上場企業の経理はアウトソーシングしよう!利用するメリットなども解説
2024年9月1日
経営陣や会社幹部は、経理部門が可視化したお金の動きを見て経営判断や業績予測を行います。経理業務の一つひとつに派手さはありませんが、経営の方向性を決める要といえる業務であり、会社にとっては欠くことのできない存在です。
しかし、日々多くの業務を抱えている中では社内での処理には限界があります。その対策として、経理業務をアウトソーシングする企業が増えているのが最近のトレンドです。
本記事では上場企業の経理業務に関する基礎知識をはじめとして、経理業務をアウトソーシングする際に知っておくべき事項などについて解説します。
目次
上場企業の経理業務に関する基礎知識
上場企業と非上場企業では経理業務の内容が異なる場合があります。以下に上場企業に必要な経理業務と非上場企業との違いについて解説します。
上場企業に必要な経理業務
上場企業では株式を市場に公開して広く取引されていることから、ステークホルダーである株主に対して会社の経営状況を開示してタイムリーに報告することが重要な経理業務になります。具体的には上場企業では有価証券報告書を提出したり、四半期報告書を開示したりすることが義務付けられており、経理部門は開示請求書類の運用やサポートを行わなければなりません。
また、監査法人の対応も重要な業務です。これから株式を上場しようとしている場合では、監査法人から2年間分の監査証明を入手しなければなりません。監査法人とは2年間以上の監査契約を結ぶことが求められており、種々の対応も発生します。他にも親会社と子会社をグループとして運営している場合には、通常の決算ではなく連結決算に対応する必要があります。
非上場企業との違い
非上場企業では経理業務の中でも、税務会計に重きが置かれている点が特徴として挙げられます。税務会計とは、税金を計算するために帳簿を付けたり、法人税の計算や申告書を作成したり、税金を適切に期間配分するために税効果会計をしたりすることです。非上場企業では、経営者が主要な株主であることは多くあるものです。そのため、上場企業のように社外の利害関係者に対して、経営状況を報告することはあまり重要視されません。
したがって、所得税や法人税などの税金をいかに適切に納めるかということのほうが重要視されます。例えば非上場企業は株式を公開していないことから、有価証券報告書を提出する義務は課されていません。決算書についても、会社法や法人税法で作成が義務付けられている年次のもののみ作成するなど、上場企業に比べると経理業務が簡素化されています。
上場企業の経理業務はアウトソーシングしよう!
上場企業では外部向けの書類を作成することが多いなど、経理業務が煩雑化する傾向があります。そんな時は、経理業務をアウトソーシングしてコア業務に集中できる環境を作るのがおすすめです。以下に経理アウトソーシングの概要と、上場企業が経理アウトソーシングを活用するメリットについて解説します。
経理アウトソーシングとは?
経理アウトソーシングの定義としては、外部の会社が経理業務の一部もしくは全ての部分を代行してくれるサービスを指すものと言うことができます。汎用性の高い業務から専門性の高い業務まで代行を依頼することが可能です。
一般的に経理アウトソーシングが活用されている業務内容の例としては、記帳業務、給与計算、年末調整、決算書作成、決算申告、請求業務などが主たるものです。中には経理に関するコンサルティングをしてくれるものや、経理のことなら一手に引き受けてくれるものもあります。
会社によって代行可能な業務内容の範囲や料金体系が異なるため、代行を依頼する前に自社が抱えている課題の解決に適したサービスを提供してもらえるのかを確認することが大切です。
上場企業が経理アウトソーシングを活用するメリット
アウトソーシングの大きなメリットは、コスト削減が見込めることです。経理業務をすべて社内で処理しようとすると経理担当者を雇用しなければなりませんが、閑散期でも人件費がかかってしまいます。アウトソーシングを活用すれば無駄のない最適な人材配置が可能です。
また、業務品質の担保ができることもアウトソーシングのメリットです。会社法や税法は毎年のように改訂されるため、高い専門性が要求されるケースもあり得ます。アウトソーシングであれば経理のプロが業務にあたるため、業務品質を高く保つことが可能です。
これら2つのメリットのおかげで、社員はコアな業務に集中できるようになります。経理業務は伝票作成、請求書発行、入金管理など煩雑な作業が多く、担当者は大きな負担を抱えていることも珍しくありません。アウトソーシングを活用すれば担当者は雑多な作業に煩わされることがなくなり、より付加価値の高いコアな業務に集中できるようになります。
経理アウトソーシングで代行してもらえる業務
ここでは先にも少し触れた経理アウトソーシングで代行してもらえる業務について、より具体的に解説します。
販売管理
販売管理は1回の作業で終わる業務ではなく、仕入れの手配からはじまって、受注手続き、商品在庫の管理、納品、請求書発行、代金回収に至るまでの一連の流れを含みます。これらは経理業務の中でも定型的な業務で、例えば請求書発行に関しては受注情報が正しく入力されていれば発行作業そのものは反復作業になるため、アウトソーシングしやすい業務と言えます。
