顧客管理はシステム化がおすすめ! CRMの基本機能や選び方なども解説
企業が売り上げを上げてビジネスとして成立させるためには、顧客に自社の商品やサービスを購入してもらい、かつ継続してもらわねばなりません。企業間の激しい競争を生き抜くために必要となるのは、顧客のニーズや嗜好などを分析して適切なマーケティング活動を行うことでしょう。
そこで重要なのが、顧客に関する情報を管理する「顧客管理」です。顧客情報を売り上げ向上に繋げるためには、基本的な情報の他に、どのような顧客が・いつ・どこで・どんな商品やサービスを購入したのかといった詳細な情報を、管理・分析する必要があります。
本記事では、顧客管理の重要性、顧客管理システムの導入、顧客管理システムの基本機能などについて解説します。
目次
顧客管理の重要性
顧客管理がなぜ重要なのかを理解するために、ここでは顧客管理の目的と課題について解説します。顧客管理の役割を知ることで、より効果的なマーケティングが可能となるでしょう。
顧客管理の目的
顧客管理の目的は、単に顧客情報を記録・整理して必要になった時に情報を取り出せるようにするだけに留まりません。顧客管理の最終目的は顧客のニーズ、嗜好、価値観、購買パターンなど、深くて広範な情報を管理・分析し、営業力を強化して売り上げの最大化に結び付けることです。事業の継続・拡大を目指すのであれば、会社や事業の規模の大小に関わらず、顧客管理の実施は必要不可欠と言っていいでしょう。
売上向上以外の目的としては、属人化しがちな顧客情報を一元的に共有・管理することにより、営業活動やマーケティング活動の生産性を向上させることも挙げられます。その結果として、顧客との信頼関係を強化して顧客満足度向上も目指せるでしょう。
顧客管理の課題
顧客情報をExcelに手入力して管理している企業はいまだにありますが、手動での顧客情報管理にはいくつかの課題があります。1つ目は、人的ミスによる顧客情報の消失や漏洩のリスクが高いことです。Excelは簡単な操作で削除や上書きができるため、誤って顧客情報を消失してしまう危険性が高く、一度消失したデータを履歴から呼び起こせない場合がほとんどです。また、Excelデータは簡単に外部メモリに保存したり、メールで送信したりすることができるため、情報漏洩がしやすい点もリスクといえます。
2つ目は、複数人による管理には向いていないことです。Excelファイルは1人が編集中の時は、他の人は閲覧しかできません。複数人による同時編集ができないことで、情報のアップデートが遅れ業務効率が低下する恐れがあります。
顧客管理はシステムを導入しよう
顧客管理は、システムの導入によって効率的な運用が可能です。ここでは、顧客管理システムの仕組みと営業支援システムとの違いについて解説します。
顧客管理システム(CRM)の仕組み
顧客管理システム(CRM)は、顧客と良好な関係を構築・維持して顧客満足度を向上させる施策のことであり、狭義では顧客との関係性を管理するためのシステムのことです。CRMの仕組みは、第1に情報の収集、第2に情報の整理・分析、第3に意思決定・サービス提供に分けられます。1番目に関しては、顧客の氏名、年齢、職業などの顧客情報を広範囲に収集して、購買に関する情報を蓄積する段階です。2番目に関しては、収集した情報を整理して顧客の購買の傾向やニーズを把握し、次のステップとして打つべきプロモーションや提供すべきサービスを分析します。3番目は、個別の顧客に合わせてDMを送付したりキャンペーン情報を発信したりするという内容です。
営業支援システム(SFA)との違い
SFAとは、営業支援システムの英語名である「Sales Force Automation」を略した言葉で、文字通り営業活動を支援するためのシステムのことです。CRMとSFAの大きな違いは、最終的な目的にあります。CRMの目的は顧客と良好な関係性を構築することですが、SFAの目的は顧客管理、行動管理、スケジュール管理、To Doリストの作成など、営業活動を支援して効率性を向上させることです。
SFAを活用することによって営業活動の進捗状況が把握でき、営業活動を幅広い面からサポートできます。業務に取り込む順番は、最初にSFAでマーケティング活動を展開して新規顧客を獲得し、次にCRMで獲得した顧客が継続的に自社の商品やサービスを購入するように促す流れが効率的です。
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顧客管理システムの基本機能
顧客管理システム(CRM)の基本機能としては以下の4つが挙げられます。各基本機能を把握した上で導入の検討に入りましょう。
