経理業務の1年スケジュールは?年次の業務内容を3つの期間で解説

2024年9月1日

経理業務には、1日の取引内容をまとめる日次業務や月ごとの月次業務、1年のまとめに該当する年次業務の3種類があります。どれも欠かせない業務ですが、特に年末調整などを行う年次業務に関しては、避けて通れない大仕事ともいえるでしょう。

この記事では経理の全体的な流れをおさらいしながら、1年通して行うべき業務について解説していきます。また、経理業務に向いている方の特徴や、取得しておきたい資格も併せてご紹介します。

経理業務の1年は全体像の把握から始めよう!

経理業務の1年を把握するために、まずは毎日の業務や毎月、毎年行う業務について理解しましょう。これらは「日次業務」「月次業務」「年次業務」と呼ばれており、一つひとつが欠かせないものとなっています。

日次業務

「日次業務」とは、日々行わなければならない経理処理のことです。集計の基本になる重要な部分であり、主に現預金の管理や入出金明細を確認、伝票入力などを行います。

債権債務の確認や売掛帳や買掛帳の情報を最新の状態で維持し、資金繰り表を作成して資金の管理状況を正確に把握できるようにしておきます。伝票や帳簿といった書類は保管の義務があるので、日頃から丁寧に整理し、管理することが重要です。

月次業務

「月次業務」とは、1ヶ月に発生したお金の流れをすべて記録・管理するために行う業務です。具体的には、売上請求書の発行・送付や支払請求書の精査・支払処理、月次決算書の作成、経営資料の作成などを行います。

取引金額が大きくなると、約束手形や為替手形を発行する場合もあります。また、締日や支払い日は取引先ごとに異なるので、それらの正しく把握することも非常に重要です。

年次業務

「年次業務」では、1年の会計記録を締めくくり、取引内容の資料をまとめる作業を行います。企業ごとに決められている「決算日」に合わせて決算書や確定申告書を作成し、納税などの必須業務を中心に棚卸資産の実地棚卸と固定資産の現物確認、仮払金や仮受金の精査などを行います。

年次業務は、企業の1年における経営活動や財政状況を表す「総まとめ」のような仕事です。決算日などから逆算し、日付に余裕をもって進められると良いでしょう。

4~7月の業務内容

3月決算の企業の場合、4月は決算整理作業で忙しくなります。

3月に行った棚卸の在庫と帳簿残高の確認や差額の調整、年度中に処理できなかった入出金の確認や調査、さらには未払いや未収の確認などを行います。最終的な目的は、決算整理仕訳をもとに、財務諸表(決算書)を作成することです。財務諸表には、貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書などがあります。
税に関しては、軽自動車税、固定資産税・都市計画税第1期分を納付しなければなりません。

また、新年度が始まる4月には、転勤、退職が増える傾向にあります。これまで県民税、市民税などを特別徴収していた人が異動や退職により特別徴収できなくなった場合には「給与支払報告に係る給与所得者異動届出書」を役所に提出しなければなりません。

5月には確定申告と納税があります。対象となるのは、法人税、法人住民税、法人事業税、消費税です。申告期限は期末から2ヶ月以内と決められているので、確定申告と納税は必ず月内に済ませましょう。

また、5月には自動車税の納税もありますので、納税資金の準備の際、あらかじめどの税金をいくら支払うのか、資金繰り表に記入をしておくとスムーズです。

基準日を3月末日としている会社の多くは、6月に株主総会を開催するため、資料などの準備が必要です。また、個人住民税の納期の特例の適用を受けている場合には、半年に1度の納付期限があります。従業員の給与から源泉徴収した住民税を、期限までに納付しなければなりません。

なお、6月は住民税が新年度の特別徴収税額に変更される月でもありますので、会計管理ソフトを導入している会社では、設定を切り替えるなどの対応が必要です。

7月は、源泉所得税の納付の特例の適用を受けている企業の納付期限がありますので、10日までに従業員の給与から源泉徴収した所得税を納付しなければなりません。ちなみに、源泉所得税の納付の特例とは「従業員が10名未満の企業は源泉徴収税を年2回に分けて納付してよい」という特例制度で、納付期限は1~6月分が7月10日、7~12月分が1月20日となります。ほかにも、税金関係では固定資産税と都市計画税第2期分の納付があります。

