サブスクリプション契約とは?特徴や運用のポイントを押さえよう
商品やサービスの契約方法として、サブスクリプション契約が選択されるようになってきています。サブスクリプション契約には、従来の契約とは異なり、企業側にとっても利用者側にとっても、さまざまな魅力があるのです。はたして、サブスクリプション契約とはどのようなものなのでしょうか。今回は、サブスクリプション契約の特徴や運用のポイントについて説明します。
目次
サブスクリプション契約とは?
サブスクリプション契約とは、商品やサービスの利用権に対して料金を課す契約方法のことです。サブスクリプションという言葉は「定期購読」を意味するもので、もともと雑誌や新聞の購読で利用されてきました。1か月や1年、複数年単位での契約など、一定の期間を設定して契約することが多いです。このビジネスモデルは、ソフトウェアの契約方法として、頻繁に利用されるようになっています。さらに、ソフトウェアなどのデジタル分野だけにとどまらず、非デジタル分野にも取り入れられるようになりました。従来の買い切り型から、サブスクリプション契約へ移行することによって売上が伸び、成功を収めるケースもあります。サブスクリプションのビジネスモデルは、利用者にも企業側にもメリットが大きい仕組みとして、注目されつつあるのです。
サブスクリプション契約が広まった背景
サブスクリプション契約が広まった背景には、どのようなものがあるのでしょうか。インターネットの高速化やスマートフォンの普及により、消費者が利便性を強く意識するようになりました。そして、モノを自分で購入するよりも、他人とシェアし、使用する期間だけ料金を支払う方が良いという発想が生まれたのです。購入すると高額な商品も、サブスクリプション契約なら、低額かつ短時間だけ試すことができます。買い切り型ではない契約方法に最初は抵抗があったとしても、サブスクリプション型サービスの便利さを知ると、考えを変える人もいます。
サブスクリプション型サービスは、継続的な売上が見込めることから、着目する企業も増えてきました。安定した利益を上げるためには、新規顧客を獲得する施策も必要ですが、何より解約率を下げることが重要なポイントです。企業側は、一度契約した顧客を手放さないよう、顧客満足度を高めていく必要があります。この企業努力によって、さらに良いサービスが提供され、顧客も増えるという好循環を生み出せるのです。
サブスクリプションと他の契約方法の違い
サブスクリプション契約以外にも、保守契約やリカーリング、月額定額制など、さまざまな契約方法があります。それらは、解約されないかぎり継続的に売上が発生するという点で、サブスクリプション契約と似た契約方法といえるでしょう。しかし、共通する部分はあるものの、厳密には仕組みが異なります。それぞれの契約方法の特徴を把握し、どの仕組みを取り入れるべきかを検討することが大切です。次の項目では、サブスクリプションと他の契約方法との違いについて説明します。
保守契約
保守契約とは、主にソフトウェアについてのサービスのことです。購入したソフトウェアのサポートを受けたり、不具合の改修バージョンを提供してもらえる権利を購入できます。契約によって、サポートの対象となる内容が異なりますが、基本的にバージョンアップの際には別途費用が発生します。一方で、サブスクリプション契約の場合は、ソフトウェアそのものの購入はせず、サービスの利用権を購入する形です。その契約には、ソフトウェアの使用やサポート、バージョンアップなども含まれています。サブスクリプション契約と保守契約とでは、ソフトウェアを購入するかどうかで大きな違いがあることを知っておきましょう。
リカーリング
リカーリングという言葉には「繰り返される」という意味があります。サブスクリプション契約もリカーリングも、継続的な利益を得ることが可能です。ただし、サブスクリプション契約の場合は一定の金額を支払いますが、リカーリングの場合は、使った分に応じた料金が加算されます。リカーリングシステムは古くから存在しており、電話代や電気代などが代表例です。サブスクリプション契約もリカーリングも、一定の期間ごとに料金を支払うという点で共通していますが、料金が変動するという点で異なります。サブスクリプション契約とリカーリングのどちらを選ぶべきかは、扱う商品やサービスによって異なるので、慎重に検討する必要があるでしょう。
サブスクリプション契約を導入しやすいサービスの特徴
サブスクリプション契約は、ソフトウェアに対して多く取り入れられていますが、デジタル系サービスに限らず、さまざまな分野で導入されつつあります。サブスクリプション契約に向いているのは、生活の中で利用頻度が高いものです。生活に必要不可欠な衣食住に関連するものをサブスクリプション化すれば、顧客も気軽に利用しやすくなるでしょう。また、新しいコンテンツや商品が次々に増えていく分野も、サブスクリプション契約に適しているといえます。サブスクリプション型ビジネスを成功させるためには、市場の傾向を分析し、競合サービスの徹底的な調査が必要です。
