経理業務のクラウド化とは?クラウド会計ソフト導入前に知っておきたい基礎知識
2024年9月1日
昨今、会計ソフトのクラウド化によって、入力作業の自動化されるなど利便性が向上しました。しかし、経理作業がクラウド化することで何が変わるのか分からない方や、大切なデータをインターネット上でやり取りすることに抵抗を持つ方もいるでしょう。
そこで、今回の記事では、経理業務のクラウド化について説明し、クラウド会計ソフトのメリット・デメリットや導入手順、選び方について解説します。
目次
経理業務のクラウド化とは
自社でソフトをダウンロードするのではなく、インターネット上のサーバーが提供するサービスを通じて、データの保管や処理を行う利用形態をクラウドといいます。クラウドの場合、データやサービスは、インターネットに繋がったスペースに保管されます。
2018年6月に、少子高齢化に対応し、持続的な経済成長をするために政府は「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」を発表しました。この方針で、各々のシステムを自社サーバーで運用する方法に代わり、システムを短期間で構築でき、サーバーなどのリソースの増減にもフレキシブルに対応できるクラウドサービスの利用をデフォルトとする「クラウド・バイ・デフォルト原則」が示されました。
そして、近年の経理業務は会社のPCに会計ソフトをインストールして使う時代から、インターネット上のサーバー経由でクラウド会計ソフトを使う時代へと変化しつつあります。従来までは、精算書や請求書、領収書、預金通帳などのアナログのデータを手作業で会計ソフトへ入力する際に、ミスが発生しやすい問題点がありました。また、入力作業に多くの人的コストと時間が取られることも企業の大きな課題だったのです。
一方、クラウド会計ソフトは、金融機関のデータを自動で取得することができ、データを確認しながらその都度手入力する必要がなくなります。これにより、経理業務における「入力作業」という業務が大幅に軽減されます。さらに、経理の仕事には専門性の高い知識が求められる場合が多く、担当者が知識を占有してしまう「知識のブラックボックス化」が起きやすい業務です。しかし、クラウド会計ソフトを導入することで業務の属人化を防ぐことができます。
クラウド会計ソフトのメリット・デメリット
ここでは、クラウド会計ソフトのメリットとデメリットについて解説します。
メリット
クラウド会計ソフトのメリットは4つあります。
1つ目のメリットは、クレジットカード・銀行口座と自動で連携ができることです。
クラウド会計ソフトはインターネット上のサーバーにデータを蓄積されるため、銀行やクレジットカードの取引情報をインターネット上で取得し、会計情報に自動で取り込み仕訳を作成する機能があります。このため、記帳作業がほぼ必要なくなり、企業の最新の業績を把握することができます。
2つ目のメリットは、情報の一括管理ができることです。
インターネット上のサーバーですべての会計データを一括管理しているので、複数の経理担当者でデータを確認することができます。データ同士の連携と情報分析に必要なデータの取得も非常に簡単に行えるため、経営者が好きなタイミングでデータを確認することも可能です。
また、税理士も最新のデータをリアルタイムで確認することができるようになるので、データをメールに添付して送信するといった作業が不要になり、意思疎通もスムーズになります。
3つ目のメリットは、最新のソフトウェアが利用可能な点です。
従来のインストール型の会計ソフトでは、機能の追加や税制や消費税など法令改正の都度バージョンアップが行われ、再度購入、インストール、設定、システム差分のアップデートをするなどの更新作業が必要でした。
しかし、クラウド会計ソフトなら、消費税率の引き上げや軽減税率の導入などの法改正や機能追加に対応するアップデートは、サービス提供会社側が自動で行います。常に最新の状態で利用でき、法改正に伴うアップデートを失念していたために、間違った処理をしてしまうリスクはありません。
4つ目のメリットは、場所を選ばない働き方ができる点です。
クラウド会計ソフトは、インターネットが繋がっていれば、どの端末からでも使用可能で、場所を問わず利用することができます。従来のインストール型の会計ソフトでは、ソフトが入っているPCだけでしか作業が行えませんでした。しかし、クラウド会計ソフトは使用するPCが限定されないため、業務がスムーズに行えます。
また、クラウド会計ソフトによっては、PCの他にスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末にも対応しています。出張先や自宅、テレワークなどでも作業できるため利便性が高く、働き方改革の推進と新型コロナウイルス感染症への対策にもなります。
デメリット
クラウド会計ソフトのデメリットは主に2つあります。
1つ目のデメリットは、インターネット環境が必須であることです。
クラウド会計ソフトはインターネットに接続した状態で使用するため、インターネット環境がなければ利用することができません。インターネットに障害が発生したり、停電したりするなどのトラブルが発生して利用できない場合は、ソフトの使用自体ができず、作業が止まる可能性があります。
また、回線速度の遅延や電波障害などによって、作業に遅れが生じることもあります。さらに、セキュリティのためにインターネットの使用を許可しているPCが限定されている場合は、使う場所を選ばないというクラウドならではのメリットを享受できない場合があります。
2つ目のデメリットは、ランニングコストがかかってしまうことです。