入金を確認した後に行う入金消し込みも、同様にアウトソーシングに向いた作業と言えるでしょう。入金消し込みが終わったら不一致項目のみをチェックするだけでよいため、自社の労力を減らす効果が期待できます。中には帳簿に記載されている請求金額が、実際に入金された金額と一致しているかを照合してくれるアウトソーシングもあります。販売管理の精度を高めたいなら使ってみる価値はあるでしょう。
仕入れ管理
仕入れ管理は、仕入先に見積もり依頼を出した後に購買契約を結び、発注、入庫後の検収、支払いまでを行う業務です。紙やエクセルを使って仕入れ管理をしている場合では、発注ミスや仕入れミスが発生するリスクが高くなります。仕入れ管理では手作業によって処理する必要のある工程もあり、人為的なミスが発生しやすいと言えるでしょう。
上場企業ではシステムを開発して取引先と連動させ、仕入れ管理をルーチンワーク化しているケースが多々あります。この方法を導入すればデータ処理を社内で行う必要がなくなり、連動させたデータにエラーが発生した場合のみデータ修正をするだけで処理が完了します。そして、仕入れ管理がこのように標準化されていれば、充分アウトソーシング化が可能な業務となるでしょう。
もしも仕組み化できていない場合は、業務の洗い出しや処理のルールなどをまとめておく必要があります。
固定資産管理
固定資産管理は管財業務とも呼ばれ、固定資産管理業務の一環として、保有する資産の減価償却費を計算して毎年計上していかねばなりません。
減価償却費の計算方法には固定資産の購入費を法定耐用年数で償却する定額法と、初年度だけ多めに償却して残りの未償却費用を一定の割合で償却していく定率法の2種類があります。いずれの方法でも税法で定められた計算方法でパターン化されているため、アウトソーシング可能な業務です。その際は、自社側は固定資産の実態の調査や損傷の有無などを確認し、アウトソーシング企業側で減価償却費の計上を行うなどのように分業することも可能です。
上場企業が経理アウトソーシングを利用する際のポイント
上場企業は規模が大きいことから経理業務の内容も多岐にわたり、標準化をするにはそれ相応の準備期間が必要です。
標準化が進まないうちに広範な範囲の経理業務をアウトソーシングしようとすると、委託する業務量とともにコストも膨らむ一方になり、万が一失敗した場合には損失も大きくなってしまいます。アウトソーシングするとしても長期的な展望の元に標準化を進めつつ、社内の人材育成に役立つアドバイスやコンサルティングをしてくれるアウトソーシング先の利用を考えることも必要です。
経理アウトソーシングの選び方
上場企業が経理アウトソーシングを選ぶ際には、対応範囲や情報管理などに注意して選ぶべきです。以下にそれぞれについて解説します。
対応範囲を確認する
経理業務と一言で言っても対象となる範囲は非常に広範に及び、どの範囲まで任せたいのかでアウトソーシング先は変わってきます。給与計算、伝票入力、記帳などの単純作業を任せたいのであれば専門性の高くないアウトソーシング先でも構わないでしょう。売上計上、入金管理、仕訳入力、税務申告などといった業務まで任せたいなら専門的な対応ができるアウトソーシング先を選ぶ必要があります。
依頼先を探す際は、自社はどのような業務を任せたいのかということと、アウトソーシング先はどのような範囲の業務に対応してくれるのかということの2点をそれぞれ確認するといいでしょう。中には監査法人対応や開示業務などのような高度な経理業務を請け負う企業もあるため、高い実務能力を持ったスタッフが不足している場合は導入を検討するのもおすすめです。
情報管理は徹底されているか
経理部門では会社の経営に関する重要な情報を取り扱います。社内のみならず取引先の情報も含むため、そのような秘匿性の高い情報を外部のアウトソーシング会社へ出すことに抵抗を感じる方もいることでしょう。
だからこそ内部情報や顧客の個人情報などが漏洩しないように、情報管理が徹底されているアウトソーシング会社を選ぶ必要があります。個人情報の保護体制構築を示すプライバシーマークや、情報セキュリティの管理方法に関する国際規格であるISO27001を取得しているかなどは確認しておきたいポイントです。
アウトソーシング契約を結んだ後も情報管理上の懸念点がないか観察し、情報の受け渡し方法や管理体制のリスクヘッジについて日頃から意識しておきましょう。
対応が迅速かどうか確認する
アウトソーシング会社を選定する際は、自社の要望に対して迅速に対応してくれるかも見極めたいポイントです。例えば月次決算が迫っていて急いで書類を整えなければいけない時や、急に税務調査が入って情報の開示が求められた時などでは迅速に対応できなければ経営上のリスクと損失につながる可能性があります。対応にタイムラグが生じて迅速なレスポンスが期待できないようでは、アウトソーシングするメリットが半減してしまうでしょう。
この部分を検証するためには、アウトソーシング会社に関する口コミやレビューを参考にするのがおすすめです。緊急時でも迅速にレスポンスが得られた、イレギュラーな依頼でも柔軟に対応してくれた、といった評価を受けている会社であれば信頼度は高いと言えます。
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