テレワーク時に経理担当者に必要な準備とは?メリットや注意点を解説

2024年9月1日


さまざまな業務のテレワーク化が進んでいますが、帳票や領収書などの紙ベースの書類が多い経理も例外ではありません。どのような準備をすれば、リモートで経理業務を行えるのでしょうか。そこでこの記事では、経理業務のテレワーク化で必要な準備について解説します。テレワーク化することのメリットや注意点についてもお伝えするので、これから経理業務をリモート環境で行う際の参考にしてください。

テレワークについて


まずは、テレワークについて解説します。テレワークの概要とテレワーク化が進む背景についてお伝えするので、改めて確認してみましょう。

テレワークとは

テレワークとはtele(離れた所)とwork(働く)を合わせた造語で、情報通信技術を活用した場所や時間に拘束されない働き方を指します。

テレワークには大きく分けて、自宅利用型テレワーク(在宅勤務)・モバイルワーク・施設利用型テレワーク(サテライトオフィス勤務など)の3つのタイプがあります。自宅利用型テレワークは自宅に勤務し、会社と連絡手段は主にインターネットに接続されたパソコンですが、必要に応じて電話やファックスなども活用する働き方です。モバイルワークは、顧客先などへの移動中にパソコンやスマートフォンなどを活用して働きます。3つ目の施設利用型テレワークは、勤務先以外のオフィススペースを使用するスタイルです。社内LANが使えるスポットオフィスや専用サテライトなどの施設利用が一般的で、パソコンとインターネット環境は必須です。

こうしたテレワークは広く注目されており、導入する企業も年々増加しています。

テレワーク導入が増えている背景

テレワーク化が進んでいる社会的な要因としては、政府がテレワークを推進していることが挙げられます。国の成長戦略にもテレワークは盛り込まれており、厚生労働省はテレワーク宣言企業を公募しています。東京五輪・パラリンピックにおける混雑緩和策としてもテレワークは期待されており、導入を進める企業は増加傾向です。2019年9月末時点における企業でのテレワーク導入率は20.2%で、前年度の19%と比較しても増加しているのが分かります。

また、コロナ禍の影響もありソーシャルディスタンスの確保は多く企業にとって課題となっています。ウィルスの感染拡大を抑制するためにも、業務内容を問わずテレワーク化は求められており、実現に向けて準備を進めている企業も少なくありません。

以上のような背景もあり企業のテレワーク化は今後も加速していくでしょう。

経理業務のテレワーク化で必要な準備


リモートワークの導入が進むなかで、経理業務はどのようにテレワーク化を実現すれば良いのでしょうか。ここでは必要となる3つの準備について解説します。

帳票の電子化

経理業務では仕訳帳や入出金伝票などさまざまな帳票を扱います。IT化が進んだ昨今では多くの企業がパソコンを使って帳票を作成していますが、古い慣習が残っているなどの理由から、現在も一部の帳票を手書きで作成している会社も少なくありません。

しかし、テレワーク化を実現するにはこれらの帳票を電子データ化しなければなりません。経理の実務では帳票を印刷して費目などをチェックしているかもしれませんが、こうしたステップをできる限り電子化できればテレワーク化は前進します。理想としては経理業務をシステム化して、紙の帳票を極力使わない業務フローを確立することが推奨されます。また、帳票の管理やデータの検索を簡単にするなど、業務効率の側面からもメリットが大きいのでおすすめです。

領収書の電子化

領収書は紙の場合がほとんどです。テレワークでの業務は離れた場所で作業を進めるため、領収書はスキャナを使って電子データに変換しなければいけません。経理業務をテレワーク化するなら複合機やスキャナを準備して、いつでも領収書を電子データ化できる準備を整えましょう。

また、書類を電子化する文化があまり根付いていない企業の場合は、管理職が率先して領収書をスキャンするなどして電子データ化を推進すると良いでしょう。最初は手間がかかり面倒に感じる領収書の電子データ化ですが、膨大な量の領収書の現物をオフィスで抱えなくて済みますし、情報の管理も容易になるというメリットがあります。

環境の整備

基本的なICT環境の整備も忘れてはなりません。パソコン・ネットワーク・クラウドサービス・勤怠管理などの各種環境に問題がないか改めて確認し、リモートワークでも社員が安心して働ける環境を提供しましょう。

特にパソコンとネットワークの性能は仕事の質に大きく影響します。快適に動作するか、安定してネットワークに接続できるかなど、支障なく仕事を進められそうか社員一人ひとりの仕事環境を細かくチェックします。

また、ファイル管理などはクラウドサービスの活用もおすすめです。自社でサーバーやネットワークを準備するのは手間もコストもかかりますが、クラウドサービスであれば簡単かつ低コストで導入できます。