クラウド会計ソフトは月額あるいは年額の使用料をサービス提供会社に支払っている期間だけ利用でき、毎月定額のコストが必ずかかります。そのため、インストール型の会計ソフトと比べると、長期的に見ると費用が割高になってしまう場合もあります。また、値上げによって使用料が高くなる可能性もあります。
クラウド会計ソフトの導入手順
ここでは、クラウド会計ソフトの導入手順について解説していきます。
導入前の確認事項
まず、インターネット環境の整備が必要です。クラウド会計ソフトはオフラインで使用ができません。インターネットに障害が起こるとシステムが使用不能になり、会計業務の停止で混乱が生じる可能性もあります。インターネットの回線契約は信頼性の高い業者を選定し、業務に支障がないように高品質のインターネット環境を整備しておきましょう。
インターネット環境の整備が終わったら、セキュリティ対策が必要です。クラウド会計ソフトは、データがインターネット上のサーバーに保存されています。サーバーでは高度なセキュリティ対策が講じられていますが、ユーザー側でもセキュリティ対策が必要です。
情報漏洩対策として、PCにウイルス対策ソフトを入れておくことは必須の準備です。また、クラウド会計ソフトのユーザーIDとパスワードは厳重に保管、管理しましょう。複数ユーザーで利用する場合は個々にIDを設定して、権限を設定しておくなどの対策が必要です。
また、無料Wi-Fiは通信傍受の被害のリスクが高いため、利用しないようにしましょう。
導入直後の設定
導入直後の設定では、最初にアカウントの作成を行います。クラウド会計ソフトは多くのサービスでトライアル期間中に無料アカウントの作成ができ、期間限定などの条件付きで操作方法を体験できます。本利用を開始する際は、発行されたライセンスキーをライセンス認証の設定に入力することで切り替えが完了します。
次に、アクセスメンバーの管理・登録を行います。経営者や経理責任者だけでなく、経理担当者や各事業所の支店の担当者にも必要があればアクセス権限の付与が可能です。また、それぞれのメンバーには、権限の設定が可能です。
執行役員クラスには、すべてをコントロールできる管理者権限を、日々実務を行う担当者には入力権限だけを付与するなどの設定が可能です。
最後に、金融機関からのデータ取得を行います。金融機関からデータを取得するためには、金融機関が持つWebサービスのユーザーIDやパスワードを、クラウド会計ソフトに登録する必要があります。ユーザーIDやパスワードなどのデータは、クラウド会計ソフトのサーバーで暗号化して保管されるため安心して利用できます。
クラウド会計ソフトの選び方
ここでは、クラウド会計ソフトを選定するポイントについて解説していきます。
利用している銀行口座やクレジットカードに対応しているか
経理にかかる時間とコストを大幅にカットするなど、クラウド会計ソフトの利便性に大きく関わるのが、自動同期の対象範囲です。クラウド会計ソフトを選ぶ際には、まず、無料トライアル期間中に使用している銀行口座やクレジットカードの取引情報の取得と同期ができるかを試してみると良いでしょう。
ただし、同期を行うためには、事前にネットバンキングの口座作成が必要です。他にもPOSや電子マネーなど、自社のシステムと同期できるかの確認を行うことをおすすめします。
操作は簡単に行えるか
従来の会計ソフトの使用経験が長く、複式簿記に慣れている方は、インターフェースが異なることからクラウド会計ソフトは使い難いと感じる方もいるようです。
クラウド会計ソフトごとに入力方法や、画面の設計などが異なっているため、無料期間を利用してソフトの使いやすさを比較すると良いでしょう。
自社に必要な機能は十分か
サービスや契約内容によっては、見積書・納品書・請求書機能の利用には追加料金がかかったり、決算書作成機能に別料金がかかったりします。また、給与計算ソフトなどの連携機能の有無や、スマートフォンアプリの有無も確認しておきましょう。
サポート体制に問題ないか
クラウド会計ソフトを使っているうちに、帳簿の仕分け方やソフトの使用方法などに疑問が生じることもあるため、サポート体制が充実していると安心して利用することができます。
サポート体制はサービス提供会社によって大きく異なり、レスポンスの速さ、質問のしやすさ、対応範囲にも差があります。たとえば、チャットによるサポートがあるサービスもあれば、メールサポートだけしかないサービスもあり、サポートを受けるごとに使用料が発生するものもあります。社員のITリテラシーに応じて、自社に合ったサポート体制のものを導入しましょう。
クラウド会計ソフトとの連携には「請求管理ロボ」がおすすめ
クラウド会計ソフトによって経理業務は効率化されます。しかし、経理の作業には毎月発生する請求業務も含まれ、煩雑な処理が必要であるにもかかわらずミスが許されないことから非常に負担の大きい業務です。また、取引先が増える程負担が大きくなる請求業務は、自動化によって大幅に業務効率を向上させられる業務でもあります。
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加えて、SFA(販売管理システム)との連携により、自動で行われた請求業務の内容を会計システムに反映させることも可能です。これにより、煩雑なやり取りの削減と企業会計の透明化をサポートし、従業員がコア業務に専念できるようになります。
なお、コンビニ決済、クレジットカード決済、口座振替、銀行振込など、複数の決済手段に対応しているため、企業間取引のみならず、BtoC取引にも活用いただけます。
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