サブスクリプションの失敗事例から学ぶ!失敗の原因と成功のポイント
世界中で成長を続けるサブスクリプションビジネスですが、成功例が注目される一方で失敗例や苦戦例もみうけられます。確かに成功すれば大きな資産を生み出す可能性もありますが、その分リスクが高く懸念する方も多いものです。ここでは、あえて失敗事例を取り上げて、失敗の原因や学べる教訓、サブスクリプションを成功させるコツなどをご紹介します。
目次
サブスクリプションの現状と展望
そもそも、なぜサブスクリプションが必要なのかと疑問に思う方もいるでしょう。確かに一昔前までは、あまり認知されていなかったサービスですから、その利用価値に気づかない方も多いでしょう。しかし今では、デジタルコンテンツにおいても非ゲームの売上上位5位はサブスクリプション型課金のアプリで、多くの方が利用しているのです。このように需要が高くなっているサブスクリプションですが、さまざまなサービスがあり、その市場価値も高く評価されています。そのため参入する企業も増えているのです。2018年度のサブスクリプションサービス国内市場規模は、消費者支払額ベースで、5627億3600万円といわれています。2023年には消費者支払額ベースで8623億5000万円へとさらに拡大することが予想されています。この莫大な市場規模の背景にはスマホやWi-Fiの普及、消費者のニーズが所有から利用へと変化していることが考えられます。今や情報端末は現代人にとって必要不可欠なツールですから、今後もますます飛躍する可能性を秘めているのです。
サブスクリプションの失敗事例
失敗は成功のもとですから、成功するためには、失敗事例を知っておくことです。さまざまな失敗の原因を探り、同じ失敗をしないようにすることが大切です。この段落では5業界における失敗事例を紹介します。
車業界
車業界では米GMと独BMWの失敗事例が挙げられます。当時は大手車メーカーのサブスクリプション導入に注目していた方も多かったでしょう。特に米GMのサービスは画期的なサービスで、キャデラックを月額1800ドルで利用できる上、年間18モデルまで自由に選択できるというものでした。このサービスの場合、確かに利用価値が高く一時的に利用者を確保することはできたでしょう。しかしコストがかさんだことは想定外だったようです。これにより米GMは一時撤退することになります。また米GMだけでなく独BMWの場合も同様で、大幅値下げに挑戦しています。
米国で展開するBMW利用の月額料金を、3700ドルから2699ドルへ、2000ドルから1399ドルに設定し、より低価格で利用できるようにしたのです。しかし思ったような成果が上げられず、集客には難航してしまいました。これは顧客の育成を狙った戦略ではありましたが育成が難しく、この戦略がかえって負担となり失敗に陥ったのではないかと推測されます。
アパレル業界
有名メーカーAOKIも「suitsbox」(月額7800円~、好みやサイズに合わせてスタイリストが選定したスーツやシャツ、ネクタイのセットを提供)サービス開始後、半年で撤退しています。その原因は利用者層の想定が外れたことが大きいとされています。以降、既存事業の収益減につながる恐れがあったため早々撤退することになりました。社内においても豊富なデザインやバリエーションを用意できず、顧客満足度が低かったことも原因に挙げられます。また、倉庫やクリーニングなどの運用コストも想定以上にかさんだため、以前よりも出費が大きくなってしまったようです。
アパレル関連でいうと、ZOZOもサブスクリプションを導入していた時期があります。そのサービスは「おまかせ定期便」という定期利用サービスで、自分の好みやサイズに合わせてセレクトした商品を購入し、気に入らない商品は7日以内に返品できるというものです。このサービスの場合、購入する洋服と送料のみ費用がかかりますが、それ以外の費用負担はありません。そのため、よりお得に購入できると注目されていました。しかし、一見お得なようで、セールで買った方が安いなど金銭的メリットが少なかったり、ファッション好きの既存会員のニーズには応えられなかったこともあり、売り上げが上がることはありませんでした。これを機にZOZOもサブスクリプションから撤退しています。
ミールキット業界
ミールキットとはレシピに従って自分で料理できるように、食材の詰め合わせを届けるサービスです。便利なサービスではありましたがこの業界の場合、全体で最初の6カ月間に60%~70%の顧客が解約する傾向が強く、なかには営業を停止した企業も多くありました。安定した収益を得ることが難しくなり経営の継続ができなくなってしまったのです。