経理業務をテレワーク化するメリット


それでは、経理業務をテレワーク化するとどういったメリットがあるでしょうか。ここでは主な4つのメリットを紹介します。

業務効率化を図れる

テレワーク化の推進に伴って業務をデジタル化することは、業務プロセスの改善にも繋がります。例えば、紙ベースで処理をしていた経理の書類がデジタル化できれば、時間のかかる押印なども電子化されるので作業時間は大幅に短縮できます。書類の郵送などもクラウド上で処理できるため、よりスピーディーに対処できるでしょう。

また、情報の修正や必要な帳票の検索もデジタル化されていれば瞬時に行えるので、二重線を引いて判子を押して訂正をするなどの手間は省略でき、効率的に作業を進められます。

ペーパーレス化を実現できる

帳票や領収書の電子化が必要とお伝えしましたが、経理の業務をテレワーク化すればペーパーレス化を実現できます。経理業務と聞くと大量の紙の書類に追われているイメージもありますが、テレワークでは電子データに置き換わります。紙の帳票や領収書は保管スペースの確保の必要でしたし、情報の管理もアナログで時間がかかりました。

しかし、ペーパーレス化を実現できれば書類を保管するための場所はクラウド上になり物理的なスペースの確保は不要です。紙代や印刷代もかからないのでコスト削減にも繋がるでしょう。さらに、ペーパーレス化ではセキュリティも強化できます。紙の情報だと紛失や劣化、情報漏洩のといったリスクも高いことも問題でした。デジタル化された資料は劣化することがなく、紛失リスクも低いのです。アクセス制限や閲覧制限を設けることもできるので、従来よりも高いセキュリティを施すことができます。

人材確保が容易になる

経理の人材確保もテレワークであれば有利です。労働人口減少は社会的にも大きな問題になっており、企業としても優秀な人材を確保することは経営を存続するうえでの重要な課題です。

さらに、近年では働き手の生活環境や状況が多様になってきているという特徴もあります。結婚や出産、育児、介護など以外にも、働き手によっては障害を抱えていて外出先での業務が難しい方もいます。これまでは会社を辞めるか休職する、就職を諦めるといった選択肢しかありませんでしたが、テレワークを活用すれば離職する必要がなくなり、安心感を持って生活を持続できます。企業にとっても、働き方の多様性を受け入れて、多くの方に働く場を提供することは優秀な人材の獲得にも繋がるため、強固な経営基盤を築くことができるでしょう。

従業員の満足度がアップする

経理業務のテレワーク化は、ワークライフバランスを実現することにも繋がります。電車などで長時間の通勤もする必要がなくなりますし、節約できた時間は自己研鑽や家事などに使えます。

また、経理の作業がテレワークによってデジタル化されれば、チーム内で情報を共有しやすくなり業務の属人化も防止できるでしょう。

テレワーク化のさまざまな良い側面は、従業員の満足度も向上させます。従業員の満足度が向上すれば帰属意識が高まり、顧客へのサービスの質もおのずと向上することでしょう。

経理業務をテレワーク化する際の注意点


メリットの多い経理業務のテレワーク化ですが、気を付けたい注意点もあります。以下の2点に留意して経理業務のテレワーク化を進めましょう。

セキュリティ対策が重要

ICT環境の整備ではセキュリティ対策が重要です。情報漏洩やウィルスの感染など、セキュリティに関連するトラブルは多くあります。企業の信頼にも関わる項目なので、セキュリティ不備による問題はなるべく回避したいものです。

対策としてはセキュリティソフトの導入や、パソコンの定期的なアップデートを欠かさないことなどが有効です。そして、会社としてはテレワークのセキュリティガイドラインを策定し、従業員への教育を実施しましょう。データの持ち出しやWebサイトの閲覧についてなど、判断に迷いがちなセキュリティの注意点を網羅的にガイドラインにまとめておくことをおすすめします。

十分なコミュニケーションには工夫が必要

社員とのコミュニケーションが不足してしまうのもテレワークの課題です。リモートでなければ毎朝社員と顔を合わせて挨拶できますし、コンディションの把握も容易です。

しかし、テレワークで十分なコミュニケーションを確保するには、多くの工夫を施す必要があります。例えば、Web会議ツールやチャットツールの導入はコミュニケーションの充足に有効です。定期的に上長や担当グループでのオンラインミーティングを設定し、仕事の進捗や困っていることなどをざっくばらんに話す時間を設けましょう。チャットでは定期的な業務の報告を義務化するなど、一定のルールづくりも大切です。適切な頻度で社員の業務に関わる姿勢をキープすることで、テレワークのコミュニケーション不足は解消可能です。

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