルールはない
勘定科目の決め方は、法律で明確に定められていません。そのため、同じサービスを利用する場合でも、企業によって異なる勘定科目が採用されることがあります。たとえば、ある企業ではWeb会議システムの利用料を「通信費」として計上する一方で、別の企業では「消耗品費」として計上するといったケースも考えられます。
重要なのは、自社の事業内容や会計方針に合わせて、適切な勘定科目を選択することです。迷った場合は、税理士や会計士などの専門家に相談することをおすすめします。
勘定科目は一般的に浸透した、わかりやすいものを使う
勘定科目は自由に決められますが、一般的に浸透している、わかりやすい名称を使用することが大切です。「通信費」「消耗品費」「支払手数料」などは、多くの人が理解できる一般的な勘定科目を使いましょう。
社内で共通認識を持つためにも、税務署をはじめとする社外からチェックされることを考えても、わかりやすさを意識して勘定科目を決めることが重要です。
基本的に、一度決めた勘定科目は継続させる
勘定科目は一度決めたら、翌年以降も基本的に同じ勘定科目で計上し続けることが大切です。これは、会計処理の一貫性を保ち、財務諸表の比較可能性を高めるためです。
ただし、サービスの内容が大幅に変更されたり利用目的が変わったりした場合、それに合わせて勘定科目を修正する必要があります。たとえば、当初は「消耗品費」として計上していたWeb会議システムを集客のためのセミナーに活用するようになった場合、「広告宣伝費」に該当するようになったといえます。このような場合、勘定科目を柔軟に変更しましょう。
公私兼用のサービスは家事按分を
スマートフォンやインターネット回線など、業務とプライベートの両方で利用するサービスの場合、業務で使用した割合に応じて費用を按分する必要があります。これを家事按分といいます。
家事按分を行うためには、業務で使用した時間や通信量などを記録しておくといいでしょう。記録がない場合、経費として認められない可能性があるため注意が必要です。
たとえば、スマートフォンの利用料を家事按分する場合、業務で使用した通話時間やデータ通信量を記録し、全体の利用料から按分した金額を経費として計上します。
経理業務の効率化は「請求管理ロボ」にお任せ!
サブスクリプションサービスは、企業にとって便利なサービスですが、経費計上する際の勘定科目の選択や会計処理には注意が必要です。本記事で解説したように、サービスの内容や利用期間に応じて適切な勘定科目を選択し、正しい会計処理を行うことが重要です。
勘定科目の選択に迷った場合は、専門家に相談し、自社の会計方針に合った方法で処理するようにしましょう。支払期間や勘定科目を明確にすることで、経費を適切に管理し、スムーズな会計処理を実現できます。複雑な経理業務を効率化したいご担当者様は、ぜひ「請求管理ロボ」の導入をご検討ください。
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2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。