その原因としては、週2~3回の注文が必要なこと、料理の選択肢が限られている、好きなときに好きな料理が作れないなど、全体的にサービスの柔軟性に欠けていたことが挙げられます。また、使い切れない食材がたまって廃棄するといったケースもあったため、ネガティブな印象をもたれることも多かったようです。さらに新規顧客を獲得する場合、宣伝は重要ですが、それらの費用やコストが増大してしまったことも原因の一つといえます。
放送業界
WOWOWは月額課金制で、映画やスポーツ中継、ライブなどのエンターテインメントを提供していましたが、一時期、4年連続顧客減に陥ったことがあります。原因は、無料・割引など新規獲得施策に集中し、その後、安さに惹かれて契約した顧客が解約してしまったことや、割引施策では売上が減ってしまったこと、また解約対応でコストが増大してしまったということが挙げられます。また、新規顧客ばかりを優遇し、優良顧客がネガティブな印象を抱いてしまったことも原因の一つです。WOWOWの場合、顧客を維持する施策がなかったため対応しきれず、大きく赤字経営に傾いてしまったといえます。
映画業界
MOVIE PASS(ムービーパス)はアメリカの映画のサブスクリプションサービスを展開する会社で、「1日1本の映画が見放題で月額9ドル95セント(約1,100円)」をウリに会員数200万人以上となった映画館利用サービスでした。毎日通う映画ファンを獲得できた一方、利用頻度が少なく解約していく会員も多かったようです。その一方で映画館に支払うチケット代が膨らみ会社は資金不足となった結果、当初の「1日1本」から「月3本」に変更されました。その後会員数は減少する一方で、結果サービスは中止となってしまいました。
リアル店舗
米moviepassは、は全米4000の映画館と提携し、月額10ドルで1日1回映画鑑賞ができるプランを提供していました。しかし徐々にキャッシュが回らなくなり停止することになります。その後、同額で3回/月までの利用に大幅ダウングレードしてしまい撤退せざるを得なくなりました。また英DripAppの場合は、ロンドンの独立系カフェと提携し、月額89ポンドでコーヒー飲み放題プランの提供を始めます。その結果、多くの顧客を獲得できたのですが、人材と資金が不足し経営自体が回らなくなってしまい、撤退することとなったのです。
失敗事例から学ぶサブスクリプションの失敗原因
サブスクリプションにはさまざまな失敗事例がありますが、具体的な原因は何なのでしょうか。この段落では事例をふまえて、失敗の原因を詳しく解説します。
価格設定が合わなかった
他の方法で購入したほうが安かったり金額にあまり差がなかったりする場合、価格面でお得感がなく顧客がつかなかったというケースも多かったようです。とはいえ価格を単に低くすれば良いというわけでもありません。たとえ価格を低く設定してたくさんの顧客を獲得できても、資金が追いつかず、撤退やダウングレードせざるを得なくなるというケースもあるからです。また、利益が想定よりも得られず、逆に初期コストが想定以上にかかってしまうこともあります。そのため、そのサービスに見合った価格設定が重要なのです。
柔軟性がなかった
休止や解約に関するルールや使用条件に柔軟性がなく、顧客が負担に感じてしまったというケースがあります。確かにサービスを利用する上で条件というものは必要ですが、あまりにも厳しい条件だったり制限をかけたりすれば敬遠されてしまいます。そのため、なかには自由度が高いプランを提供する企業も多くありました。しかしこの場合、料金プランやサービス内容を顧客が自由に選べるほど選択肢がなく、返って魅力が減ってしまったケースもあります。ただ単に選択肢を広げるだけでなく、顧客へのニーズに合っているプランかどうかも考慮しなければなりません。このように料金体系や顧客のニーズに柔軟に対応できないと、ヘビーユーザーにしか魅力が伝わらず一般ユーザーは退会することも増えてしまいます。
顧客のニーズに対応できなかった
課金システムだけ変更したり、新規顧客獲得に集中したりした結果、長期的な顧客のニーズを考えた戦略がおろそかになってしまうケースがあります。安さだけを売りにすると、キャンペーン終了後などに競合に乗り換えられてしまうことも少なくありません。内容が充実していなければ、継続して利用する顧客は自然と減ってしまいます。こういったサービスは、はじめは目新しさから使用頻度が高くなる傾向がありますが、やはり一定期間を過ぎると飽きたり関心がなくなったりすることも多いです。顧客に継続利用してもらうためには、きちんとニーズに対応しなければなりません。
新規顧客獲得を重視してしまった
新規顧客獲得ばかりにフォーカスしすぎると、既存顧客のニーズを考えることが疎かになってしまいます。
