新規事業向けの助成金・補助金を徹底解説!請求業務の課題なども紹介
新規事業を立ち上げる際にまず壁となるのが資金調達です。資金調達手段としては金融機関による融資が一般的ですが、信用や実績に乏しい新規事業に関して認められるケースはあまりないのが実情です。
そこでおすすめなのが、国や自治体が実施している助成金や補助金の活用です。原則として返済の必要がない資金のため、資金繰りを気にせずに新規事業を軌道に乗せる取り組みに専念することが可能になります。
この記事では、新規事業向けの助成金や補助金を徹底解説していきます。併せて請求業務の課題なども紹介しているので、ぜひご参考になさってください。
新規事業は補助金・助成金を利用して支援してもらうのがおすすめ
新規事業は、補助金や助成金を利用して支援してもらうのがおすすめです。ここでは、3つのメリットをご紹介してこの点を明らかにしていきます。
返済の心配をしなくて済む
補助金や助成金を受ける最大の利点は、返済の心配をしなくて済むことです。
銀行や政府系金融機関などから融資を受けて資金調達をした場合、借金のため当然元本と利息の返済義務が生じます。一方、補助金や助成金は税金や事業主と従業員の双方が支払う雇用保険料を原資として交付されるお金です。受給要件を満たす事業主が申請により必ず受け取れるお金であり、原則として返済の必要はありません。
新規事業の立ち上げにあたっては、それなりの元手がかかるケースも珍しくはありません。補助金や助成金を利用して支援を受けることができれば、資金面の負担を格段に軽くできます。
外部からの信頼を獲得できる
補助金や助成金は申請すれば必ず受給できる訳ではありません。受給するためには、受給要件を満たしている必要があり、補助金の申請ではさらに厳しい審査により採択が決められます。
そのため、受給が決まったということは、国や地方公共団体が定める基準をクリアしているだけでなく、策定した事業計画の価値が認められたことの証明にもなります。対外的な信頼度の向上が見込まれるため、金融機関などに融資を申し込む際の大きなアドバンテージが期待できるでしょう。
自社の経営計画を明確化できる
一般に補助金や助成金を申請する際には、事業計画書を作成して提出する必要があります。事業計画書では、事業内容、自社の強み、かかるコストや将来得られる利益の目安などを具体的に示さなければなりません。計画書を作成するにあたり今一度新規事業を整理することになるため、事業の見直しやビジョンの精緻化が可能になります。
また、申請時の審査に際して付される第三者からの意見を採り入れることによっても、同様の効果が期待できるでしょう。
国が支援する新規事業向けの補助金・助成金
補助金や助成金は、国や地方公共団体が事業者に対して、原則返済不要で支給してくれる制度です。ここでは、さまざまな種類がある補助金や助成金の中から、新規事業の立ち上げや維持に役立つものをピックアップしてご紹介していきます。
ものづくり補助金
中小企業庁が進める「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業」の一環として実施されている事業です。
本補助金の趣旨は、「革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等」の支援を通じて、中小企業や小規模事業者が賃上げや働き方改革、被用者保険の適用拡大といった喫緊の制度変更にスムーズに対応できるようにすることにあります。
対象となる経費の具体例としては、機械装置やシステムの構築費・知的財産などの技術導入費・クラウドサービス利用費・材料費や運搬費などが挙げられます。
補助上限額は類型別に異なり、一般型が1000万円(補助率1/2、ただし小規模事業者は2/3)、グローバル展開型が3000万円(補助率1/2、ただし小規模事業者は2/3)、ビジネスモデル構築型は1億円(補助率10/10)です。
また、ポストコロナに対応したビジネスモデルへの転換に取り組む事業者に対する支援として、補助率が2/3にアップする「低感染リスク型ビジネス枠」が設けられています。新しく始めようとする事業が新型コロナ対策に関連するのであれば、トライしてみるのもおすすめです。
申請にあたっては「経営力向上計画」の認定を取得しておくとよいでしょう。採択されやすくなるだけでなく、税制や金融の支援などを受けられるようになります。
小規模事業者持続化補助金
小規模企業者(常時使用する従業員20人以下、ただし小売業やサービス業などでは5人以下の企業者)を対象とした補助金です。商工業者であれば、法人に限らず個人事業主も補助の対象になりますが、申請時点で開業していない創業予定者は対象外です。