具体的なサブスクリプション契約の例
サブスクリプション契約として認知度が高いのは、ソフトウェアや動画配信サービスなど、デジタル分野のサービスが中心です。けれども、非デジタル分野にもサブスクリプション契約が増え、徐々にその利便性が一般の消費者に広まりつつあります。新しいビジネスモデルで成功したいなら、既に提供されているサブスクリプション型サービスを知っておく必要があるでしょう。次の項目では、具体的なサブスクリプション契約の例を紹介します。
デジタル分野
デジタル分野のサブスクリプション契約として有名なのが、OfficeシリーズのWordやExcelです。従来の買い切り型と異なり、1か月単位で利用することができます。同じように、デザインやイラストの作成に利用されるAdobe社のIllustratorも、サブスクリプション契約ができるようになっています。これらのソフトウェアを使い、新しいことを始めようと考えても、従来の買い切り型では導入のハードルが高く、購入を諦める人もいました。けれども、サブスクリプション契約の登場によって、初心者であっても、高額なソフトウェアを気軽に試すことができるようになったのです。
サブスクリプション契約は、動画、音楽、漫画などの配信サービスでも使われています。コンテンツを利用し放題であったり、一部のコンテンツのみ追加料金が必要であるなど、サービスの内容はさまざまです。モノを買い取るのではなく、サービスの利用権を得る形であるため、コレクション性を求める人には向きません。けれども、それらの配信サービスには、パソコンやスマートフォンなどで簡単にコンテンツを楽しめるというメリットがあります。契約するプランによっては、コンテンツを1つずつ購入するよりも圧倒的にお得となるため、年々利用者が増えています。
非デジタル分野
デジタル分野だけでなく、非デジタル分野にもサブスクリプション契約が導入されつつあります。たとえば、カーシェアリングサービスにも、この仕組みが取り入れられており、車を必要な時期にだけ利用することが可能です。車を所有するとなると、駐車場代や車検代、税金など、車の維持費が気になるものですが、それらを気にする必要はありません。また、テレビや掃除機、ドライヤーなど、家電のレンタルサービスも増えてきています。新生活を始めるとなると、引っ越し代や新しい住まいの初期費用で、出費がかさんでしまうものです。そのようなときに家電のレンタルサービスを使えば、初期費用を抑えつつ、生活に必要な家電を揃えることができます。
その他にも、サブスクリプション契約として、ファッションアイテムのレンタルや、美容院の定額通い放題などが挙げられます。ファッションアイテムのレンタルを利用すれば、気軽にさまざまなブランドのアイテムを楽しむことが可能です。ヘアケアにこだわる人であれば、美容院の定額通い放題サービスを使った方が、お得となる場合もあるでしょう。さらには飲食業界でも、サブスクリプション型のビジネスモデルを導入する店舗が増えつつあります。非デジタル分野では、衣食住に関わるジャンルを中心に、サブスクリプション契約を取り入れる動きが高まっているのです。
利用者側から見たサブスクリプション契約の魅力
利用者側から見たサブスクリプション契約の魅力はどのようなものでしょうか。サブスクリプション型サービスを利用する場合は、モノを購入するよりも安く利用できます。かかる費用が一定であるため、コスパが良いのも大きなメリットです。また、高額な商品やサービスであっても少ない金額で試すことができるので、初期費用を抑えられます。必要がなくなれば、自分の好きなタイミングでいつでも解約できるため、支払いに無駄がありません。
サブスクリプション型サービスの魅力としては、モノを所有せず、保管するスペースを確保する必要がないことが挙げられます。モノの種類によっては、購入するにあたって置き場所に悩んでしまうこともあるでしょう。けれども、サブスクリプション契約の場合は、解約すれば不要なモノが手元に残ることはありません。必要なときにだけレンタルし、必要がなくなれば返却するという形を取ることで、置き場所や管理に悩まされることがなくなります。
また、サブスクリプション契約であれば、新しいジャンルに興味を持ちやすくなるというメリットがあります。動画配信サービスやファッションアイテムのレンタルの場合、無料お試し期間が設定されていたり、購入するよりも安い料金で楽しめる場合が多いです。いつもなら手を出さないようなジャンルでも、使い放題のサービスであれば、費用面を気にせず、気軽に試すことができるでしょう。
利用者にとってのサブスクリプションの注意点は?
