ビジネスカードを活用しよう!メリットや注意点、サービス選定のポイントを解説
事業を運営していくなかで、毎月の資金繰りに苦労している方も多いのではないでしょうか。資金繰りが悪化すると取引先に支払いができなくなったり、従業員に給料を支払えなくなったり、最悪のケースでは倒産に陥ってしまったりする恐れがあります。
資金繰りを改善する方法はいくつかありますが、ビジネスカードの活用も代表的な改善方法の一つです。さらに、クレジットカードを利用した後払いサービスなど有力な改善方法も登場しているため、現在ビジネスカードは事業運営に必須の存在といえるでしょう。
当記事ではビジネスカードにスポットを当て、その特徴やメリット、利用時の注意点、選定時のポイントなどを詳しく解説します。
ビジネスカードを上手に活用しよう
会社の資金繰りは、事業運営に関わる重要な課題です。資金繰りが悪化し運転資金が不足すると、さまざまな弊害が発生します。最悪のケースでは、売り上げはあるのに倒産してしまういわゆる黒字倒産に陥ってしまうかもしれません。
資金繰りの改善に有効なのがビジネスカードの活用です。ここでは、ビジネスカードの概要とコーポレートカードや個人カードとの違いを解説します。
ビジネスカードとは
「ビジネスカード」とは、金融機関や信販会社などのクレジットカード発行会社が発行するクレジットカードの一種です。クレジットカードは一般消費者を対象とした「個人カード」と、企業や個人事業主を対象とした「法人カード」があります。
名称に「法人」と付いていますが、法人格のない個人事業主でも法人カードを持つことは可能です。法人カードには下記のような特徴があります。
● 引落口座に法人口座も選択できる
法人カードの場合、引落口座を個人口座と法人口座から選択できます。個人口座から引き落とす方法を「個人決済型」、法人口座から引き落とす方法を「法人決済型」というのが一般的です。仕事とプライベートの資金を区別できるため、経理会計処理が圧倒的に楽になります。
● 利用限度額が比較的高い
法人カードの場合、利用限度額が個人カードより高いのが一般的です。特に、大企業向けのコーポレートカードは高額な決済も行われるため、より高額な利用限度額が与えられるケースもあります。
● ビジネスに便利な付帯サービスを利用できる
法人カードでは、ビジネスに便利な付帯サービスを利用できるのが一般的です。例えば、出張時の新幹線・飛行機予約サービスや宿泊料割引サービス、海外出張時の損害保険付帯サービス、福利厚生代行サービス、付与されたポイントの親カードへの集約などの付帯サービスを利用できます。
コーポレートカードとの違い
法人カードは事業規模に応じて「ビジネスカード」と「コーポレートカード」に分けられます。ビジネスカードは、中小企業や個人事業主など比較的小規模な事業者に対して発行されるカードです。
一方コーポレートカードは、一定の従業員を抱える大企業に発行されます。事業規模の基準は発行会社によって異なるため、中小企業だからコーポレートカードが作れないというわけではありません。企業規模の一般的な基準は下記の通りです。
● ビジネスカード
個人事業主や従業員数20名未満の中小企業
● コーポレートカード
従業員数20名以上の大企業
ビジネスカードとコーポレートカードの基本的な機能に違いはありません。ただし、ビジネスカードは従業員に発行する追加カードの枚数が少ないなど、一定の制限が設けられているケースもあるようです。
個人カードとの違い
「個人カード」は、一般消費者に対して発行されるクレジットカードです。一般消費者向けの個人カードは、金融機関や信販会社以外にもさまざまな企業から発行されています。細かなサービスはクレジットカード発行会社によって異なりますが、主な特徴は下記の通りです。
● 引落口座は原則名義人の個人口座
法人カードと異なり、個人カードの引落口座は原則名義人の個人口座となります。学生や専業主婦・専業主夫などの一部例外を除き、第三者の口座を引落口座にすることはできません。
● 利用限度額が比較的低い
法人カードに比べると、個人カードの利用限度額は低いのが一般的です。特に、名義人の年齢が若かったり、カードを作って間もなかったりする場合は利用限度額が低額に設定されます。
● 一般生活に便利な付帯サービスを利用できる
法人カードではビジネス向けの付帯サービスが提供されますが、個人カードでは一般生活に便利な付帯サービスを利用できます。例えば、ポイントサービスやマイレージサービス、お得なクーポンや優待割引、海外旅行時の損害保険付帯サービス、緊急時のロードサービスなどが利用可能です。
法人カードと個人カードの違いを改めて整理すると、下記のようになります。
カードの種類 | 法人カード | 個人カード |
---|---|---|
カードの名義 | 親カード:代表者の名義 追加カード:従業員の名義 |
親カード:本会員の名義 追加カード:家族の名義 |
追加カードの対象 | 従業員 | 家族 |
利用限度額 | 比較的高い | 比較的低い |
引落口座 | 法人口座または個人口座 | 個人口座 |
付帯サービス | ビジネス向け | 一般消費者向け |
ビジネスカードのメリット