本補助金は、小規模事業を進めていくうえで必要になる費用の一部を国が補助することで生産性の向上を図り、地域の雇用創出に大きな役割を果たす小規模事業者の持続的な発展を支援することを目的にしています。
対象となる経費は、機械装置等費(新商品を陳列する棚の購入など)、広報費(販促やネット販売システムの構築など)、展示会出展費、新商品の開発費、資料購入費(新商品の開発に必要な図書の購入など)、外注費(店舗改装)など、多岐にわたります。
補助上限額は、一般型が50万円(補助率2/3)で、コロナ特別対応型・低感染リスク型特別枠は100万円(補助率3/4)です。
本補助金の申請は、商工会議所や商工会の窓口で行います。申請書の「経営計画」と「補助事業計画」の作成は初めての場合にはハードルが高くなりがちなので、お近くの商工会議所・商工会に出向いて相談しながら行うとよいでしょう。また、その際に経営に関するアドバイスを受けるのもおすすめです。
事業承継補助金
事業承継、あるいはM&Aなどの事業再編・事業統合をきっかけとして経営革新に取り組む中小企業者等を支援する制度です。
中小企業者等の世代交代を通して経済の活性化を図ることを目的としています。具体的には休廃業による技術や人材などの経営資源の散逸を防いだり、生産性向上に資する経営資源の集約化や事業引き継ぎを進めたりする取り組みに対しての支援が行われます。
2021年度の本補助金では、「経営革新」と「専門家活用」の2種類の支援の枠組みが設定されています。類型別の補助上限額は、以下の通りです。
「経営革新」
・Ⅰ型 400万円
・Ⅱ型 400万円
・Ⅲ型 800万円
※いずれも、補助率は補助対象経費の2/3で、廃業費用の200万円までを上乗せして計上することが可能。
「専門家活用」
・400万円(両類型共通)
※いずれも、補助率は補助対象経費の2/3で、売り手のみ廃業費用の200万円までを上乗せして計上することが可能。
対象となる経費は、使用目的の明確性・期間内の支払い・証憑性の3条件を満たし、かつ事務局により認められたものである必要があります。
なお、令和3年度補正予算が2021年12月20日に成立したのを受けて、本補助金の2022年度の公募概要がすでに明らかになっています。それによれば、廃業費用の上乗せ措置がなくなった代わりに他の枠組みとの併用ができる「廃業・再チャレンジ」事業枠が新設され、補助上限額や補助率の見直しが図られています。
IT導入補助金
経済産業省より交付される補助金です。生産性向上に向けてITツールを導入する中小企業や小規模事業者等に対する支援を通じて、働き方改革や賃上げ・売上アップをサポートするのが目的です。
2021年は、通常枠2類型と特別枠である低感染リスクビジネス枠3類型の計5種類が設定され、30万円~450万円の補助が行われています(補助率は、通常枠が1/2、特別枠が2/3)。
ツール要件は、通常枠が「労働生産性の向上に資するITツールであること」、特別枠では情報連携やテレワーク環境の整備に役立つ「複数プロセスの非対面化や業務の更なる効率化を可能とするもの」です。
また、2022年の募集では、1事業あたりの補助上限額が3300万円となる「複数社連携IT導入類型」の創設、補助対象を会計ソフトやECソフトなどに特化したうえでの補助率の引き上げをはじめとするいくつかの拡充・変更が予定されています。
キャリアアップ助成金
厚生労働省が実施する助成金です。非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善の取り組みを実施した事業主に対して交付されます。新規事業の立ち上げに際して、正社員を増やす場合などにも活用が可能です。
本助成金には7つのコースが用意されていますが、2021年12月21日以降、以下のコースでの変更・拡充が行われています。
・「正社員化コース」
加算措置の新設、紹介予定派遣労働者の要件緩和時限措置の延長
・「賃金規定等改定コース」
一部拡充措置(増額の対象者が全てか一部であるかを問わず同額の助成額を交付)
地域中小企業応援ファンド
本ファンドの「スタート・アップ応援型」は、創業促進補助金と並ぶ新規事業向け支援の柱になる制度です。
地域への貢献性が高い新事業に取り組む中小企業者等は、審査・採択を経て、本ファンドからの助成金や経営支援を受けられます。支援の原資は、中小機構と各都道府県の公共団体・金融機関等が共同出資して組成される地域独自の官民ファンドの運用益です。
「地域中小企業応援ファンド」と「農商工連携型地域中小企業応援ファンド」の2種類があり、現在まで各都道府県の状況に応じて組まれた後、支援が行われています。
コロナ禍で注目される事業再構築補助金とは?