飲食店で月額10,000円で1カ月何度も通い放題のようなサブスクリプションサービスがあった場合、初めのうちはお店に通えお得だったもののどんどん新規顧客が増え、なかなかお店に入れない。何てことも起こりかねません。
初回のみ安くすることは新規顧客にとっては魅力的で顧客を取り込むチャンスになる事でしょう。しかしその後の内容やアフターフォローが充実していないと、顧客が離れて行ってしまう事も多いです。
失敗事例から学ぶサブスクリプション成功のポイント
さまざまな失敗事例がありましたが、この失敗事例で学んだ「気付き」を成功にいかす方法があります。この段落では、そういった成功にいかす方法を紹介していきます。
安さだけではない「価値」を提供する
サブスクリプションを新たに導入すると、新規ユーザー獲得やシステムの変更など初期コストが想定以上にかかる場合があります。そのため企業にとってもリスクが高く、負担も大きいものです。継続的に売り上げを伸ばし黒字化にするには時間がかかることも想定しなければなりません。もちろん、コスパの良さも大切ですが、安さ以外の価値・体験を提供し、「ファン」を獲得していくことが大切です。購入を超えた「価値・体験」が認知されるようになれば、他社との差別化も図れるでしょう。
自由度・利便性を高める
顧客が自分の状況に合わせての契約、変更も簡単にできるプランをつくると、状況が変わっても対応しやすくなります。特に、こういったサービスの場合、利便性が悪ければそれだけで利用価値が下がってしまいます。個人個人、環境や生活状況は異なりますから、使用状況が変化するのは当然です。状況に応じて変更できなければ解約を検討する方も多いでしょう。顧客に継続的に利用してもらうには使用状況に応じた柔軟なサービスが必要です。
自分の状況にあったサービスが利用できれば、それだけでも解約のリスクを減らすことができます。たとえば、顧客の中には毎月少し高額を払ってでもより完璧なサービスを求める方から、必要最低限のサービスだけ享受したいから極力安い方が良いとされる方まで多種多様です。そんなニーズに応える為、「ベーシックプラン」安い「プレミアムプラン」等段階を分けることがポイントです。また月額制のプランに追加して有料オプションがつけられるようにして、自分の好みにサービスをカスタマイズできるようにしているサブスクリプションサービスもあります。今まで以上に商品やサービスの選択肢を増やし、好みに合わせて自由に選べるようにすれば満足度が高まるはずです。
利便性の高いサービスでないと継続して利用されることはほとんどありません。そのため出来る限り自由度や利便性は高くする方が良いでしょう。特に手続きや決済などは面倒な作業も多いですから配慮が必要となります。
一般的には解約率が10%以下の状態を維持し続けることが理想だといわれています。自由度や利便性を高め、顧客満足度を維持・向上させることで既存顧客の維持を目指しましょう。
顧客との関係を構築する
サブスクリプションを成功させるカギは、顧客に継続して利用してもらうことですから、できるだけ解約を減らさなければなりません。そのためには、顧客情報を分析し、顧客の悩みやニーズにマッチしたサービスを提供する必要があります。さまざまなサービスがあるなかで選択し継続してもらうには、他のサービスよりも特化した内容や充実したサービスが必要でしょう。顧客にとってメリットが感じられるものでなければ、すぐに解約されてしまいます。解約されないためには、細かいアップデートやフォローにより、サービスの向上や顧客を飽きさせない努力が必要です。そのような企業努力を続け顧客の満足度を維持することができれば、チャーンレート(解約率)も下がっていくはずです。
サブスクリプション導入前に検討したいこと
サブスクリプションを導入するには、まず需要があるか(市場需要、競合が存在するか)を検討することが大切です。どんなに便利なサービスでも需要がなければ利用されることは少なくなります。また顧客と継続的な関係を構築できるかどうかも大切なポイントです。サブスクリプションを成功させるには顧客ニーズを分析し、ニーズに応え続けるための仕組みが必要です。継続的に利用されなければ失敗する可能性も高くなってしまいます。失敗を避けるためには、顧客への配慮はもちろん、社内の経理作業や契約時の手続きなどの作業にも配慮が必要となります。特にサブスクリプションをする場合、決済方法や請求・回収業務など経理業務を円滑に行えるかどうかは重要なことです。
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2019年当社に入社、執行役員に就任。
当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
現在は、当社のフィナンシャルクラウド事業及びマーケティング全般を統括。