冒頭でもお伝えしたとおり、ビジネスカードの活用は資金繰りを改善する有効な方法です。ビジネスカードにはその他のメリットも多いため、ここでは具体的なメリットをご紹介します。
公私を区別して考えられる
ビジネスカードは引落口座として法人口座を指定できるため、会社とプライベートの資金を区別できます。ビジネス上の経費を個人カードで支払うことも可能ですが、面倒な経費精算手続きが必要です。
また、個人の資金を会社に移すには手間のかかる経理処理を行う必要があります。加えて、個人の資金は会社から見ると借入金に該当するため、決算上もあまり好ましくありません。
法人決済型のビジネスカードを使えば法人口座から引き落とされるため、面倒な手続きは一切不要です。個人事業主の場合も個人口座と法人口座を分離することで、資金繰りがわかりやすくなったり経費精算が圧倒的に楽になったりするメリットがあります。
特に個人事業主の場合は公私の資金を混同しがちなので、ビジネスカードを活用してこれらを分離するのも一つの方法です。
経理業務を効率化できる
日頃発生する出張旅費や接待費用、備品購入などの経費清算を現金で行っている場合、一旦従業員に経費を仮払いして後日領収書と突合し、差額精算するという面倒な事務手続きを行わなければなりません。また、領収書をファイリングして一定期間保管するという手間もかかります。
すべての経費をビジネスカードもしくはそれにひも付く追加カードで決済すれば、このような事務手続きは一切不要です。
また、クレジットカード会社から毎月発行される利用明細書は、一定の要件を満たすことで領収書の代わりとなるため、領収書を管理・保管する必要もありません。会計ソフトと連携すれば、さらに経理会計業務を効率化できるでしょう。
キャッシュフローにゆとりが生まれる
事業運営に関わる地代家賃や水道光熱費、仕入れ費用、外注費、各種リース料などの経費は、決められた期日までに個別に支払わなければなりません。当然、支払期日は経費ごとに決められているため、個別の管理が必須です。
すべての経費をビジネスカードで決済すれば、支払い日を集約できます。ビジネスカードの引落日さえ把握しておけばよいため、キャッシュフローの管理を圧倒的に効率化可能です。
また、クレジットカード払いの場合は決済から引き落としまで一定の期間があるため、キャッシュフローにゆとりが生まれます。ビジネスカードは個人カードと同様に、分割払い・リボ払い・キャッシングができるため、運転資金が不足しそうなときにも役立つでしょう。
経費の計上漏れを防止できる
経費精算でありがちなトラブルが計上漏れです。例えば、従業員が立て替え払いをした際に経費清算申請を忘れてしまったり、領収書を紛失して経費計上できなくなってしまったりするケースが考えられます。経費をビジネスカードで決済させることで、このようなヒューマンエラーを防止することが可能です。
ビジネスカードの利用明細書を確認すれば、誰が・いつ・どこで・何のために・いくら経費を使ったかが一目瞭然でわかります。利用明細書を領収書がわりに経費精算できるだけでなく、従業員による経費の私的流用も防ぐことが可能です。
従業員の利用経費も一括管理できる
従業員に追加カードを渡しておき、経費をすべてその追加カードで決済させることで、従業員の利用経費も一括管理できます。引き落としは指定した法人口座に集約されるため、仮払いや差額精算など面倒な事務手続きも不要です。経費の申請忘れや領収書の紛失などのトラブルも防げるでしょう。
利用明細書を確認することで、経費の妥当性を分析することも可能です。経費の無駄遣いを防止するとともに、必要経費以外の不要な経費の削減に繋げられます。また、経費を一括管理することで、経費精算業務を効率化できることはいうまでもありません。
ポイントやマイルを獲得できる
ビジネスカードのなかには、個人カードのようにポイントやマイルが貯まるものもあります。例えば、出張旅費などをビジネスカードで決済することで、効率的にマイルを獲得することが可能です。貯まったポイントやマイルは支払いに充当したり商品券などと引き換えたりできるため、経費を削減できます。
特に高額な決済も多いビジネスカードの場合、このようなポイントやマイルも決して無視できません。
なお、従業員に追加カードを発行している場合は、従業員が追加カードで獲得したポイントも親カードに集約できる場合があります。ただし、ポイントの有効期限には注意が必要です。また、従業員がポイントを私的に利用しないよう、社内規定などを設けておく必要もあるでしょう。
ビジネスカードを利用する際の注意点
前章ではビジネスカードのメリットについて解説しました。ビジネスカードはメリットの多い決済手法ですが、いくつか注意点があるのも事実です。ここでは、ビジネスカードを利用する際の注意点について具体的にご紹介します。
年会費が発生する場合が多い
個人カードの場合、ゴールドカードやブラックカードなどを除いた一般カードは、年会費無料なのが一般的です。一方、ビジネスカードの場合は、クレジットカード発行会社によって異なるものの原則年会費がかかります。特に、ビジネスカードのゴールドカードやブラックカードは高額な年会費が必要です。
