経理の外注とは?そのメリット・デメリットや外注業者の見極め方を徹底解説

2024年9月1日

企業活動を数字化して管理する経理は、経営に不可欠な業務の一つですが、経理業務を行うには専門的スキルや知識を持った人材が必要になります。近年では、労働人口の減少によって多くの企業が人材不足に悩まされており、本来の業務と経理業務を兼任しているケースも少なくありません。そのため、利益に直結するコア業務に社員が注力できないといった悩みを抱えている企業もあります。

課題の解決策として挙げられるのが、経理業務を外部業者に委託することです。この記事では、企業の業務効率化を実現できる経理業務の外注についてや、外注業者の見極め方などを解説します。

経理とは

まず、経理の概要や経理に求められるスキル・資格について紹介します。

経理の概要

経理とは、企業の経営状態を把握するために取引履歴を記録したり、資金の流れを管理したりする業務です。資金の管理や計算を行う同様の業務には、「会計」と「財務」とがあります。

会計とは、伝票や帳簿の作成などの経理業務を含めた、企業全体の資金の流れを管理する業務です。また、財務とは、金融機関からの資金調達や企業の合併・買収・提携などを行う業務を指します。そのため、金融に関する知識や取引先との交渉力が問われるのです。

大企業の場合は、取引先の件数や社員数が多いことから、経理業務の領域ごとに担当者を設けて分業させるのが一般的でしょう。業種によってはコスト管理のための原価計算が必要なケースや、会計年度をまたぐ複雑な処理が必要になるケースもあります。

主な仕事内容

経理の仕事は、「日次業務」「月次業務」「年次業務」の3つに分かれています。

日次業務とは、毎日の現金と預金口座それぞれの出入金をチェックする業務です。関連する納品書や請求書、領収書の発行のチェック、仕訳などの業務が発生します。1日の売上管理を日次業務として行う企業もあるため、売上の集計と伝票・納品書の発行が日々の業務に追加される場合もあります。なお、伝票や帳簿の保管は法律で定められた義務です。特に帳簿に関しては原本の保管が義務付けられているので、より適正な保管が求められます。

月次業務では、請求書の発行や売掛金の管理などを行います。企業の売上は、通常1か月ごとに締日を決め、請求書を発行して支払日になると引き落としや請求を行う仕組みです。また、試算表と損益計算書の作成も行います。これらの書類は、月ごとの資金の動きや売上状況を判断するための資料となるため、非常に重要な業務の一つです。

年次業務では、決算書の作成業務を行います。企業によって異なるものの、一般的な決算日は3月31日です。決算書の作成業務では、税務署へ決算申告を行うために、決算日から2か月以内に集計業務と税金の納付を行います。株主が存在する企業は、決算から3か月以内に株主総会を開催しなくてはなりません。

いずれの業務においても、不定期に税務署の監査が入ることから、重要書類を日頃からきちんと整理しておくことが重要です。

経理に求められるスキルや資格

経理は、他部署の社員との情報共有・確認や、取引先・公認会計士・税理士と直接やりとりする機会があるため、コミュニケーション能力が求められます。また、処理の正確性や物事にコツコツと取り組む姿勢は、小さなミスが一大事になりかねない経理業務において重要なスキルです。その他、ExcelやWordなどの基本的なパソコンスキルも必須となるでしょう。

経理で求められる資格には、簿記や税理士、ビジネス会計検定試験、財務報告実務検定などがあります。簿記は3級から実務で活用できますが、中途採用の場合は即戦力を求められることも多いため、2級以上を取得している人材が望ましいとされています。
税理士は、税法に関する知識を証明できる国家資格で、税務代行や税務書類の作成、税務相談などの業務に必要です。税理士試験を受験するためには、簿記1級あるいは会計士の実務経験が必須となります。

ビジネス会計検定試験は、財務諸表に関する知識や分析力を証明できる資格です。経営戦略の企画や自社の現状分析において役立つ資格のため、経理のキャリアアップを図るのであれば、専門的知識を有する1級を取得することが望ましいでしょう。