顧客情報管理
CRMの最も基本的な機能と言えるのが、顧客情報管理です。顧客の氏名、住所、年齢、性別、職業、居住地などの基本情報を管理するだけでなく、より広範で多岐にわたる情報を管理します。購買日や購買金額、購買頻度などの購買履歴、コールセンターへの問い合わせやクレームの内容と履歴、キャンペーンへの応募状況などがその一例です。
収取した情報は案件情報や受注管理などに反映され、営業活動進捗状況、コスト、効果などを一元的にリアルタイムで把握できます。また、条件を入力してデータを抽出したり、グラフに出力したりする機能も搭載されており、あらゆる施策に活用可能です。多岐にわたる詳細なデータを、部門を跨いで共有・活用できる点も特徴といえます。
メルマガ配信
CRMにはメール配信機能も備わっているため、マーケティング活動や販売促進を目的としたメールマガジン(メルマガ)を配信することが可能です。単に自社製品の紹介を一方的に送るのではなく、蓄積された顧客情報を分析した上で、個々の顧客に寄り添ったメールを適切なタイミングで送信できるため、マーケティング効果が期待できるでしょう。
CRMのメルマガ配信機能を使えば、個々の顧客のニーズに合ったキャンペーン情報やイベント情報を自動配信することが可能であり、配信したメールの開封率の検証もできます。CRMのメルマガ配信機能をうまく活用できれば、多くの工数を要する個別対応も省力化可能です。
名刺情報の共有と記録
もらった名刺をデータ化せずに個々の担当者のカードケースにしまってしまうと、名刺交換で得た貴重な顧客情報が埋もれてしまい、企業としての大きな機会損失に結びつきかねません。CRMの名刺管理機能を使って名刺情報を記録して共有すれば、名刺情報の属人化や埋没、陳腐化を防ぐことが可能です。またCRMでは、名刺情報の記録と共有だけでなく、顧客の購入履歴、問い合わせ内容・履歴、商談内容、フォローアップ状況などの詳細な情報も名刺と紐づけて蓄積・管理できます。名刺情報の管理には専用の名刺管理ツールもありますが、これは名刺情報のデータ化・蓄積に焦点を当てたものであるため、CRMのように詳細な顧客情報と連携することはできません。
データ分析
収集した情報を生きた資産として活用し、顧客のロイヤルティを高めるのに重要な役割を果たす機能がデータ分析です。顧客の詳細な情報を蓄積・分析していくことで、顧客ごとの嗜好や行動パターンなどを把握でき、それを基にマーケティング戦略を進められます。結果的に、経営戦略の立案にも役立つのです。
近年注目を集めている「ビッグデータ」ですが、CRMは膨大なデータを多角的に分析することが可能で、例えばPDCAサイクルを回せばマーケティングの精度を高められます。CRMを通して的確なデータ分析をリアルタイムで実施することで、実務上でも経営上でも重要な判断を下すことが可能です。
顧客管理システムのメリット・デメリット
顧客管理システム(CRM)を導入する前に、メリットとデメリットについての理解が必要です。ここではそれぞれについて解説します。
メリット
メリットの1つ目は、作業効率が向上することです。CRMを活用して営業部門、マーケティング部門、カスタマーサポート部門など、関連部門間で顧客情報管理の連携が強化されれば、全社的な作業効率の向上が期待できます。これは、顧客情報が一元管理されることで部門をまたいで必要な情報が即座に入手できるからです。
2つ目のメリットは、顧客満足度の向上に繋がることです。CRMを活用すれば顧客情報が整理されて分析が容易になるため、個々の顧客の嗜好に合わせた最適なサービスをピンポイントで提供できます。顧客と良好な関係を築くことができるようになり、おのずと顧客満足度が向上していくのです。
デメリット
デメリットは2点あり、1つ目はセキュリティ面の不安です。CRMは1か所に顧客の個人情報の全てが蓄積されるため、情報セキュリティ事故が起きるリスクがあることは否定できません。個人情報は極めて慎重な取り扱いが要求されるものであり、個人情報を安全に管理するための方法や漏洩を防ぐための基礎知識を、普段から社員全員に徹底的に周知することが必要となります。
2つ目は、操作権限の設定が必要なことです。CRMの適切な運用は、情報共有する範囲を決めてシステムを使う人の操作権限を設定する必要があります。編集できる権限をきちんと決めておかないと、部外者によってデータを削除されるなどの恐れがあるのです。
顧客管理システムの選定ポイント
CRMは数多くのベンダーから提供されているため、選定の際にはいくつか押さえるべきポイントがあります。ここでCRM選びで失敗しないためのポイントを解説しますので、実際に導入する際の参考にしてみてください。