高額な年会費がかかるビジネスカードを取得する場合は、受けられるサービスとコストのバランスを慎重に検討しましょう。なお、ビジネスカードの年会費は経費として計上できます。経費算入を前提に、コストパフォーマンスを考えるのも一つの方法です。
追加カードを発行すると管理が必要になる
追加カードを発行し従業員に渡しておくことで、経費を集約して一括管理できます。経費の申請忘れや領収書の紛失などのトラブルを防止できることに加え、経理会計業務を大幅に効率化することも可能です。
ただし、追加カードは発行して終わりではなく、適切に管理しなければなりません。どの従業員に追加カードを渡しているのか、誰が・いつ・どこで・何のために・いくら経費を使ったのか、私的利用はないかなどの管理が必要です。従業員に追加カードを渡す場合は、事前に運用ルールや管理規約を規定しておきましょう。
従業員同士で使い回しはできない
追加カードの名義は法人や代表者ではなく従業員の個人名義となるため、従業員同士で使い回すことはできません。クレジットカードは名義人以外が利用することは出来ず、第三者が利用した場合は規約違反に該当します。悪質性が認められると強制解約されるのが原則です。
使い回しを前提にするのではなく、必要な従業員には全員追加カードを発行しましょう。ただし、追加カードの枚数には上限があり、それぞれの追加カードに個別に年会費がかかります。枚数が多いと高額な年会費が発生するため、注意が必要です。
運用ルールを設ける必要がある
ビジネスカードおよび追加カードを発行する場合は、事前に運用ルールを規定しておく必要があります。例えば、最低でも次のようなルールは定めておいた方がよいでしょう。
● 追加カードを発行する従業員の範囲
例えば「管理職以上」などと規定しておくとよいでしょう。営業職のように一般社員でもビジネスカードの必要性が考えられる場合は、別途例外として規定してください。
● 利用の際の報告、連絡、相談の方法
ビジネスカードを利用した際の報告や連絡の方法、利用可否の相談などについてルール化しておきましょう。終業後の利用などで当日報告できない場合もあるため、事後報告の方法についても規定してください。
● 利用可能な範囲
現場の裁量でいくらまで決済可能かを定めておきましょう。例えば、一定額以上の決済は事前の社内稟議が必須などのルールを規定してください。
● 領収書の提出有無
領収書は原則提出させるようにしましょう。利用明細書と突合チェックすることで、経費の計上漏れや私的流用を防止できます。
ビジネスカードを選定する際のポイント
ビジネスカードは、さまざまな金融機関や信販会社が発行しています。いったいどのビジネスカードを選ぶべきなのでしょうか。ここでは、ビジネスカードを選定する際のポイントをご紹介します。
利用限度額を確認する
まず、利用限度額を必ず確認してください。毎月支払う経費に対し、利用限度額が低すぎると途中で決済できなくなってしまう恐れがあります。ビジネスカードのメリットの一つに経費の一元管理があるため、月の途中で決済できなくなってしまうことは大きな問題です。毎月の決済額を調査し、それに見合った利用限度額のビジネスカードを選びましょう。
なお、クレジットカードは発行時の審査で利用限度額が決まるため、必ずしもクレジットカード発行会社が提示している最大限度額が利用限度額になるとは限りません。審査結果によっては減額される可能性もあるため、なるべく最大限度額が高いビジネスカードを選択するとよいでしょう。
追加カードの発行可能枚数をチェックする
従業員に追加カードを発行する場合は、発行可能枚数を必ず確認してください。特に、ビジネスカードの場合は追加カードの枚数が制限されることも多いため注意が必要です。
追加カードの枚数はビジネスカードの種類によって大きく異なります。追加カードを発行する従業員の範囲と、今後の人員計画を元に必要な枚数を検討してください。従業員の増加などで追加カードの枚数が上限に達しそうな場合は、コーポレートカードの作成も検討してみましょう。
付帯サービスの種類を確かめる
最後に、付帯サービスの種類を確認しましょう。例えば、ポイント還元率は何%なのか、貯まったポイントはどのような用途で利用できるのかを確認してください。原則、ポイントには有効期限があるため、使い道がないと無駄になってしまいます。
例えば、貯まったポイントをマイルに変換できれば出張旅費などの経費を節約することができるでしょう。
加えて、損害保険付帯サービスなどがあると海外出張の際に安心です。また、優待サービスなどは従業員の福利厚生につながります。しかし、当然ですが付帯サービスが充実しているビジネスカードほど年会費は高額になりがちです。
使わない保険や優待に高い年会費を払い続けないよう、事前に必要性とコストパフォーマンスを十分検討しましょう。
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ビジネスカードはクレジットカードの一種で、主に中小企業に発行される法人カードです。ビジネスカードを利用することで、キャッシュフローにゆとりが生まれたり、経理業務を効率化できたり、経費の申告忘れや計上漏れなどのヒューマンエラーを防げたりするメリットがあります。
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