財務報告実務検定は、四半期報告書など情報開示に基づく財務諸表の作成・開示を行うスキルや知識を有する資格です。受験条件は特にありませんが、受験するには簿記3級以上を取得していることが望ましいでしょう。

経理の外注とは

経理の外注は、委託元の企業規模や業務内容に合わせて、さまざまな業者がサービスを展開しています。ここでは、外注業者の仕事内容と費用相場、主な依頼先について紹介します。

外注できる仕事内容

経理の外注では、財務に関する事務業務や伝票入力、請求書発行などを代行してくれます。経理業務を外部に委託する場合の選択肢は以下の3つです。

・一部の業務を依頼する
経理業務の中で、企業の限られた人的リソースを割くのが非効率的と感じる業務だけを外部に委託する方法です。単純作業であれば人材派遣で内製化して済ませるケースもありますが、知識や経験が不足しているとミスが発生しやすく、修正に工数が割かれてしまうデメリットがあります。

・経理業務全般を依頼する
企業内に経理の専門的知識を持つ人材がいない場合や、法改正に適切に対応できない場合に活用する方法です。経理業務全般を外注することで、ミスを最小限に留められます。

・アドバイスを含めた総合的なサポートを依頼する
外注業者の中には、実務業務の代行とともに、健全な経営体制に導くためのアドバイスを行っているものもあります。経営アドバイスを行う外注業者には経営や会計に関する専門家が在籍していることから、高品質なサービスを受けられるのです。

外注の依頼先

経理業務を外注する依頼先として、税理士(会計)事務所と経理代行会社の2つが挙げられます。特徴の違いは以下の通りです。

・税理士(会計)事務所
税理士事務所には、税理士が個人で経営する税理士事務所と、複数の税理士が所属する税理士法人があります。会計事務所の場合でも、税理士が在籍していれば同様です。
税理士は記帳だけでなく申告も代行できるため、決算書や申告書の作成まで一気通貫で依頼可能なのがメリットです。
デメリットとしては、自社が大企業であったり依頼する仕事量が増えたりした際、少人数の事務所では対応が遅れる場合もあることが挙げられます。

・経理代行会社
経理代行会社は、経理業務に特化して代行を請け負う会社です。
仕訳入力を専門スタッフが担当し、繁忙期には増員する場合もあるため、スピード感ある対応が期待できます。税理士事務所と比べて割安なところも多いことから、コスト削減が可能です。
ただし、税理士と異なり申告までは代行できず、税務処理を見越した仕訳入力ができるかどうかは代行する担当者依存になりがちな現状があります。税務申告・決算書作成の際には、自社の担当者の手腕だけでなく、税理士の助力が必要となる可能性もあるでしょう。

外注費の相場

外注費用の相場は、委託する経理業務の内容や業者によって変動します。
記帳代行の費用相場は、定額制と従量制によって相場が異なり、定額制の費用相場は、100仕訳につき10,000円程度です。従量制の費用相場は、1仕訳につき50~100円程度とされています。

給与計算代行の費用相場は、主に料金+プランとトータルサポート2種類の料金システムです。社員数が50~100名程度の企業の場合、料金+プランの費用相場は、基本料金が8,000~10,000円程度、給与計算1人分は、1,000~2,000円程度でしょう。

トータルサポートの場合の費用相場は、給与計算だけではなく人事業務も依頼できることから、月額50,000~300,000円程度と高めに設定されています。
決算/申告代行の費用相場は50,000~200,000円程度、経理代行の費用相場は30,000円~です。

経理を外注するメリット

ここでは、経理業務を外注するメリットについて紹介します。メリットを十分に得られるかどうかの指針として参考にしてみてください。

人材コストが削減できる

企業の社員だけで経理業務を行う際は、繁忙期にあたる年末や決算期にある程度の人材を確保しておく必要があります。しかし、繁忙期に備えて日頃から潤沢な人材を確保しておくと人件費がかさむのです。

経理業務を外注すれば、繁忙期だけ業務を委託したり、社員の手が回らない業務だけ依頼したりできます。企業は最小限の人員を確保しておけばいいため、社員教育のコスト削減が可能です。