サブスクリプション契約を利用するにあたって、注意しなければならないポイントがいくつかあります。サブスクリプション契約の場合は、基本的に継続的な利用が想定されています。契約は自動更新されるので、契約を忘れると自動的に費用が請求されてしまう点に注意が必要です。さらに、料金が定額であるため、実際にサービスを利用しなかったとしても費用がかかります。利用頻度が少ない場合には、損をしてしまうことがあるので、利用者は定期的に契約を見直す必要があるでしょう。また、商品やサービスの所有権を購入しているわけではないため、契約を解除すると、それらを利用できなくなります。
サブスクリプション契約の場合、個々のサービスが格安であったとしても、複数のサービスを利用すれば、費用の総額が高くなってしまいます。無料体験を申し込み、契約をそのままにしておくと、思わぬ費用が発生してしまうリスクもあるので、注意が必要です。サブスクリプション型サービスを上手く利用するためには、必要がないものは解約するなど、適切に管理する必要があるでしょう。また、動画やファッションアイテムのレンタルなどには、まったく興味のないジャンルが含まれていることもあります。コンテンツやアイテムの総数だけで判断するのではなく、興味のあるジャンルが含まれているか、内容と料金のバランスが取れているかを確認しなければなりません。
企業側から見たサブスクリプション契約のメリット
サブスクリプション契約は、利用者側だけでなく、企業側にも多くのメリットがあります。メリットのひとつとしては、現時点での契約者数から今後の売上の予測を立てやすく、継続的な売上を確保しやすいという点が挙げられます。従来の契約方法をサブスクリプション契約に切り替えることで、実際に業績を伸ばすケースも珍しくありません。また、従来よりも低価格で利用できるため、サービスの新規導入に対するハードルを下げやすいというメリットもあります。本来であれば高額である商品やサービスでも、期間を決めて気軽に試すことができるという点で、消費者から注目されやすいのです。
また、サブスクリプション契約の場合は、継続的にサービスを利用してもらうことで、改善に役立つデータを取得しやすくなっています。顧客の年齢層やそれぞれの好みなどを分析し、より良いサービスを提供することが可能です。また、サブスクリプション契約は、さまざまなサービスに導入できるため、企業側としてもビジネスの幅を広げやすいというメリットもあります。さらには、複数の商品やサービスを扱う場合、新たなプラットフォームとしても利用することも可能です。また、広告宣伝費を獲得できる可能性もあります。
企業側から見たサブスクリプション契約のデメリット
サブスクリプション契約のデメリットは、サービス開始直後は利用者が少ないため、すぐに利益を出すのは難しいということです。サービスを軌道に乗せ、安定した利益を得るためには、ある程度の期間が必要になります。なるべく早めに黒字化するためにも、宣伝を効果的におこない、顧客に満足してもらえるような内容を、サービス開始から提供できるようにしなくてはなりません。また、サービスの満足度を高めるため、顧客のサポートにもリソースやコストを割く必要があります。初期費用の分を回収するためにも、顧客の声を知り、不満点をなくしていく努力をしていかなくてはなりません。
サポートに不満がなくても、単純にサービスに飽きてしまう可能性も懸念されます。顧客が離れていかないよう、常に新鮮なコンテンツや企画を取り入れることが大切です。このような努力は、デジタルコンテンツの配信サービスなど、エンターテイメント性が高いジャンルで特に求められます。動画配信サービスの例で考えるなら、古い作品ばかりであったり、配信作がほぼ固定で入れ替わりがなければ、次第に飽きて解約されてしまいます。
また、サブスクリプション契約でリーズナブルに利用できることを強調しすぎると、ブランドイメージが低下するおそれがあります。商品やサービスによっては、サブスクリプション契約が向かない場合もあるので、注意が必要です。従来の契約方法から移行する場合は、ブランドイメージへの影響を考えつつ、慎重に検討する必要があるでしょう。
サブスクリプション契約を成功させるコツ
サブスクリプション契約を成功させるためには、無料のお試し期間を設けるなど、新規の顧客を獲得しやすくする工夫を取り入れる必要があります。たとえば、さまざまな顧客のニーズに対応できるよう、プランにいくつかの選択肢を設けるのも効果的です。最初はリーズナブルなプランを契約したとしても、サービス内容に満足してもらえれば、上位プランに移行してもらえるかもしれません。また、安定した利益を確保するためにも、顧客に長期間利用してもらうことが重要です。サブスクリプション契約においては、企業は常に顧客のことを考え、好みや利用頻度などを分析し、求められているサービスを提供する必要があります。日常的に必要不可欠なサービスだと認識してもらえるよう、工夫を凝らすことが大切です。
サブスクリプション契約で利益を上げるためには、顧客との信頼関係を築いていかなくてはなりません。利益追求のためとはいえ、コスト削減に目を向けすぎると、品質の低下を顧客に気づかれてしまい、競合サービスへ乗り換えられてしまいます。また、サービス内容に関する説明を分かりやすくすることもポイントです。サービスによっては、料金が発生するタイミングや解約の手順が分かりづらく、不親切なものもあります。解約を防ぐことは大切ですが、分かりづらい説明で顧客に不信感を与えるのは、長い目で見てリスクが高いものです。説明の分かりづらさで顧客が解約しそびれた場合、一時的には利益を得られるでしょう。しかし、その後インターネット上で悪い評判が広まる可能性もあります。サブスクリプション契約を成功させるためには、サービスの品質を高め、顧客に対して誠実に対応することが肝心です。
サブスクリプション契約の解約を防止するには?