事業承継補助金とは、コロナ禍の長期化により当面の需要や売り上げの回復が予測しづらい中、新たな分野に果敢に打って出ようとする中小企業等を支援するための制度です。
2020年度補正予算に盛り込まれたのを始まりとして、2022年2月現在も続けられています。ここでは、その概要と申請の手順について解説していきます。
概要
ポストコロナ・ウィズコロナ時代における経済社会の大変化を前に、新分野展開や事業再編など、思い切った事業の再構築を進める企業を支援するための制度です。中小企業だけでなく、中堅企業、個人事業主、企業組合等も支援の対象になります。
補助額が100万~8000万円(従業員数51人以上の企業の場合)である通常枠の他、条件により補助額や補助率が異なるさまざまな特別枠が設けられています。2022年には、必須申請要件の1つである売上高減少要件の緩和や「グリーン成長枠」「回復・再生応援枠」の新設などにより、さらなる手厚い支援が目指される予定です。
対象経費は、建物費、技術導入費、クラウドサービス利用費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費など多岐にわたります。
申請の手順
本補助金の審査は事業計画に基づいて行われ、事業計画は認定支援機関や金融機関と共に策定する必要があります。また、補助事業終了後3年~5年での一定割合以上の付加価値額の増加達成が見込まれるものでなければなりません。現時点での事業の強みや弱み、事業再構築の必要性などを整理しておき、積算根拠などを詳らかにしておくことが採択の確率を高めます。
申請や採否の連絡は、「jGrants」と呼ばれる電子申請システム上で行われます。アカウントの発行に時間がかかることがあるため、事前取得がおすすめです。
交付が決定すると1年程度の補助事業期間内に、事業者自身の資金で設備の購入等を行います。補助金は支出が確認された後に支払われるため、資金調達の道筋をあらかじめつけておく必要があります。
新規事業を支援する補助金・助成金申請の注意点
原則返済不要である補助金や助成金の活用が、新規事業立ち上げ時の大きな支援となるのは間違いありません。ただし、補助金や助成金を申請する際には注意すべき点もあり、知っておかないと採択される確率が下がってしまうのもまた事実です。そこで、ここでは特に押さえておくべき2つをピックアップして解説していきます。
申請受付期間を把握する
補助金や助成金は、申請受付期間が限られているため、期間内の応募が採択に向けた必須条件となります。
申請受付期間は、1年の内の1ヶ月~2ヶ月程度と短いのが一般的です。そのため、新規事業の立ち上げが決まった段階から常にアンテナを張っておき、補助金・助成金の申請受付期間をきちんと把握しておきましょう。
年間1回限りで公募される補助金・助成金の場合、二次募集がかからなければ翌年待ちになりますが、翌年以降に必ず公募される保証はありません。手間と時間をかけて優れた事業計画を作成したとしても、受付期間を徒過してしまえば助成金や補助金は受けられなくなります。目当てのものを見つけたら、早めの申請がおすすめです。
審査を通過しなければならない
申請に際しては、補助金・助成金共に受給要件を満たしている必要があります。そして、補助金については審査を通過しなければならず、申請しても必ず採択されるとは限りません。一般に経費の適用範囲が広いものや、支給額が高いものほど倍率が高くなり、審査が厳しくなる傾向があります。
審査の通過に向けて特に重要なのが、事業計画の策定です。会社の理念や事業の独自性に社会的な意義が感じられ、収益性や審査基準への適合性、競合・顧客との関係の明確さについて具体的かつ数的根拠の伴った説明をできるかが採択の成否を分けるポイントになります。
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基本的に返済義務がない補助金や助成金は、資金不足に陥りがちな新規事業立ち上げ時の大きな助けとなるものです。上手に活用するには、自社の取り組みが対象となる補助金や助成金を見落とさないよう、普段から情報収集に努めることが大切です。
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