操作性
導入しようとしているCRMが、ストレスなく使える操作性やユーザーインターフェースを持っているかは大きな判断基準になります。CRMは、一部のパソコンの操作に詳しい社員だけが使うものではなく、複数の部署を跨いだ多くの社員が日常的にアクセスするものです。
起動方法に始まって日常的な使用での操作方法、画面に表示された情報の見方、文字のフォントに至るまで検証し、どのような社員でも使いこなせるかどうかを確認しましょう。社員が日常的に顧客情報の更新・蓄積を続けられて、最新の情報がいつでも簡単に取り出せるものでなければ、CRMは社内に定着しません。
機能性
CRMに限らず、新しいシステムを導入する際は多くの業務をいきなりシステム化しようとせず、スモールスタートが基本です。まずは基本機能を使って比較的シンプルな業務をシステム化し、メリットとデメリットを検証しましょう。それを基に他の機能を試したり、他の業務をシステム化したりして範囲を広げていくのが定石です。
効率化を急ぐあまりにCRMの導入を先走ってしまうと、期待していたほどの効果を感じられなかったり、日常の業務内容と合わず十分に活用できなかったりといった失敗に陥りやすい傾向にあります。導入することでどのような業務を効率化したいのか、どのような結果を得たいのかを明確にして、CRMに求める機能を絞り込んでおくことで機能を持て余さずに済むでしょう。
コスト
CRMを導入した結果として業務効率が向上したとしても、メリットがかすんでしまうほどの多額のコストがかかってしまっては本末転倒です。業務の根幹にも関わるシステムを導入することは、企業にとっての一大イベントであり、コストも当然大きな関心事になります。多少コストがかかっても多機能な方がいいのではないかと思って導入しても、現場のスタッフが使いこなせない機能まで取り込むと宝の持ち腐れになり、せっかくの導入コストも無駄になるでしょう。
機能の豊富さは、必ずしも業務効率の向上に結びつくものではありません。自社の求める必要最低限の機能を搭載しているCRMを選定した方が、使い勝手の面でもコストの面でもメリットがあります。
システム仕様
CRMのシステム仕様には、「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類があります。クラウド型は、クラウド上でシステムが稼働するタイプです。インターネット回線を通してアクセスして使います。特に新たにハードウェアやソフトウェアを準備する必要がないため、初期費用が安価なのが特徴です。インフラやシステムの保守・管理、データのバックアップなどが不要で、インターネットに繋がる環境さえあれば場所や時間に関係なく利用できます。
一方オンプレミス型は、自社内のサーバーにアプリケーションをインストールして利用するものです。自社の業務内容に合わせて機能やユーザーインターフェースを変えられるため、カスタマイズ性は優れていますが、サーバーやネットワークは自前で用意しなければならないため導入にやや手間がかかります。
サポート体制
CRMを導入するのが初めてであれば、使い始めの頃は操作方法や機能の使い方に戸惑うこともあることでしょう。CRMのスムーズな導入と定着促進のためにも、システムベンダーが手厚いサポート体制を敷いているかは事前に確認することをおすすめします。メールでのサポートか、電話での問い合わせにも応じてくれるか、定着のために社内で説明会を開催してくれるかなど、具体的なサポート体制を確認しましょう。
サポート体制が厚ければ、運用開始後も成果を出しやすくなります。CRMの操作方法を詳しく知っている経験者が社内におらず、未経験者ばかりであるならサポートは必須といえるでしょう。サポートの有償・無償についても確認しておくことをおすすめします。
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ビジネス環境が高度に情報化して市場が縮小し、消費者ニーズが以前にも増して多様化していることから、CRMはマーケティングに欠かせない重要なツールと言えるでしょう。CRMを導入して顧客情報を的確に分析し、効果的なマーケティング施策を打つことは売上向上のためにも不可欠な施策です。
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当社に入社以前は株式会社カオナビにてコーポレート本部長、複数の情報IT企業にてCMOなどを歴任。
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