専門的な人材の確保ができる

経理の専門的な知識を有する人材を確保するためには、時間とコストを掛けて社内で人材を育成するか、優秀な人材を採用する必要があります。
経理の外注であれば、専門知識を持ったスタッフが業務を代行し、経理関連の法改正にも素早い対応が期待できるでしょう。

本来の業務に注力できる

企業によっては、人材不足に悩まされ、社員がコア業務と経理業務を兼任している場合もあります。しかし経理業務との兼任は、仕訳業務や請求業務に時間を取られ、コア業務に集中できずに残業を余儀なくされてしまうことがあるのです。経理業務全般を外注すれば、社員はコア業務のみに集中でき、業務を効率化できます。

不正を抑止できる

経理部門では、担当者への業務の属人化により、着服や横領といった不正会計の可能性が想定されます。社内で他の誰も資金業務の権限を持たず、牽制が効かない状態であればよりリスクは高まるでしょう。

経理を外注し第三者が経理のプロセスに介入する状況であれば、たとえ担当者が不正会計を行ったとしてもその結果が異常として反映・把握されるため、自ずと不正の抑止効果が期待できます。

経理を外注するデメリット

経理の外注は、人件費の削減や社員がコア業務へ注力できるなどのメリットがある一方で、デメリットもあります。ここでは、経理の外注のデメリットについて紹介します。

対応が遅れる

経理の外注では、経理業務を代行するスタッフが同じオフィスにいないため、質問などの対応にタイムラグが生じます。また、外注業者は契約書の内容を基に業務を代行するため、急なトラブルや契約外の対応には即時に対応してもらえないケースも少なくありません。

社内に経理ノウハウが残らない

経理の外注は業務の効率化が図れる一方で、社内に経理のノウハウを蓄積できないデメリットがあります。外注業者の中には、契約が切れる際にノウハウを共有してくれるケースもありますが、現場で業務を回せるようになるにはある程度の時間が必要です。

外注費がかかる

外注業者の料金体系は、伝票数・仕訳数によって料金が変動する従量課金制の場合が多くみられます。外注する業務の物量によっては、思わぬコストが嵩むケースもあるでしょう。

紙ベースの請求書・領収書などを電子化して提出する場合は、コア業務を圧迫しないようスキャン専任のパート・アルバイト等を雇用する必要が出てくる場合もあります。この場合は、付帯して人件費もかかるため注意が必要です。

情報漏えいのリスクがある

外注業者へ依頼する場合、個人情報や取引情報を第三者へ渡すことになります。基本的には安全管理がなされているとはいえ、紛失や漏えいのリスクはゼロではありません。自社側でも情報送信・送付時のミスの防止策を講じるとともに、依頼先の情報管理体制をあらかじめチェックしておくことが重要です。

外注業者の見極め方

経理の外注業者は、どこでもいいわけではありません。なぜなら、外注業者ごとにサービスの内容や質が異なるからです。以下では、外注業者を決める際のポイントを紹介します。

自社と実務範囲が合っているか

外注業者を選定する際は、どこまで対応してくれるのかしっかりリサーチしておきましょう。外注業者のサービス内容は、単純作業などの一部業務の委託から経営に関するアドバイスまで幅広い選択肢があります。そのため、委託する業務の範囲や、外注業者に期待することは何かといった条件を決めておくのがおすすめです。

自社より質の高い経理レベルか

経理業務は小さなミスも許されないため、外注する際は、自社よりも質の高いレベルで経理業務をこなす業者を選びましょう。具体的には、公認会計士や税理士、社会保険労務士など有資格者が所属する業者がおすすめです。実務経験年数の長いスタッフが在籍しているかどうかも、質が高く信頼できる業者の判断材料となるでしょう。

セキュリティ対策が万全か

外注業者を選ぶ際は、万全のセキュリティ体制が整っているかに注目しましょう。情報が漏洩してしまった場合、外注企業だけでなく、委託元の企業の社会的な信用も失ってしまいます。データをやりとりする際に暗号化されているか、外注先の物理的・人的な情報管理体制などをしっかり見極めてください。

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