継続的に利益を上げるためには、サブスクリプション契約の解約率を下げる必要があります。しかし、違約金や解約しづらい仕組みで顧客を強引につなぎ止めようとすると、サービスのイメージダウンにもつながりかねません。不信感を与えることなく解約率を下げるためには、顧客のニーズに応え、関係性の維持に努めることが重要です。次の項目では、サブスクリプション契約の解約を防止するためにはどうしたらよいかを説明します。
サービスの利用休止
サブスクリプション契約の解約を防止する方法としては、サービスの利用休止が挙げられます。たとえば、すでに届いた商品が余っているなどの理由で、不満がなくてもサービスの解約をせざるを得ない状況になるかもしれません。また、海外出張などで長期間留守にする場合もあるでしょう。そのような事情があるときに、サービスの利用を休止できるようにしておけば、解約を防ぐことができます。解約となると、一度築いた関係性が切れてしまい、再びアプローチするのが難しくなります。解約ではなく休止扱いにすることで、企業側も一度獲得した顧客を確保し続けることが可能です。必要となったときに気軽に利用再開の手続きができるという点で、利用者側にもメリットがあります。
ダウンセル
サブスクリプション契約の解約を防止するには、ダウンセルも効果的です。ダウンセルとは、そのとき利用しているプランよりも段階を下げ、安いプランを利用することを意味します。解約の理由のひとつとして、サービスを使い切れず、費用がもったいないと感じるケースが挙げられます。そのような理由の場合は、プランを複数用意しておけば、契約解除を選択した利用者にダウンセルを提案することが可能です。当然ながら、顧客が安いプランに変更すれば、売上が落ちてしまうのは避けられません。けれども、解約を防ぐことで、顧客との関係は維持できます。また、再び必要になったときや、新しいオプションを追加したときに、上位プランへの変更も期待できるでしょう。
サブスクリプション契約の解約が目立つ場合にできる対策
顧客が解約を希望する場合、必ず何らかの不安があると考えられます。とはいえ、顧客が契約解除を希望する段階でヒアリングをおこなっても、具体的な回答を得るのは難しいものです。解約前にアンケートを提示しても、すべての顧客が真摯に答えてくれるとは限りません。あまりにアンケートの量が多いと、嫌がられてしまいます。企業側は、解約を決めた顧客に負担をかけないよう気を配りつつ、適切にヒアリングすることが大切です。そして、解約に至った理由に着目し、利用者が不満を抱かないような工夫を取り入れる必要があります。
サブスクリプション契約を継続してもらうためには、解約希望者のペルソナを設定し、解約したいと思うタイミングや理由を、具体的に想定することが重要です。内容にさほど問題がなくても、ターゲット設定に問題があり、経済的な事情で解約するケースもあります。また、無料期間中に利用できる内容と実際のプランに差があり過ぎることで、不満を感じるケースもあるでしょう。単純にサービス内容が物足りなかった、使いづらかったなどの理由も考えられます。解約の理由をサービス改善のヒントとすることで、解約率を下げ、安定した利益を得られるようになります。
まとめ
サブスクリプション契約は、さまざまなサービスに導入することができます。顧客のニーズをきちんと把握すれば、企業側だけでなく、顧客にもメリットをもたらすことが可能です。サブスクリプション契約に特化したソリューションを導入すれば、初めてでもスムーズに売上を伸ばすことができるでしょう。自社の商品やサービスを多くの人に届けたいなら、サブスクリプションビジネスを始めてみてはいかがでしょうか。
2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。