また、7月10日までに、健康保険料と厚生年金保険料の定時決定(9月以降に適用)に関わる標準報酬算定基礎届の提出と、労働保険および雇用保険の申告書の提出をしなければなりません。このように、4月からの経理業務はしばらく忙しい時期がつづくでしょう。

8~11月の業務内容

8月には特筆すべき経理業務はありませんので、経理部門が一息つける期間だといえるでしょう。ただし、大規模事業者の場合には、消費税の四半期中間申告と納付を行う必要があります。

また、経理を行う部署が総務、庶務、人事労務などを兼ねている場合には、暑中お見舞いのはがき印刷やお中元の準備、お礼状の作成、社員の夏季休暇の日程調整などの業務が発生する場合があります。

9月は上半期最後の月です。経理業務としては、中間決算書の作成を行います。また、予定納税をするか中間申告をするかを判断したり、下半期への準備をする月となります。

10月は、9月に中間決算を行う場合には未払いや未収の処理を計上する期間です。それ以外には、比較的余裕のある時期といえます。

11月は年末調整の準備を始めます。具体的には、従業員に以下のような確認を行ったり、資料の提出を促したりします。
●年初に提出した扶養控除申告書に変更がないかどうか確認
●生命保険料控除証明書、地震保険控除証明書、2年目以降の住宅ローン控除申告関係など、控除関係資料を収集
●配偶者や子どもがアルバイトをしている場合など、扶養控除の範囲を超える収入がないか確認

12~3月の業務内容

12月は、関係資料をもとに従業員一人ひとりについて年末調整を行います。還付や不足額徴収については、12月の給与で精算します。年末調整終了後、従業員には1年間の収入と源泉徴収された所得税額が記載された源泉徴収票を発行します。納税については、固定資産税・都市計画税の第3期分の納付があります。

また、納期の特例の適用を受けている場合、10日までに個人住民税の納付を行います。

1月は年末調整が終わった後に作成する法定調書および給与支払報告書の作成と提出、不動産使用料などの支払調書の作成と提出があります。これらは31日までに税務署に提出しなくてはなりません。また、同じく31日までに、償却資産申告書の提出も必要です。1月1日時点で所有している償却資産(土地、建物以外の事業用資産)を申告し、それをもとに固定資産税が計算されます。

さらに、源泉所得税の納付の特例の適用を受けている場合には、下半期の納付期限が1月20日となっています。年末調整による過不足を調整してから納付するようにしましょう。

2月は3月の決算に向けて準備を始めます。
売掛金など未回収がないかどうか、不要な固定資産の確認など、決算にむけて整理が必要な項目を抜き出して早めに対処しておくと安心です。関係する部署にもあらかじめ協力を呼びかけておきましょう。

また、2月は固定資産税・都市計画税第4期分の納付があります。加えて大規模事業者は、消費税の四半期の中間申告と納付を行いますので徐々に忙しくなってきます。

3月は決算処理の月です。月末には実地棚卸を行い、商品(販売するための資産)の現物残高を明らかにします。

以上、経理業務の大部分をご紹介しましたが、このように、経理は1年を通してさまざまな仕事に追われていることが分かります。

経理業務と会計業務は違うの?

経理業務とは「お金の流れ」に特化した業務です。
同じような分野として扱われがちな「会計業務」は、お金だけでなく建物や設備、物品といった会社の全資産を管理する業務のことを表します。また、会計業務の場合は経理業務に加え、作成した資料や書類をまとめて報告する工程も業務に含まれるため、業務の幅が広くなるのも特徴です。

経理業務が向く人材の特徴

経理業務が向いている人材の特徴として「正確さ」「コミュニケーションスキル」「簿記スキル」が挙げられます。業務の性質上、正確さや専門用語への知識は必要になります。また、別の部署や社外の人などさまざまな相手と関わることになるため、コミュニケーション能力が高い方も経理業務に向いているといえるでしょう。

作業スピードが速くて正確な人

経理において、正確にスピード感を持って業務を行うことは重要です。細かい確認業務も多いので「忙しい時も落ち着いて冷静に対処できる」という方は経理の仕事が向いています。
また、経理は日々業務を抜け漏れなくこなすことが大切になるため、計算が得意な方やデータ入力など「コツコツ積み重ねていく業務」が得意な方は経理業務が向いているといえるでしょう。

コミュニケーションスキルが高い人

経理とは、異なる部署をはじめ、さまざまな人と関わる業務です。
時には取引先など外部の方と関わるケースも出てきます。そのため、どんな人とも円滑に話を進められる、コミュニケーション能力が高い方も経理業務に向いています。
さらに、普段から細かい部分に気を配れるような方は、作業中のミスにもいち早く気付きやすいため、この仕事にとって理想的な人材といえるでしょう。

簿記スキルのある人

経理の仕事は資格不要でも始められますが、専門用語が多い分野なので3級程度の簿記の基礎知識は身につけておくと安心です。また、業務に専門性を求められる場合は2級まで取っておくと良いでしょう。どんな企業においても必要となるスキルなので、資格を取って損はないといえます。

経理業務で取得しておきたい資格

経理に関する資格として、多くの方が真っ先に思いつくであろう「簿記」や「ビジネス会計検定」「給与計算検定」「ファイナンシャルプランナー」などが挙げられます。
ここでは、これらの資格の概要や合格率などについてご紹介します。

日商簿記検定

一般的に「簿記」と呼ばれているのがこの資格で、日々の経営活動を記録して計算、管理する技能のことを表しています。会計知識だけでなく、経営管理や分析力を身に付けることも可能です。この資格には「原価計算初級」「簿記初級」「3級」「2級」「1級」があり、3級までは「必須の基本知識」が身に付いていることを証明するのに役立ちます。

多くの企業が求める簿記スキルは「2級」に該当し、1級になると「公認会計士」や「税理士」などの国家資格を受験する資格が得られます。
合格率の参考として、2023年1月時点における最新の試験結果をご紹介します。 合格率 受験者数/合格者数 1級(統一試験) 10.4% 9,828/1,027 2級(統一試験) 20.9% 15,570/3,257 2級(ネット試験) 37.3% 45,861/17,091 3級(統一試験) 30.2% 32,422/9,786 3級(ネット試験) 40.9% 95,651/39,118 簿記初級 64.2% 3,644/2,341 原価計算初級 89.5% 1,753/1,569

ビジネス会計検定

ビジネス会計検定とは「財務諸表に関する知識や分析力」を問う検定です。

簿記の知識がなくても始められるのが特徴で、財務分析やキャッシュフローに対する苦手意識がある方でも取り組みやすいのがポイントとなっています。合格率は3級で約70%、2級で約50~60%、1級で約20%となっています。

級別内容や出題範囲に関しては、公式サイトから過去問の閲覧が可能なので、受験したいレベルに合わせてチェックしましょう。

給与計算検定

「給与計算検定」とは、内閣府認定の一般財団法人実務能力開発支援協会が主催する検定です。給与計算業務に関連する実務能力を客観的に判定する資格で、レベルは2級と1級、ともに年2回試験を開催しています。受験資格は不要で出題問題数は40問、試験時間120分となっています。出題される問題は以下の通りです。

・原則、試験実施年度の「給与計算実務能力検定 公式テキスト」に準拠して出題
・給与計算実務に必要な基礎知識(給与の仕組み、社会保険、税など)
・給与計算実務に必要な法的知識(労働基準法など)
・演習問題(実際の給与計算、賞与計算、年末調整など)

ファイナンシャルプランナー

ファイナンシャルプランナーとは、家計の見直しや教育資金、資産運用など「資金計画」を立てることに特化しています。「顧客に対してファイナンシャル・プランニングを行うための基本的なインタビュー技術、提案書の作成技術、プラン実施援助のための諸知識を有していること」そして「社会的職業人にふさわしい教養、知識」を持っていることを証明する資格となっており、レベルには3級、2級、1級があります。

この資格を持っていると金融や不動産、税制や保険などの知識があることを証明してくれるため、活躍の幅が広いのも特徴です。また、この資格には2年ごとの資格更新があり、継続して学び続けることが求められています。つまり顧客の信頼向上も、知識のアップデートを継続していくことが可能です。

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